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死の谷
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「ガロン、カインはそろそろだと思わない?」
「そうですな。迎えに行きますかな?」
「そうね。そうしましょう」
私たちは半年もの間、修行に出ていたカインを迎えに行く事にした。
カインは大丈夫かしら?水晶で様子を見た時は死んでいなかったわ。
「まだ入り口には居ないわね」
私は明かりを付けて谷の中を奥に向かって歩き出した。暫く歩いているとガロンが声を掛けてきた。
「エイシャ様、あそこで戦っているのはカインですな」
カインと私までの間にいる魔物達に向けて閃光を放った。閃光を受けたアンデッドたちは一瞬で消滅する。
「カイン、迎えにきたわ。よく生きていたわね」
「……エイシャ様!」
カインは私を見るなり、駆け寄り感情を露わにしている。
よく見ると、彼はかなりの傷を負っていて装備品もボロボロの状態だ。
「ああ、本物のエイシャ様だ」
「カイン、私は本物よ? さぁ、疲れたでしょう。家に帰るわよ」
ふふっ、カインは一人で過ごすのがよほど寂しかったのね。
家に帰ってからガロンに小言を言われながらすぐお風呂に入れられ、スープとパンをお腹一杯食べていた。
やはり人間とは違うわね。至る所に出来た傷は塞がりつつあるようだが、まだいくつか治っていない。
カインは回復魔法を覚えていなかったから戦闘中に上手く治す事ができなかったのね。もちろん私は使えない。これは魔獣の特性だから仕方がない。薬を作る事は問題ないのだが。
魔獣は基本的に回復魔法が使えない分、体力や自己回復力は高い。カインの深い傷を治すにはとにかく休息が必要ね。
私はカインの膝に座り、カインの額に私の額を付ける。
「カイン、目覚めたら話を聞くわ。今は『休みなさい。』」
カインは抵抗しているけれど、私の魔法にはまだ抵抗が出来なかったようね。パタリと眠り始めた。私はそっとカインを浮かせてベッドまで連れていき、寝かせてカインの様子をみる。
「さすがに戦いっ放しで疲れているわよね。このまま寝かせておきましょう」
「ガロン、回復魔法を掛けて上げて」
「了解ですぞ。童、こんなになるまでよく頑張ったな」
弟子が生きて帰ってきたことに安堵しているのか今日はガロンも優しいようだ。ガロンの回復魔法で穏やかになった寝息は起きる事なくそのまま三日間ほど過ぎていった。
「カイン、おはよう。気分はどう?」
三日ぶりの目覚めにカインは何故かしょげているように見える。
「あら。どうしたの、カイン」
私は食事を用意しながらカインの話を聞く。
「エイシャ様。俺はまだまだ未熟だと痛切に感じました。死者の谷に行って帰ってくるだけなのに途中で何度も死にかけました。エイシャ様は武器も道具一つ持たずに三年間も過ごしていたのかと思うと力の差を感じます。俺にはまだまだ修行が足りない。もっと強くなります。そしてエイシャ様の側にずっと居たい」
「カイン、強くなりたいの? 今よりも強くなると魔王になってしまうわよ?」
「エイシャ様の側にいて守れるのなら魔王にだってなります」
「ふふっ。カイン、今でも充分強いわよ? でもそうね、私を守るくらいねぇ……。お祖母様に相談してみるのも手かもしれないわ。
私は幼少期には修行と称して死者の谷や色々な所に放置されて来たけれど、それ以外はこの家から殆ど出た事が無いからよく分からないのよね。
お祖母様に相談しても強くはなるけれど、今なら実験台にされることは間違いないわ。
ガロン、どう思う? お父様の方が良いのかしら?」
ガロンはパタパタ羽を動かし、頬に手を添えながら考える振りをしている。
「ネメアー様ですか。あれは戦闘狂ですからねぇ。エイシャ様を狙う程の強者はほぼ居ないですが、エイシャ様と共にいる事を認めてもらえるほどの強さ、となるとネメアー様が一番でしょうな」
カインの眉がピクリと上がる。
「そうですな。迎えに行きますかな?」
「そうね。そうしましょう」
私たちは半年もの間、修行に出ていたカインを迎えに行く事にした。
カインは大丈夫かしら?水晶で様子を見た時は死んでいなかったわ。
「まだ入り口には居ないわね」
私は明かりを付けて谷の中を奥に向かって歩き出した。暫く歩いているとガロンが声を掛けてきた。
「エイシャ様、あそこで戦っているのはカインですな」
カインと私までの間にいる魔物達に向けて閃光を放った。閃光を受けたアンデッドたちは一瞬で消滅する。
「カイン、迎えにきたわ。よく生きていたわね」
「……エイシャ様!」
カインは私を見るなり、駆け寄り感情を露わにしている。
よく見ると、彼はかなりの傷を負っていて装備品もボロボロの状態だ。
「ああ、本物のエイシャ様だ」
「カイン、私は本物よ? さぁ、疲れたでしょう。家に帰るわよ」
ふふっ、カインは一人で過ごすのがよほど寂しかったのね。
家に帰ってからガロンに小言を言われながらすぐお風呂に入れられ、スープとパンをお腹一杯食べていた。
やはり人間とは違うわね。至る所に出来た傷は塞がりつつあるようだが、まだいくつか治っていない。
カインは回復魔法を覚えていなかったから戦闘中に上手く治す事ができなかったのね。もちろん私は使えない。これは魔獣の特性だから仕方がない。薬を作る事は問題ないのだが。
魔獣は基本的に回復魔法が使えない分、体力や自己回復力は高い。カインの深い傷を治すにはとにかく休息が必要ね。
私はカインの膝に座り、カインの額に私の額を付ける。
「カイン、目覚めたら話を聞くわ。今は『休みなさい。』」
カインは抵抗しているけれど、私の魔法にはまだ抵抗が出来なかったようね。パタリと眠り始めた。私はそっとカインを浮かせてベッドまで連れていき、寝かせてカインの様子をみる。
「さすがに戦いっ放しで疲れているわよね。このまま寝かせておきましょう」
「ガロン、回復魔法を掛けて上げて」
「了解ですぞ。童、こんなになるまでよく頑張ったな」
弟子が生きて帰ってきたことに安堵しているのか今日はガロンも優しいようだ。ガロンの回復魔法で穏やかになった寝息は起きる事なくそのまま三日間ほど過ぎていった。
「カイン、おはよう。気分はどう?」
三日ぶりの目覚めにカインは何故かしょげているように見える。
「あら。どうしたの、カイン」
私は食事を用意しながらカインの話を聞く。
「エイシャ様。俺はまだまだ未熟だと痛切に感じました。死者の谷に行って帰ってくるだけなのに途中で何度も死にかけました。エイシャ様は武器も道具一つ持たずに三年間も過ごしていたのかと思うと力の差を感じます。俺にはまだまだ修行が足りない。もっと強くなります。そしてエイシャ様の側にずっと居たい」
「カイン、強くなりたいの? 今よりも強くなると魔王になってしまうわよ?」
「エイシャ様の側にいて守れるのなら魔王にだってなります」
「ふふっ。カイン、今でも充分強いわよ? でもそうね、私を守るくらいねぇ……。お祖母様に相談してみるのも手かもしれないわ。
私は幼少期には修行と称して死者の谷や色々な所に放置されて来たけれど、それ以外はこの家から殆ど出た事が無いからよく分からないのよね。
お祖母様に相談しても強くはなるけれど、今なら実験台にされることは間違いないわ。
ガロン、どう思う? お父様の方が良いのかしら?」
ガロンはパタパタ羽を動かし、頬に手を添えながら考える振りをしている。
「ネメアー様ですか。あれは戦闘狂ですからねぇ。エイシャ様を狙う程の強者はほぼ居ないですが、エイシャ様と共にいる事を認めてもらえるほどの強さ、となるとネメアー様が一番でしょうな」
カインの眉がピクリと上がる。
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