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78 トエモロストロ
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私はエサイアス様のことが心配でローニャから送られてきた果物を小さく切り分けた後、そっとエサイアスの部屋に入った。
部屋はランタンが一つ付いているだけの暗い部屋だ。
ランタンの光がぼんやりと私の影を映し出している。彼は寝ているようだ。熱のためか、寝汗を掻き、うなされている。
ベッド脇のテーブルに果物を置いて、私はエサイアス様の身体を濡れたタオルで拭いていく。
「ナ、ナーニョ、さま?」
「起こしてしまい、すみません。エサイアス様のことが心配で来てしまいました。お水は飲まれますか?」
「ああ、冷たい水が飲みたいな」
私はターランの指輪で冷えた水をコップに注ぎ、エサイアスに差し出した。
「ああ、美味しい。とっても美味しい」
「果物も食べますか? さっき切ったばかりです。口当たりが良くてすっきりしますよ」
「ああ、いただこう」
私はフォークで果物を刺して、エサイアス様にあーんと言って果物を口に運ぶ。
「……お、美味しい。だ、だが、こ、これくらいは自分で食べられる」
エサイアス様は視線を泳がせながらそう言った。
「あ、そうですよね。ついついローニャと同じようにしてしまいました。ごめんなさい」
「いいんだ。全然いいんだ。むしろ嬉しいからっ」
エサイアス様はアワアワと取り繕うように話す。
「それにしてもこれだけ騎士たちが罹っているのにナーニョ様は罹らないんだな。不思議だ」
「……私が獣人だから、かもしれません」
「獣人は病に罹りにくいの?」
「罹らない訳ではないんです。けれど、病気になることはあまりありませんね。身体を冷やせば風邪になりますけどね」
そこはやはり種族の違いが大きく出ているのかもしれない。
「そうそう、先ほどローニャから新しい指輪が届きました。もう今日は遅いですから明日指輪を使ってみますね」
「どんな指輪なんだい?」
「病原菌死滅という指輪らしいです。死滅ってなんだか怖い感じですよね。とても扱いが難しい魔法らしいので魔力が満タンになってから使おうと思っています」
「病原菌死滅? この病気に効くかもしれないのか。これで流行り病が治るとすればまた一つ奇跡を起こしたということになる。ますます君は聖女として有名になってしまうんじゃないか」
「ふふっ。私は聖女なんて立派な人ではありませんよ。こうして私の周りの人が怪我をしたり、病気になったりするのを見たくないだけですから。さぁ、お話もまた明日にしましょう。今日はゆっくり休んで下さいね」
「ナーニョ様、ありがとう」
私は部屋へ戻り、ベッドに入った。
翌日はいつもよりゆっくりと起きて食堂へと向かった。
病に罹っていない騎士たちが食事の準備をしていたので急いで手伝う。騎士たちに食事を持っていった後、私もゆっくりと食堂で食事を摂った。
「さて、そろそろ魔力も回復したわ」
私はトエモノストロの指輪を付けてから騎士たちの手紙を籠に入れ、一部屋ずつ回って手紙を渡す。
家族からの手紙を喜ぶ騎士たち。その姿を見るだけで本当に良かったと思う。そして最初の部屋で病気に罹った六人の騎士に告げた。
「今から病気を治したいと思います。ですが、これは新しい魔法ですのでどこまで効果があるか分かりません。それでも受けますか?」
「……どのような魔法なのでしょうか?」
「体内にいる病原菌というばい菌を死滅させるのです」
「上手くいけばすぐに治る、という事でしょうか?」
「身体の中にいる菌が死ぬので治ると思いますが、菌が悪さをしてダメージを負った身体は、ヒエロスでの治療か安静にする必要があります。この魔法に効果があった場合、他の方への治療も行います。その場合、ヒエロスでの治療はできないので体力が戻る二、三日は安静にするしかありません」
「俺は受けたいです」
「俺も受けます」
ゴホゴホと咳き込みながら騎士たちは答えた。六人みんな治療を受けてくれるようだ。
「分かりました。では治療しますね。では始めます」
指輪を通して魔力を流すと、青い光が瞬時に六人を包んだ。赤や薄いピンクに淡く光って見えるのはきっと私だけだろう。魔力が病原菌に反応しているように見える。
人間はいくつもの菌がいるようだ。
それも数えきれない。
だけど、六人に同じような色の菌があり、肺や身体の中の血を取り囲むように見える色がある。
きっとこれだ。
私はその色に向かって唱える。
『トエモノストロ』と。
すると彼らを包んでいた魔力は詠唱と共にその色に向かっていく。シュンと音を立てて煙のようにそれはすぐ消えていった。
「治療は終わりました。気分が悪いとかありますか?」
「いえ、何も。今ので終わったのですか??」
彼らにとっては青い光と身体中から煙が出て行ったように見えたようだ。
ばい菌が死滅したけれど、すぐに効果は分からないので半日ほど様子を見る。
全ての菌を死滅させるとどうなるんだろう?
あまり良くない気がする。
人間の身体で悪さをしている菌が取り除ければいい。
流行り病に使う魔法だから全ての菌を死滅させることは魔力を多く使い非効率だと思う。
「治療は終了しました。半日様子をみるのでこのままゆっくり過ごして下さいね。何かあればすぐに呼んで下さい」
「わかりました。ナーニョ様、ありがとうございます」
私は一旦部屋を出て全ての手紙を配り終えた後、エサイアス様の元へ向かった。
「エサイアス様、体調はどうですか?」
「……」
エサイアス様は咳が酷く、とても苦しそうだ。
どうしよう。
今、騎士たちを治療したばかりで効果が分からない。けれどこんなにもぐったりしているエサイアス様を見るのは初めてだ。
このまま半日様子見をしていて大丈夫なのだろうか。不安になる。
明らかに昨日よりも状態が悪くなっている。薬は効いていないのか。
どうしよう、どうしよう。
エサイアス様がもし、居なくなってしまったら……。
不安で泣きたくなる。
部屋はランタンが一つ付いているだけの暗い部屋だ。
ランタンの光がぼんやりと私の影を映し出している。彼は寝ているようだ。熱のためか、寝汗を掻き、うなされている。
ベッド脇のテーブルに果物を置いて、私はエサイアス様の身体を濡れたタオルで拭いていく。
「ナ、ナーニョ、さま?」
「起こしてしまい、すみません。エサイアス様のことが心配で来てしまいました。お水は飲まれますか?」
「ああ、冷たい水が飲みたいな」
私はターランの指輪で冷えた水をコップに注ぎ、エサイアスに差し出した。
「ああ、美味しい。とっても美味しい」
「果物も食べますか? さっき切ったばかりです。口当たりが良くてすっきりしますよ」
「ああ、いただこう」
私はフォークで果物を刺して、エサイアス様にあーんと言って果物を口に運ぶ。
「……お、美味しい。だ、だが、こ、これくらいは自分で食べられる」
エサイアス様は視線を泳がせながらそう言った。
「あ、そうですよね。ついついローニャと同じようにしてしまいました。ごめんなさい」
「いいんだ。全然いいんだ。むしろ嬉しいからっ」
エサイアス様はアワアワと取り繕うように話す。
「それにしてもこれだけ騎士たちが罹っているのにナーニョ様は罹らないんだな。不思議だ」
「……私が獣人だから、かもしれません」
「獣人は病に罹りにくいの?」
「罹らない訳ではないんです。けれど、病気になることはあまりありませんね。身体を冷やせば風邪になりますけどね」
そこはやはり種族の違いが大きく出ているのかもしれない。
「そうそう、先ほどローニャから新しい指輪が届きました。もう今日は遅いですから明日指輪を使ってみますね」
「どんな指輪なんだい?」
「病原菌死滅という指輪らしいです。死滅ってなんだか怖い感じですよね。とても扱いが難しい魔法らしいので魔力が満タンになってから使おうと思っています」
「病原菌死滅? この病気に効くかもしれないのか。これで流行り病が治るとすればまた一つ奇跡を起こしたということになる。ますます君は聖女として有名になってしまうんじゃないか」
「ふふっ。私は聖女なんて立派な人ではありませんよ。こうして私の周りの人が怪我をしたり、病気になったりするのを見たくないだけですから。さぁ、お話もまた明日にしましょう。今日はゆっくり休んで下さいね」
「ナーニョ様、ありがとう」
私は部屋へ戻り、ベッドに入った。
翌日はいつもよりゆっくりと起きて食堂へと向かった。
病に罹っていない騎士たちが食事の準備をしていたので急いで手伝う。騎士たちに食事を持っていった後、私もゆっくりと食堂で食事を摂った。
「さて、そろそろ魔力も回復したわ」
私はトエモノストロの指輪を付けてから騎士たちの手紙を籠に入れ、一部屋ずつ回って手紙を渡す。
家族からの手紙を喜ぶ騎士たち。その姿を見るだけで本当に良かったと思う。そして最初の部屋で病気に罹った六人の騎士に告げた。
「今から病気を治したいと思います。ですが、これは新しい魔法ですのでどこまで効果があるか分かりません。それでも受けますか?」
「……どのような魔法なのでしょうか?」
「体内にいる病原菌というばい菌を死滅させるのです」
「上手くいけばすぐに治る、という事でしょうか?」
「身体の中にいる菌が死ぬので治ると思いますが、菌が悪さをしてダメージを負った身体は、ヒエロスでの治療か安静にする必要があります。この魔法に効果があった場合、他の方への治療も行います。その場合、ヒエロスでの治療はできないので体力が戻る二、三日は安静にするしかありません」
「俺は受けたいです」
「俺も受けます」
ゴホゴホと咳き込みながら騎士たちは答えた。六人みんな治療を受けてくれるようだ。
「分かりました。では治療しますね。では始めます」
指輪を通して魔力を流すと、青い光が瞬時に六人を包んだ。赤や薄いピンクに淡く光って見えるのはきっと私だけだろう。魔力が病原菌に反応しているように見える。
人間はいくつもの菌がいるようだ。
それも数えきれない。
だけど、六人に同じような色の菌があり、肺や身体の中の血を取り囲むように見える色がある。
きっとこれだ。
私はその色に向かって唱える。
『トエモノストロ』と。
すると彼らを包んでいた魔力は詠唱と共にその色に向かっていく。シュンと音を立てて煙のようにそれはすぐ消えていった。
「治療は終わりました。気分が悪いとかありますか?」
「いえ、何も。今ので終わったのですか??」
彼らにとっては青い光と身体中から煙が出て行ったように見えたようだ。
ばい菌が死滅したけれど、すぐに効果は分からないので半日ほど様子を見る。
全ての菌を死滅させるとどうなるんだろう?
あまり良くない気がする。
人間の身体で悪さをしている菌が取り除ければいい。
流行り病に使う魔法だから全ての菌を死滅させることは魔力を多く使い非効率だと思う。
「治療は終了しました。半日様子をみるのでこのままゆっくり過ごして下さいね。何かあればすぐに呼んで下さい」
「わかりました。ナーニョ様、ありがとうございます」
私は一旦部屋を出て全ての手紙を配り終えた後、エサイアス様の元へ向かった。
「エサイアス様、体調はどうですか?」
「……」
エサイアス様は咳が酷く、とても苦しそうだ。
どうしよう。
今、騎士たちを治療したばかりで効果が分からない。けれどこんなにもぐったりしているエサイアス様を見るのは初めてだ。
このまま半日様子見をしていて大丈夫なのだろうか。不安になる。
明らかに昨日よりも状態が悪くなっている。薬は効いていないのか。
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