77 / 125
77 病に倒れた騎士たち
しおりを挟む
「お姉ちゃん、ありがとう!」
「治療していただきありがとうございます。なんとお礼を言っていいのやら……」
「お礼なんて構いません。病気自体は治っていないのです。ただ痛みを抑えただけですから。数日は安静にしてください」
「わかりました」
「あの、この街の井戸の場所を教えてもらってもいいですか?」
「お姉ちゃんが魔法で水をキラキラにしてたんだよ!」
「井戸、ですか」
「私は今、王宮騎士団の巡視に同行していて井戸の浄化と作物が育つように魔法をかけているのです」
「そうだったんですね。この街の井戸は全部で六か所あって、家から近いのが中央広場の井戸。残りの五か所は街を取り囲むように井戸が設置されています」
「そうなんですね。行ってみます」
「お姉ちゃん! 僕が案内するよ!」
「ありがとう」
男の子は『ついてきて』と、勢いよく部屋を飛び出した。私は男の子と話をしながら井戸に向かった。五か所の井戸は三時間ほどで回りきることができた。
これも男の子のおかげだ。
私一人では道がわからず、丸一日はかかっただろう。
「疲れたでしょう? 今日はありがとうね」
男の子に魔法を掛けてあげる。
「お姉ちゃん、井戸を綺麗にしてくれてありがとう! じゃあ僕帰るね」
男の子は母親が気になるようで走っていった。私も早く駐屯所に戻らないと皆が心配しているわ。
そう思って駐屯所に戻ってみるとびっくりした。
朝まで元気そうにしていた多くの騎士たちも熱を上げてしまったようだ。
エサイアス様も昼過ぎから熱が出て今は部屋で休んでいるという。
薬が全然足りない。
私は急いでローニャに連絡を取った。
『ローニャ! 今の時間にごめんね』
『どうしたの?』
『私が井戸を浄化して回っている間にみんなが、病気になったみたいなの。薬が全然足りなくて……』
『エサイアス様も? 分かった。すぐにザイオン先生に薬を準備してもらうように言ってくる。少し待っていてね』
『ありがとう』
私は食堂で食べやすいように野菜をすりおろしたスープを作り、各部屋に届けて回る。どの騎士も熱で辛そうだ。
駐屯所の騎士たちが寝泊りする部屋は一部屋に六人のベッドが置かれていてあとは何もない。
ターロー(水質改善)の指輪を使い、騎士たちが飲む全ての水を浄化する。
騎士たちは体力があるのでまだ重傷者は出ていないようだが、騎士の半分は病に罹ったようだ。感染力はかなり強い。
動ける騎士は食事や配膳の手伝いをしてくれる。
エサイアス様も病に罹ってしまった。私は食事を持っていくためだと理由を付けてエサイアス様の部屋に入った。
「エサイアス様、スープを持って来ました」
「ん? あぁ、そこに置いていて欲しい」
エサイアス様は熱と咳をしていてとても辛そうに見える。私は彼の額に当てている濡れた布を水につけて絞り、また額に乗せる。そしてヒエロスを唱えた。
「ありがとう、ナーニョ様」
「私にできるのはこれくらいですから。薬が届いたらまたお持ちしますね」
私は部屋に戻り、自分の食事を摂った。一人になると襲ってくる不安。私の魔法では治せない。
私はやはり何の役にも立っていないのではないだろうか。
このまま騎士たちが、エサイアス様が死んでしまったらどうしよう。
不安で今にも泣きだしたくなる。
でも、ここで泣いていてもだめだって理解もしている。
私が動かないと。
溜息ばかりが口を突いて出る。
『お姉ちゃん、お待たせ! 今送るからね』
『ローニャ、ありがとう!』
そうしていくつもの小包の山が届いた。
その中には騎士たちへの定期便もあった。送られてきた手紙はきっと病で不安になっている彼らの支えになってくれるだろう。
そしてローニャから届いた私宛の紙袋の中身を見ると、その中には王都でよく食べていた果物と一つの指輪が入っていた。
『ローニャ、この指輪は? トエモノストロ? 見たことがないわ』
『聞いて! これはね、私と第一研究室、第二研究室の人たちで作ったこの世界で生まれた指輪なの! 魔法の効果は病原菌死滅。範囲魔法なんだよ!!!』
病原菌死滅!?
なんだか恐ろしい言葉が聞こえた。
でも、これは皆を救うことができるかもしれない唯一の指輪だろう。
『この魔法はね、とーっても扱いが難しいの。多分お姉ちゃんしか扱えない。この指輪を使って皆を治してあげてほしい』
『ありがとう。ローニャ、かなり無理をしたんじゃない? ローニャもゆっくり休んでね。指輪の効果は明日報告するわ』
『はぁーい』
私はローニャと話を終え、新しい指輪をジッと観察する。詠唱部分の文字が細かく刻まれていてとても長い。分厚い指輪だ。
この日はさすがに夜も遅くなっていたので明日の朝に魔法を掛けることにした。
エサイアス様は大丈夫だろうか。
とても心配で仕方がない。
「治療していただきありがとうございます。なんとお礼を言っていいのやら……」
「お礼なんて構いません。病気自体は治っていないのです。ただ痛みを抑えただけですから。数日は安静にしてください」
「わかりました」
「あの、この街の井戸の場所を教えてもらってもいいですか?」
「お姉ちゃんが魔法で水をキラキラにしてたんだよ!」
「井戸、ですか」
「私は今、王宮騎士団の巡視に同行していて井戸の浄化と作物が育つように魔法をかけているのです」
「そうだったんですね。この街の井戸は全部で六か所あって、家から近いのが中央広場の井戸。残りの五か所は街を取り囲むように井戸が設置されています」
「そうなんですね。行ってみます」
「お姉ちゃん! 僕が案内するよ!」
「ありがとう」
男の子は『ついてきて』と、勢いよく部屋を飛び出した。私は男の子と話をしながら井戸に向かった。五か所の井戸は三時間ほどで回りきることができた。
これも男の子のおかげだ。
私一人では道がわからず、丸一日はかかっただろう。
「疲れたでしょう? 今日はありがとうね」
男の子に魔法を掛けてあげる。
「お姉ちゃん、井戸を綺麗にしてくれてありがとう! じゃあ僕帰るね」
男の子は母親が気になるようで走っていった。私も早く駐屯所に戻らないと皆が心配しているわ。
そう思って駐屯所に戻ってみるとびっくりした。
朝まで元気そうにしていた多くの騎士たちも熱を上げてしまったようだ。
エサイアス様も昼過ぎから熱が出て今は部屋で休んでいるという。
薬が全然足りない。
私は急いでローニャに連絡を取った。
『ローニャ! 今の時間にごめんね』
『どうしたの?』
『私が井戸を浄化して回っている間にみんなが、病気になったみたいなの。薬が全然足りなくて……』
『エサイアス様も? 分かった。すぐにザイオン先生に薬を準備してもらうように言ってくる。少し待っていてね』
『ありがとう』
私は食堂で食べやすいように野菜をすりおろしたスープを作り、各部屋に届けて回る。どの騎士も熱で辛そうだ。
駐屯所の騎士たちが寝泊りする部屋は一部屋に六人のベッドが置かれていてあとは何もない。
ターロー(水質改善)の指輪を使い、騎士たちが飲む全ての水を浄化する。
騎士たちは体力があるのでまだ重傷者は出ていないようだが、騎士の半分は病に罹ったようだ。感染力はかなり強い。
動ける騎士は食事や配膳の手伝いをしてくれる。
エサイアス様も病に罹ってしまった。私は食事を持っていくためだと理由を付けてエサイアス様の部屋に入った。
「エサイアス様、スープを持って来ました」
「ん? あぁ、そこに置いていて欲しい」
エサイアス様は熱と咳をしていてとても辛そうに見える。私は彼の額に当てている濡れた布を水につけて絞り、また額に乗せる。そしてヒエロスを唱えた。
「ありがとう、ナーニョ様」
「私にできるのはこれくらいですから。薬が届いたらまたお持ちしますね」
私は部屋に戻り、自分の食事を摂った。一人になると襲ってくる不安。私の魔法では治せない。
私はやはり何の役にも立っていないのではないだろうか。
このまま騎士たちが、エサイアス様が死んでしまったらどうしよう。
不安で今にも泣きだしたくなる。
でも、ここで泣いていてもだめだって理解もしている。
私が動かないと。
溜息ばかりが口を突いて出る。
『お姉ちゃん、お待たせ! 今送るからね』
『ローニャ、ありがとう!』
そうしていくつもの小包の山が届いた。
その中には騎士たちへの定期便もあった。送られてきた手紙はきっと病で不安になっている彼らの支えになってくれるだろう。
そしてローニャから届いた私宛の紙袋の中身を見ると、その中には王都でよく食べていた果物と一つの指輪が入っていた。
『ローニャ、この指輪は? トエモノストロ? 見たことがないわ』
『聞いて! これはね、私と第一研究室、第二研究室の人たちで作ったこの世界で生まれた指輪なの! 魔法の効果は病原菌死滅。範囲魔法なんだよ!!!』
病原菌死滅!?
なんだか恐ろしい言葉が聞こえた。
でも、これは皆を救うことができるかもしれない唯一の指輪だろう。
『この魔法はね、とーっても扱いが難しいの。多分お姉ちゃんしか扱えない。この指輪を使って皆を治してあげてほしい』
『ありがとう。ローニャ、かなり無理をしたんじゃない? ローニャもゆっくり休んでね。指輪の効果は明日報告するわ』
『はぁーい』
私はローニャと話を終え、新しい指輪をジッと観察する。詠唱部分の文字が細かく刻まれていてとても長い。分厚い指輪だ。
この日はさすがに夜も遅くなっていたので明日の朝に魔法を掛けることにした。
エサイアス様は大丈夫だろうか。
とても心配で仕方がない。
53
あなたにおすすめの小説
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
底無しポーターは端倪すべからざる
さいわ りゅう
ファンタジー
運び屋(ポーター)のルカ・ブライオンは、冒険者パーティーを追放された。ーーが、正直痛くも痒くもなかった。何故なら仕方なく同行していただけだから。
ルカの魔法適正は、運び屋(ポーター)に適した収納系魔法のみ。
攻撃系魔法の適正は皆無だけれど、なんなら独りで魔窟(ダンジョン)にだって潜れる、ちょっと底無しで少し底知れない運び屋(ポーター)。
そんなルカの日常と、ときどき魔窟(ダンジョン)と周囲の人達のお話。
※タグの「恋愛要素あり」は年の差恋愛です。
※ごくまれに残酷描写を含みます。
※【小説家になろう】様にも掲載しています。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?
咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。
※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。
※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。
※騎士の上位が聖騎士という設定です。
※下品かも知れません。
※甘々(当社比)
※ご都合展開あり。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します
みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが……
余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。
皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる