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118 グリークス神官長と聖女
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翌日、私は神殿に出掛けた。
今、グリークス神官長は多忙を極めているらしいと事前に聞いていた。
カシュール君や、魔力持ちの子供を引き受けたことで更に怪我人が神殿に集まった。
彼らのおかげで地方の連絡が徐々に取れるようになってきた。
ノーヨゥル経由で要望書や連絡、報告が一気に王都の神殿に集まってきたのだとか。
ここでも嬉しい悲鳴が上がっているが、少し申し訳ない気もするわ。
そんな中、グリークス神官長は私と会うための時間を取ってくれたようだ。
私は神殿の入り口に迎えに出てきていたカシュール君を見つけた。
少し見ない間に顔つきが変わった?
神官服を着ている彼は大人びたような気がする。
「カシュール君、久しぶり」
「ナーニョ様、お久しぶりです。ここでは目立ちます。裏口からどうぞ」
カシュール君は以前のような偉そうな態度を改め、言葉遣いや仕草も全て神官長から叩きなおされている最中なのだとか。
最近になって彼は研究所に行くことが許された。今は週の三日は研究所で魔法の練習をしているらしい。
カシュール君は貴族だったので他の人たちと違い文字の読み書きができる。
そのためすぐに魔法の練習に入れたようだ。毎日治療魔法を魔力が枯渇するまで神殿に来た怪我人に掛けているらしい。魔力が余れば神官や聖騎士に掛けているのだとか。
やはり獣人と違い、人間は魔力が枯渇しても倒れないのだろうか?
そしてヒエロスの難しさを実感しているとも言っていた。ローニャが週に一度神殿に来た時には子供たちに魔法を教えていると言っていたわ。
ローニャが使うヒエロスと同じはずなのに『ローニャ様のように治せない』自分にやるせなさを感じているようだ。
「グリークス神官長、ナーニョ様をお連れしました」
カシュール君は頭を下げてそのまま廊下に出ているようだ。
「ナーニョ様、この度はおめでとうございます」
「グリークス神官長、お久しぶりです。ようやく異次元の空間を閉じることができました。神官長のおかげで街の人たちにも良くしてもらえました。それにローニャのことも見守っていただきありがとうございました」
「私は何もしていませんよ。ナーニョ様の努力の結果です」
グリークス神官長は手放しで私を褒めてくれるので嬉しくもあり、少しくすぐったい気持ちにもなる。
「そういえば、魔力持ちの子供たちはどのような感じですか?」
「カシュール君はさすが貴族の子息、ですね。しっかりと勉強をしているし、魔法使いになるために必死に勉強しているようです。
最初、神殿に来た時は言葉遣いが悪く、どうしようかと思いましたよ。他の子供たちは素直ですね。文字を勉強しつつ、魔力循環の練習を行っていて、少しずつですが神殿の怪我人の治療を行っています。
やはりナーニョ様たちがそうであったように子供の頃はヒエロスなどの魔法から入るのが良いですね。
それでもたまに魔法以外でやらかして他の神官から怒られる子もいますが、魔法には真剣に取り組む様子が見られます。この先が楽しみですね」
どうやら神殿に預かってもらった子供たちの中にはわんぱくな子供もいるようだ。
「そうだ、ナーニョ様。これを見てください。凄いでしょう?」
グリークス神官長が袖を捲って見せた。そこには魔獣の骨でできた腕輪が嵌っている。
「これは魔獣の素材で作った腕輪ですね。素晴らしい細工だわ」
「えぇ! そうでしょう? ローニャ様がしていて私も欲しくて聖騎士にお願いをして骨と玉を取ってきてもらったんのですよ。この腕輪のおかげで使用する魔法の魔力量がかなり抑えられて治療も難なくこなせるようになりました」
「それは良かったです。研究所の人からまだ詳しい結果は出ていないので、結果が出ればもっと効果の高い腕輪を作ってもらえそうですよね」
「これからが楽しみでなりません」
「そういえば、グリークス神官長。お願いがあるのですが」
「ナーニョ様のお願いとは珍しいですね。どうしたのですか?」
「あの、王宮で聖女様のような服を着たいと思って、グリークス神官長に許可を頂こうかと……」
「ナーニョ様は聖女になる決心がついたということでしょうか」
グリークス神官長の目はキラリと光った。
「いえ、この世界の聖女様はとても尊い存在だと聞きました。私自身、獣人ですし、妬ましく思ったり、怒ったり、人に不満をぶつけたりもします。
聖女とはかけ離れた存在だと思っています。お願いしたいのは、王宮にいる限り、ドレスが必須なのです。
ずっと騎士服や平民の服を着ていた私はドレスが苦手というか……。苦手なのです。兄様から聖女風の服を着れば締め付ける事無く楽に過ごすせるのではないかと言われたのです。
それでグリークス神官長に許可していただこうかとお伺いを立てたのです」
「……なるほど。そういうことでしたか。神殿としては構いません。むしろ喜ばしいことです。聖女服を着て形から入るのも良いと思います。
ナーニョ様、勘違いされているかもしれませんが、神殿が聖女を決めるという事はないのですよ?
昔は聖女と呼ばれる女性を育て上げ、神の代弁者という象徴として聖女を決めていましたが、現在、聖女と呼ばれる女性はいません。
今は人々が素晴らしい、尊敬し、敬う対象が自然に聖女と呼ばれるのです。ナーニョ様は色々と思い悩んでおられますが、充分聖女として活動しているとおもいますよ?」
「そうなのですか?」
「あとはナーニョ様自身がどう思うか、だけだと思います。ナーニョ様はそのままで良いと思いますよ? 誰しもが思い悩み、妬む気持ちや不機嫌になることはある。
それは当たり前のことです。ですが、自分自身で振り返ることのできる人はほんの一握り。ナーニョ様が怪我をしている人たちに真摯に向き合った結果なのです。
皆、ナーニョ様に感謝しているし、人々が成しえない事をしている。既に立派な聖女だと思っていますよ」
「……そう、なのでしょうか? 自分ではよく分かりません」
「ふふっ。ナーニョ様はそのままで良いのです。まあ、教会から聖女として宣伝したら陛下がうるさそうですけどね」
グリークス神官長は私が私のままでいいと言ってくれている。もし神官長の言う通り、自然にみんながそう言ってくれているのなら嬉しいと思う。
その後、少しグリークス神官長と話をしてから子供たちの所へ向かった。
今、グリークス神官長は多忙を極めているらしいと事前に聞いていた。
カシュール君や、魔力持ちの子供を引き受けたことで更に怪我人が神殿に集まった。
彼らのおかげで地方の連絡が徐々に取れるようになってきた。
ノーヨゥル経由で要望書や連絡、報告が一気に王都の神殿に集まってきたのだとか。
ここでも嬉しい悲鳴が上がっているが、少し申し訳ない気もするわ。
そんな中、グリークス神官長は私と会うための時間を取ってくれたようだ。
私は神殿の入り口に迎えに出てきていたカシュール君を見つけた。
少し見ない間に顔つきが変わった?
神官服を着ている彼は大人びたような気がする。
「カシュール君、久しぶり」
「ナーニョ様、お久しぶりです。ここでは目立ちます。裏口からどうぞ」
カシュール君は以前のような偉そうな態度を改め、言葉遣いや仕草も全て神官長から叩きなおされている最中なのだとか。
最近になって彼は研究所に行くことが許された。今は週の三日は研究所で魔法の練習をしているらしい。
カシュール君は貴族だったので他の人たちと違い文字の読み書きができる。
そのためすぐに魔法の練習に入れたようだ。毎日治療魔法を魔力が枯渇するまで神殿に来た怪我人に掛けているらしい。魔力が余れば神官や聖騎士に掛けているのだとか。
やはり獣人と違い、人間は魔力が枯渇しても倒れないのだろうか?
そしてヒエロスの難しさを実感しているとも言っていた。ローニャが週に一度神殿に来た時には子供たちに魔法を教えていると言っていたわ。
ローニャが使うヒエロスと同じはずなのに『ローニャ様のように治せない』自分にやるせなさを感じているようだ。
「グリークス神官長、ナーニョ様をお連れしました」
カシュール君は頭を下げてそのまま廊下に出ているようだ。
「ナーニョ様、この度はおめでとうございます」
「グリークス神官長、お久しぶりです。ようやく異次元の空間を閉じることができました。神官長のおかげで街の人たちにも良くしてもらえました。それにローニャのことも見守っていただきありがとうございました」
「私は何もしていませんよ。ナーニョ様の努力の結果です」
グリークス神官長は手放しで私を褒めてくれるので嬉しくもあり、少しくすぐったい気持ちにもなる。
「そういえば、魔力持ちの子供たちはどのような感じですか?」
「カシュール君はさすが貴族の子息、ですね。しっかりと勉強をしているし、魔法使いになるために必死に勉強しているようです。
最初、神殿に来た時は言葉遣いが悪く、どうしようかと思いましたよ。他の子供たちは素直ですね。文字を勉強しつつ、魔力循環の練習を行っていて、少しずつですが神殿の怪我人の治療を行っています。
やはりナーニョ様たちがそうであったように子供の頃はヒエロスなどの魔法から入るのが良いですね。
それでもたまに魔法以外でやらかして他の神官から怒られる子もいますが、魔法には真剣に取り組む様子が見られます。この先が楽しみですね」
どうやら神殿に預かってもらった子供たちの中にはわんぱくな子供もいるようだ。
「そうだ、ナーニョ様。これを見てください。凄いでしょう?」
グリークス神官長が袖を捲って見せた。そこには魔獣の骨でできた腕輪が嵌っている。
「これは魔獣の素材で作った腕輪ですね。素晴らしい細工だわ」
「えぇ! そうでしょう? ローニャ様がしていて私も欲しくて聖騎士にお願いをして骨と玉を取ってきてもらったんのですよ。この腕輪のおかげで使用する魔法の魔力量がかなり抑えられて治療も難なくこなせるようになりました」
「それは良かったです。研究所の人からまだ詳しい結果は出ていないので、結果が出ればもっと効果の高い腕輪を作ってもらえそうですよね」
「これからが楽しみでなりません」
「そういえば、グリークス神官長。お願いがあるのですが」
「ナーニョ様のお願いとは珍しいですね。どうしたのですか?」
「あの、王宮で聖女様のような服を着たいと思って、グリークス神官長に許可を頂こうかと……」
「ナーニョ様は聖女になる決心がついたということでしょうか」
グリークス神官長の目はキラリと光った。
「いえ、この世界の聖女様はとても尊い存在だと聞きました。私自身、獣人ですし、妬ましく思ったり、怒ったり、人に不満をぶつけたりもします。
聖女とはかけ離れた存在だと思っています。お願いしたいのは、王宮にいる限り、ドレスが必須なのです。
ずっと騎士服や平民の服を着ていた私はドレスが苦手というか……。苦手なのです。兄様から聖女風の服を着れば締め付ける事無く楽に過ごすせるのではないかと言われたのです。
それでグリークス神官長に許可していただこうかとお伺いを立てたのです」
「……なるほど。そういうことでしたか。神殿としては構いません。むしろ喜ばしいことです。聖女服を着て形から入るのも良いと思います。
ナーニョ様、勘違いされているかもしれませんが、神殿が聖女を決めるという事はないのですよ?
昔は聖女と呼ばれる女性を育て上げ、神の代弁者という象徴として聖女を決めていましたが、現在、聖女と呼ばれる女性はいません。
今は人々が素晴らしい、尊敬し、敬う対象が自然に聖女と呼ばれるのです。ナーニョ様は色々と思い悩んでおられますが、充分聖女として活動しているとおもいますよ?」
「そうなのですか?」
「あとはナーニョ様自身がどう思うか、だけだと思います。ナーニョ様はそのままで良いと思いますよ? 誰しもが思い悩み、妬む気持ちや不機嫌になることはある。
それは当たり前のことです。ですが、自分自身で振り返ることのできる人はほんの一握り。ナーニョ様が怪我をしている人たちに真摯に向き合った結果なのです。
皆、ナーニョ様に感謝しているし、人々が成しえない事をしている。既に立派な聖女だと思っていますよ」
「……そう、なのでしょうか? 自分ではよく分かりません」
「ふふっ。ナーニョ様はそのままで良いのです。まあ、教会から聖女として宣伝したら陛下がうるさそうですけどね」
グリークス神官長は私が私のままでいいと言ってくれている。もし神官長の言う通り、自然にみんながそう言ってくれているのなら嬉しいと思う。
その後、少しグリークス神官長と話をしてから子供たちの所へ向かった。
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