2 / 27
過去の話を整理しよう
しおりを挟む
頭の痛みで目を開けると、そこには見知らぬ部屋で寝ていた。いや、この場所、知っている、わ。
大好きな白い花模様の壁紙にレースのカーテン。
……どうやら私は前世を見ていたのね。
まだ記憶が混乱している。少し、情報を整理しなければ。まず前世の私。牧野 楓三十歳。仕事は商社の事務員。趣味は料理を作ること。
私は昔からげじ眉、団子鼻でみんなにブスブスと言われ続けていたし、自覚もしていた。だから、なるべく地味に、目立たないように、人に公害だと言われないようメイクも頑張っていたし、ひっそりと生きていこうと心に決めていた。
きっと私には生涯彼氏なんてものは出来ないと思っていたわ。だからコツコツ貯金してラノベで疑似恋愛を楽しんでいたの。
紳士な王子様もいいし、知的な彼もいいし、超マッチョな彼も素敵よね!つまり私の好みの幅は広大なのっ。っと、話が逸れたわ。
趣味は料理を中心としたインドアなものばかり。現実世界、一人で生きていこうと思っていたからなんでも一人でしなければいけない。
もし、働けなくなったら、とか老後はどうやって過ごそうとかを考えて手芸をしてみたり、アパートの窓際で家庭菜園したりしていた。
色々なことに挑戦して生き残れる物を探していた。基本的にブスだと自覚しているので人前に出るのは好きじゃない。人を避けている間に引っ込み思案になっていたと思う。
コミュ症気味の私はなるべく人に関わらない趣味を選んでいたの。
そんな私にまさか彼氏が出来るなんて思ってもいなかった。
雅也君は同じ会社の営業担当の人でよく事務に顔を出していたの。『真面目に仕事をしている楓が気になって声を掛けた』というのが付き合うきっかけ。
元々料理が好きだったけれど、雅也君に喜んで貰おうと更に料理を頑張って作っていたの。懐かしい思い出だわ。
結局、私は浮気相手だったのか、本命だったのかは分からなかったけれど、二股を掛けられていたのは間違いない。
……クソだな!!
今思い出しただけでも腹が立つ。モテない私は恋愛経験も少なくて雅也君のかけてくれる優しい言葉に舞い上がっていたのだと思う。
全然彼を分かっていなかった自分。
反省するわ。
そして今世。ブランシュ・マルリアーニ只今十歳。父はヨエル・マルリアーニ侯爵。母ロザーリエ。二つ年上の兄、ヴェルナー。マルリアーニ侯爵家は昔から美男美女の血統で有名な一族らしい。
いつも釣書が家族全員に送られてくるの。父には後妻や愛妾となりたい夫人方から。母には父と別れて妻になってほしいと。
父や母は恋愛結婚で今もラブラブカップルなので別れる気はさらさらない。
兄や私には生まれる前から釣書が届くというなんとも言えない摩訶不思議な事が起こっている。兄は跡継ぎで顔もいい。
実質相手を選り取り見取りで選び放題なので小さな間に婚約者を決めるのではなく、大きくなってから自分の好きな相手を選べばいいというのが両親のスタンスのようだ。
前世の私からすれば世界が違いすぎてただ指を咥えて見ているだけだったと思う。
私、ブランシュはというと、控え目に言って絶世の美少女。傾国を越えて歴史に名を残してもいいんじゃないかっていうほどよ!こんな造形美を初めてみたわ。自分で自分が怖くなる。
そして、その美しさが仇となる。
今十歳だけれど、既に私は二回も誘拐されかけたのよね。恐ろしすぎる。どうやら生まれてすぐに侯爵家から一歩も出ていないけれど、門番や侍女に誘拐されかけたらしい。一度目は門番が私を好き過ぎて誘拐未遂。
……ロリコン野郎め!
二度目は侍女が自分の子供にしたいと誘拐未遂。三度目の今回、前世を思い出す切っ掛けとなった誘拐事件。『いい天気だからお庭に出てみませんか?』という侍女の誘いに乗って庭に出た所に知らない男達が立っていた。
『あ、これはヤバいわ』と思ったけれど、どんくさい私はあっさりと男達に捕まった。男に何かを嗅がされて意識を失ってしまったのは覚えている。
大好きな白い花模様の壁紙にレースのカーテン。
……どうやら私は前世を見ていたのね。
まだ記憶が混乱している。少し、情報を整理しなければ。まず前世の私。牧野 楓三十歳。仕事は商社の事務員。趣味は料理を作ること。
私は昔からげじ眉、団子鼻でみんなにブスブスと言われ続けていたし、自覚もしていた。だから、なるべく地味に、目立たないように、人に公害だと言われないようメイクも頑張っていたし、ひっそりと生きていこうと心に決めていた。
きっと私には生涯彼氏なんてものは出来ないと思っていたわ。だからコツコツ貯金してラノベで疑似恋愛を楽しんでいたの。
紳士な王子様もいいし、知的な彼もいいし、超マッチョな彼も素敵よね!つまり私の好みの幅は広大なのっ。っと、話が逸れたわ。
趣味は料理を中心としたインドアなものばかり。現実世界、一人で生きていこうと思っていたからなんでも一人でしなければいけない。
もし、働けなくなったら、とか老後はどうやって過ごそうとかを考えて手芸をしてみたり、アパートの窓際で家庭菜園したりしていた。
色々なことに挑戦して生き残れる物を探していた。基本的にブスだと自覚しているので人前に出るのは好きじゃない。人を避けている間に引っ込み思案になっていたと思う。
コミュ症気味の私はなるべく人に関わらない趣味を選んでいたの。
そんな私にまさか彼氏が出来るなんて思ってもいなかった。
雅也君は同じ会社の営業担当の人でよく事務に顔を出していたの。『真面目に仕事をしている楓が気になって声を掛けた』というのが付き合うきっかけ。
元々料理が好きだったけれど、雅也君に喜んで貰おうと更に料理を頑張って作っていたの。懐かしい思い出だわ。
結局、私は浮気相手だったのか、本命だったのかは分からなかったけれど、二股を掛けられていたのは間違いない。
……クソだな!!
今思い出しただけでも腹が立つ。モテない私は恋愛経験も少なくて雅也君のかけてくれる優しい言葉に舞い上がっていたのだと思う。
全然彼を分かっていなかった自分。
反省するわ。
そして今世。ブランシュ・マルリアーニ只今十歳。父はヨエル・マルリアーニ侯爵。母ロザーリエ。二つ年上の兄、ヴェルナー。マルリアーニ侯爵家は昔から美男美女の血統で有名な一族らしい。
いつも釣書が家族全員に送られてくるの。父には後妻や愛妾となりたい夫人方から。母には父と別れて妻になってほしいと。
父や母は恋愛結婚で今もラブラブカップルなので別れる気はさらさらない。
兄や私には生まれる前から釣書が届くというなんとも言えない摩訶不思議な事が起こっている。兄は跡継ぎで顔もいい。
実質相手を選り取り見取りで選び放題なので小さな間に婚約者を決めるのではなく、大きくなってから自分の好きな相手を選べばいいというのが両親のスタンスのようだ。
前世の私からすれば世界が違いすぎてただ指を咥えて見ているだけだったと思う。
私、ブランシュはというと、控え目に言って絶世の美少女。傾国を越えて歴史に名を残してもいいんじゃないかっていうほどよ!こんな造形美を初めてみたわ。自分で自分が怖くなる。
そして、その美しさが仇となる。
今十歳だけれど、既に私は二回も誘拐されかけたのよね。恐ろしすぎる。どうやら生まれてすぐに侯爵家から一歩も出ていないけれど、門番や侍女に誘拐されかけたらしい。一度目は門番が私を好き過ぎて誘拐未遂。
……ロリコン野郎め!
二度目は侍女が自分の子供にしたいと誘拐未遂。三度目の今回、前世を思い出す切っ掛けとなった誘拐事件。『いい天気だからお庭に出てみませんか?』という侍女の誘いに乗って庭に出た所に知らない男達が立っていた。
『あ、これはヤバいわ』と思ったけれど、どんくさい私はあっさりと男達に捕まった。男に何かを嗅がされて意識を失ってしまったのは覚えている。
695
あなたにおすすめの小説
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
婚約者が選んだのは私から魔力を盗んだ妹でした
今川幸乃
恋愛
バートン伯爵家のミアの婚約者、パーシーはいつも「魔法が使える人がいい」とばかり言っていた。
実はミアは幼いころに水の精霊と親しくなり、魔法も得意だった。
妹のリリーが怪我した時に母親に「リリーが可哀想だから魔法ぐらい譲ってあげなさい」と言われ、精霊を譲っていたのだった。
リリーはとっくに怪我が治っているというのにずっと仮病を使っていて一向に精霊を返すつもりはない。
それでもミアはずっと我慢していたが、ある日パーシーとリリーが仲良くしているのを見かける。
パーシーによると「怪我しているのに頑張っていてすごい」ということらしく、リリーも満更ではなさそうだった。
そのためミアはついに彼女から精霊を取り戻すことを決意する。
ヒロインだけど出番なし⭐︎
ちよこ
恋愛
地味OLから異世界に転生し、ヒロイン枠をゲットしたはずのアリエル。
だが、現実は甘くない。
天才悪役令嬢セシフィリーネに全ルートをかっさらわれ、攻略対象たちは全員そっちに夢中。
出番のないヒロインとして静かに学園生活を過ごすが、卒業後はまさかの42歳子爵の後妻に!?
逃げた先の隣国で、まさかの展開が待っていた——
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?
今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。
しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。
が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。
レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。
レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。
※3/6~ プチ改稿中
多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】
23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも!
そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。
お願いですから、私に構わないで下さい!
※ 他サイトでも投稿中
「いらない」と捨てられた令嬢、実は全属性持ちの聖女でした
ゆっこ
恋愛
「リリアーナ・エヴァンス。お前との婚約は破棄する。もう用済み
そう言い放ったのは、五年間想い続けた婚約者――王太子アレクシスさま。
広間に響く冷たい声。貴族たちの視線が一斉に私へ突き刺さる。
「アレクシスさま……どういう、ことでしょうか……?」
震える声で問い返すと、彼は心底嫌そうに眉を顰めた。
「言葉の意味が理解できないのか? ――お前は“無属性”だ。魔法の才能もなければ、聖女の資質もない。王太子妃として役不足だ」
「無……属性?」
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる