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閑話 俺だけに
しおりを挟む気になっていたのは、いつからだろう。
特別にしていたのは、いつからだろう。
一緒の未来を疑わなくなったのは__
いつからだろう?
最初は、綺麗な新緑の瞳を持つ子だとしか思わなかったはずだ。
兄上の勧めで、侯爵とは親交があったからアリアの話を聞いたことは何度もあったし、実際に見た時もそこまで印象に残っていたわけではなかったと思う。
ただ、初めて目が合った時、その新緑の瞳がこの世界の何よりも美しいと感じた。
あの時はそれだけだったように思う。純粋に美しさに目を奪われていた。
兄上がアリアに威圧をした時、エリザベスのことを兄上なりに大切に感じているのだと分かって嬉しかった。
いつも周りや自分でさえも傍観してしまう兄上を、この世に引き止める存在に、エリザベスがなったんだと思った。
兄上がそのことを意識していなくても。
最初の懸念は杞憂で、アリアは間者とかではなかったし、エリザベスの良き友人になってくれた。
アリアはよく笑う。
瞳をキラキラさせながら、柔らかく微笑む。
その笑顔に私たちは癒されているんだ。
兄上だって、普段口にしないようなお菓子をアリアが作ったものならたべる。
エリザベスだって、アリアといる時は頬がゆるゆるだ。
……多分俺もだが。
1番最初に贈った小石。贈ったと言うと少し大層だけどただの石。
ちょっと色が綺麗だから渡したらあの笑顔を見せてくれるんじゃないかって、思った。
予想以上に喜んでくれて、その様子が可愛らしくて思わず近づいた距離に焦った。
いつもより上がった心拍がバレないかドキドキした。
今も大切に持ってくれていることは知っている。それでも、今のアリアに相応しいものを贈りたい。
今までとは違う関係性へ進むための後押しとなってくれたらいい。
兄上やエリザベスに向けないような感情を俺だけが受け取りたい。
星祭りに誘った時の顔を赤らめたアリアを思い出しながらその日を待ち遠しく思った。
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