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サン国の王子 サウル視点2
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「きっと大臣辺りがクーデターを起こしたんじゃないかとは思っていたが」
カインは大方の予想していたようだ。
「あぁ、当たりだ。王族はお前以外殺されたようだ。しかし宰相が謀叛を起こした大臣と貴族一派を掃討中でな。今は内戦一歩手前という所だ。お前を殺したい奴と、探して保護したい奴がいる状態だな。まぁ、ここに居る間は安全だろう」
カインは俺の言葉を聞き、何処か思い詰めていたような表情が少し緩んだ気がした。やはり家族や国の事が気になってはいたのだろう。
それから俺とカインは雑談をしながら薬が出来上がるのを待った。
魔女エキドナ様から手渡された大切な魔法薬を革袋へ入れた。注意事項を聞き、カインに別れを告げる。
……これでようやく兄を助けることが出来る。
城に戻ると父はまだかまだかと俺が戻ってくるのを待っていた。
逸る気持ちを抑え、その晩から兄上や側近達に薬を飲ませる事になった。父と宰相と三人だけで話をし、これからのことを打合せする。
夜を迎え、父と護衛騎士たちで後宮を訪れた。
扉は鍵が内側から掛けられていたが、扉を破壊して中へと乗り込む。
部屋の中では皆裸で淫らな行為に及んでいた。
兄上や側近たちは虚ろな目で『愛している』とブツブツと何度も呟いており、女は生きているのか分からない状態で異様な光景であった。
父はあまりの状況に一瞬声を失うが、すぐさま騎士たちに彼らを拘束させ、王宮の治療室へと運ばせた。
俺でさえ先程の光景を見てショックを受けたのだから母上や側近の家族達が目にしたらきっと倒れてしまっていたに違いない。
立ち会わせなくて良かった。
兄上達は皆痩せ細り、一刻も早く治療が必要とされた。ベッドに縛り付けられ、暴れてうめき声をあげている兄上たちを魔法で強制的に眠らせた。
ここからなら大丈夫だろうと待機していた側近の父親たちを治療室へと入れた。
父と俺、そして側近の父親たちが見守る中、治療を開始する。
眠っているはずの兄上達がひと匙の薬を口に含むと目をカッと見開き、女の名を呼びながら暴れて拘束を解こうとしていた。
やせ細った体のどこにこんな力が残っていたのだろうか。拘束している手や足が傷つき血が流れ出している。
半日ほどすると、嘘のようにぱたりと眠りに付いてしまった。
二日目薬を飲ませた途端、一晩中女を呼び、暴れた。拘束している腕はまた傷付き血が流れ出す。誰もがその光景に息を呑んだ。だが、彼らを思う家族はじっと朝方まで寄り添っていた。
三日目、四日目と薬を服用する内に段々と落ち着きを取り戻して五日目には拘束が解かれるまでになった。
その間、家族達はずっと付き添い、七日目には魔女エキドナ様が言っていたように、元の兄上達に戻っていた。
食事をろくに摂って居なかったため、兄上は当分の間治療室で過ごし、側近達は自宅で療養する事となった。
目が覚めてからの兄上は憑き物が落ちたようにスッキリとしていた。記憶もあの女の香りを嗅いでから曖昧になり、差し出された菓子を食べて以降の記憶は一切無かった。
不幸中の幸いだと思う。
それは側近たちも同じだった。きっと記憶があれば己を恥じ、罪の意識に苛まれていたに違いない。そこは私や父、側近の家族達も同じ思いだったようだ。
兄上や側近たちはみるみる回復し、王子としての仕事を徐々に再開し、父の補佐をするまでになった。
学生の頃も優秀であった兄上たちだが、魔女様の薬を飲んだせいか以前よりもさらに優秀になって戻ってきた。
これには父や宰相、大臣や貴族達も舌を巻くほどだ。
女のせいで地の底まで落ちていた兄たちの評価は今では上がる一方だ。
やはり次期王太子は兄上となりそうで俺はホッと一安心する。兄たちが閉じ込めていたあの女はというと、なぜか目が無くなっていた。
衰弱はしていたが命に別状はなかった。
ある程度体力が回復した後、自白魔法により、掠れて殆ど聞き取れない声で兄上たちに惚れ薬を盛ったと自白した。
王族や貴族に毒を盛った罪で女は死刑と決まったが、あまりの状況に事件は公にする事は伏せられ、女は秘密裏に処刑される事となった。
残念ながら最後まで女は薬の出所を吐く事は無く、どこで入手したのかは分からなかった。
カインは大方の予想していたようだ。
「あぁ、当たりだ。王族はお前以外殺されたようだ。しかし宰相が謀叛を起こした大臣と貴族一派を掃討中でな。今は内戦一歩手前という所だ。お前を殺したい奴と、探して保護したい奴がいる状態だな。まぁ、ここに居る間は安全だろう」
カインは俺の言葉を聞き、何処か思い詰めていたような表情が少し緩んだ気がした。やはり家族や国の事が気になってはいたのだろう。
それから俺とカインは雑談をしながら薬が出来上がるのを待った。
魔女エキドナ様から手渡された大切な魔法薬を革袋へ入れた。注意事項を聞き、カインに別れを告げる。
……これでようやく兄を助けることが出来る。
城に戻ると父はまだかまだかと俺が戻ってくるのを待っていた。
逸る気持ちを抑え、その晩から兄上や側近達に薬を飲ませる事になった。父と宰相と三人だけで話をし、これからのことを打合せする。
夜を迎え、父と護衛騎士たちで後宮を訪れた。
扉は鍵が内側から掛けられていたが、扉を破壊して中へと乗り込む。
部屋の中では皆裸で淫らな行為に及んでいた。
兄上や側近たちは虚ろな目で『愛している』とブツブツと何度も呟いており、女は生きているのか分からない状態で異様な光景であった。
父はあまりの状況に一瞬声を失うが、すぐさま騎士たちに彼らを拘束させ、王宮の治療室へと運ばせた。
俺でさえ先程の光景を見てショックを受けたのだから母上や側近の家族達が目にしたらきっと倒れてしまっていたに違いない。
立ち会わせなくて良かった。
兄上達は皆痩せ細り、一刻も早く治療が必要とされた。ベッドに縛り付けられ、暴れてうめき声をあげている兄上たちを魔法で強制的に眠らせた。
ここからなら大丈夫だろうと待機していた側近の父親たちを治療室へと入れた。
父と俺、そして側近の父親たちが見守る中、治療を開始する。
眠っているはずの兄上達がひと匙の薬を口に含むと目をカッと見開き、女の名を呼びながら暴れて拘束を解こうとしていた。
やせ細った体のどこにこんな力が残っていたのだろうか。拘束している手や足が傷つき血が流れ出している。
半日ほどすると、嘘のようにぱたりと眠りに付いてしまった。
二日目薬を飲ませた途端、一晩中女を呼び、暴れた。拘束している腕はまた傷付き血が流れ出す。誰もがその光景に息を呑んだ。だが、彼らを思う家族はじっと朝方まで寄り添っていた。
三日目、四日目と薬を服用する内に段々と落ち着きを取り戻して五日目には拘束が解かれるまでになった。
その間、家族達はずっと付き添い、七日目には魔女エキドナ様が言っていたように、元の兄上達に戻っていた。
食事をろくに摂って居なかったため、兄上は当分の間治療室で過ごし、側近達は自宅で療養する事となった。
目が覚めてからの兄上は憑き物が落ちたようにスッキリとしていた。記憶もあの女の香りを嗅いでから曖昧になり、差し出された菓子を食べて以降の記憶は一切無かった。
不幸中の幸いだと思う。
それは側近たちも同じだった。きっと記憶があれば己を恥じ、罪の意識に苛まれていたに違いない。そこは私や父、側近の家族達も同じ思いだったようだ。
兄上や側近たちはみるみる回復し、王子としての仕事を徐々に再開し、父の補佐をするまでになった。
学生の頃も優秀であった兄上たちだが、魔女様の薬を飲んだせいか以前よりもさらに優秀になって戻ってきた。
これには父や宰相、大臣や貴族達も舌を巻くほどだ。
女のせいで地の底まで落ちていた兄たちの評価は今では上がる一方だ。
やはり次期王太子は兄上となりそうで俺はホッと一安心する。兄たちが閉じ込めていたあの女はというと、なぜか目が無くなっていた。
衰弱はしていたが命に別状はなかった。
ある程度体力が回復した後、自白魔法により、掠れて殆ど聞き取れない声で兄上たちに惚れ薬を盛ったと自白した。
王族や貴族に毒を盛った罪で女は死刑と決まったが、あまりの状況に事件は公にする事は伏せられ、女は秘密裏に処刑される事となった。
残念ながら最後まで女は薬の出所を吐く事は無く、どこで入手したのかは分からなかった。
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