まさか猫種の私が聖女なんですか?

まるねこ

文字の大きさ
99 / 125

99 街人の治療

しおりを挟む
 巡視は順調だ。問題になるほどのやっかいな魔獣は見当たらない。たまに熊くらいの大きさの魔獣が襲ってくるだけだ。

「ナーニョ様、カシュールをどうするつもりですか?」

 歩きながらエサイアス様は私に雑談という軽い感じで聞いてきた。

「そうですね。カシュール君に掛けてある封印魔法は保って三ヶ月程度なんです。その間にしっかりと反省すれば封印を再度しなくても良いと思っています。それに彼は貴重な魔法が使える人間ですから、なるべくなら彼は魔法使いとして活躍してほしいと思っています」

「もし、封印を解くとして、その後どうやって魔法を練習させるんだ?」
「彼を研究所に預けて最初は指輪で治療から始める方がいいと思いますが、神殿の方が彼を真っすぐにしてくれるのならそちらに預かってもらっても良いのかもしれません」

「そうだな。魔法が使えてちょっと気が大きくなる年頃だから仕方がない部分もある。グリークス神官長ならしっかりと彼を導いてくれそうだ。

 ここだけの話、あの人、恐ろしいほど怖いんだ。一度だけ魔獣を倒すところを見たが、悪魔のようだった。躊躇いなく大斧を振り回して相手をぶった切る。聖職者とは思えなかった」

「ふふっ。そうなんですか? いつもニコニコしているグリークス神官長からは想像ができないです」
「だろう?」

 雑談をしながら巡視は順調に進んでいく。

「本日の巡視はこれで終了だ。午後から屯所が使えるように清掃をしていく。それまではしっかり身体を休めてくれ」
「エサイアス様、今日はこの辺で」

 私は治療のために昨日の街に向かった。狼型の魔獣を討伐したせいか街にぽつぽつと人の姿が見える。

 こちらの街に戻るための準備をしているのかもしれない。

「ナーニョ様! 待っていました!」

 少し顔色が悪そうなカシュール君は手を振って駆け寄ってきた。

「カシュール君、顔色が悪いわ。大丈夫?」
「うん、朝よりも魔力が身体をグルグルと動いていて気持ち悪いんだ」

 そうか、昨日魔法が撃てなくなるほど魔力を使ったから魔力が満杯になっていなかったのね。

「こればかりは仕方がないわ。魔力を封印しているから気持ち悪く感じるの。そういう罰だもの」
「……うん。分かっています。俺、ナーニョ様とエサイアス様に叱られて、両親にも泣かれて痛いほど実感したんだ」

「さて、治療を始めるわ。カシュール君、怪我人はいるかしら?」
「はい! こっちに! 広場に集まってもらっています」

 私はカシュール君の案内で広場に向かうと、そこには街の人たちが数人いた。

 ベッドから起き上がることのできない人はいないようだ。街が魔獣に襲われた時、街を捨ててこの村に来ることを街全体で決めていたようだ。

 そのおかげでみんな無事に逃げてこれたらしい。

 魔獣によって負った怪我は回復しているけれど、後遺症が残っているのでここに来た人も多かった。

 私は一人一人丁寧に魔法を掛けていく。時間が経っているので治しきるには魔力の消費が多くなるが、人数は少ないのでなんとかなりそうだ。

「ナーニョ様!! ありがとうございます」

 みんなの治療を終えて私はホッと肩を回す。

 街の人は涙している人もいたわ。傷跡があるというのはやはり精神的にも辛かったのだろう。

「ナーニョ様、治療魔法って凄いですね。ナーニョ様はやはり聖女なのですね」

 カシュール君は呟くように言った。

「私は聖女ではないわ。崇高な考えを持っていないもの。むしろカシュール君が羨ましいわ。自分の目標があるんだもの」

 カシュール君は私を見て不思議そうにしていた。

 治療を終えた後、街に戻った。騎士団の駐屯所は掃除が終わり、騎士たちは駐屯所に荷物を運び終えていた。

 私はヒェル子爵の邸の客間に滞在することになった。

 魔獣は食糧を求めて民家の扉を壊したりしていたようだが、子爵の邸には厨房以外荒らされていなかったようで問題なく滞在することができるようだ。部屋に入って息を吐いた。

 やはりテントより部屋の方が落ち着く。

 人も居ないので教えてもらった井戸から水を汲んで部屋に持って入った。湯浴みはできないのが残念だけど、こればかりは仕方がないわ。

 私は魔法で水を温めてから身体を拭き、着替えも済ませてベッドでくつろいでいると、突然目の前に眩しい光が現れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

底無しポーターは端倪すべからざる

さいわ りゅう
ファンタジー
運び屋(ポーター)のルカ・ブライオンは、冒険者パーティーを追放された。ーーが、正直痛くも痒くもなかった。何故なら仕方なく同行していただけだから。 ルカの魔法適正は、運び屋(ポーター)に適した収納系魔法のみ。 攻撃系魔法の適正は皆無だけれど、なんなら独りで魔窟(ダンジョン)にだって潜れる、ちょっと底無しで少し底知れない運び屋(ポーター)。 そんなルカの日常と、ときどき魔窟(ダンジョン)と周囲の人達のお話。 ※タグの「恋愛要素あり」は年の差恋愛です。 ※ごくまれに残酷描写を含みます。 ※【小説家になろう】様にも掲載しています。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?

咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。 ※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。 ※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。 ※騎士の上位が聖騎士という設定です。 ※下品かも知れません。 ※甘々(当社比) ※ご都合展開あり。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します

みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが…… 余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。 皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。 作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨ あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。 やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。 この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。

処理中です...