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迎えた当日。
私は伯爵家の侍女やマーラに磨き上げられていた。
「お嬢様、素敵ですわ。リューク様には勿体ないくらいです。聖女なんて目じゃありませんわ」
「ふふっ。こんなに素敵に仕上げてくれて有難う。自分でも驚いてしまったわ。でも聖女様を悪く言っては駄目よ?おかげで私は少し我慢するだけで晴れて自由の身になるんですもの」
「そうですね。私たちはイーリス様のお帰りを心待ちにしております」
侍女達はにこやかに話をしながら私の準備をしてくれたわ。久々に着飾ると何処か心もウキウキしてしまうわ。私だって女の子だもの。仕方がないわよね。
そしてサロンでリューク様が来るのを待つことにした。
「リス姉さま、とっても綺麗です。私もリス姉さまのようになれるかしら」
「ララはお父様とお母様の良い所を引き継いでいるのだから反対に私が心配になってしまうわ。バルトが跡を継ぐのだし、ララは好きな方と結婚するのですよ」
「リューク様は本当に馬鹿よね。こんなに素敵な姉さまに気づいていないなんて」
ララは飛び切り可愛い顔で甘えてくる。ララの言うことなら何でも許せてしまう気がするの。可愛い妹だわ。
「ララ嬉しいわ。でも私はララが幸せならそれでいいのよ。バルトもしっかりしているし、私は助かっているわ」
そうして妹と話をしていたらお迎えが来たみたい。
「イーリス、迎えに来た」
「リューク様、先日ぶりですわね。今日は宜しくお願い致します」
「・・・あぁ」
リューク様は何か困っている様子。私の言った事を嫌味として捉えたのかしら?
「ほらっ、ここでイーリス姉さまを褒めるのが婚約者でしてよ!」
ララがぷんすこ怒っているわ。怒っているように見えない所も妹らしくて可愛いのですが。
「・・・あぁ、イーリス。良く似合っている」
「有難うございます。ではリューク様舞踏会の時間も迫っていますわ。急ぎましょう」
リューク様は戸惑っているような、困惑しているような感じがしたわ。やはり私といるのは不本意なのかもしれない。私は話を切り替える。
「・・・そうだな」
私たちは侯爵家の馬車に乗り王宮に向かった。馬車の中では無言が続いて気まずかったのは仕方がないわ。お互い窓を見ながら顔を合わせる事もなく馬車は目的地へと到着した。
「ランドル侯爵家リューク様並びにブライトン伯爵家イーリス様ご入場です」
私はリューク様のエスコートで会場へと入っていく。
煌びやかな王宮の舞踏会、紳士淑女が集まりダンスを楽しむ格式高い会場の1つ。女の子なら誰でも一度は憧れる場所。
あぁ、本音を言うと来たくなかった。
やっぱり好奇の目に晒されているじゃない。
クスクスと聞こえる失笑の声。ニヤニヤと向けられる生温い視線。私は笑顔を作っているけれど、心は沈んでいくばかりだ。これを3年も耐えるのね。
私達は陛下へと挨拶をし、移動する。後は王太子夫妻のファーストダンスが始まるのを待つばかりとなった。曲が流れ始め、王太子殿下と王太子妃様がホールの中央へと向かってお互いに礼をしている。
私としてはリューク様とダンスを踊ってすぐ帰りたい。気まずいし、会場の視線も気になる。家の為とはえ、心は重い。それはリューク様も同じだろうけれど。
そうして王太子殿下達のダンスを見ながら二人で立っていると、声をかけられる。
「あら、リュークじゃない。来ないって聞いたんだけど」
声を掛けてきたのは、リシェ様だった。
リシェ様はとても笑顔でリューク様と話をしている。渦中の人物。私の心は更に重く冷え固まる。
「リシェ、どうしたんだ?君こそ面倒がって参加しないと言っていたじゃないか」
リューク様はどことなく面倒くさそうな態度で話をしている。
「えぇ、参加するつもりは無かったのだけど、教会の方から『聖女として王家と交流の機会を持て』と言われて参加したのよ。全く面倒だわ」
堂々と言ってのけるリシェ様の心は絶対鋼で出来ているわ。貴族達の視線も気にしていない。むしろ羨望のまなざしだと思っていそうな気配。
するとリシェ様は私の方へと向き微笑みかけてきた。
「リュークの婚約者の、誰だっけ」
「・・・イーリスだ」
「そう、イーリス様。リュークを少しお借りしますわ」
「えっ」
私が戸惑っている間にリシェ様はリューク様の腕を取り、踊りに誘っている。
「俺はまだ婚約者と踊っていないんだが」
リューク様の眉に皺が寄っている。
そんな事もあるのね。
今までならホイホイと行っていただろうに。流石に婚約者とのファーストダンスの重要性に今更ながら気づいたとでもいうのでしょうか。周りの人達の視線も気になって仕方がない。
「いいじゃない。私とリュークの仲でしょう?」
「はっ?」
「ねっ!いつも言っているでしょう?」
「・・・だが」
二人の距離はとても近い。私は何を見せつけられているのかしら。
「・・・聖女様の願いですわ。どうぞ私に構わずに聖女様を優先してあげてくださいませ」
「ほらっ、婚約者様もそう言っている事だし、行きましょう」
リシェ様はそういってグイグイ彼の腕を引っ張り歩いて行ってしまった。どうやらファーストダンスを踊るようだ。
泣きたい。
いくら政略結婚とはいえ心が折れそうになる。
聖女を引き立てるためだけに私は呼ばれたの?
私は伯爵家の侍女やマーラに磨き上げられていた。
「お嬢様、素敵ですわ。リューク様には勿体ないくらいです。聖女なんて目じゃありませんわ」
「ふふっ。こんなに素敵に仕上げてくれて有難う。自分でも驚いてしまったわ。でも聖女様を悪く言っては駄目よ?おかげで私は少し我慢するだけで晴れて自由の身になるんですもの」
「そうですね。私たちはイーリス様のお帰りを心待ちにしております」
侍女達はにこやかに話をしながら私の準備をしてくれたわ。久々に着飾ると何処か心もウキウキしてしまうわ。私だって女の子だもの。仕方がないわよね。
そしてサロンでリューク様が来るのを待つことにした。
「リス姉さま、とっても綺麗です。私もリス姉さまのようになれるかしら」
「ララはお父様とお母様の良い所を引き継いでいるのだから反対に私が心配になってしまうわ。バルトが跡を継ぐのだし、ララは好きな方と結婚するのですよ」
「リューク様は本当に馬鹿よね。こんなに素敵な姉さまに気づいていないなんて」
ララは飛び切り可愛い顔で甘えてくる。ララの言うことなら何でも許せてしまう気がするの。可愛い妹だわ。
「ララ嬉しいわ。でも私はララが幸せならそれでいいのよ。バルトもしっかりしているし、私は助かっているわ」
そうして妹と話をしていたらお迎えが来たみたい。
「イーリス、迎えに来た」
「リューク様、先日ぶりですわね。今日は宜しくお願い致します」
「・・・あぁ」
リューク様は何か困っている様子。私の言った事を嫌味として捉えたのかしら?
「ほらっ、ここでイーリス姉さまを褒めるのが婚約者でしてよ!」
ララがぷんすこ怒っているわ。怒っているように見えない所も妹らしくて可愛いのですが。
「・・・あぁ、イーリス。良く似合っている」
「有難うございます。ではリューク様舞踏会の時間も迫っていますわ。急ぎましょう」
リューク様は戸惑っているような、困惑しているような感じがしたわ。やはり私といるのは不本意なのかもしれない。私は話を切り替える。
「・・・そうだな」
私たちは侯爵家の馬車に乗り王宮に向かった。馬車の中では無言が続いて気まずかったのは仕方がないわ。お互い窓を見ながら顔を合わせる事もなく馬車は目的地へと到着した。
「ランドル侯爵家リューク様並びにブライトン伯爵家イーリス様ご入場です」
私はリューク様のエスコートで会場へと入っていく。
煌びやかな王宮の舞踏会、紳士淑女が集まりダンスを楽しむ格式高い会場の1つ。女の子なら誰でも一度は憧れる場所。
あぁ、本音を言うと来たくなかった。
やっぱり好奇の目に晒されているじゃない。
クスクスと聞こえる失笑の声。ニヤニヤと向けられる生温い視線。私は笑顔を作っているけれど、心は沈んでいくばかりだ。これを3年も耐えるのね。
私達は陛下へと挨拶をし、移動する。後は王太子夫妻のファーストダンスが始まるのを待つばかりとなった。曲が流れ始め、王太子殿下と王太子妃様がホールの中央へと向かってお互いに礼をしている。
私としてはリューク様とダンスを踊ってすぐ帰りたい。気まずいし、会場の視線も気になる。家の為とはえ、心は重い。それはリューク様も同じだろうけれど。
そうして王太子殿下達のダンスを見ながら二人で立っていると、声をかけられる。
「あら、リュークじゃない。来ないって聞いたんだけど」
声を掛けてきたのは、リシェ様だった。
リシェ様はとても笑顔でリューク様と話をしている。渦中の人物。私の心は更に重く冷え固まる。
「リシェ、どうしたんだ?君こそ面倒がって参加しないと言っていたじゃないか」
リューク様はどことなく面倒くさそうな態度で話をしている。
「えぇ、参加するつもりは無かったのだけど、教会の方から『聖女として王家と交流の機会を持て』と言われて参加したのよ。全く面倒だわ」
堂々と言ってのけるリシェ様の心は絶対鋼で出来ているわ。貴族達の視線も気にしていない。むしろ羨望のまなざしだと思っていそうな気配。
するとリシェ様は私の方へと向き微笑みかけてきた。
「リュークの婚約者の、誰だっけ」
「・・・イーリスだ」
「そう、イーリス様。リュークを少しお借りしますわ」
「えっ」
私が戸惑っている間にリシェ様はリューク様の腕を取り、踊りに誘っている。
「俺はまだ婚約者と踊っていないんだが」
リューク様の眉に皺が寄っている。
そんな事もあるのね。
今までならホイホイと行っていただろうに。流石に婚約者とのファーストダンスの重要性に今更ながら気づいたとでもいうのでしょうか。周りの人達の視線も気になって仕方がない。
「いいじゃない。私とリュークの仲でしょう?」
「はっ?」
「ねっ!いつも言っているでしょう?」
「・・・だが」
二人の距離はとても近い。私は何を見せつけられているのかしら。
「・・・聖女様の願いですわ。どうぞ私に構わずに聖女様を優先してあげてくださいませ」
「ほらっ、婚約者様もそう言っている事だし、行きましょう」
リシェ様はそういってグイグイ彼の腕を引っ張り歩いて行ってしまった。どうやらファーストダンスを踊るようだ。
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