25 / 42
本編
25
しおりを挟む
--パリンッ。
扉に掛かった魔法が壊された。私はずっと眠っていたようね。壊された衝撃で目が覚めた。
私の魔法を簡単に破るのは誰?
……もしかして。
一歩一歩部屋へと近づいてくる魔力に驚き、震えが止まらなくなっている。
ガチャリと扉が開いた。
その先にはかつての、愛おしい、私の、婚約者の姿があった。
「……ラナ。長い間待たせてごめん。迎えに来た」
涙が止まらなかった。
苦しくて、嬉しくて、悲しくて……。
様々な感情が、失われた感情が色を取り戻したかのように溢れ出てくる。
「ブラッド……。本当?」
「あぁ。もちろん本物だ。俺だって精霊の祝福を受けているだろう?」
「……そう、だったわね」
魔法使いの儀式は魔力が増加するだけではないというのは知っている。
ただ、その祝福は目に見える物ではないし、人によって違うので詳しくは分からない。
私の精神が崩壊しなかったのは神託と精霊の祝福なのだろうと思っている。
同じようにブラッドは記憶や経験を引き継いで生まれ変わったのだろうか?
「俺は、カルシオン陛下に願い、特別に魔法を掛けて貰っていた。そのままの姿で生まれ変わりをする事を」
父がブラッドローに王家の秘術を掛けていたの?
だとしたら精霊の祝福は何かしら?
私の疑問に答えるようにブラッドローは私を抱き上げて口を開いた。
「ラナと婚姻し、生涯を共に添い遂げたい。とずっと願っていたのを精霊達は叶えたのだと思う。君は神託を授かっていたからね」
「……本、当?」
声が震える。
「でないとこうして君に再び会う事は叶わなかったよ。他の魔法使いはずっと前に転生して祝福も切れた。今、正式な魔法使いは俺とラナだけだ」
「そっか。ブラッドローが私を迎えに来てくれたと言う事は、そうなのね」
「大丈夫だ。俺もこうして君を迎えに来た。これからは俺がずっとラナを支える」
ブラッドローの言葉に止まりかけていた涙がまた溢れだした。
もう、私は一人じゃないと、孤独に生きてきた苦しみや辛さが溢れて声になる。
そうして一頻り泣いた後、塔に誰かが入ってくるのを感じた。
ーーコンコンコン
ガチャリと開いた扉の先にいたのはツィリル王子だった。
何年ぶりだろう。
すっかり大人になって王としての貫禄もあった。
「ツィリル王子、大きくなったわね」
「……私の事を知っているのか?」
「あぁ、ごめんなさいね。魔法を掛けたままだったわ。こっちへいらっしゃい」
ツィリル王子は首だけの私に驚きながらも私の前にやってきた。
ふふっ。
小さかった頃を思い出すわ。
私は少し思い出に浸りながら髪の毛を彼の額に当てて魔法を解除する。
すると彼はうめき声と共に二、三歩後退り、頭を抱えた。
忘れていた事が走馬灯のように駆け巡っている様子。
「ラ、ナ。ラナ! 思い出したっ。僕は、ラナ! 一杯話したい事があるんだっ」
ツィリル王子は目を輝かせて私に話し掛けてくる。
私は彼に優しく抱えられながら微笑む。
そこからツィリル王子は私に今までの事をずっと話し続けていた。彼は止めどなく会話をする。
好きになったフラヴィの話や魔法使いを増やしている事やアレフィオやグリーヌの話も。
今では魔法を使って魔獣を討伐する以外に生活に転用出来ないか試行錯誤が行われているらしい。
そして魔石の活用も一気に増えてアレフィオやグリーヌは大金持ちになった。
羨ましいって。
青春の一ページを思い出したようで一頻り話をした後、ブラッドローを追いかけて来たと。
みんなも心配しているし、また来るといって塔を後にした。
「嵐のように過ぎ去っていったわ」
「あぁ。彼はそれだけラナの事を想っていたんだろう」
「そうね、きっと彼にとっては私は初恋の相手だったのだと思うわ」
「ラナ、少し疲れただろう? 眠るか?」
「眠りたくないわ。眠ったらこれが夢だったら悲しいもの」
「大丈夫だ。俺がずっとここにいるから。一緒に身体を元に戻すために必要な休息だ」
「……そうね。嬉しい。身体のためにも少し休まないとね」
私はブラッドローが用意してくれた首用ベッドに入って目を閉じる。
ブラッドローが私のためだけに用意してくれた物。
千年以上も繰り返し使い続けている。
このベッドとももうすぐお別れだと思うと少し感慨深いわ。
私は身体が戻った後の事を考えると気が重い。
でもこれからはブラッドローが側に居てくれるというだけで嬉しくてまた少し泣けた。
「ラナ! おはようっ! 今日も来たよ。……なんだ、ブラッドロー。ここにいたのか」
「陛下、勝手に女性の部屋へ侵入してはいけません。ラナは私の婚約者ですから」
「ラナは首だけだし、魔法も私より強いのだから何の心配もない。もっとラナと話がしたいし、魔法の事を知りたいのだ」
「陛下、ラナは……「ブラッド、いいわ。私から話すわ」」
ツィリル陛下は興味津々とばかりに椅子に座り、私が話し始めるのを待っている様子。
ブラッドは心配そうにしているけれど、私を見て口を出さないと決めたみたい。
扉に掛かった魔法が壊された。私はずっと眠っていたようね。壊された衝撃で目が覚めた。
私の魔法を簡単に破るのは誰?
……もしかして。
一歩一歩部屋へと近づいてくる魔力に驚き、震えが止まらなくなっている。
ガチャリと扉が開いた。
その先にはかつての、愛おしい、私の、婚約者の姿があった。
「……ラナ。長い間待たせてごめん。迎えに来た」
涙が止まらなかった。
苦しくて、嬉しくて、悲しくて……。
様々な感情が、失われた感情が色を取り戻したかのように溢れ出てくる。
「ブラッド……。本当?」
「あぁ。もちろん本物だ。俺だって精霊の祝福を受けているだろう?」
「……そう、だったわね」
魔法使いの儀式は魔力が増加するだけではないというのは知っている。
ただ、その祝福は目に見える物ではないし、人によって違うので詳しくは分からない。
私の精神が崩壊しなかったのは神託と精霊の祝福なのだろうと思っている。
同じようにブラッドは記憶や経験を引き継いで生まれ変わったのだろうか?
「俺は、カルシオン陛下に願い、特別に魔法を掛けて貰っていた。そのままの姿で生まれ変わりをする事を」
父がブラッドローに王家の秘術を掛けていたの?
だとしたら精霊の祝福は何かしら?
私の疑問に答えるようにブラッドローは私を抱き上げて口を開いた。
「ラナと婚姻し、生涯を共に添い遂げたい。とずっと願っていたのを精霊達は叶えたのだと思う。君は神託を授かっていたからね」
「……本、当?」
声が震える。
「でないとこうして君に再び会う事は叶わなかったよ。他の魔法使いはずっと前に転生して祝福も切れた。今、正式な魔法使いは俺とラナだけだ」
「そっか。ブラッドローが私を迎えに来てくれたと言う事は、そうなのね」
「大丈夫だ。俺もこうして君を迎えに来た。これからは俺がずっとラナを支える」
ブラッドローの言葉に止まりかけていた涙がまた溢れだした。
もう、私は一人じゃないと、孤独に生きてきた苦しみや辛さが溢れて声になる。
そうして一頻り泣いた後、塔に誰かが入ってくるのを感じた。
ーーコンコンコン
ガチャリと開いた扉の先にいたのはツィリル王子だった。
何年ぶりだろう。
すっかり大人になって王としての貫禄もあった。
「ツィリル王子、大きくなったわね」
「……私の事を知っているのか?」
「あぁ、ごめんなさいね。魔法を掛けたままだったわ。こっちへいらっしゃい」
ツィリル王子は首だけの私に驚きながらも私の前にやってきた。
ふふっ。
小さかった頃を思い出すわ。
私は少し思い出に浸りながら髪の毛を彼の額に当てて魔法を解除する。
すると彼はうめき声と共に二、三歩後退り、頭を抱えた。
忘れていた事が走馬灯のように駆け巡っている様子。
「ラ、ナ。ラナ! 思い出したっ。僕は、ラナ! 一杯話したい事があるんだっ」
ツィリル王子は目を輝かせて私に話し掛けてくる。
私は彼に優しく抱えられながら微笑む。
そこからツィリル王子は私に今までの事をずっと話し続けていた。彼は止めどなく会話をする。
好きになったフラヴィの話や魔法使いを増やしている事やアレフィオやグリーヌの話も。
今では魔法を使って魔獣を討伐する以外に生活に転用出来ないか試行錯誤が行われているらしい。
そして魔石の活用も一気に増えてアレフィオやグリーヌは大金持ちになった。
羨ましいって。
青春の一ページを思い出したようで一頻り話をした後、ブラッドローを追いかけて来たと。
みんなも心配しているし、また来るといって塔を後にした。
「嵐のように過ぎ去っていったわ」
「あぁ。彼はそれだけラナの事を想っていたんだろう」
「そうね、きっと彼にとっては私は初恋の相手だったのだと思うわ」
「ラナ、少し疲れただろう? 眠るか?」
「眠りたくないわ。眠ったらこれが夢だったら悲しいもの」
「大丈夫だ。俺がずっとここにいるから。一緒に身体を元に戻すために必要な休息だ」
「……そうね。嬉しい。身体のためにも少し休まないとね」
私はブラッドローが用意してくれた首用ベッドに入って目を閉じる。
ブラッドローが私のためだけに用意してくれた物。
千年以上も繰り返し使い続けている。
このベッドとももうすぐお別れだと思うと少し感慨深いわ。
私は身体が戻った後の事を考えると気が重い。
でもこれからはブラッドローが側に居てくれるというだけで嬉しくてまた少し泣けた。
「ラナ! おはようっ! 今日も来たよ。……なんだ、ブラッドロー。ここにいたのか」
「陛下、勝手に女性の部屋へ侵入してはいけません。ラナは私の婚約者ですから」
「ラナは首だけだし、魔法も私より強いのだから何の心配もない。もっとラナと話がしたいし、魔法の事を知りたいのだ」
「陛下、ラナは……「ブラッド、いいわ。私から話すわ」」
ツィリル陛下は興味津々とばかりに椅子に座り、私が話し始めるのを待っている様子。
ブラッドは心配そうにしているけれど、私を見て口を出さないと決めたみたい。
51
あなたにおすすめの小説
お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ
Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。
理由は決まって『従妹ライラ様との用事』
誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。
「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」
二人の想いは、重なり合えるのだろうか ……
※他のサイトにも公開しています。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
婚約破棄されたので頑張るのをやめました 〜昼寝と紅茶だけの公爵令嬢なのに、なぜか全部うまくいきます〜あ
鍛高譚
恋愛
王太子から婚約破棄された衝撃で階段から落ちた公爵令嬢シャル・ド・ネ・アルベール。
目覚めた彼女は、なんと前世の記憶——ブラック企業で働き詰めだったOL・佐伯ゆかりとしての人生を思い出してしまう。
無理して働いた末に過労死した前世の反省から、シャルは決意する。
「もう頑張らない。今度の人生は“好き”と“昼寝”だけで満たしますわ!」
貴族としての特権をフル活用し、ワイン造りやスイーツ作りなど“趣味”の延長でゆるゆる領地改革。
気づけば国王にも称賛され、周囲の評価はうなぎのぼり!?
一方、彼女を見下していた王太子と“真実の愛()”の令嬢は社交界で大炎上。
誰もざまぁされろなんて言ってないのに……勝手に転がり落ちていく元関係者たち。
本人はただ紅茶とスコーンを楽しんでいるだけなのに――
そんな“努力しない系”令嬢が、理想の白い結婚相手と出会い、
甘くてふわふわ、そしてちょっぴり痛快な自由ライフを満喫する
ざまぁ(他力本願)×スローライフ×ちょっと恋愛な物語です♪
『平民を人間扱いしない公爵令息、あなたも平民です! ~系譜検察官の目は欺けません~
鷹 綾
恋愛
王立学園の卒業舞踏会。
公爵令息アドリアン・ジオニックは、平民の少女を連れて現れ、堂々と言い放った。
「身分など関係ない。彼女こそ、私の真実の愛だ」
だがその一方で、彼は平民や下級貴族を露骨に見下し、使用人を人間扱いすらしない傲慢な人物だった。
そんな彼の振る舞いに違和感を抱いたのは、王宮図書室に通う地味な令嬢アウレリア。
古文書や家系記録を研究する彼女の正体は、王国の貴族制度を守るために存在する一族――系譜検察官の家系の娘だった。
「公爵家にしては……家系が妙です」
調査を進めるアウレリアは、やがて驚くべき事実に辿り着く。
――その公爵家の家系図は、偽造されたものだった。
王宮舞踏会での公開の場。
提出された調査報告書により、王命が下る。
爵位剥奪。
財産没収。
そして貴族身分の完全剥奪。
貴族を名乗り、平民を見下していた男に突きつけられる残酷な真実。
「私は貴族だ!」
叫ぶ元公爵令息に、アウレリアは静かに告げる。
「いいえ。あなたは――ただの平民です」
平民を人間扱いしなかった男が、自らも平民だったと知るとき。
王国史に残る、最も皮肉なざまぁ事件が幕を開ける。
婚約破棄されたその後は、何も起きない日々でした
ふわふわ
恋愛
婚約破棄――
それは、多くの令嬢にとって人生を揺るがす一大事件。
けれど彼女は、泣き叫ぶことも、復讐に走ることもなかった。
「……では、私は日常に戻ります」
派手なざまぁも、劇的な逆転劇もない。
彼女が選んだのは、線を引き、基準を守り、同じ判断を繰り返すこと。
王宮では改革が進み、領地では生活が整えられていく。
誰かが声高に称えられることもなく、
誰かが悪役として裁かれることもない。
それでも――
混乱は起きず、争いは減り、
人々は「明日も今日と同じである」ことを疑わなくなっていく。
選ばない勇気。
変えない決断。
名を残さず、英雄にならない覚悟。
これは、
婚約破棄をきっかけに
静かに日常を守り続けた一人の令嬢と、
その周囲が“当たり前”を取り戻していく物語。
派手ではない。
けれど、確かに強い。
――それでも、日常は続く。
裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。
夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。
辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。
側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。
※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。
私が生きていたことは秘密にしてください
月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。
見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。
「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる