星降る夜を貴方に

ごま

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合流

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りんご飴の件はとりあえず無視して、その後も屋台を巡ったんだけど……

スティールの「ちょーだい」攻撃が多すぎてほぼ全てシェア状態。

なぜ???

もう、説得するのは諦めた。
今は綿あめに集中しよう。実はこの綿あめは普通の綿あめではなくて、果汁入りの特別な綿あめなのです!

私が今食べているのは、いちご果汁入りの綿あめなんだけど他にもメロンとか、パイナップルなんかもあった。

買う時に、いちごとメロンで悩んでいたらスティールがどっちも買ってくれたので2人でシェアして食べている。

ふわふわな綿あめを美少年が食べているところってものすごく可愛い。なんか、綿あめとお顔との対比が素晴らしい。

綿あめに自分の唾液が付着して、綿が飴の色に戻るのがものすごく好き。緑色の綿が、キラキラ光る宝石みたいな色に変わってとても綺麗。

優しい甘さと、いちごの爽やかな香りが鼻に抜ける。


「そろそろ、星屑が流れる時間だ。広場に行こう。」

「はい」






広場に着くとエリザベスとルブラン殿下がいた。広場が集合場所として最適だから、迷ったとしてもここに来れば合流出来そうだとは思っていたけど、本当に合流出来るとは運がいいかもしれない。

街の中心にあるし、何より目立つし、この街の人なら知らない人は居ないから、迷子も待ち合わせもほとんどの人がここに来る。だから、当然いえば当然なんだけど。

「遅かったね」

「思ったよりも時間がかかった、ごめん」

もとよりこの場所で合流しようと計画していたかのような会話だけど、2人ははぐれた時用にここに目星をつけていたのかも?何にせよ、星屑が降る前に合流できて良かった。






広場で合流してから王城に向かう。ルブラン殿下のご好意で特別に、空が良く見えるテラスから星屑の川を見られることになった。

3人は、いつもこのテラスから星屑を見てきた。今年、その中の一人に私が居ることが奇跡だと思った。

「もうすぐだね」

「ええ、そうね」

テラスから見える広場には大勢の人が集まり、窓から顔を出している人も多くいる。
みんな、今か今かと空を見上げて星屑が流れるのを待っている。

人々から歓声が上がったかと思えば漆黒の空に白い光の粒が流れ始めた。

細かい光の粒が一つ一つ眩く輝き、夜の空に川を創っている。

何度も、邸の窓から見てきた筈なのに皆と見ているからか、今までで1番綺麗に感じる。

星の光を瞳に写し、星屑の眩い光で淡く照らされているみんなの横顔を見て、改めて幸せを感じた。


流れる星屑をぼーっと眺めながら、星屑伝説を思い出した。


その昔、この世界には偉大な魔法使いがいた。その魔法使いは、周りの魔法使いとは比べ物にならないほどに魔法の扱いに長け、魔力量も桁違いだった。

その魔法使いは、平民だった。しかし、類稀なる才能を認められて、貴族位を与えられた。平民の時とは違い、まともな教育環境におかれ初めて自分の能力が他の人よりも優れているものだと知った。

魔法使いには、妹がいた。たった1人の家族だった。妹を守るために、魔法使いは貴族位を賜った。

だけど、魔法使いの強大な力を自分の思うようにしようと思った輩が、妹を人質に取った。妹の為に、魔法使いは必死になった。やがて、自分の体のことなど顧みず、魔法を使い続けた。その結果、魔法使いの体は限界を迎えた。

徐々に魔法を使えなくなっていく魔法使いを人々は見放し、「所詮、平民上がりだ」と罵った。元々、平民が上に立つことを良しとしていなかった貴族達の進言もあり、魔法使いは貴族位を剥奪された。

体がボロボロになり、貴族位も失った魔法使いは妹を守る術が無いと思った。いっその事、自分が居なくなれば、時間がかかるかも知れないが私の妹、という蔑視の対象となる情報は薄れるだろう、と。

しかし、妹は多大なストレスによって人形のようになってしまった。折角、助け出すことが出来たのに、妹の心を守りきれなかった。

光の灯らない瞳を、開かない口を、動かない体を、どうにかして、治せないものかと魔法使いは頑張った。

とある日、正体を隠して働いていた魔法使いはこんな話を聞いた。

「地球が、球体であるという説が最近では有力だが、そうすると我々はどうやってここに立っているというのだろうな____」

魔法使いは、地球は球体であると思っていた為、他の考えがあるなんて目から鱗だった。

なぜ、そう思っていたかというと己の魔力が地面のもっと奥深く、この地球の中心に向かって引っ張られるような感覚があった為だ。

他の人よりも、多くの魔力を扱っていた魔法使いには、人々や大地に魔力を与える核みたいな存在が、私たちを地球に留めているのだという、感覚的な確信があった。

この引っ張られるような感覚が、私たちを魔法使いたらしめる地球の核が、もし、本当に存在するのなら。

もし、自分が居なくなったとしても、妹の心だけは取り戻したい。

妹の誕生日に、魔法使いはこの国を包み込む程に大きい魔法陣を発生させた。

魔力源は、地球の中心。

もし、自分の仮説が正しいのならば

どうか、どうか、

またあの子の心に光を______

そう魔法使いが願った刹那、空に沢山の星屑が流れ、人々を、あの子を明るく照らした。




魔法使いが起こした奇跡を、人々は褒め称えた。また、貴族に戻らないかという者もいた。しかし、魔法使いは魔法を使えなくなった。


その昔、この世界には偉大な魔法使いがいた。その魔法使いは、たった1人の大切な妹へ向けた魔法によって魔法が使えなくなった。ただ1人の兄に戻った彼は、再び笑顔を向けてくれるようになった妹と共に、2人で静かに、けれど穏やかに暮らしたという。






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