まさか猫種の私が聖女なんですか?

まるねこ

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89 三体の魔獣

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「ナーニョ様、今日は魔力に余裕がありそうですか?」
「ワット神官、今日はそれほど魔力を使っていないので畑に魔法を掛けられそうです」
「それは良かった! では早速向かいましょう。信者の皆様、ナーニョ様はこれから土地を豊かにするために移動されます」

 先ほどまで各々驚嘆や感激の声が上がっていたが、ワット神官の言葉で一斉に『ナーニョ様、ありがとうございました』と感謝を伝えてくれた。

 気恥ずかしいけれど、嬉しく思う。

 この巡視で怪我人から笑顔が戻る時が、治療して良かったと思える瞬間だ。


 ワット神官はいそいそと私たちを案内した畑は神殿が保有する畑だ。

 普段は孤児院に住んでいる子供たちが野菜を育てているのだとか。ここで育てられた野菜は宿泊している旅人に出される。

 もちろん自分たちでも食べているようだ。

 かなり広い畑で毎日野菜の世話をするのは大変そうだ。自分も幼いころから畑を手伝っていたので大変さをよく分かっているつもりだ。

 少しでも収穫量が増え、子供たちが豊かになりますようにと願いを込めて畑にサーローの魔法を掛ける。

 ブンッと音がした後、一気に魔力が畑一面を覆いつくす。ここでも腕輪が影響を及ぼしたようだ。

「これは凄い。ナーニョ様、大地が光り輝いて、植物たちの生命を感じます」

 植えられていた野菜の葉はグンと上を向き、葉の先までピンと張り元気な様子が見て取れた。私はホッと一息を吐いた。

 流石に広い畑に魔法をかけたため魔力の消費も激しい。

 ポケットからすぐに小袋を取り出してナッツと共に魔獣の干し肉を口に入れると、ワット神官は心配していた。

「今日はここまでのようです。部屋に戻りますね。畑に変化があるようなら知らせて下さい」
「分かりました。ナーニョ様、本日もありがとうございました」

 部屋に戻り、用意されていた軽食を摘まみつつ、マートス長官に手紙を書いて送った。しばらく待っていると、紙がひらりと送られてきた。

 ―ナーニョ様

 報告ありがとうございます。魔獣の骨で作られた装飾品はこちらでも研究に取り掛かっている最中です。ですが正式な結果が出るまでにはまだ時間が掛かると思われます。

 今の所、魔力を増幅させる効果だということは分かっておりますが、他にどのような作用があるかは判明しておりません。

 安全を考慮するのであれば結果がでるまでは緊急時以外の使用を控えていただいた方が良いと思います。

 異世界研究所長官 ジョイン・マートス・ユイン―

 ……そうよね。

 今は腕輪が無くても充分だから使わなくても問題はない。効果が確認されてから使っても遅くない。

 魔法の効果を増幅させるだけなら問題はないけれど、効きすぎて弊害を起こすかもしれないし、身体に影響があっても困る。

 少し寂しさを覚えながら腕輪を外し、布で腕輪を拭いた後、木箱に仕舞った。半月もすればローニャから元気な報告をしてくれると思う。


 翌日からはまたいつも通りに騎士団と行動を共にし、郊外にある畑と井戸に魔法を掛けて周った。

 騎士団の巡視は順調で予定通りの期間で終えることができた。

 ワット神官や修道女の方々にお別れをする。商会長も顔を出してくれた。商会の方々から魔獣の肉も頂いたのでみんな喜んだのは間違いない。

 魔獣肉を食べることができると知ったのでこれからは食糧が尽きる不安もない。

 私たちは街の人たちに手を振られカールカールの街を後にした。この街は私にとっても大きな収穫があったし、人々の温かさに触れ、またここに来たいと思う街だった。



 次の街はラーシュ。

 ラーシュまでは峠を二つ越える距離にある。

 今回は少し長めの旅になりそうだ。カールカール周辺はやはり小物の魔獣が多く、討伐しながら進んで行くので時間が掛かった。

 峠を越えた辺りから魔獣の種類に変化が出て数は少ないけれど、大きな魔獣が出てくるようになる。

 大きな熊のような魔獣が多い。気を引き締めて討伐しなければこちらがやられてしまう。

 二つ目の峠を越えた時、その魔獣は姿を現した。

「魔獣発見! 大型魔獣三体を右前方に発見しました!」

 騎士の声が聞こえた。

 私は馬車の窓から確認すると、体高は四メートルを超えそうな大きな魔獣だ。鋭い爪に黒い体毛、赤い目はこちらを見ている。

「馬車は後ろへ退避! 総員攻撃準備!」

 私は今まで見たこともないような大きさの魔獣だった。

 エサイアス様をはじめとした騎士たちは一斉に馬車から降りて戦闘態勢に入る。

 あの大型魔獣を騎士だけで討伐するには被害が大きくなるかもしれない。

 私は馬車の中で待機と言われたけれど、心配になり、馬車を降りて騎士たちの側に向かった。


 魔獣たちは大きいが動きは遅いようだ。だが、黒い体毛は騎士たちの剣をいとも簡単に弾き返している。

 私はすぐにスールンの指輪を嵌めて魔法を唱える。棘の付いた蔦は指先から鞭のようにヒュンニュンと音を立て、何本も縄のように魔獣たちを縛り上げる。

 鋭い棘が魔獣の体毛に引っかかり魔獣の足止めをする。そして指輪をジェイヴァに変えて魔法を唱えた。魔法は騎士たちを赤い光で包み込む。

 ジェイヴァの指輪は攻撃力を上げる指輪だ。

 普段エサイアス様率いる騎士たちは素晴らしい連携と共に魔獣を退治しているのだが、過去には力が足りず、体力の消耗戦となる場合もあったのだとか。

 持久力を上げる魔法もあるが、この場合、体力の底上げよりも攻撃する力を底上げした方が良いと判断した。

「ナーニョ様、ありがとうございます!!」

 騎士達は蔦の間から剣を刺す形で攻撃していく。棘の蔦の拘束を少しでも長く持たせた方がいいと咄嗟に判断したようだ。

 時間は掛かっているが確実に魔獣を弱らせている。

 エサイアス様は弱っている魔獣の首めがけて剣を振り下ろした。他の二体も隊長たちが首を落とそうと斬りかかっている。

 ダンッと鈍い音と共に魔獣の頭が落ちてきた。それと同時に騎士から歓声が上がる。

 ……良かった。
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