123 / 125
123 声を掛けてきた人たち
しおりを挟む
「英雄エサイアス様ですか?」
数名の女の子が私たちのテーブルを囲むように声を掛けてきた。護衛はすぐに私の側にきて離れるように彼女たちに促した。
女の子たちは睨みながら私から距離を取るけれど、エサイアス様と話がしたいようで私たちに構わず話を続けようとしている。
「君たちは私に何か用なのかな?」
エサイアス様が一言口にすると女の子たちは顔を赤らめて喜んでいる。その中の一人がモジモジしながら言った言葉に私は驚いた。
「あの、どうか私たちと、この中の一人でもいいです。一晩を共にしていただけませんか?」
巡視をしていると、街や村の女性から声を掛けられているのは知っていた。
滞在している間だけの恋人を作る騎士だっている。理解はしているけれど、いい感情は持てない。
エサイアス様は断ってくれるの?
まさか喜んでいる?
たった一瞬で色々なことを考えてしまう。『私がここにいるのに』という嫉妬が芽生える。
すると彼は微笑みながら女の子たちに向き合って話す。
「最近の女の子たちは積極的なんだな。それは悪いことではないけれど感心しない。残念ながら私は君たちに興味はない。申し訳ないが、私は食事中だ。他の誰かに声をかければいい」
「で、でも。エサイアス様には婚約者がいないと聞きました。ずっと憧れていて……。一夜だけで良いのです。誰にも言いません。どうか私たちに一夜の夢をお与え下さい」
彼女たちは引き下がらない様子。私が声をかければいいのかも迷ってしまう。
どうしようかと護衛騎士に視線を向けると、護衛騎士はうんざりしている様子だ。
もしかして私が知らないところでこのようなやり取りがあったのかもしれない。護衛騎士が女の子たちに声をかけ、排除しようと動いた時――
「私は君たちに興味がないと何度言えば分かってくれるのか? 婚約者はいなくても好きな人がいるし、その人には誠実でありたいんだ」
「黙っていればばれません。私たちは絶対に話しません!」
彼女たちも必死に言葉を返している。
「……黙っていればばれない、か。ナーニョ様にこんな阿婆擦れ女たちを目に入れさせたくはない。帰ってくれるか」
「で、でも……」
あれだけ拒否されても引き下がろうとしない彼女たちに内心は動転している。
「分からないのか? バレなければいいという問題ではない。私もこうして数多のライバルを押さえつけ、口説き落とそうと必死だ。それを邪魔するのは許さない。
英雄と言われている私でさえ選ばれる身なのでね。彼女からすれば私なんて大勢いるうちの一人だ」
「……そんな。まさか」
エサイアス様の言葉でようやく彼女たちも相手が誰か気づいたようだ。
「さあ、私に構っていないで他を当たってくれ」
エサイアス様がそう言い終わると同時に護衛が彼女たちを遠ざける。彼女たちは私を一目見てから離れていった。
「ナーニョ様、すまない。不快な思いをさせてしまった」
「いいえ、私は構いません。女性から積極的に声をかけてきたのには驚きました」
獣人の世界は男女平等だ。
この世界に来て男尊女卑なのだと知った時は驚いた。貴族と違い平民ならもう少し女性が強くて平等に近いと前にマイアさんが言っていたわ。
巡視をしていく中でやはり男の人が女性を守るという意識が強いのは理解していたが、女性から積極的に何度も声を掛けてくるのは新鮮に思った。
「確かに。私の肩書を好み、声を掛けてくる女性はたまにいるが、私はナーニョ様以外に興味は全くない。私はずっとナーニョ様のことだけしか見ていない」
私はその言葉を聞いて顔を赤くする。まさかこんな人の多いところで言われるとは思ってもみなかった。
「エサイアス様、その辺で……。ケイルート王太子殿下からも言われているでしょう?」
「チッ。相変わらずケイルート王太子殿下は抜け目がない」
後から聞いたのだが、ケイルート兄様は護衛たちに『ナーニョに近づく者全て排除せよ。エサイアスであってもだ! むしろエサイアスをメインに排除せよ』と言っていたらしい。
護衛たちは苦笑していたわ。
全く気づかない私も、私だ。
でも、こうして兄様たちにずっと守られていたのか。今まで苦労なくこれたのもみんなのおかげだ。
私たちは食事を早々に終えて部屋に戻っていった。
翌日から騎士団と別行動になった。騎士たちは街の周りを巡回して魔獣を討伐していく。私は畑や井戸に魔法を掛けていった。
「エサイアス様、ナーニョ様、本当に、本当にありがとうございました」
「短い期間でしたが、この街も素晴らしいですね。また寄らせていただきますね」
私たちは街長に感謝した後、街を出発した。王都までは三日ほどで辿り着いた。
王宮へ戻った後、私はどうすればいいんだろう?
これからのことを不安に思いながら私たちは王都へと向かった。
数名の女の子が私たちのテーブルを囲むように声を掛けてきた。護衛はすぐに私の側にきて離れるように彼女たちに促した。
女の子たちは睨みながら私から距離を取るけれど、エサイアス様と話がしたいようで私たちに構わず話を続けようとしている。
「君たちは私に何か用なのかな?」
エサイアス様が一言口にすると女の子たちは顔を赤らめて喜んでいる。その中の一人がモジモジしながら言った言葉に私は驚いた。
「あの、どうか私たちと、この中の一人でもいいです。一晩を共にしていただけませんか?」
巡視をしていると、街や村の女性から声を掛けられているのは知っていた。
滞在している間だけの恋人を作る騎士だっている。理解はしているけれど、いい感情は持てない。
エサイアス様は断ってくれるの?
まさか喜んでいる?
たった一瞬で色々なことを考えてしまう。『私がここにいるのに』という嫉妬が芽生える。
すると彼は微笑みながら女の子たちに向き合って話す。
「最近の女の子たちは積極的なんだな。それは悪いことではないけれど感心しない。残念ながら私は君たちに興味はない。申し訳ないが、私は食事中だ。他の誰かに声をかければいい」
「で、でも。エサイアス様には婚約者がいないと聞きました。ずっと憧れていて……。一夜だけで良いのです。誰にも言いません。どうか私たちに一夜の夢をお与え下さい」
彼女たちは引き下がらない様子。私が声をかければいいのかも迷ってしまう。
どうしようかと護衛騎士に視線を向けると、護衛騎士はうんざりしている様子だ。
もしかして私が知らないところでこのようなやり取りがあったのかもしれない。護衛騎士が女の子たちに声をかけ、排除しようと動いた時――
「私は君たちに興味がないと何度言えば分かってくれるのか? 婚約者はいなくても好きな人がいるし、その人には誠実でありたいんだ」
「黙っていればばれません。私たちは絶対に話しません!」
彼女たちも必死に言葉を返している。
「……黙っていればばれない、か。ナーニョ様にこんな阿婆擦れ女たちを目に入れさせたくはない。帰ってくれるか」
「で、でも……」
あれだけ拒否されても引き下がろうとしない彼女たちに内心は動転している。
「分からないのか? バレなければいいという問題ではない。私もこうして数多のライバルを押さえつけ、口説き落とそうと必死だ。それを邪魔するのは許さない。
英雄と言われている私でさえ選ばれる身なのでね。彼女からすれば私なんて大勢いるうちの一人だ」
「……そんな。まさか」
エサイアス様の言葉でようやく彼女たちも相手が誰か気づいたようだ。
「さあ、私に構っていないで他を当たってくれ」
エサイアス様がそう言い終わると同時に護衛が彼女たちを遠ざける。彼女たちは私を一目見てから離れていった。
「ナーニョ様、すまない。不快な思いをさせてしまった」
「いいえ、私は構いません。女性から積極的に声をかけてきたのには驚きました」
獣人の世界は男女平等だ。
この世界に来て男尊女卑なのだと知った時は驚いた。貴族と違い平民ならもう少し女性が強くて平等に近いと前にマイアさんが言っていたわ。
巡視をしていく中でやはり男の人が女性を守るという意識が強いのは理解していたが、女性から積極的に何度も声を掛けてくるのは新鮮に思った。
「確かに。私の肩書を好み、声を掛けてくる女性はたまにいるが、私はナーニョ様以外に興味は全くない。私はずっとナーニョ様のことだけしか見ていない」
私はその言葉を聞いて顔を赤くする。まさかこんな人の多いところで言われるとは思ってもみなかった。
「エサイアス様、その辺で……。ケイルート王太子殿下からも言われているでしょう?」
「チッ。相変わらずケイルート王太子殿下は抜け目がない」
後から聞いたのだが、ケイルート兄様は護衛たちに『ナーニョに近づく者全て排除せよ。エサイアスであってもだ! むしろエサイアスをメインに排除せよ』と言っていたらしい。
護衛たちは苦笑していたわ。
全く気づかない私も、私だ。
でも、こうして兄様たちにずっと守られていたのか。今まで苦労なくこれたのもみんなのおかげだ。
私たちは食事を早々に終えて部屋に戻っていった。
翌日から騎士団と別行動になった。騎士たちは街の周りを巡回して魔獣を討伐していく。私は畑や井戸に魔法を掛けていった。
「エサイアス様、ナーニョ様、本当に、本当にありがとうございました」
「短い期間でしたが、この街も素晴らしいですね。また寄らせていただきますね」
私たちは街長に感謝した後、街を出発した。王都までは三日ほどで辿り着いた。
王宮へ戻った後、私はどうすればいいんだろう?
これからのことを不安に思いながら私たちは王都へと向かった。
48
あなたにおすすめの小説
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
底無しポーターは端倪すべからざる
さいわ りゅう
ファンタジー
運び屋(ポーター)のルカ・ブライオンは、冒険者パーティーを追放された。ーーが、正直痛くも痒くもなかった。何故なら仕方なく同行していただけだから。
ルカの魔法適正は、運び屋(ポーター)に適した収納系魔法のみ。
攻撃系魔法の適正は皆無だけれど、なんなら独りで魔窟(ダンジョン)にだって潜れる、ちょっと底無しで少し底知れない運び屋(ポーター)。
そんなルカの日常と、ときどき魔窟(ダンジョン)と周囲の人達のお話。
※タグの「恋愛要素あり」は年の差恋愛です。
※ごくまれに残酷描写を含みます。
※【小説家になろう】様にも掲載しています。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?
咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。
※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。
※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。
※騎士の上位が聖騎士という設定です。
※下品かも知れません。
※甘々(当社比)
※ご都合展開あり。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します
みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが……
余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。
皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる