まさか猫種の私が聖女なんですか?

まるねこ

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63 治療開始

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「ナーニョ様、こちらが私たちの居住区になります。グリークス神官長からお話は伺っております。到着して早々に申し訳ないのですが、聖騎士たちの治療をお願いしてもよろしいでしょうか?」

「もちろんです。荷物を置いたらすぐに案内していただけますか?」
「ありがとうございます。街の人々を守るために怪我をした彼らをお救い下さることを感謝致します」

 ロダンの神殿の神官はそう言いながら深々と頭を下げた。

 私は少し動揺しながらも片手を挙げて受け入れる。グリークス神官長から要望を受け入れる時の仕方を事前に教えてもらっていたので問題なくできたようだ。

『できない事はできないときっちり言いなさい』とも言われたが。

 私が滞在する部屋は下位貴族が泊る客室という感じの部屋だった。

 装飾に贅を凝らしているような造りではないけれど、長期間滞在できるような使い勝手の良さそうな部屋。

 隣には護衛たちの部屋も用意されている。

 私は荷物を置いた後、さっと身体を拭いてから神官と共に怪我人のいる部屋へと向かった。

「ナーニョ様。女性ですから湯浴みをした後の方が良かったですよね。気づかずすみません」

 神官がしまったと眉を下げて話をする。

「いえ、お気遣いありがとうございます。私の湯浴みなどは後でかまいません。それよりも早く治療していきましょう」

 怪我をした聖騎士たちが運ばれている部屋は大部屋になっていていた。そこでは大怪我をしている人はベッドに寝かされ、比較的軽い怪我人は雑魚寝のような形になっていた。

 私は部屋から溢れるほどの怪我人の数に驚いた。

 どうやら平民も中には混じっているようだ。

 神官の話によると、魔獣退治は聖騎士だけでは間に合わず平民も協力している。普段、怪我をして医者に掛かると医療費が高いが、神殿に協力することで医療は最低限だが、無料で治療を受けることができるのだとか。

 もちろん怪我人の世話をしているのは修道女や街の人たち、怪我人の家族だ。

「……数が多いですね」
「そうですね。比較的怪我が軽い者が多いのですがなんせ数が多いのです」

 神官はこの街の現状を詳細に話してくれる。私はその話を聞きながらどうすれば効率よく治療ができるのかを考え始める。

「では治療を始めますね」

 怪我の軽い人を先に治療して人数を減らすことが最優先だと考え、私は箱から指輪を取り出して嵌めた。

『ヒエストロ』の魔法を唱え、部屋にいた大勢の人たちの治療をはじめた。

 私を中心に淡い光が波紋のように広がり、怪我人を包んでいく。

 重症患者を完全に治すには二割程度の効果しかないが、軽傷患者にとっては自宅に戻れるほど回復する。

 光の収束と共に歓声が上がった。

「凄い! 凄いぞ! 痛みが収まった!」
「俺は傷が治っている」
「あれだけぱっくり割れていた傷がかさぶた程度までになっているわ! あぁ、神様、感謝します!」

 一人が感謝の言葉を述べると皆口々に神に感謝を述べ始めた。

「軽い治療は終えました。とりあえず興奮している方々を鎮めて帰宅するよう促して下さい。私はその間に湯浴みをしてきます」
「は、はい!! ありがとうございます」

 混乱する現場をそっと立ち去り、私は部屋に戻った後、すぐに湯浴みをする。私は数日ぶりの湯浴みに上機嫌になる。

 たまにはゆっくりとお風呂に浸かりたい。しっかりと汚れを落とし湯舟に浸かった。

 私がこの世界に来て良かったなと思う理由の一つだ。

 平民は桶に水を入れて身体を拭くらしいけれど、爵位のある人間は差別化をはかるためか様々な所にお金を掛けるようだ。

 私は贅沢には興味がないが、湯浴みは別だ。この心地よさのためだけに毎日頑張ってもいいかもしれない。

 ゆっくりと湯船に浸かった後、布で身体を拭き、新しい騎士服に着替える。

 髪の毛を布で拭いていると扉をノックする音がした。返事をすると先ほどの神官が頭を下げて部屋に入ってきた。

「ナーニョ様、怪我が治った者は自分たちで歩いて帰っていきました! あっ、申し訳ありません。お髪が濡れている所に」

 神官は焦った顔をしている。

 どうやら魔法で治療することを目のあたりにして神官も興奮していたようだ。

「いえ、構いません。神官様、あとどれくらいあの部屋に残っているのでしょうか?」
「重い者が五名と部屋の外にいた軽い怪我人が二十名ほどです」
「分かりました。今から向かいますね。ただ、治療後はお腹が減ってしまうので何か食べ物を用意していただけると助かるのですが……」
「もちろんすぐに準備致します」

 私は急いで風魔法の指輪をつけて髪を一瞬で乾かした後、先ほどの部屋へと向かった。

 部屋の外にいた怪我人が部屋に入っていたが、先ほどの人数よりは少ないようだ。

 先ほどと同じように重症患者を含めた怪我人たちに魔法を掛けていく。

 重傷者も二回目の魔法で半分弱は治っていたはずだ。やはり今回も光の収束と共に歓声が上がる。重傷者の荒い息も落ち着いたようだ。

 ……お腹が減った。

 私は空腹になり、軽く頭を下げてから部屋をそっと出た。

「ナーニョ様、どうぞ」

 護衛騎士が事前に準備していた小袋を渡してくれる。

「ありがとう。もう、お腹ペコペコで仕方がなかったの」

 はしたないとは分かっているが、部屋に戻りながら小袋を開け、口いっぱいにドライフルーツを頬張った。甘くて美味しくて疲れも一瞬で取れていくみたい。

「怪我人の具合を確認しなくて良かったのですか?」
「いいんじゃないかな? 悪いと思っていても今日は流石に疲れちゃった。後で神官に謝らないとね」

 部屋に戻ってすぐにベッドへ寝っ転がった。久々のベッドを堪能したい。護衛騎士は部屋の前で待機してくれている。ゴロゴロしてそのままうたた寝に入った。

 しばらくして、神官が修道女を連れて部屋へやってきた。
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