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58 ナーニョの思い
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ケイルート兄様とその後、少し話をして早々に部屋を出ることにした。
怪我は治ったとはいえ、まだ本調子ではないから無理をさせてはいけない。
私はローニャと部屋に戻り、考えていた事を話した。
「ねぇ、ローニャ。考えていたんだけれど、ローニャはこのままお城の研究員として働いていきたいのよね?」
「うん。魔法を使って植物を育てたり、怪我した騎士たちを治療したりしながら自分にできることをもっと広げていこうと思っているよ。それがどうしたの?」
ローニャは不思議そうに聞いてきた。
「あのね、ローニャも大きくなって自分でやりたいことも見つかったし、私はエサイアス様についていこうかなって思うの」
「え!? どうして? 危険じゃないの?」
「そうね。危険だと思うわ。でも、私がついていってその場で治療出来れば、一緒に魔物を魔法で攻撃すれば、きっともっと安全になると思うの。
それにグリークス神官長は魔力を持つ人たちを探している。あれからずっと王都の人たちの治療を続けているけれど、魔力を持つ人は見つかっていないわ。
私が出向いていけば探し出せると思うの。魔力を持つ人たちが増えれば私たちの負担は減るし、ローニャは気づいているんでしょう?」
「何を?」
「ナーヴァル様やグレイス様のこと」
「あの人たちのことね……。私たちを道具としか見ていないから隙をみせればきっと私たちは二人にいいように使われよね。
ナーヴァル兄様はグレイス様に合わせているだけなんだけど、グレイス妃なんて私たちがいないところで獣扱いしているんだからっ! あっちの方がよっぽど獣よ」
ローニャはしゃべりながらぷんすこ怒って尻尾を膨らませている。
どうやら妹は二人が話しているところを立ち聞きしたようだ。
ローニャは私よりも断然耳が良いせいか、しっかりと聞こえてしまったらしい。
「魔力を持つ人たちが大勢見つかればまた変わってくるでしょう? 正直、私はこの世界の勉強を頑張っているけれど、まだ難しいわ。貴族たちのような策略を巡らせて足を引っ張るなんて無理そう。
私はここから出て各領地を巡り、怪我人を治療しながら自分たちの味方を増やそうと思う。私たちの味方が増えればあの人たちは無理やり私たちを使うこともできないはずよ」
「そっか。分かった。私はお姉ちゃんがやりたいと思うことに賛成する。私は私でできることを頑張る。ふふっ。猫は可愛くて強かなんだよ?」
「……そうね。あまり無理はしないようにね」
「もちろん!」
そうして夕方になり、私たちはいつもと変わらぬ素振りで父達と食事する。
久しぶりに見た父や母は私を見てとても心を痛めているようだった。
「お父様、お母様。心配をお掛けして申し訳ありませんでした」
「こんなにも痩せてしまって。心配したのよ。でも、よかった」
「ザイオン医務官からも叱られてしまいました。もっと太るようにと。今日はケイルート兄様の治療もしたし、お腹が減りました。いっぱい食べたいです」
「うんうん。いっぱい食べるといい。ナーニョの好きな物も用意してある。たくさん食べなさい。それに大怪我をしたケイルートを治療したと聞いた。二人ともありがとう」
父は優しい顔でそう話し、母も満面の笑みを浮かべている。
「知らせを受けた時に覚悟したわ。でも、ナーニョが治療してくれたと聞いて嬉しくて、嬉しくて。ローニャもお腹が減ったでしょう?」
「はい! お腹ぺこぺこですっ!」
目の前に食事が運ばれてくると、私たちは美味しそうに食べ始めた。
「二人とも何か欲しい物はあるか?」
私たちの様子を見ながら父は聞いてきた。
「ローニャはね、猫が飼いたい! この世界の猫って小さくて可愛いんでしょう? 私が猫種だからか鳥も兎も逃げてしまうの。この間、研究所が所有する畑に行った時に動物を見たけど、とっても可愛かったの」
「そうかそうか。良いぞ。ナーニョは欲しいものはあるか?」
「お父様、欲しいものというか、やりたいことが見つかりました」
「うん、なんだい? とても悩んでいたと聞いたが、決まったのかな?」
父は気を使うように優しく聞いてくれる。その様子に私はふっと心が柔らかくなる。
「今度、エサイアス様は国中を巡視すると聞きました。私もそれについていきたいと思っています。怪我した騎士をその場で治療出来ますし、各領地への影響は大きなものになると思うのです。それに、グリークス神官長のように魔法が使える人たちを探し出すのも私に課された重要な使命ではないかと思うのです」
―カラン。
母の指が震えている。
持っていたフォークが床に落ち、金属の冷たい音が鳴る。
私の言葉に父も母も食事をする手が止まった。
「……そうか。ナーニョのしようとしている事はとても危険なことなのだと分かっているのか?」
「はい。でも、私がしなければいけないと思うんです。お父様とお母様にお願いがあります」
「なに、かしら?」
母の指は微かに震えている。
「私がエサイアス様の巡視に同行している間、ローニャのことをお願いしたいのです。ローニャはもうすぐ成長が終わり私と同様に魔法も使えるようになってきましたが、まだ考えが幼い部分があります。どうか妹を酷使させないで下さい。そして危険が及ばないようにしていただきたいのです」
「そんな当たり前のことだわ。二人とも私たちの娘ですもの」
「……ナーニョ。すまない。儂たち、いやこの世界の全ての人間はナーニョに縋ることしかできない。ローニャのことは儂とグランディアが責任を持つことを誓おう」
「お父様、お母様、ありがとうございます」
「……明日から忙しくなるな。そうだ、グリークスにも知らせておかねばな」
しんみりした雰囲気を崩すようにローニャは美味しい、美味しいと嬉しそうに食事をしているのを見て父達も笑顔で食べ始めた。
怪我は治ったとはいえ、まだ本調子ではないから無理をさせてはいけない。
私はローニャと部屋に戻り、考えていた事を話した。
「ねぇ、ローニャ。考えていたんだけれど、ローニャはこのままお城の研究員として働いていきたいのよね?」
「うん。魔法を使って植物を育てたり、怪我した騎士たちを治療したりしながら自分にできることをもっと広げていこうと思っているよ。それがどうしたの?」
ローニャは不思議そうに聞いてきた。
「あのね、ローニャも大きくなって自分でやりたいことも見つかったし、私はエサイアス様についていこうかなって思うの」
「え!? どうして? 危険じゃないの?」
「そうね。危険だと思うわ。でも、私がついていってその場で治療出来れば、一緒に魔物を魔法で攻撃すれば、きっともっと安全になると思うの。
それにグリークス神官長は魔力を持つ人たちを探している。あれからずっと王都の人たちの治療を続けているけれど、魔力を持つ人は見つかっていないわ。
私が出向いていけば探し出せると思うの。魔力を持つ人たちが増えれば私たちの負担は減るし、ローニャは気づいているんでしょう?」
「何を?」
「ナーヴァル様やグレイス様のこと」
「あの人たちのことね……。私たちを道具としか見ていないから隙をみせればきっと私たちは二人にいいように使われよね。
ナーヴァル兄様はグレイス様に合わせているだけなんだけど、グレイス妃なんて私たちがいないところで獣扱いしているんだからっ! あっちの方がよっぽど獣よ」
ローニャはしゃべりながらぷんすこ怒って尻尾を膨らませている。
どうやら妹は二人が話しているところを立ち聞きしたようだ。
ローニャは私よりも断然耳が良いせいか、しっかりと聞こえてしまったらしい。
「魔力を持つ人たちが大勢見つかればまた変わってくるでしょう? 正直、私はこの世界の勉強を頑張っているけれど、まだ難しいわ。貴族たちのような策略を巡らせて足を引っ張るなんて無理そう。
私はここから出て各領地を巡り、怪我人を治療しながら自分たちの味方を増やそうと思う。私たちの味方が増えればあの人たちは無理やり私たちを使うこともできないはずよ」
「そっか。分かった。私はお姉ちゃんがやりたいと思うことに賛成する。私は私でできることを頑張る。ふふっ。猫は可愛くて強かなんだよ?」
「……そうね。あまり無理はしないようにね」
「もちろん!」
そうして夕方になり、私たちはいつもと変わらぬ素振りで父達と食事する。
久しぶりに見た父や母は私を見てとても心を痛めているようだった。
「お父様、お母様。心配をお掛けして申し訳ありませんでした」
「こんなにも痩せてしまって。心配したのよ。でも、よかった」
「ザイオン医務官からも叱られてしまいました。もっと太るようにと。今日はケイルート兄様の治療もしたし、お腹が減りました。いっぱい食べたいです」
「うんうん。いっぱい食べるといい。ナーニョの好きな物も用意してある。たくさん食べなさい。それに大怪我をしたケイルートを治療したと聞いた。二人ともありがとう」
父は優しい顔でそう話し、母も満面の笑みを浮かべている。
「知らせを受けた時に覚悟したわ。でも、ナーニョが治療してくれたと聞いて嬉しくて、嬉しくて。ローニャもお腹が減ったでしょう?」
「はい! お腹ぺこぺこですっ!」
目の前に食事が運ばれてくると、私たちは美味しそうに食べ始めた。
「二人とも何か欲しい物はあるか?」
私たちの様子を見ながら父は聞いてきた。
「ローニャはね、猫が飼いたい! この世界の猫って小さくて可愛いんでしょう? 私が猫種だからか鳥も兎も逃げてしまうの。この間、研究所が所有する畑に行った時に動物を見たけど、とっても可愛かったの」
「そうかそうか。良いぞ。ナーニョは欲しいものはあるか?」
「お父様、欲しいものというか、やりたいことが見つかりました」
「うん、なんだい? とても悩んでいたと聞いたが、決まったのかな?」
父は気を使うように優しく聞いてくれる。その様子に私はふっと心が柔らかくなる。
「今度、エサイアス様は国中を巡視すると聞きました。私もそれについていきたいと思っています。怪我した騎士をその場で治療出来ますし、各領地への影響は大きなものになると思うのです。それに、グリークス神官長のように魔法が使える人たちを探し出すのも私に課された重要な使命ではないかと思うのです」
―カラン。
母の指が震えている。
持っていたフォークが床に落ち、金属の冷たい音が鳴る。
私の言葉に父も母も食事をする手が止まった。
「……そうか。ナーニョのしようとしている事はとても危険なことなのだと分かっているのか?」
「はい。でも、私がしなければいけないと思うんです。お父様とお母様にお願いがあります」
「なに、かしら?」
母の指は微かに震えている。
「私がエサイアス様の巡視に同行している間、ローニャのことをお願いしたいのです。ローニャはもうすぐ成長が終わり私と同様に魔法も使えるようになってきましたが、まだ考えが幼い部分があります。どうか妹を酷使させないで下さい。そして危険が及ばないようにしていただきたいのです」
「そんな当たり前のことだわ。二人とも私たちの娘ですもの」
「……ナーニョ。すまない。儂たち、いやこの世界の全ての人間はナーニョに縋ることしかできない。ローニャのことは儂とグランディアが責任を持つことを誓おう」
「お父様、お母様、ありがとうございます」
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