まさか猫種の私が聖女なんですか?

まるねこ

文字の大きさ
88 / 125

88 腕輪の効果は凄かった

しおりを挟む
『お姉ちゃん、今大丈夫?』
『どうしたの?』
『お姉ちゃんが買ってくれた腕輪のことなんだけど……』
『うん、腕輪がどうしたの?』
『あれね、魔獣の玉もついた装飾品だったでしょう?』
『えぇ、そうね?』

 ローニャの声が少し興奮したような早い口調だった。

『腕輪を付けて魔法を使うと……。なんと! じゃじゃーん! 魔法の効果が増強されるみたい!!』
『え? 本当?』
『うん! 本当だよ! 私の実験の成果は出ていたんだけど、グリークス神官長にも使ってもらったんだ。神官長は上位回復のヒエロスターナが使えなかったでしょう? 腕輪をすると一人、治療できるようになったんだよ』

 私はローニャの言葉に驚いた。

『ほ、本当? でも、どうしてその腕輪に効果があると分かったの?』
『……』
『ローニャ?』
『えっとね、実は腕輪が綺麗で嬉しくなってつけっぱなしにしていたの。そのまま魔法の実験をしちゃったんだ。そしたら魔法の出力が上がりすぎて実験が失敗しちゃったんだよね』

 ローニャのテヘヘという声を聞いて心配になった。

 複数の指輪をしていると、上手く発動できないことがあるからだ。

 器用な人は複数の指輪をしているのだが、誤作動を考えると、やはり装飾品は少ない方がいい。

 私は指輪以外には尻尾に付いている緊急用のチャームと、エサイアス様からもらった髪飾りだけだ。

 もちろんリボンや髪飾りは魔力をほとんど通さないので付けていても問題がない。さすがに腕輪を付けたまま使用するのは考えていなかった。

『魔法が増強されるって凄いよね! どこまで効果が増えているのか調べている最中なんだけど、グリークス神官長はローニャの腕輪が欲しいって言ってた。もちろんローニャはあげないって言ったんだ! そしたら神殿の力を最大限に使って作って見せるって張り切ってたよ』

『ふふっ。じゃぁ私もずっと付けてみようかな。ローニャと形が少し違うんだけど、とっても綺麗でずっと箱にしまってたの。使うのが勿体ない気がしてね』
『絶対使った方がいいよ!』

『そうだ、今の街は怪我人も魔獣も落ち着いてきたから来週くらいには次の街に向かう予定よ。次の街でも良いのがあったら送るね』
『うん! あ、そろそろ先生が来ちゃう! じゃぁまたね!』

 そう言ってローニャとの伝言魔法は終わった。ローニャは研究所で研究をしながら毎日勉強に励んでいるのね。
 週一回の神殿にも欠かさず行っているようだ。

 ローニャの元気な様子が伝わってくるのでホッとしている。私はその後、エサイアスと少し話をしてから部屋に戻った。


 エサイアス様は私とローニャの伝言魔法のやり取りを面白そうに聞いていた。

 実はこの魔法は内緒だった事を思い出し、少し失敗したなと思ったけれど後の祭りだ。

 この魔法はまだ研究所の人たちも知らない。当たり前の魔法すぎて教科書にはもちろん載っていなかったからだ。

 部屋に戻った私は自分の荷物をガサゴソと漁り、木箱を取り出す。

 ローニャはああ言っていたけれど本当なのか?

 蓋を開けると、綺麗な装飾が目に飛び込んできた。やっぱり素敵な腕輪だ。これが魔獣の骨だなんて信じられない。

 明日、これを付けてみよう。


 ――チュンチュン

 私は小鳥の囀りで目を覚ました。

 昨日は早く寝たせいか、今朝はいつもより早い時間に起きた。朝の空気は凛として心が落ち着く気がする。

 背伸びをしてからベッド降り、早速腕輪を木箱から取り出して付けた。

 何度見ても綺麗でうっとりしてしまう。

 魔獣の玉もがっちりと外れないようになっているのでずっと付けたままでもいいのかもしれない。腕を見ながら上機嫌で食事が来るまでベッドでゴロゴロと横になっていた。

「ナーニョ様、おはようございます。今日の体調はいかがですか?」
「すこぶるいいわ。護衛騎士の方々の体調はどうかしら?」
「我々の体調は万全です」
「では今日も行きましょうか」

 私は腕輪を付け上機嫌だ。袖に隠れていて腕輪は付けているか分からないため、護衛騎士たちから気づかれなかったようだ。

 今日は南西の街道の方を中心に魔獣を狩るようだ。騎士たちは手慣れた様子で魔獣を討伐していく。

 私は特にすることもないようだ。手伝うという事もなくただ同行している。

「騎士団の皆様、今日もお疲れ様でした」

 いつものように街に戻ってきた後、範囲回復のヒエストロを唱えた。

 ……え?

 私は驚き、固まってしまった。

 いつもの調子で魔力を使おうとしたけれど、魔力が騎士たちに行き渡る速さも光の強さも全然違っていた。なのに使用した魔力は三分の一程度のようだ。

「ナーニョ様、いつもより魔法が良く効きました!」
「そ、そうですか? よく効いてよかったです」

 私は内心、動揺したけれど、騎士たちには特に聞かれることはなかった。

 ローニャの言っていたことは本当かもしれない。

 普段指輪を通して魔力を体外に出す感じだが、腕輪が魔力の通りを良くしている感じなのだろうか?

 一瞬のことで自分でもよく分からなかった。エサイアス様に挨拶をした後、神殿に向かった。

 礼拝堂に怪我人が集められているからだ。私はワット神官に戻った事を告げ、礼拝堂に入った。怪我人は三十人ほど。

 どの人も重症ではないけれど、杖をついていたり、白い布を当てていたり、中には車椅子や長椅子で横になっている人もいる。

「お待たせしました。治療していきますね。『ヒエストロ』」

 早速範囲回復魔法を唱えると、やはり先ほどと同じような感覚だ。

 騎士たちは疲れを回復させるために魔法を使用しているが、大人数でもそれほど魔力は必要としない。だが、神殿にやってくる人たちは様々な怪我をしているため、魔力を多く消費する。

 光の波紋はいつもよりスピードが速く、淡い光なのには違いないのだが、微妙に色合いが強い感じだ。

 怪我人たちはみるみる元気を取り戻していく。

 範囲魔法で回復しきれなかった怪我人、つまり重症ではないけれど軽いけがではない人はその後、個別でヒエロスを掛けるようにしているのだが、どうだろう……。

 怪我人はヒエストロの魔法だけでほぼ回復したように見える。

「怪我が残っている人はいますか?」

 改めて声を掛けてみたけれど、皆口々に感謝を述べるだけで治療を必要とする人がいない。

 やはりこれは腕輪の効果なの……?

 今のところ魔力が効きすぎる事はないけれど、これは不安が残る。研究所の結果を待った方がいいのか。でも、効きがいいだけならこのまま使っていたほうがいいのか判断に悩む。

 後でマートス長官に手紙を書いて指示を仰ぐ方がよいかもしれない。やはりそれが一番だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

底無しポーターは端倪すべからざる

さいわ りゅう
ファンタジー
運び屋(ポーター)のルカ・ブライオンは、冒険者パーティーを追放された。ーーが、正直痛くも痒くもなかった。何故なら仕方なく同行していただけだから。 ルカの魔法適正は、運び屋(ポーター)に適した収納系魔法のみ。 攻撃系魔法の適正は皆無だけれど、なんなら独りで魔窟(ダンジョン)にだって潜れる、ちょっと底無しで少し底知れない運び屋(ポーター)。 そんなルカの日常と、ときどき魔窟(ダンジョン)と周囲の人達のお話。 ※タグの「恋愛要素あり」は年の差恋愛です。 ※ごくまれに残酷描写を含みます。 ※【小説家になろう】様にも掲載しています。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?

咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。 ※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。 ※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。 ※騎士の上位が聖騎士という設定です。 ※下品かも知れません。 ※甘々(当社比) ※ご都合展開あり。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します

みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが…… 余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。 皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。 作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨ あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。 やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。 この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。

処理中です...