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金色の光
しおりを挟む「ごっごめんなさい。」
自分は何をしているのだろうと我に返り手を急いで引っ込める。スティール殿下のことを見ているのが恥ずかしくなって下を向いた。
「……べつに。気にしてないから。」
怒ってはいないみたいで、一先ず安心した。……急に汗を拭ってくる女って怖いよね。気にしないで貰えて嬉しい筈なのに、なぜだか少し残念に思った。
スティール殿下は何も言わないし、私もなにか声をかける気にもなれなかったので改めて貰った小石をみた。
表面はツルツルしていて、ひんやりとしている。……何となく石を陽の光にかざしてみた。すると石の中に金色の反射がみえた。陽の光の色かと思ったけどどうやら違うみたい。
両手を合わせて暗闇を作り、その中に石を入れて見てみると先程よりも金色の光がはっきりみえた。しかし、しばらくするとその金色の光は鈍くなり遂には消えてしまった。
石を観察する私を、スティール殿下は隣に座って見ていた。
もう一度、光にかざして綺麗な水色を楽しんだあと暗闇の中で石をみてみる。すると、石はまた金色の光を放っている。
……これは、蓄光して暗闇で光を放つ石なのかもしれない。前に、同じ仕組みを持つ石を貰ったことがある。その石は、普段は紫色をしているけれど光を当ててから暗闇でみるとピンク色に光るものだった。
水色の中でキラキラ光る金色はとても眩しくて、まるで殿下のようだと思った。……こんな素敵なものをいただけてとっても嬉しい。思わず笑みがこぼれてしまう。
「……そんなに良かったの?それ。」
不思議そうな顔。もしかしたら殿下はこのことを知らないのかもしれない。
この綺麗な光を殿下にも見てもらいたくて私はまた、石を光にかざした。
「この石には、金色が隠れているんです!」
「金色?」
「はい!こうやって、しばらく陽の光に当てると……」
私は両手の中に石を入れて、
「スティール様、ここ覗いて見てください!」
スティール殿下は、私の両手に自分の手を添えて暗闇を覗き込んだ。
早く見てもらいたくてつい差し出してしまったけど、殿下の手でやってもらえれば良かった……距離が近くて緊張する。
殿下のサラサラの髪の毛や、初めて会った時に比べてしっかりとした体躯、そして自分の手に添えられた長細い指。
……忙しなく動く心臓の音が、殿下に聞こえていないことを願った。
「へー。発光してるんだ。綺麗だな。」
見終わった殿下が私から離れていくのを寂しく思ってしまう。
…殿下は、私のことを友達だと思ってくださっているのに私と来たら異性として意識して、勝手にドキドキして……友達のままでいないと嫌われてしまうかもしれない。スティール殿下は、あまりご令嬢との交流がお好きでないようだし……
とりあえず、貰った小石を大事にしよう…
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