【完結】美しすぎてごめんなさい☆

まるねこ

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プロローグ

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 誰かが私を呼ぶ声で朦朧としていた意識が呼び起される。

「ブランシュお嬢様!! お怪我はありませんでしたかっ!?」

ん?
誰かが呼んでいる??

重たい瞼を少し上げると視界に飛び込んできたのは私の護衛騎士。

 部屋になだれ込んで来た騎士達に成すすべなく捕縛されていく人達。怒号が飛び交い、騒然としている。

あぁ、確か何かの薬を嗅がされたんだっけ?
なんて思いながら私は頭痛と重い瞼と戦いながらなんとか反応してみる。

あぁ、やっぱりだめだ。眠い。私の意思とは反対にまた瞼が降りていく。



ーー

「楓さんったら。ボーっとしちゃって。大丈夫なの?今日はゆっくり休んだ方がいいよ」

同僚の佐伯さんは私を心配そうに見つめている。

「……そうね。今日は頭が痛くて仕事にならないだろうし、早退するわ」

 課長に体調不良を伝えて今日は仕事を早退する事にした。

……はぁ、疲れた。頭が痛い。

 今日の私が体調不良の理由は昨日、人生初の修羅場を体験した事によるものなんだよね。

簡単に言えば彼は結婚を控えた私という婚約者が居ながら幼馴染の女と二股していたの。

何故分かったかと言うと、彼女は私達が一月前に住み始めたマンションまで押しかけてきたからだ。押しかけてきた彼女の話す内容は寝耳に水だった。

どうやら彼女は来月に籍を入れる予定だったのだとか。

え?
私との結婚式は?
疑問と混乱が頭の中で渦巻いている。

もしかして私は騙されていたの? という気持ちで苦しくなる。
唐突の事で理解が追いつかない。

まるで小説を呼んでいるかのような、他人感覚のような錯覚さえ覚えたわ。だって、私の両親と顔合わせだってしたじゃない。

どういう事なの?

彼女は私に『ブス!別れろ』と、言いながら彼との思い出の品を投げて寄こした。

えぇ、ご丁寧にベッドでの写真や愛していると書かれた手紙をね!

私が浮気相手だとでも言いたいの!?

 私も怒りで声を上げる。お互いが本命だと取っ組み合いの喧嘩にまで発展してしまったわ。
ギャーギャー大声で掴み合っていると、仕事から帰ってきた彼が私達を見つけたようだ。

それでも私達は止まらない。すると、彼は私達の取っ組み合いを止めようと私をドンッっと力いっぱい押して引き離した。

……え?

私は勢いよく後ろに倒れてテーブルの角に頭を打ち付けて気絶してしまったみたい。



気が付くと彼女は既に帰っていたようで彼だけが部屋に居たわ。

「気が付いた?」

ソファに寝かされていたようで彼が心配そうに私を覗き込んでいる。私はゆっくりと身体を起こしソファに座りなおした。

「彼女は?」
「……ごめん」
「何がごめんなのよ!」

大声を上げるとズキンと頭が痛んだ。私は冷蔵庫から保冷剤を取り出し、ぶつけた箇所を冷やし再度ソファに座る。黙ったままの彼に苛立ち口を開いた。

「私との事は浮気だったのね。最悪、結婚詐欺!」
「……ごめん」
「ごめんじゃないでしょう!? 両親に挨拶だって済ませてるのよ?」
「……ごめん」

ただ謝ればいいという彼の態度に益々感情が揺さぶられる。

「謝ればいいってもんじゃないの!!」

痛む頭を押さえながら何か言っている彼を無視して彼の母に連絡をした。

「夜分遅くすみません。雅也君との結婚が無くなりました」
「楓ちゃん、どういう、事なの?」

私は事情を話すと、電話口から聞こえてきた動揺する声。彼の母は相手の事を知っていたようだった。

マジでなんなの!?
知っていて黙っていた?

私は彼の母に思いの丈をぶちまけ、電話を切って少しすっきりするけれど、ズキズキと頭の痛みは引く様子がない。

……彼の母は電話の向こうでただただ謝るだけだった。

なんて惨めなんだろう。

彼女を優先した事が悲しくて悔しくて涙が止まらない。

なんて最低なんだろう。
もういや!いやだ、いやだ。このマンションに一秒も居たくない。

だって浮気相手が投げて寄こした写真にはこの部屋のベッドが映っていたのよ?

彼は私に何か言っているけれど、無視を決め込み、まだ使っていない部屋に入って鍵を掛けた。

突然の出来事で混乱と裏切られたこの気持ちをどう整理すればいいのか分からない。



私は確かにさっきの相手ほど美人じゃない。ブスだって自覚はある。でもね、雅也君は『顔は関係ないって、君といたい』って言ってくれていたのに……。

もうすぐ結婚する、私は幸せの絶頂期にいたはずだったの。
まさかこんな事になるなんて。



私は部屋で蹲り、ズキズキと痛む頭を押さえている間にまた意識を失ったようだ。気づくと朝になっていた。
気だるい身体を無理やり起こす。

……もう彼とやっていけないわ。
週末までに荷物をまとめて実家に送ろう。

そう考えながら部屋から出て仕事の準備に取り掛かった。彼はまだ起きていないみたい。

私はマンションに住むようになってから彼を起こすことが日課だったけれど、もう起こす必要はないと一人で用意し、部屋を出た。



少し早い時間についた職場。鬱々としながら仕事をはじめたのはいいけれど、やはり頭の痛みは治らず。結局仕事を早退することにした私。

……このまま病院へ行こう。プラットホームには電車を知らせる音が聞こえてくる。ゲートが開き、電車に乗り込もうとした時、目の前が暗転した。

……あぁ、やっぱり打ち所が悪かったのね。
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