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超鈍足ダッシュで逃げます
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ついにやってきたお茶会。
あれから何度となくデザイナーが我が家へ来てはデザインを書き上げていく謎の迷惑行為がありました。
デザイナー曰く『ブランシュお嬢様を見ているとイメージが空から降りてくるのです』よく分からないけれど、何着か無料で作って貰えたので良かったわ。
そして今回のお茶会のドレスは兄とお揃いにしたの。テーマは妖精らしい。どの辺が妖精なのかは正直私には分からないのだけれど、淡いグリーンのドレスでふんだんに使われたレース。
兄はシャツのボタン部分や袖部分が私と色合いを同じにしたフリルが付いてとても華やかな仕上がりになっていた。
「お兄様、とぉ~っても格好いいですわ」
「ブランシュこそ本当に妖精みたいだよ。城に出掛けるなんて憂鬱でしかないよ。このまま邸でお茶をする方がいいよね。出掛けたくない」
侍女達もうんうんと頷いているわ。
「王命なのが口惜しいわ。行ってすぐに帰ってきましょう」
「はい。お母様」
私達は馬車に乗り込み城へと向かった。
外の景色が気になって仕方がないのだけれど、母も兄も顔を出してはいけませんって言うの。でも、こればかりは仕方がないわよね。
きっと街並みは中世ヨーロッパのような格式高い作りの建物ばかりなのかしら?
でも中世の下水事情はあまり良くなかったはずなのよね。ただ、この世界は魔法で清掃する人がいると聞いたことがある。
きっと街は綺麗なはず!そう信じたいし、信じているわ!
それにしても今から大勢の人の前に出るのよね。憂鬱過ぎる。馬車が城に到着する頃にはすっかり笑顔も消えてしまう。
「ブランシュ、大丈夫かい? 僕が付いているからね」
「はい、お兄様」
馬車を降りてお兄様にエスコートされて城へと入っていく。もちろん反対側には母が側にいてくれている。随所に配置されている警備の騎士達の視線が一方向に集まっている。
纏わりついているような、驚いているような、好奇の目でみているような、様々な視線が私に向けられているのが分かる。
お城ってやっぱり恐ろしいわ!
「お兄様、怖い」
兄にしがみつきながら歩く。騎士達は私が過ぎ去る度にみんな手を胸に当てガタンと膝を付いているわ。
なんて不思議な光景なの!?
これは漫画本でしか見たことがない光景よ?
本当にこんな事ってあるのね。
「ブランシュ、大丈夫よ。母もこんな光景見たことは無かったわ。ふふっ、凄いわねブランシュ」
驚いている私を見ながら母は笑っている。私達は建物入り口から従者の案内で中庭へ向かって歩いていた。
何となく、何となくなんだけど、中庭遠くない?
遠回りをしているような気もするのだけれど。
「お兄様、中庭までこんなに遠いのですか?」
小声で聞いてみた。
「いや、いつもと違う通路を通っているみたいだ。引き返そう」
母と兄と視線が合って頷き合うと母は私の手をしっかりと掴んでそっと周囲を確認する。
案内の従者にはバレていないようだ。そして角を曲がるまで静かに歩いて従者が見えなくなった所で走り出す。
……引きこもりには辛かった。
走るのが遅いし、体力が無さ過ぎて自分が嫌になる。家に帰ったらスクワットとプランクをすると心に決めたわ。
筋肉を絶対つけよう。筋肉は裏切らない!!
幸いなことに私達が走っているのを警備の騎士達が気づいてくれたようですぐに助けてくれたの。騎士達は顔を真っ赤にしながらも私達を心配してくれている。
「どうなされましたか?」
後から来た警備の騎士とは違う二十台後半と思われる騎士服を着た人がイケメンが声を掛けてきた。
「今日のお茶会に出席するために従者が案内してくれていたのですが、中庭とは違う所に案内されそうになりましたの」
母がそう騎士に告げると、騎士は驚いたような、困惑したような顔を一瞬したけれど、私を見て何か納得したように笑顔で話す。
「この世の物とは思えぬほどの素晴らしきご令嬢に目がくらんでしまったのでしょう。すぐにその従者を捕まえますのでご安心下さい」
彼は騎士の礼を執ると部下に顎で指示をした。
「僭越ながら私が責任をもって中庭へとご案内致します」
母と兄はほっと安心したように見える。でもね、先ほど猛ダッシュ(超鈍足)した私は足が生まれたての小鹿のようになり、歩けないでいた。
「私めに抱き上げる栄誉を頂いても宜しいでしょうか?」
騎士は微笑みながら跪き私に手を差し出す。
なんてカッコいいんだ!!
その仕草に惚れてしまいそうよ。
「騎士様、お名前をお伺いしても?」
「私、ノルヴァン・アジュートです。第一騎士団、団長を務めさせて頂いております」
「アジュート様、お願いいたしますわ」
「ノルヴァンとお呼び下さい。麗しき姫君」
私はノルヴァン様の手を取ると、ヒョイと抱えられた。
所為お姫様抱っこというやつ!
みんな見てる?
ちゃんと見てる?
人生でお姫様抱っこされるなんて滅多にないのよ?
イケメン騎士団長にお姫様抱っこされるなんて役得だわ。母は抱っこされた私を見て微笑んでいるけれど、兄は嫉妬で怖い顔をしているわ。後でお膝に乗ってあげるしかないかもしれない。
「ノルヴァン様、重くありませんか?」
「何をおっしゃるかと思えば。羽根が生えたように軽いですよ」
ノルヴァン様は満面の笑みを浮かべている。先ほどとは打って変わり、安心して中庭に到着する事ができた。
私達は遠回りを余儀なくされたせいでお茶会はもうすぐ始まろうとしていた。皆が着席しているわ。一同遅くなった私達に視線が集まる。
……うぅっ、怖いわ。
私は集まる視線が怖くなりノルヴァン様の胸板へ顔を向けて隠す。
「ブランシュ、さぁ、降りて。席はこっちだよ」
「はい、お兄様。ノルヴァン様、お連れいただき有難うございました」
抱っこされている私は顔を上げてノルヴァン様に微笑みながらお礼を言う。するとノルヴァン様はそっと私を降ろした後、胸を押さえて跪いたわ。何かやらかしてしまったのね。
ノルヴァン様、御免なさい。
「こらっ、ブランシュ。微笑んではいけないよ」
「はい、お兄様気を付けますわ」
兄にエスコートされて用意された席へと向かう。母はどうやら大人達同士で別の席に座るようだ。
あれから何度となくデザイナーが我が家へ来てはデザインを書き上げていく謎の迷惑行為がありました。
デザイナー曰く『ブランシュお嬢様を見ているとイメージが空から降りてくるのです』よく分からないけれど、何着か無料で作って貰えたので良かったわ。
そして今回のお茶会のドレスは兄とお揃いにしたの。テーマは妖精らしい。どの辺が妖精なのかは正直私には分からないのだけれど、淡いグリーンのドレスでふんだんに使われたレース。
兄はシャツのボタン部分や袖部分が私と色合いを同じにしたフリルが付いてとても華やかな仕上がりになっていた。
「お兄様、とぉ~っても格好いいですわ」
「ブランシュこそ本当に妖精みたいだよ。城に出掛けるなんて憂鬱でしかないよ。このまま邸でお茶をする方がいいよね。出掛けたくない」
侍女達もうんうんと頷いているわ。
「王命なのが口惜しいわ。行ってすぐに帰ってきましょう」
「はい。お母様」
私達は馬車に乗り込み城へと向かった。
外の景色が気になって仕方がないのだけれど、母も兄も顔を出してはいけませんって言うの。でも、こればかりは仕方がないわよね。
きっと街並みは中世ヨーロッパのような格式高い作りの建物ばかりなのかしら?
でも中世の下水事情はあまり良くなかったはずなのよね。ただ、この世界は魔法で清掃する人がいると聞いたことがある。
きっと街は綺麗なはず!そう信じたいし、信じているわ!
それにしても今から大勢の人の前に出るのよね。憂鬱過ぎる。馬車が城に到着する頃にはすっかり笑顔も消えてしまう。
「ブランシュ、大丈夫かい? 僕が付いているからね」
「はい、お兄様」
馬車を降りてお兄様にエスコートされて城へと入っていく。もちろん反対側には母が側にいてくれている。随所に配置されている警備の騎士達の視線が一方向に集まっている。
纏わりついているような、驚いているような、好奇の目でみているような、様々な視線が私に向けられているのが分かる。
お城ってやっぱり恐ろしいわ!
「お兄様、怖い」
兄にしがみつきながら歩く。騎士達は私が過ぎ去る度にみんな手を胸に当てガタンと膝を付いているわ。
なんて不思議な光景なの!?
これは漫画本でしか見たことがない光景よ?
本当にこんな事ってあるのね。
「ブランシュ、大丈夫よ。母もこんな光景見たことは無かったわ。ふふっ、凄いわねブランシュ」
驚いている私を見ながら母は笑っている。私達は建物入り口から従者の案内で中庭へ向かって歩いていた。
何となく、何となくなんだけど、中庭遠くない?
遠回りをしているような気もするのだけれど。
「お兄様、中庭までこんなに遠いのですか?」
小声で聞いてみた。
「いや、いつもと違う通路を通っているみたいだ。引き返そう」
母と兄と視線が合って頷き合うと母は私の手をしっかりと掴んでそっと周囲を確認する。
案内の従者にはバレていないようだ。そして角を曲がるまで静かに歩いて従者が見えなくなった所で走り出す。
……引きこもりには辛かった。
走るのが遅いし、体力が無さ過ぎて自分が嫌になる。家に帰ったらスクワットとプランクをすると心に決めたわ。
筋肉を絶対つけよう。筋肉は裏切らない!!
幸いなことに私達が走っているのを警備の騎士達が気づいてくれたようですぐに助けてくれたの。騎士達は顔を真っ赤にしながらも私達を心配してくれている。
「どうなされましたか?」
後から来た警備の騎士とは違う二十台後半と思われる騎士服を着た人がイケメンが声を掛けてきた。
「今日のお茶会に出席するために従者が案内してくれていたのですが、中庭とは違う所に案内されそうになりましたの」
母がそう騎士に告げると、騎士は驚いたような、困惑したような顔を一瞬したけれど、私を見て何か納得したように笑顔で話す。
「この世の物とは思えぬほどの素晴らしきご令嬢に目がくらんでしまったのでしょう。すぐにその従者を捕まえますのでご安心下さい」
彼は騎士の礼を執ると部下に顎で指示をした。
「僭越ながら私が責任をもって中庭へとご案内致します」
母と兄はほっと安心したように見える。でもね、先ほど猛ダッシュ(超鈍足)した私は足が生まれたての小鹿のようになり、歩けないでいた。
「私めに抱き上げる栄誉を頂いても宜しいでしょうか?」
騎士は微笑みながら跪き私に手を差し出す。
なんてカッコいいんだ!!
その仕草に惚れてしまいそうよ。
「騎士様、お名前をお伺いしても?」
「私、ノルヴァン・アジュートです。第一騎士団、団長を務めさせて頂いております」
「アジュート様、お願いいたしますわ」
「ノルヴァンとお呼び下さい。麗しき姫君」
私はノルヴァン様の手を取ると、ヒョイと抱えられた。
所為お姫様抱っこというやつ!
みんな見てる?
ちゃんと見てる?
人生でお姫様抱っこされるなんて滅多にないのよ?
イケメン騎士団長にお姫様抱っこされるなんて役得だわ。母は抱っこされた私を見て微笑んでいるけれど、兄は嫉妬で怖い顔をしているわ。後でお膝に乗ってあげるしかないかもしれない。
「ノルヴァン様、重くありませんか?」
「何をおっしゃるかと思えば。羽根が生えたように軽いですよ」
ノルヴァン様は満面の笑みを浮かべている。先ほどとは打って変わり、安心して中庭に到着する事ができた。
私達は遠回りを余儀なくされたせいでお茶会はもうすぐ始まろうとしていた。皆が着席しているわ。一同遅くなった私達に視線が集まる。
……うぅっ、怖いわ。
私は集まる視線が怖くなりノルヴァン様の胸板へ顔を向けて隠す。
「ブランシュ、さぁ、降りて。席はこっちだよ」
「はい、お兄様。ノルヴァン様、お連れいただき有難うございました」
抱っこされている私は顔を上げてノルヴァン様に微笑みながらお礼を言う。するとノルヴァン様はそっと私を降ろした後、胸を押さえて跪いたわ。何かやらかしてしまったのね。
ノルヴァン様、御免なさい。
「こらっ、ブランシュ。微笑んではいけないよ」
「はい、お兄様気を付けますわ」
兄にエスコートされて用意された席へと向かう。母はどうやら大人達同士で別の席に座るようだ。
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