69 / 82
知りたい男
しおりを挟む
「エイシャ様、お茶が入りました」
「ありがとう、カイン」
私は庭の手入れを終え、部屋に入ってお茶を飲む。
「やっぱりカインの淹れてくれるお茶が一番美味しいわ」
「それは良かった」
先日の騎士服とは打って変わり、今日のカインは執事の格好をしている。
そういう気分なのかしら?
「カイン、今度王都へ出かけましょう? 服も新調したいわ」
「畏まりました」
しばらくカインの執事ごっこに付き合っていると、扉をノックする音が聞こえてきた。
― コンコンコンコン ―
「どなたかしら?」
私がそう声を掛けるとカインが扉を開けた。カインは扉の外の何者かと話した後、部屋に男を案内した。
部屋に入ってきたのは細身で身なりの良い服を着ている初老の男だった。彼の後ろには従者が震えながらも箱を持って付いてきた。
「貴女が噂の魔女殿かな?」
「あら、嬉しいわ。噂になるほどの有名人だなんて」
初老の男は私の手を取りそっと手に口づけをして挨拶をする。きっとこれは今の人間達の挨拶なのね。
「まぁ、座ってちょうだい」
私は座るように促したあと、カインはお茶を準備してくれている。男はカインや私を注意深く観察しているようだ。
「で、ご用件は何かしら?」
「儂は若い頃から誰よりも好奇心が旺盛でな色々な物を見てきたのだ。その好奇心から起こした事業にも成功してこうして趣味として珍しいものや誰も見たことがないものを探してきた。
で、行きついたのが地底の穴だ。この本に書かれてある地底の情報。地底を見てみたいのだ」
どうやら過去に私が開けた地底の穴やそこに住む魔物の話が書いてある本のようだ。
……まさか、あの時の子供が書いたのかしら?
「地底ねぇ。魔物の巣窟で楽しくはないわよぉ? 命の保証はしないけれど、連れていくのは可能よ。で、報酬は何が頂けるのかしら?」
私はそう言うと、男は従者に持ってこいと鞄を開けさせる。すると厳重に保管されているようでガラスの箱に収められた一つの紙袋を取り出した。
私は紙袋を受け取り、袋を開け、更に包みも剥がしていくと一枚の葉が出てきた。
「あら、これは神樹の葉じゃない。珍しいわ、よく手に入ったわね」
「やはり魔女殿にはすぐに分かったのだな。儂が若いころ冒険をしていた時に手にいれたのだ。対価はこれでどうだろうか」
「今から見に行く?」
私の言葉に男は目を輝かせている。
「いいのだろうか? 儂はいつでも準備は出来ている」
「いいわよ。カイン、地底に彼を連れて行ってあげてちょうだい。ついでに素材もいくつか狩ってきて欲しいわ」
「わかりました」
カインは執事服から黒い鎧に服を変化させる。その様子を男は驚くように見ていたわ。
「従者までは守れないから貴方はここでお留守番していてちょうだい」
「は、はいっ!」
「準備はいいかしら? では、いってらっしゃいな」
私は杖を取り出し、床をトンッと叩くと初老の男とカインの足元は黒い空間が広がり二人はスゥッと空間に引き込まれていった。
私は特にする事もないので水晶で二人の様子を覗いてみる。
一緒に行けば暇つぶしにでもなったかしら。
水晶から様子を見ていると、カインは襲ってくる魔物を難なく退治しているようだ。
やはりお祖母様の修行の成果は出ているわね。
カインや地底の様子、魔物の姿を初老の男はどこから取り出したのかノートにメモしているようだ。
数時間が経過しただろうか。
カインは老人を連れて転移して戻ってきた。
「カイン、お疲れ様。地底探検どうだったかしら?」
「魔女殿、素晴らしい。地底の魔物を近くで見る事が出来たなんて。本当に素晴らしかった。また機会があればお願いしたい」
初老の男はとても興奮した状態だったが喜んでいる様子。
「良かったわ、喜んでいただけて。また珍しい物を持ってきて下さいな」
そうして初老の男は興奮気味に従者と共に帰っていった。
後日ガロンが持ってきた本はどうやら今、人間達の間で流行っている冒険譚の本だった。
「エイシャ様、この本、魔物の地底の魔物が出ておるようですぞ」
「あら、そうなの? あの時の人かしら?」
「この物語の主人公はカインですかな? 地底の魔物を討伐し、財宝と美女と得るらしいですぞ」
「あらあら、カインが出ているの? それは読んでみないとねぇ? カイン」
「興味は無いです」
「あら。じゃぁ私が読んで感想を教えてあげるわ」
そうして私はカインの淹れるお茶を飲みながら本を読む事となった。
「ありがとう、カイン」
私は庭の手入れを終え、部屋に入ってお茶を飲む。
「やっぱりカインの淹れてくれるお茶が一番美味しいわ」
「それは良かった」
先日の騎士服とは打って変わり、今日のカインは執事の格好をしている。
そういう気分なのかしら?
「カイン、今度王都へ出かけましょう? 服も新調したいわ」
「畏まりました」
しばらくカインの執事ごっこに付き合っていると、扉をノックする音が聞こえてきた。
― コンコンコンコン ―
「どなたかしら?」
私がそう声を掛けるとカインが扉を開けた。カインは扉の外の何者かと話した後、部屋に男を案内した。
部屋に入ってきたのは細身で身なりの良い服を着ている初老の男だった。彼の後ろには従者が震えながらも箱を持って付いてきた。
「貴女が噂の魔女殿かな?」
「あら、嬉しいわ。噂になるほどの有名人だなんて」
初老の男は私の手を取りそっと手に口づけをして挨拶をする。きっとこれは今の人間達の挨拶なのね。
「まぁ、座ってちょうだい」
私は座るように促したあと、カインはお茶を準備してくれている。男はカインや私を注意深く観察しているようだ。
「で、ご用件は何かしら?」
「儂は若い頃から誰よりも好奇心が旺盛でな色々な物を見てきたのだ。その好奇心から起こした事業にも成功してこうして趣味として珍しいものや誰も見たことがないものを探してきた。
で、行きついたのが地底の穴だ。この本に書かれてある地底の情報。地底を見てみたいのだ」
どうやら過去に私が開けた地底の穴やそこに住む魔物の話が書いてある本のようだ。
……まさか、あの時の子供が書いたのかしら?
「地底ねぇ。魔物の巣窟で楽しくはないわよぉ? 命の保証はしないけれど、連れていくのは可能よ。で、報酬は何が頂けるのかしら?」
私はそう言うと、男は従者に持ってこいと鞄を開けさせる。すると厳重に保管されているようでガラスの箱に収められた一つの紙袋を取り出した。
私は紙袋を受け取り、袋を開け、更に包みも剥がしていくと一枚の葉が出てきた。
「あら、これは神樹の葉じゃない。珍しいわ、よく手に入ったわね」
「やはり魔女殿にはすぐに分かったのだな。儂が若いころ冒険をしていた時に手にいれたのだ。対価はこれでどうだろうか」
「今から見に行く?」
私の言葉に男は目を輝かせている。
「いいのだろうか? 儂はいつでも準備は出来ている」
「いいわよ。カイン、地底に彼を連れて行ってあげてちょうだい。ついでに素材もいくつか狩ってきて欲しいわ」
「わかりました」
カインは執事服から黒い鎧に服を変化させる。その様子を男は驚くように見ていたわ。
「従者までは守れないから貴方はここでお留守番していてちょうだい」
「は、はいっ!」
「準備はいいかしら? では、いってらっしゃいな」
私は杖を取り出し、床をトンッと叩くと初老の男とカインの足元は黒い空間が広がり二人はスゥッと空間に引き込まれていった。
私は特にする事もないので水晶で二人の様子を覗いてみる。
一緒に行けば暇つぶしにでもなったかしら。
水晶から様子を見ていると、カインは襲ってくる魔物を難なく退治しているようだ。
やはりお祖母様の修行の成果は出ているわね。
カインや地底の様子、魔物の姿を初老の男はどこから取り出したのかノートにメモしているようだ。
数時間が経過しただろうか。
カインは老人を連れて転移して戻ってきた。
「カイン、お疲れ様。地底探検どうだったかしら?」
「魔女殿、素晴らしい。地底の魔物を近くで見る事が出来たなんて。本当に素晴らしかった。また機会があればお願いしたい」
初老の男はとても興奮した状態だったが喜んでいる様子。
「良かったわ、喜んでいただけて。また珍しい物を持ってきて下さいな」
そうして初老の男は興奮気味に従者と共に帰っていった。
後日ガロンが持ってきた本はどうやら今、人間達の間で流行っている冒険譚の本だった。
「エイシャ様、この本、魔物の地底の魔物が出ておるようですぞ」
「あら、そうなの? あの時の人かしら?」
「この物語の主人公はカインですかな? 地底の魔物を討伐し、財宝と美女と得るらしいですぞ」
「あらあら、カインが出ているの? それは読んでみないとねぇ? カイン」
「興味は無いです」
「あら。じゃぁ私が読んで感想を教えてあげるわ」
そうして私はカインの淹れるお茶を飲みながら本を読む事となった。
72
あなたにおすすめの小説
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
偽りの婚姻
迷い人
ファンタジー
ルーペンス国とその南国に位置する国々との長きに渡る戦争が終わりをつげ、終戦協定が結ばれた祝いの席。
終戦の祝賀会の場で『パーシヴァル・フォン・ヘルムート伯爵』は、10年前に結婚して以来1度も会話をしていない妻『シヴィル』を、祝賀会の会場で探していた。
夫が多大な功績をたてた場で、祝わぬ妻などいるはずがない。
パーシヴァルは妻を探す。
妻の実家から受けた援助を返済し、離婚を申し立てるために。
だが、妻と思っていた相手との間に、婚姻の事実はなかった。
婚姻の事実がないのなら、借金を返す相手がいないのなら、自由になればいいという者もいるが、パーシヴァルは妻と思っていた女性シヴィルを探しそして思いを伝えようとしたのだが……
特技は有効利用しよう。
庭にハニワ
ファンタジー
血の繋がらない義妹が、ボンクラ息子どもとはしゃいでる。
…………。
どうしてくれよう……。
婚約破棄、になるのかイマイチ自信が無いという事実。
この作者に色恋沙汰の話は、どーにもムリっポい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる