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ニンフの森からの依頼 カイン視点
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いつものように魔法を練習しているとエイシャ様が俺を呼ぶ。部屋に入るとそこには猫がちょこんと椅子に座っていた。
この猫は魔獣なのか。見かけはただの猫なんだが。
どうやら俺はこの猫と一緒に魔法を練習しにどこかの森へと出かけるらしいのは分かった。まだ俺の魔法は心許ないと思われているのだろうか。少し寂しい気持ちになる。
……まだまだエイシャ様が求めるほどにはなっていないもっと高みを目指していかないとな。
エイシャ様は俺用の剣を用意してくれた。鞘から引き抜いた剣は黒く光る刀身をしていて一目見るなり、俺を魅了した。
魔力を流すと、赤い紋様が浮かび上がる。剣が身体の一部になるような感覚さえある。
なんて素晴らしい。
早くエイシャ様に追いつきたい。
エイシャ様から貰った剣を大事に腰に挿した後、ケットシーとガロンと共にニンフの森に向かった。
ケットシーはガロンに小言を言っている様子だが、ガロンはふんっと取り合っていない気もする。二人とも知り合いなのか。
「ケットシー、教えてくれ。この森で俺は何をすれば良いのだ?」
「カインと言いましたね。君には森の中にいる全てのムーマを退治してもらいたいのです。どのような方法で倒して貰っても私は構いません。宜しくお願いします。ガロン、エイシャ様に感謝しなさい」
ケットシーは俺に頭を下げるとパッと消えてしまった。ガロンはケットシーが言っていたことを気にすることなく説明を始めた。
「カインよ、このムーマという生き物の説明だ。普段は害の無い生き物で魔獣となっているが、詳しい生態は謎なのだ。
今回依頼があったのはこの森に現れたムーマは異常繁殖をしており、この森に住んでいる妖精や獣類では何故か倒せない。
下手に傷をつけると分裂するという厄介な生き物になっているらしい。エイシャ様の言いつけ通り、魔法で倒していくのだ。難しい場合は剣でも構わないがな」
俺は目の前にいるムーマに炎で攻撃してみるが攻撃はいまいちの結果となった。雷や水も同じようだ。
風刃で切って見ると見事に分裂してしまった。
どうしたものか。
細かく切り刻み、すぐに炎で焼くと再生が追いつかず倒すことが出来た。面倒だなと思いながらもその方法で倒していく。
因みにエイシャ様から頂いた剣を使うと、豆腐のように柔らかく切れた上、切った衝撃で爆発したようにムーマは粉砕されてしまった。
確かにこの剣だと楽に倒せるだろう。俺は仕方がないと魔法で一匹ずつちまちまと倒していた。
魔力も体力も充分だが、森中のムーマの数を考えると日数はかかりそうだ。ガロンもそれでは効率が悪いと怒っているな。
さて、どうしたものか。
「手紙を貰ったから調査に来たのだけれど、貴方がカイン?」
ふと後ろから声が聞こえて振り返ると、エイシャ様に似た子供がいた。
俺は気配を感じることなく突然現れた子供に驚いて動きを止めていたが、ガロンはパタパタと宙を飛び回り、『エキドナ様っ!』と上擦った声を出した。
この方がエキドナ様?
エイシャ様とよく似ているが、ふわふわの桃色の髪に桃色の眼。見た目は十二、三歳といった容貌をしている。
魔人の俺がふと見ただけでも魔力はエイシャ様を遥かに凌いでいるのがわかる。
やはり、原始の神に近い程、魔力の世界が違うようだ。カインはすかさずエキドナ様に礼を取る。
「ふーん、さっきのムーマの倒し方は10点ね! ガロン、まだ魔法を教えていないの?」
ガロンはいつもより羽根をばたつかせている。
「エ、エキドナ様、まだカインは魔法を使い始めたばかりで初期の魔法を少ししか教えていないのです」
「そうなの!? ガロン! 良いことを思いついたわ! 生まれたてとはいえ魔人なんだからカインを死者の谷のスペシャルコースで修行に行かせなさい!
それとカイン、今回は私が倒し方を見せてあげるわ。よく見ていなさいっ! この厄介な生き物の倒し方を!」
エキドナ様は元気よくそうガロンに言った後、俺に見せるように四角の箱のような結界を作り、ムーマだけを結界内に閉じ込める。
作り上げた結界を一センチ角の結界に縮めると、パチンと結界を弾けさせた。数十匹のムーマが一瞬だった。
次にムーマの群に向けてアシッドを放つ。ムーマは再生する事なく溶けて無くなっている。これは凄い。
細かな説明と共に幾つかの範囲魔法をエキドナ様は見せてくれた。
いつもガロンと庭で練習している魔法と違うように思える。無邪気な笑顔で難なく倒している姿をつい見入ってしまった。
「カイン、あとは頑張りなさいっ! 実戦に勝る物はないわ! ムーマちゃんを一匹貰ったし、私はこれで帰るわねー。エイシャに宜しく伝えておいてね! じゃ、あ、ねー」
エキドナ様はそう言うと一瞬で消えていった。
嵐のように去って行ったエキドナ様に感動している場合ではない。
俺はさっき見た魔法を見様見真似でムーマに使い始めた。
まずは結界を張ることからか。
そういえばエイシャ様も黒い結界を張っていたな。人間は魔獣から村や街を守るために使うが、エイシャ様たちが使う結界は攻撃したり、指定した物を通さないようにしたりと用途に合わせた使い方をしているようにみえる。
本来はエキドナ様が使うようなものなのだろう。
魔法一つとってももっと柔軟な考えに変えていかないとな。
三日程経っただろうか。俺は森中を駆け回りムーマを倒して行った。
少しは魔法の扱いも良くなったような気もするが、ガロンの評価は相変わらず厳しい。
最後だと思われるムーマを倒したところでケットシーが俺の前に現れた。
「ようやく終わったようですね、見習い魔人。助かりました。エイシャ様に宜しくお伝えください。それと、ガロン。いつでも森に戻って来なさいと王様が言っていましたよ。では、私はこれにて」
ケットシーはそう言うとパッと姿を消してしまった。
残ったガロンは複雑な顔をしていたが、俺は気にせずエイシャ様の家にガロンと一緒に転移して帰った。
俺はエイシャ様に早速報告をすると、エイシャ様は一言、『頑張ったわね』と言って優しく俺の頬を撫でる。
そして残念ながら俺は死者の谷に行く事が決定したようだ。
この猫は魔獣なのか。見かけはただの猫なんだが。
どうやら俺はこの猫と一緒に魔法を練習しにどこかの森へと出かけるらしいのは分かった。まだ俺の魔法は心許ないと思われているのだろうか。少し寂しい気持ちになる。
……まだまだエイシャ様が求めるほどにはなっていないもっと高みを目指していかないとな。
エイシャ様は俺用の剣を用意してくれた。鞘から引き抜いた剣は黒く光る刀身をしていて一目見るなり、俺を魅了した。
魔力を流すと、赤い紋様が浮かび上がる。剣が身体の一部になるような感覚さえある。
なんて素晴らしい。
早くエイシャ様に追いつきたい。
エイシャ様から貰った剣を大事に腰に挿した後、ケットシーとガロンと共にニンフの森に向かった。
ケットシーはガロンに小言を言っている様子だが、ガロンはふんっと取り合っていない気もする。二人とも知り合いなのか。
「ケットシー、教えてくれ。この森で俺は何をすれば良いのだ?」
「カインと言いましたね。君には森の中にいる全てのムーマを退治してもらいたいのです。どのような方法で倒して貰っても私は構いません。宜しくお願いします。ガロン、エイシャ様に感謝しなさい」
ケットシーは俺に頭を下げるとパッと消えてしまった。ガロンはケットシーが言っていたことを気にすることなく説明を始めた。
「カインよ、このムーマという生き物の説明だ。普段は害の無い生き物で魔獣となっているが、詳しい生態は謎なのだ。
今回依頼があったのはこの森に現れたムーマは異常繁殖をしており、この森に住んでいる妖精や獣類では何故か倒せない。
下手に傷をつけると分裂するという厄介な生き物になっているらしい。エイシャ様の言いつけ通り、魔法で倒していくのだ。難しい場合は剣でも構わないがな」
俺は目の前にいるムーマに炎で攻撃してみるが攻撃はいまいちの結果となった。雷や水も同じようだ。
風刃で切って見ると見事に分裂してしまった。
どうしたものか。
細かく切り刻み、すぐに炎で焼くと再生が追いつかず倒すことが出来た。面倒だなと思いながらもその方法で倒していく。
因みにエイシャ様から頂いた剣を使うと、豆腐のように柔らかく切れた上、切った衝撃で爆発したようにムーマは粉砕されてしまった。
確かにこの剣だと楽に倒せるだろう。俺は仕方がないと魔法で一匹ずつちまちまと倒していた。
魔力も体力も充分だが、森中のムーマの数を考えると日数はかかりそうだ。ガロンもそれでは効率が悪いと怒っているな。
さて、どうしたものか。
「手紙を貰ったから調査に来たのだけれど、貴方がカイン?」
ふと後ろから声が聞こえて振り返ると、エイシャ様に似た子供がいた。
俺は気配を感じることなく突然現れた子供に驚いて動きを止めていたが、ガロンはパタパタと宙を飛び回り、『エキドナ様っ!』と上擦った声を出した。
この方がエキドナ様?
エイシャ様とよく似ているが、ふわふわの桃色の髪に桃色の眼。見た目は十二、三歳といった容貌をしている。
魔人の俺がふと見ただけでも魔力はエイシャ様を遥かに凌いでいるのがわかる。
やはり、原始の神に近い程、魔力の世界が違うようだ。カインはすかさずエキドナ様に礼を取る。
「ふーん、さっきのムーマの倒し方は10点ね! ガロン、まだ魔法を教えていないの?」
ガロンはいつもより羽根をばたつかせている。
「エ、エキドナ様、まだカインは魔法を使い始めたばかりで初期の魔法を少ししか教えていないのです」
「そうなの!? ガロン! 良いことを思いついたわ! 生まれたてとはいえ魔人なんだからカインを死者の谷のスペシャルコースで修行に行かせなさい!
それとカイン、今回は私が倒し方を見せてあげるわ。よく見ていなさいっ! この厄介な生き物の倒し方を!」
エキドナ様は元気よくそうガロンに言った後、俺に見せるように四角の箱のような結界を作り、ムーマだけを結界内に閉じ込める。
作り上げた結界を一センチ角の結界に縮めると、パチンと結界を弾けさせた。数十匹のムーマが一瞬だった。
次にムーマの群に向けてアシッドを放つ。ムーマは再生する事なく溶けて無くなっている。これは凄い。
細かな説明と共に幾つかの範囲魔法をエキドナ様は見せてくれた。
いつもガロンと庭で練習している魔法と違うように思える。無邪気な笑顔で難なく倒している姿をつい見入ってしまった。
「カイン、あとは頑張りなさいっ! 実戦に勝る物はないわ! ムーマちゃんを一匹貰ったし、私はこれで帰るわねー。エイシャに宜しく伝えておいてね! じゃ、あ、ねー」
エキドナ様はそう言うと一瞬で消えていった。
嵐のように去って行ったエキドナ様に感動している場合ではない。
俺はさっき見た魔法を見様見真似でムーマに使い始めた。
まずは結界を張ることからか。
そういえばエイシャ様も黒い結界を張っていたな。人間は魔獣から村や街を守るために使うが、エイシャ様たちが使う結界は攻撃したり、指定した物を通さないようにしたりと用途に合わせた使い方をしているようにみえる。
本来はエキドナ様が使うようなものなのだろう。
魔法一つとってももっと柔軟な考えに変えていかないとな。
三日程経っただろうか。俺は森中を駆け回りムーマを倒して行った。
少しは魔法の扱いも良くなったような気もするが、ガロンの評価は相変わらず厳しい。
最後だと思われるムーマを倒したところでケットシーが俺の前に現れた。
「ようやく終わったようですね、見習い魔人。助かりました。エイシャ様に宜しくお伝えください。それと、ガロン。いつでも森に戻って来なさいと王様が言っていましたよ。では、私はこれにて」
ケットシーはそう言うとパッと姿を消してしまった。
残ったガロンは複雑な顔をしていたが、俺は気にせずエイシャ様の家にガロンと一緒に転移して帰った。
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