星降る夜を貴方に

ごま

文字の大きさ
14 / 50

金色の光

しおりを挟む



「ごっごめんなさい。」

自分は何をしているのだろうと我に返り手を急いで引っ込める。スティール殿下のことを見ているのが恥ずかしくなって下を向いた。



「……べつに。気にしてないから。」


怒ってはいないみたいで、一先ず安心した。……急に汗を拭ってくる女って怖いよね。気にしないで貰えて嬉しい筈なのに、なぜだか少し残念に思った。


スティール殿下は何も言わないし、私もなにか声をかける気にもなれなかったので改めて貰った小石をみた。


表面はツルツルしていて、ひんやりとしている。……何となく石を陽の光にかざしてみた。すると石の中に金色の反射がみえた。陽の光の色かと思ったけどどうやら違うみたい。


両手を合わせて暗闇を作り、その中に石を入れて見てみると先程よりも金色の光がはっきりみえた。しかし、しばらくするとその金色の光は鈍くなり遂には消えてしまった。


石を観察する私を、スティール殿下は隣に座って見ていた。

もう一度、光にかざして綺麗な水色を楽しんだあと暗闇の中で石をみてみる。すると、石はまた金色の光を放っている。
……これは、蓄光して暗闇で光を放つ石なのかもしれない。前に、同じ仕組みを持つ石を貰ったことがある。その石は、普段は紫色をしているけれど光を当ててから暗闇でみるとピンク色に光るものだった。


水色の中でキラキラ光る金色はとても眩しくて、まるで殿下のようだと思った。……こんな素敵なものをいただけてとっても嬉しい。思わず笑みがこぼれてしまう。


「……そんなに良かったの?それ。」

不思議そうな顔。もしかしたら殿下はこのことを知らないのかもしれない。
この綺麗な光を殿下にも見てもらいたくて私はまた、石を光にかざした。


「この石には、金色が隠れているんです!」


「金色?」


「はい!こうやって、しばらく陽の光に当てると……」


私は両手の中に石を入れて、

「スティール様、ここ覗いて見てください!」



スティール殿下は、私の両手に自分の手を添えて暗闇を覗き込んだ。
早く見てもらいたくてつい差し出してしまったけど、殿下の手でやってもらえれば良かった……距離が近くて緊張する。



殿下のサラサラの髪の毛や、初めて会った時に比べてしっかりとした体躯、そして自分の手に添えられた長細い指。
……忙しなく動く心臓の音が、殿下に聞こえていないことを願った。



「へー。発光してるんだ。綺麗だな。」


見終わった殿下が私から離れていくのを寂しく思ってしまう。
…殿下は、私のことを友達だと思ってくださっているのに私と来たら異性として意識して、勝手にドキドキして……友達のままでいないと嫌われてしまうかもしれない。スティール殿下は、あまりご令嬢との交流がお好きでないようだし……

とりあえず、貰った小石を大事にしよう…




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】どうか私を思い出さないで

miniko
恋愛
コーデリアとアルバートは相思相愛の婚約者同士だった。 一年後には学園を卒業し、正式に婚姻を結ぶはずだったのだが……。 ある事件が原因で、二人を取り巻く状況が大きく変化してしまう。 コーデリアはアルバートの足手まといになりたくなくて、身を切る思いで別れを決意した。 「貴方に触れるのは、きっとこれが最後になるのね」 それなのに、運命は二人を再び引き寄せる。 「たとえ記憶を失ったとしても、きっと僕は、何度でも君に恋をする」

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

処理中です...