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88 腕輪の効果は凄かった
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『お姉ちゃん、今大丈夫?』
『どうしたの?』
『お姉ちゃんが買ってくれた腕輪のことなんだけど……』
『うん、腕輪がどうしたの?』
『あれね、魔獣の玉もついた装飾品だったでしょう?』
『えぇ、そうね?』
ローニャの声が少し興奮したような早い口調だった。
『腕輪を付けて魔法を使うと……。なんと! じゃじゃーん! 魔法の効果が増強されるみたい!!』
『え? 本当?』
『うん! 本当だよ! 私の実験の成果は出ていたんだけど、グリークス神官長にも使ってもらったんだ。神官長は上位回復のヒエロスターナが使えなかったでしょう? 腕輪をすると一人、治療できるようになったんだよ』
私はローニャの言葉に驚いた。
『ほ、本当? でも、どうしてその腕輪に効果があると分かったの?』
『……』
『ローニャ?』
『えっとね、実は腕輪が綺麗で嬉しくなってつけっぱなしにしていたの。そのまま魔法の実験をしちゃったんだ。そしたら魔法の出力が上がりすぎて実験が失敗しちゃったんだよね』
ローニャのテヘヘという声を聞いて心配になった。
複数の指輪をしていると、上手く発動できないことがあるからだ。
器用な人は複数の指輪をしているのだが、誤作動を考えると、やはり装飾品は少ない方がいい。
私は指輪以外には尻尾に付いている緊急用のチャームと、エサイアス様からもらった髪飾りだけだ。
もちろんリボンや髪飾りは魔力をほとんど通さないので付けていても問題がない。さすがに腕輪を付けたまま使用するのは考えていなかった。
『魔法が増強されるって凄いよね! どこまで効果が増えているのか調べている最中なんだけど、グリークス神官長はローニャの腕輪が欲しいって言ってた。もちろんローニャはあげないって言ったんだ! そしたら神殿の力を最大限に使って作って見せるって張り切ってたよ』
『ふふっ。じゃぁ私もずっと付けてみようかな。ローニャと形が少し違うんだけど、とっても綺麗でずっと箱にしまってたの。使うのが勿体ない気がしてね』
『絶対使った方がいいよ!』
『そうだ、今の街は怪我人も魔獣も落ち着いてきたから来週くらいには次の街に向かう予定よ。次の街でも良いのがあったら送るね』
『うん! あ、そろそろ先生が来ちゃう! じゃぁまたね!』
そう言ってローニャとの伝言魔法は終わった。ローニャは研究所で研究をしながら毎日勉強に励んでいるのね。
週一回の神殿にも欠かさず行っているようだ。
ローニャの元気な様子が伝わってくるのでホッとしている。私はその後、エサイアスと少し話をしてから部屋に戻った。
エサイアス様は私とローニャの伝言魔法のやり取りを面白そうに聞いていた。
実はこの魔法は内緒だった事を思い出し、少し失敗したなと思ったけれど後の祭りだ。
この魔法はまだ研究所の人たちも知らない。当たり前の魔法すぎて教科書にはもちろん載っていなかったからだ。
部屋に戻った私は自分の荷物をガサゴソと漁り、木箱を取り出す。
ローニャはああ言っていたけれど本当なのか?
蓋を開けると、綺麗な装飾が目に飛び込んできた。やっぱり素敵な腕輪だ。これが魔獣の骨だなんて信じられない。
明日、これを付けてみよう。
――チュンチュン
私は小鳥の囀りで目を覚ました。
昨日は早く寝たせいか、今朝はいつもより早い時間に起きた。朝の空気は凛として心が落ち着く気がする。
背伸びをしてからベッド降り、早速腕輪を木箱から取り出して付けた。
何度見ても綺麗でうっとりしてしまう。
魔獣の玉もがっちりと外れないようになっているのでずっと付けたままでもいいのかもしれない。腕を見ながら上機嫌で食事が来るまでベッドでゴロゴロと横になっていた。
「ナーニョ様、おはようございます。今日の体調はいかがですか?」
「すこぶるいいわ。護衛騎士の方々の体調はどうかしら?」
「我々の体調は万全です」
「では今日も行きましょうか」
私は腕輪を付け上機嫌だ。袖に隠れていて腕輪は付けているか分からないため、護衛騎士たちから気づかれなかったようだ。
今日は南西の街道の方を中心に魔獣を狩るようだ。騎士たちは手慣れた様子で魔獣を討伐していく。
私は特にすることもないようだ。手伝うという事もなくただ同行している。
「騎士団の皆様、今日もお疲れ様でした」
いつものように街に戻ってきた後、範囲回復のヒエストロを唱えた。
……え?
私は驚き、固まってしまった。
いつもの調子で魔力を使おうとしたけれど、魔力が騎士たちに行き渡る速さも光の強さも全然違っていた。なのに使用した魔力は三分の一程度のようだ。
「ナーニョ様、いつもより魔法が良く効きました!」
「そ、そうですか? よく効いてよかったです」
私は内心、動揺したけれど、騎士たちには特に聞かれることはなかった。
ローニャの言っていたことは本当かもしれない。
普段指輪を通して魔力を体外に出す感じだが、腕輪が魔力の通りを良くしている感じなのだろうか?
一瞬のことで自分でもよく分からなかった。エサイアス様に挨拶をした後、神殿に向かった。
礼拝堂に怪我人が集められているからだ。私はワット神官に戻った事を告げ、礼拝堂に入った。怪我人は三十人ほど。
どの人も重症ではないけれど、杖をついていたり、白い布を当てていたり、中には車椅子や長椅子で横になっている人もいる。
「お待たせしました。治療していきますね。『ヒエストロ』」
早速範囲回復魔法を唱えると、やはり先ほどと同じような感覚だ。
騎士たちは疲れを回復させるために魔法を使用しているが、大人数でもそれほど魔力は必要としない。だが、神殿にやってくる人たちは様々な怪我をしているため、魔力を多く消費する。
光の波紋はいつもよりスピードが速く、淡い光なのには違いないのだが、微妙に色合いが強い感じだ。
怪我人たちはみるみる元気を取り戻していく。
範囲魔法で回復しきれなかった怪我人、つまり重症ではないけれど軽いけがではない人はその後、個別でヒエロスを掛けるようにしているのだが、どうだろう……。
怪我人はヒエストロの魔法だけでほぼ回復したように見える。
「怪我が残っている人はいますか?」
改めて声を掛けてみたけれど、皆口々に感謝を述べるだけで治療を必要とする人がいない。
やはりこれは腕輪の効果なの……?
今のところ魔力が効きすぎる事はないけれど、これは不安が残る。研究所の結果を待った方がいいのか。でも、効きがいいだけならこのまま使っていたほうがいいのか判断に悩む。
後でマートス長官に手紙を書いて指示を仰ぐ方がよいかもしれない。やはりそれが一番だ。
『どうしたの?』
『お姉ちゃんが買ってくれた腕輪のことなんだけど……』
『うん、腕輪がどうしたの?』
『あれね、魔獣の玉もついた装飾品だったでしょう?』
『えぇ、そうね?』
ローニャの声が少し興奮したような早い口調だった。
『腕輪を付けて魔法を使うと……。なんと! じゃじゃーん! 魔法の効果が増強されるみたい!!』
『え? 本当?』
『うん! 本当だよ! 私の実験の成果は出ていたんだけど、グリークス神官長にも使ってもらったんだ。神官長は上位回復のヒエロスターナが使えなかったでしょう? 腕輪をすると一人、治療できるようになったんだよ』
私はローニャの言葉に驚いた。
『ほ、本当? でも、どうしてその腕輪に効果があると分かったの?』
『……』
『ローニャ?』
『えっとね、実は腕輪が綺麗で嬉しくなってつけっぱなしにしていたの。そのまま魔法の実験をしちゃったんだ。そしたら魔法の出力が上がりすぎて実験が失敗しちゃったんだよね』
ローニャのテヘヘという声を聞いて心配になった。
複数の指輪をしていると、上手く発動できないことがあるからだ。
器用な人は複数の指輪をしているのだが、誤作動を考えると、やはり装飾品は少ない方がいい。
私は指輪以外には尻尾に付いている緊急用のチャームと、エサイアス様からもらった髪飾りだけだ。
もちろんリボンや髪飾りは魔力をほとんど通さないので付けていても問題がない。さすがに腕輪を付けたまま使用するのは考えていなかった。
『魔法が増強されるって凄いよね! どこまで効果が増えているのか調べている最中なんだけど、グリークス神官長はローニャの腕輪が欲しいって言ってた。もちろんローニャはあげないって言ったんだ! そしたら神殿の力を最大限に使って作って見せるって張り切ってたよ』
『ふふっ。じゃぁ私もずっと付けてみようかな。ローニャと形が少し違うんだけど、とっても綺麗でずっと箱にしまってたの。使うのが勿体ない気がしてね』
『絶対使った方がいいよ!』
『そうだ、今の街は怪我人も魔獣も落ち着いてきたから来週くらいには次の街に向かう予定よ。次の街でも良いのがあったら送るね』
『うん! あ、そろそろ先生が来ちゃう! じゃぁまたね!』
そう言ってローニャとの伝言魔法は終わった。ローニャは研究所で研究をしながら毎日勉強に励んでいるのね。
週一回の神殿にも欠かさず行っているようだ。
ローニャの元気な様子が伝わってくるのでホッとしている。私はその後、エサイアスと少し話をしてから部屋に戻った。
エサイアス様は私とローニャの伝言魔法のやり取りを面白そうに聞いていた。
実はこの魔法は内緒だった事を思い出し、少し失敗したなと思ったけれど後の祭りだ。
この魔法はまだ研究所の人たちも知らない。当たり前の魔法すぎて教科書にはもちろん載っていなかったからだ。
部屋に戻った私は自分の荷物をガサゴソと漁り、木箱を取り出す。
ローニャはああ言っていたけれど本当なのか?
蓋を開けると、綺麗な装飾が目に飛び込んできた。やっぱり素敵な腕輪だ。これが魔獣の骨だなんて信じられない。
明日、これを付けてみよう。
――チュンチュン
私は小鳥の囀りで目を覚ました。
昨日は早く寝たせいか、今朝はいつもより早い時間に起きた。朝の空気は凛として心が落ち着く気がする。
背伸びをしてからベッド降り、早速腕輪を木箱から取り出して付けた。
何度見ても綺麗でうっとりしてしまう。
魔獣の玉もがっちりと外れないようになっているのでずっと付けたままでもいいのかもしれない。腕を見ながら上機嫌で食事が来るまでベッドでゴロゴロと横になっていた。
「ナーニョ様、おはようございます。今日の体調はいかがですか?」
「すこぶるいいわ。護衛騎士の方々の体調はどうかしら?」
「我々の体調は万全です」
「では今日も行きましょうか」
私は腕輪を付け上機嫌だ。袖に隠れていて腕輪は付けているか分からないため、護衛騎士たちから気づかれなかったようだ。
今日は南西の街道の方を中心に魔獣を狩るようだ。騎士たちは手慣れた様子で魔獣を討伐していく。
私は特にすることもないようだ。手伝うという事もなくただ同行している。
「騎士団の皆様、今日もお疲れ様でした」
いつものように街に戻ってきた後、範囲回復のヒエストロを唱えた。
……え?
私は驚き、固まってしまった。
いつもの調子で魔力を使おうとしたけれど、魔力が騎士たちに行き渡る速さも光の強さも全然違っていた。なのに使用した魔力は三分の一程度のようだ。
「ナーニョ様、いつもより魔法が良く効きました!」
「そ、そうですか? よく効いてよかったです」
私は内心、動揺したけれど、騎士たちには特に聞かれることはなかった。
ローニャの言っていたことは本当かもしれない。
普段指輪を通して魔力を体外に出す感じだが、腕輪が魔力の通りを良くしている感じなのだろうか?
一瞬のことで自分でもよく分からなかった。エサイアス様に挨拶をした後、神殿に向かった。
礼拝堂に怪我人が集められているからだ。私はワット神官に戻った事を告げ、礼拝堂に入った。怪我人は三十人ほど。
どの人も重症ではないけれど、杖をついていたり、白い布を当てていたり、中には車椅子や長椅子で横になっている人もいる。
「お待たせしました。治療していきますね。『ヒエストロ』」
早速範囲回復魔法を唱えると、やはり先ほどと同じような感覚だ。
騎士たちは疲れを回復させるために魔法を使用しているが、大人数でもそれほど魔力は必要としない。だが、神殿にやってくる人たちは様々な怪我をしているため、魔力を多く消費する。
光の波紋はいつもよりスピードが速く、淡い光なのには違いないのだが、微妙に色合いが強い感じだ。
怪我人たちはみるみる元気を取り戻していく。
範囲魔法で回復しきれなかった怪我人、つまり重症ではないけれど軽いけがではない人はその後、個別でヒエロスを掛けるようにしているのだが、どうだろう……。
怪我人はヒエストロの魔法だけでほぼ回復したように見える。
「怪我が残っている人はいますか?」
改めて声を掛けてみたけれど、皆口々に感謝を述べるだけで治療を必要とする人がいない。
やはりこれは腕輪の効果なの……?
今のところ魔力が効きすぎる事はないけれど、これは不安が残る。研究所の結果を待った方がいいのか。でも、効きがいいだけならこのまま使っていたほうがいいのか判断に悩む。
後でマートス長官に手紙を書いて指示を仰ぐ方がよいかもしれない。やはりそれが一番だ。
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