1 / 27
プロローグ
しおりを挟む
誰かが私を呼ぶ声で朦朧としていた意識が呼び起される。
「ブランシュお嬢様!! お怪我はありませんでしたかっ!?」
ん?
誰かが呼んでいる??
重たい瞼を少し上げると視界に飛び込んできたのは私の護衛騎士。
部屋になだれ込んで来た騎士達に成すすべなく捕縛されていく人達。怒号が飛び交い、騒然としている。
あぁ、確か何かの薬を嗅がされたんだっけ?
なんて思いながら私は頭痛と重い瞼と戦いながらなんとか反応してみる。
あぁ、やっぱりだめだ。眠い。私の意思とは反対にまた瞼が降りていく。
ーー
「楓さんったら。ボーっとしちゃって。大丈夫なの?今日はゆっくり休んだ方がいいよ」
同僚の佐伯さんは私を心配そうに見つめている。
「……そうね。今日は頭が痛くて仕事にならないだろうし、早退するわ」
課長に体調不良を伝えて今日は仕事を早退する事にした。
……はぁ、疲れた。頭が痛い。
今日の私が体調不良の理由は昨日、人生初の修羅場を体験した事によるものなんだよね。
簡単に言えば彼は結婚を控えた私という婚約者が居ながら幼馴染の女と二股していたの。
何故分かったかと言うと、彼女は私達が一月前に住み始めたマンションまで押しかけてきたからだ。押しかけてきた彼女の話す内容は寝耳に水だった。
どうやら彼女は来月に籍を入れる予定だったのだとか。
え?
私との結婚式は?
疑問と混乱が頭の中で渦巻いている。
もしかして私は騙されていたの? という気持ちで苦しくなる。
唐突の事で理解が追いつかない。
まるで小説を呼んでいるかのような、他人感覚のような錯覚さえ覚えたわ。だって、私の両親と顔合わせだってしたじゃない。
どういう事なの?
彼女は私に『ブス!別れろ』と、言いながら彼との思い出の品を投げて寄こした。
えぇ、ご丁寧にベッドでの写真や愛していると書かれた手紙をね!
私が浮気相手だとでも言いたいの!?
私も怒りで声を上げる。お互いが本命だと取っ組み合いの喧嘩にまで発展してしまったわ。
ギャーギャー大声で掴み合っていると、仕事から帰ってきた彼が私達を見つけたようだ。
それでも私達は止まらない。すると、彼は私達の取っ組み合いを止めようと私をドンッっと力いっぱい押して引き離した。
……え?
私は勢いよく後ろに倒れてテーブルの角に頭を打ち付けて気絶してしまったみたい。
気が付くと彼女は既に帰っていたようで彼だけが部屋に居たわ。
「気が付いた?」
ソファに寝かされていたようで彼が心配そうに私を覗き込んでいる。私はゆっくりと身体を起こしソファに座りなおした。
「彼女は?」
「……ごめん」
「何がごめんなのよ!」
大声を上げるとズキンと頭が痛んだ。私は冷蔵庫から保冷剤を取り出し、ぶつけた箇所を冷やし再度ソファに座る。黙ったままの彼に苛立ち口を開いた。
「私との事は浮気だったのね。最悪、結婚詐欺!」
「……ごめん」
「ごめんじゃないでしょう!? 両親に挨拶だって済ませてるのよ?」
「……ごめん」
ただ謝ればいいという彼の態度に益々感情が揺さぶられる。
「謝ればいいってもんじゃないの!!」
痛む頭を押さえながら何か言っている彼を無視して彼の母に連絡をした。
「夜分遅くすみません。雅也君との結婚が無くなりました」
「楓ちゃん、どういう、事なの?」
私は事情を話すと、電話口から聞こえてきた動揺する声。彼の母は相手の事を知っていたようだった。
マジでなんなの!?
知っていて黙っていた?
私は彼の母に思いの丈をぶちまけ、電話を切って少しすっきりするけれど、ズキズキと頭の痛みは引く様子がない。
……彼の母は電話の向こうでただただ謝るだけだった。
なんて惨めなんだろう。
彼女を優先した事が悲しくて悔しくて涙が止まらない。
なんて最低なんだろう。
もういや!いやだ、いやだ。このマンションに一秒も居たくない。
だって浮気相手が投げて寄こした写真にはこの部屋のベッドが映っていたのよ?
彼は私に何か言っているけれど、無視を決め込み、まだ使っていない部屋に入って鍵を掛けた。
突然の出来事で混乱と裏切られたこの気持ちをどう整理すればいいのか分からない。
私は確かにさっきの相手ほど美人じゃない。ブスだって自覚はある。でもね、雅也君は『顔は関係ないって、君といたい』って言ってくれていたのに……。
もうすぐ結婚する、私は幸せの絶頂期にいたはずだったの。
まさかこんな事になるなんて。
私は部屋で蹲り、ズキズキと痛む頭を押さえている間にまた意識を失ったようだ。気づくと朝になっていた。
気だるい身体を無理やり起こす。
……もう彼とやっていけないわ。
週末までに荷物をまとめて実家に送ろう。
そう考えながら部屋から出て仕事の準備に取り掛かった。彼はまだ起きていないみたい。
私はマンションに住むようになってから彼を起こすことが日課だったけれど、もう起こす必要はないと一人で用意し、部屋を出た。
少し早い時間についた職場。鬱々としながら仕事をはじめたのはいいけれど、やはり頭の痛みは治らず。結局仕事を早退することにした私。
……このまま病院へ行こう。プラットホームには電車を知らせる音が聞こえてくる。ゲートが開き、電車に乗り込もうとした時、目の前が暗転した。
……あぁ、やっぱり打ち所が悪かったのね。
「ブランシュお嬢様!! お怪我はありませんでしたかっ!?」
ん?
誰かが呼んでいる??
重たい瞼を少し上げると視界に飛び込んできたのは私の護衛騎士。
部屋になだれ込んで来た騎士達に成すすべなく捕縛されていく人達。怒号が飛び交い、騒然としている。
あぁ、確か何かの薬を嗅がされたんだっけ?
なんて思いながら私は頭痛と重い瞼と戦いながらなんとか反応してみる。
あぁ、やっぱりだめだ。眠い。私の意思とは反対にまた瞼が降りていく。
ーー
「楓さんったら。ボーっとしちゃって。大丈夫なの?今日はゆっくり休んだ方がいいよ」
同僚の佐伯さんは私を心配そうに見つめている。
「……そうね。今日は頭が痛くて仕事にならないだろうし、早退するわ」
課長に体調不良を伝えて今日は仕事を早退する事にした。
……はぁ、疲れた。頭が痛い。
今日の私が体調不良の理由は昨日、人生初の修羅場を体験した事によるものなんだよね。
簡単に言えば彼は結婚を控えた私という婚約者が居ながら幼馴染の女と二股していたの。
何故分かったかと言うと、彼女は私達が一月前に住み始めたマンションまで押しかけてきたからだ。押しかけてきた彼女の話す内容は寝耳に水だった。
どうやら彼女は来月に籍を入れる予定だったのだとか。
え?
私との結婚式は?
疑問と混乱が頭の中で渦巻いている。
もしかして私は騙されていたの? という気持ちで苦しくなる。
唐突の事で理解が追いつかない。
まるで小説を呼んでいるかのような、他人感覚のような錯覚さえ覚えたわ。だって、私の両親と顔合わせだってしたじゃない。
どういう事なの?
彼女は私に『ブス!別れろ』と、言いながら彼との思い出の品を投げて寄こした。
えぇ、ご丁寧にベッドでの写真や愛していると書かれた手紙をね!
私が浮気相手だとでも言いたいの!?
私も怒りで声を上げる。お互いが本命だと取っ組み合いの喧嘩にまで発展してしまったわ。
ギャーギャー大声で掴み合っていると、仕事から帰ってきた彼が私達を見つけたようだ。
それでも私達は止まらない。すると、彼は私達の取っ組み合いを止めようと私をドンッっと力いっぱい押して引き離した。
……え?
私は勢いよく後ろに倒れてテーブルの角に頭を打ち付けて気絶してしまったみたい。
気が付くと彼女は既に帰っていたようで彼だけが部屋に居たわ。
「気が付いた?」
ソファに寝かされていたようで彼が心配そうに私を覗き込んでいる。私はゆっくりと身体を起こしソファに座りなおした。
「彼女は?」
「……ごめん」
「何がごめんなのよ!」
大声を上げるとズキンと頭が痛んだ。私は冷蔵庫から保冷剤を取り出し、ぶつけた箇所を冷やし再度ソファに座る。黙ったままの彼に苛立ち口を開いた。
「私との事は浮気だったのね。最悪、結婚詐欺!」
「……ごめん」
「ごめんじゃないでしょう!? 両親に挨拶だって済ませてるのよ?」
「……ごめん」
ただ謝ればいいという彼の態度に益々感情が揺さぶられる。
「謝ればいいってもんじゃないの!!」
痛む頭を押さえながら何か言っている彼を無視して彼の母に連絡をした。
「夜分遅くすみません。雅也君との結婚が無くなりました」
「楓ちゃん、どういう、事なの?」
私は事情を話すと、電話口から聞こえてきた動揺する声。彼の母は相手の事を知っていたようだった。
マジでなんなの!?
知っていて黙っていた?
私は彼の母に思いの丈をぶちまけ、電話を切って少しすっきりするけれど、ズキズキと頭の痛みは引く様子がない。
……彼の母は電話の向こうでただただ謝るだけだった。
なんて惨めなんだろう。
彼女を優先した事が悲しくて悔しくて涙が止まらない。
なんて最低なんだろう。
もういや!いやだ、いやだ。このマンションに一秒も居たくない。
だって浮気相手が投げて寄こした写真にはこの部屋のベッドが映っていたのよ?
彼は私に何か言っているけれど、無視を決め込み、まだ使っていない部屋に入って鍵を掛けた。
突然の出来事で混乱と裏切られたこの気持ちをどう整理すればいいのか分からない。
私は確かにさっきの相手ほど美人じゃない。ブスだって自覚はある。でもね、雅也君は『顔は関係ないって、君といたい』って言ってくれていたのに……。
もうすぐ結婚する、私は幸せの絶頂期にいたはずだったの。
まさかこんな事になるなんて。
私は部屋で蹲り、ズキズキと痛む頭を押さえている間にまた意識を失ったようだ。気づくと朝になっていた。
気だるい身体を無理やり起こす。
……もう彼とやっていけないわ。
週末までに荷物をまとめて実家に送ろう。
そう考えながら部屋から出て仕事の準備に取り掛かった。彼はまだ起きていないみたい。
私はマンションに住むようになってから彼を起こすことが日課だったけれど、もう起こす必要はないと一人で用意し、部屋を出た。
少し早い時間についた職場。鬱々としながら仕事をはじめたのはいいけれど、やはり頭の痛みは治らず。結局仕事を早退することにした私。
……このまま病院へ行こう。プラットホームには電車を知らせる音が聞こえてくる。ゲートが開き、電車に乗り込もうとした時、目の前が暗転した。
……あぁ、やっぱり打ち所が悪かったのね。
612
あなたにおすすめの小説
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
聞き分けよくしていたら婚約者が妹にばかり構うので、困らせてみることにした
今川幸乃
恋愛
カレン・ブライスとクライン・ガスターはどちらも公爵家の生まれで政略結婚のために婚約したが、お互い愛し合っていた……はずだった。
二人は貴族が通う学園の同級生で、クラスメイトたちにもその仲の良さは知られていた。
しかし、昨年クラインの妹、レイラが貴族が学園に入学してから状況が変わった。
元々人のいいところがあるクラインは、甘えがちな妹にばかり構う。
そのたびにカレンは聞き分けよく我慢せざるをえなかった。
が、ある日クラインがレイラのためにデートをすっぽかしてからカレンは決心する。
このまま聞き分けのいい婚約者をしていたところで状況は悪くなるだけだ、と。
※ざまぁというよりは改心系です。
※4/5【レイラ視点】【リーアム視点】の間に、入れ忘れていた【女友達視点】の話を追加しました。申し訳ありません。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる