97 / 125
97 魔力の封印
しおりを挟む
騎士としての実力を見せつけたエサイアス様にカシュール君は震えながら俯いている。
「英雄エサイアス様、私たちはどうなっても構いません。どうか我が息子カシュールの命だけは、命だけは……」
子爵と夫人はひれ伏してエサイアス様に許しを請う。
その様子を見たカシュールは初めて自分の仕出かしたことの大きさを認識できたようだ。先ほどとは打って変わり、涙を堪え震えながら謝罪を口にする。
「ごめんなさい、俺が無知だったから。父と母は関係がありません。全て俺が生意気でやったから。どうか俺の命でご勘弁下さい」
ざわざわと住人たちが騒いでいる。彼は震えながら跪き、首をエサイアスに差し出した。エサイアスはカシュールの首元に剣を置いてから勢いよく振り上げた。
「エサイアス様、待って下さい」
私はエサイアス様を止めた。
「本来なら許される事ではありません。ですが、彼はまだ子供です。魔法使いの意味を知らずに魔法を使っている。本来なら親である子爵たちがカシュール君を諫めなければならない立場です。
彼に罪がないとは言えませんが、成人していないわ。それに彼は自分のしたことを自覚している様子。私から彼に魔法が使えないように施します。今回ばかりは許してあげて欲しいのです」
私の言葉にエサイアスも隊長たちやヒェル子爵夫婦も視線を向けた。
「魔法を封じる……?」
シャロー隊長が疑問を口にした。確かに今まで他に魔法使いが存在していないから封じるという発想は無かったのだろう。
獣人の世界では平和だが、稀に凶悪な者もいる。その刑罰の一つとして魔法を封じるものや剥奪するものがある。
魔力を持つ人間にようやく出会えたのにまさか魔力を封印することになるとは思っていなかった。
因みに、魔力の封印はグレードがあり、数日、数か月、数年、永久に封印する方法がある。永久封印するには相応の魔力が必要だ。また永久封印を解除するにも相応の魔力が必要になる。
封印された魔力は身体を駆け巡り、暴れ始める。身体を傷つけるわけではないが、不快感や痛みを伴う。魔力の量が多ければ多いほどだ。
彼はまだ子供だ。
今まで好きに魔法を使ってきたから魔法が使えないという感覚や身体中に魔力の暴走を感じる必要があると思う。
私もローニャも両親に怒られて数日魔力を封印されたことがある。たかだか数日なのだが、魔力を持つ当たり前の感覚がなくなるのだ。身体中に動き続ける魔力。
私は懲りたわ。
これはローニャも同じ。
ほとんどの獣人が幼い頃に一度は通る道だろう。
「この国の王女であるナーニョ様がそう判断したのだ。死罪はナーニョ様に免じるが、魔力の封印を行う。子爵、よいな」
「もちろんです。息子の命を救っていただき感謝しかありません」
「では始めます。カシュール、こちらに来なさい」
私の言葉に震えながら彼は目の前に立った。
私は全ての指輪を外して腕輪から魔力を指先に流す。人差し指と中指で受けた魔力をカシュールの額に乗せて魔法円を描く。
魔法円は淡い緑色を浮かばせた後、何も無かったように跡形もなく消えていった。
カシュールには数か月程度の封印を施した。
数か月程度であればいつでも解除可能だ。私は反省を促すためにその期間にした。
「これで終わりました。子爵、夫人、彼はまだ子供です。将来子爵になるのであればしっかりと育て下さい」
「「承知いたしました」」
こうして一連の騒動は収束した。
私たちが街をテリトリーにしている魔獣を退治したことで住人たちは安堵し、街へ戻り自宅がどうなっているのか確認する人もいるようだ。
私たちはというと、柵で囲まれた村では騎士たちが寝泊まりできる広さが確保できないため、ノーヨゥルの街に戻って広場でテントを張ることになった。
残念ながらノーヨゥルの街の駐屯所は使えそうになかった。
「エサイアス様、この街ではどうする予定なのですか?」
「先ほど子爵たちの話し合いの結果、ここを拠点にして街道を中心に魔獣の討伐を行っていくことになった。子爵の話では街の外ではそれほど大きな魔獣はいないらしい。
数日巡視をした後、次の街に出るかの話をしていたのだが、カシュールのこともある。話を聞けばここの街の人たちは多少なりとも魔力を持っている。国はこの街を最重要都市として位置づけるだろう。
魔力持ちの人間の選別、近隣の村や街の調査を視野に入れて巡視を行うことになる。滞在期間は長くなると思う」
「そうですよね。私はいつものように巡視をした後、村人たちの治療をしながら魔力を持ち、尚且つ魔法を問題なく使えそうな人たちを見つけることですよね」
「そうなる。報告書を送って陛下たちからの指示を仰ぐことになるだろう」
エサイアス様と話をした後、私は少し早いけれどテントの中に入ってローニャに伝言魔法を送った。
すぐにローニャから返事が来たわ。ローニャも凄く興奮していることが伝わってくる。
マートス長官に報告しなくっちゃと言って伝言魔法が返ってこなくなった。
今頃王宮の方では大騒ぎなのだと思う。
とても凄いことだもの。
「英雄エサイアス様、私たちはどうなっても構いません。どうか我が息子カシュールの命だけは、命だけは……」
子爵と夫人はひれ伏してエサイアス様に許しを請う。
その様子を見たカシュールは初めて自分の仕出かしたことの大きさを認識できたようだ。先ほどとは打って変わり、涙を堪え震えながら謝罪を口にする。
「ごめんなさい、俺が無知だったから。父と母は関係がありません。全て俺が生意気でやったから。どうか俺の命でご勘弁下さい」
ざわざわと住人たちが騒いでいる。彼は震えながら跪き、首をエサイアスに差し出した。エサイアスはカシュールの首元に剣を置いてから勢いよく振り上げた。
「エサイアス様、待って下さい」
私はエサイアス様を止めた。
「本来なら許される事ではありません。ですが、彼はまだ子供です。魔法使いの意味を知らずに魔法を使っている。本来なら親である子爵たちがカシュール君を諫めなければならない立場です。
彼に罪がないとは言えませんが、成人していないわ。それに彼は自分のしたことを自覚している様子。私から彼に魔法が使えないように施します。今回ばかりは許してあげて欲しいのです」
私の言葉にエサイアスも隊長たちやヒェル子爵夫婦も視線を向けた。
「魔法を封じる……?」
シャロー隊長が疑問を口にした。確かに今まで他に魔法使いが存在していないから封じるという発想は無かったのだろう。
獣人の世界では平和だが、稀に凶悪な者もいる。その刑罰の一つとして魔法を封じるものや剥奪するものがある。
魔力を持つ人間にようやく出会えたのにまさか魔力を封印することになるとは思っていなかった。
因みに、魔力の封印はグレードがあり、数日、数か月、数年、永久に封印する方法がある。永久封印するには相応の魔力が必要だ。また永久封印を解除するにも相応の魔力が必要になる。
封印された魔力は身体を駆け巡り、暴れ始める。身体を傷つけるわけではないが、不快感や痛みを伴う。魔力の量が多ければ多いほどだ。
彼はまだ子供だ。
今まで好きに魔法を使ってきたから魔法が使えないという感覚や身体中に魔力の暴走を感じる必要があると思う。
私もローニャも両親に怒られて数日魔力を封印されたことがある。たかだか数日なのだが、魔力を持つ当たり前の感覚がなくなるのだ。身体中に動き続ける魔力。
私は懲りたわ。
これはローニャも同じ。
ほとんどの獣人が幼い頃に一度は通る道だろう。
「この国の王女であるナーニョ様がそう判断したのだ。死罪はナーニョ様に免じるが、魔力の封印を行う。子爵、よいな」
「もちろんです。息子の命を救っていただき感謝しかありません」
「では始めます。カシュール、こちらに来なさい」
私の言葉に震えながら彼は目の前に立った。
私は全ての指輪を外して腕輪から魔力を指先に流す。人差し指と中指で受けた魔力をカシュールの額に乗せて魔法円を描く。
魔法円は淡い緑色を浮かばせた後、何も無かったように跡形もなく消えていった。
カシュールには数か月程度の封印を施した。
数か月程度であればいつでも解除可能だ。私は反省を促すためにその期間にした。
「これで終わりました。子爵、夫人、彼はまだ子供です。将来子爵になるのであればしっかりと育て下さい」
「「承知いたしました」」
こうして一連の騒動は収束した。
私たちが街をテリトリーにしている魔獣を退治したことで住人たちは安堵し、街へ戻り自宅がどうなっているのか確認する人もいるようだ。
私たちはというと、柵で囲まれた村では騎士たちが寝泊まりできる広さが確保できないため、ノーヨゥルの街に戻って広場でテントを張ることになった。
残念ながらノーヨゥルの街の駐屯所は使えそうになかった。
「エサイアス様、この街ではどうする予定なのですか?」
「先ほど子爵たちの話し合いの結果、ここを拠点にして街道を中心に魔獣の討伐を行っていくことになった。子爵の話では街の外ではそれほど大きな魔獣はいないらしい。
数日巡視をした後、次の街に出るかの話をしていたのだが、カシュールのこともある。話を聞けばここの街の人たちは多少なりとも魔力を持っている。国はこの街を最重要都市として位置づけるだろう。
魔力持ちの人間の選別、近隣の村や街の調査を視野に入れて巡視を行うことになる。滞在期間は長くなると思う」
「そうですよね。私はいつものように巡視をした後、村人たちの治療をしながら魔力を持ち、尚且つ魔法を問題なく使えそうな人たちを見つけることですよね」
「そうなる。報告書を送って陛下たちからの指示を仰ぐことになるだろう」
エサイアス様と話をした後、私は少し早いけれどテントの中に入ってローニャに伝言魔法を送った。
すぐにローニャから返事が来たわ。ローニャも凄く興奮していることが伝わってくる。
マートス長官に報告しなくっちゃと言って伝言魔法が返ってこなくなった。
今頃王宮の方では大騒ぎなのだと思う。
とても凄いことだもの。
49
あなたにおすすめの小説
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
底無しポーターは端倪すべからざる
さいわ りゅう
ファンタジー
運び屋(ポーター)のルカ・ブライオンは、冒険者パーティーを追放された。ーーが、正直痛くも痒くもなかった。何故なら仕方なく同行していただけだから。
ルカの魔法適正は、運び屋(ポーター)に適した収納系魔法のみ。
攻撃系魔法の適正は皆無だけれど、なんなら独りで魔窟(ダンジョン)にだって潜れる、ちょっと底無しで少し底知れない運び屋(ポーター)。
そんなルカの日常と、ときどき魔窟(ダンジョン)と周囲の人達のお話。
※タグの「恋愛要素あり」は年の差恋愛です。
※ごくまれに残酷描写を含みます。
※【小説家になろう】様にも掲載しています。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?
咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。
※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。
※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。
※騎士の上位が聖騎士という設定です。
※下品かも知れません。
※甘々(当社比)
※ご都合展開あり。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します
みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが……
余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。
皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる