まさか猫種の私が聖女なんですか?

まるねこ

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76 男の子の家

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 私は護衛と共にノダンの街の神殿へと急いで向かった。

 神殿に着いた時、私たちの不安が的中した。

 神官様も修道女たちも病に倒れていたのだ。

 更に病人は教会の人たちだけでなく、病室にも多くの人が寝ていて、みんなが咳をしていた。私の指輪では根本的な治療にはならない。けれど、体力が落ちている人たちには効果がある。

「神官様、私の治療は怪我や炎症を治すことしかできません。病気の治療ではありませんが、症状が楽になると思うので魔法を使いますね」

 私は部屋の人たちに一礼した後、指輪をつけて治療を開始した。

 体力が戻りますようにと願いながら魔法を掛けると、光はゆっくりと病人たちを包みはじめた。

 やはりほとんどの病人は肺や喉に炎症を起こしている。

 ばい菌が全身に回っているせいか身体中が痛い人もいるようだ。怪我とは違い魔力消費はいつもより少ない。

 ばい菌が身体中にいるのだから治療後はその人の体力にかかっている。身体が元気になれば病に勝つ人も増えてくるので信じるしかない。

「おぉ!! 楽になったぞ! ケホケホッ」
「本当だわっ」

 神官も修道女たちも他の人たち同様に驚きを隠せない。

「ナーニョ様、ありがとうございます!!!」
「神官様、身体の痛んでいる部分は少し回復しましたが、身体の中には病が残っています。数日は水をたくさん飲み、ゆっくり休むようにしてください」
「わかりました!」

 私は今回も神殿に泊る予定だったが、神父や修道女たちが病に倒れているため、駐屯所で泊ることになった。

「みなさん大丈夫でしょうか?」
「どう、だろう。今のところ騎士たちに異常はないが街の人たちの大半は病気に掛かっているようだ。このまま様子をみるしかない。ナーニョ様の方はどうでしたか?」

「一応神殿に行って軽い治療をしてきましたが、やはり病人で溢れかえっていました。身体は楽になったはずなのであとは自己治癒力を信じるだけです。

 明日も治療を行う予定です。ザイオン医務官に先ほど報告書を送りました。もう少しすれば、ローニャの方から手紙と薬が送られてくるかもしれません」

「それは良かった。こういう時に魔法が使えると助かる。俺たちだけで巡視を行っていたらきっとこの街で全滅していたかもしれない」
「同行して良かったです」

 しばらくすると、ローニャから薬が送られてきた。

 どういう病気か分からないため、喉や咳、解熱剤を送ってくれたようだ。

 これは二十人の三日間分ほどしかないようだ。

 薬が足りない。

 ザイオン医務官からの同封された手紙には井戸や害獣などから病気が持ち込まれることがあるため、その辺りも調査して欲しいと書かれてあった。

 私のやることは明日から井戸を浄化しないとね。


 翌日、護衛騎士が熱を出した。

 昨日老夫婦を担架で運んだ騎士たちも同じような症状が出ていた。

 他の騎士たちもまた不安に陥っているようだ。

 昨日ローニャから送られた薬を病に倒れた騎士に渡し、私は一人街へ出た。

 もともとこの街は治安が良いと言われていたようだが、病が流行り誰一人街を歩く姿を見かけない。

 私は神殿に向かい今日も治療から入る。神官も修道女も体力が回復したおかげか病に勝ちつつあるようだ。

「皆様、おはようございます。本日も僅かですが、治療に来ました。どうか一日でも早く病気が治りますように『ヒエロストロ』」
「「ナーニョ様、ありがとうございますっ」」
「「ナーニョ様!!」」

 ワッと歓声が上がる。

 昨日に引き続き身体が軽くなった事で元気になったと勘違いする人がいるかもしれない。

「皆様、まだ身体の中には病が存在しています。私はただ傷や体力を回復させただけです。数日は安静にして水をよく飲み、病を身体から追い出すようにしてくださいね」
「わかりました!!!」

 私は神官たちに挨拶をした後、井戸を探して歩くことにした。普通なら通行人に井戸を聞いて回ればすぐに向かえるのだけれど、誰もいない。失敗したわ。

 この街もロダンの街ほどの大きさはないので歩いていればそのうち見つかるだろう。

 そう思い、一人街を歩いていると、中央の広場の一角に井戸を見つけた。そこに小さな男の子が水を汲んでいたので声を掛けた。

「ちょっと聞きたいことがあるんだけど、良いかな?」
「お姉ちゃんなあに? 僕、忙しいんだ。お母さんが病気になっちゃって死にそうなんだ。早くお水を持って行かないといけないんだ」
「一緒に行ってもいい?」
「……いいけど、病気がうつってもしらないよ……」

 私は男の子が水を汲んでいる横で井戸に魔法を掛ける。魔法の光具合をみても水には問題ないように思える。キラキラと光った水を見て男の子は興奮しながら家へと戻った。

「お母さん! 凄いんだよ! このお姉ちゃん、魔法が使えるんだって! お母さんもすぐ治して貰おうよ!」

 男の子の家は小さなアパートの一室で暮らしていて、こざっぱりとした部屋にベッドが一つ。あとはテーブルと椅子が置いてあるだけだった。

 元気な男の子とは対照的に母親の顔色は土気色をしていてとても具合が悪そうだ。寝ることも難しいのだろう。ベッドに座ったまま、ゴホゴホと咳をしている。隣に寝ていたのは妹だろうか? 同じように咳をしている。

「ごめんなさい、病気を治すことはできないの。でも、落ちた体力や怪我を治すことができるから少しは良くなるかもしれない」

 私はヒエロスの指輪をつけて魔法を唱えた。母親は咳が酷いのだろう。肺にダメージが大きくあり、血の巡りはあまり良くないようだ。

 肺の治療と体力を回復させるだけでかなり良くなるはずだ。魔法で治療したおかげで母親の顔色は赤みが差し、かなり楽になったようだ。

 妹の方も魔法を掛ける。
 熱が高い。
 でも、私にはどうする事もできない。
 ごめんね。

 幾分楽にはなったようで穏やかな寝息に変わった。
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