陰陽師の異世界騒動記〜努力と魔術で成り上がる〜

熊1969

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第2章 王への道

二十五話 VSリージア

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 シドによる精神的なダメージから復帰した俺は、ある通路の中に立っていた。瞑目し、その時が来るのを待っている。

 通路内には俺以外に、他の誰の姿もない。それもそうだ、ここはこれから戦うものが最後の覚悟を決める場所なのだから。

 まあ要するに、俺が今いるのはあの選手入場の時に使われる壁の中だった。いよいよ、戦う時が来たのだ。

 これまでの五回にわたる試合で選出された、五人の猛者たち。

 謎の戦士ジェイド、魔銃使いリージア、最強の傭兵ドグマ、怪しげな魔法を使う少年コモノ、そして一度は俺の命を奪った黒鬼、シド。

 誰も彼も、一騎当千の強者たち。誰一人として油断できない相手に、俺は圧倒的な勝利を収める必要があるのだ。

 全ては、俺が皆を守ることができるのを証明するために。そのために俺は、わざわざこのような催しを提案したのだから。

   最初の相手はリージアさんだ。なんでも、本戦の順番通りに行くのはつまらないということで、クジ引き制になった。

「ふう……」
「随分と緊張しているようですね」

 こわばった体を脱力させようと息を吐いていると、後ろから声が聞こえた。よく知っている声だ。

 振り返ると、そこにいたのは案の定、我が最愛の少女であるシリルラだった。なぜここに。

「忘れましたか?この私は、あくまで龍人様のスマートフォンを依代にしたもの。神器は持ち主の元へと戻る力を持ちますね」
「……初耳だな」
「ええ、言ってませんでしたからね」

 しれっというシリルラに、俺は苦笑する。いつだって彼女は、俺を驚かせるのに余念がない。

「それで、どうしてここに?」
「あら、白々しいですね。もちろん、応援しにきましたね」

 コツ、コツと俺に近づいて来るシリルラ。顔だけ振り返っていたのを、体ごと彼女の方に向き直る。

 ほどなくして、彼女は眼前へときた。そして俺を見上げ、ちょいちょいと姿勢をあげるよう、手で要求してくる。

 ちなみに俺の身長は大体180で、シリルラは160くらいだ。20センチほど差があるので、頭一つぶんくらい違う。

 言われた通り姿勢を下げると、彼女は俺の頭を両手で引き寄せて、自分の胸の中へと誘った。

 柔らかい感触と、良い匂いが顔を支配する。それにドキドキとするよりも、どこか安心感を覚えた。

「……今のセンパイの力なら、そうそう危険にはならないでしょう。でも、気をつけてくださいね」
「…ああ、わかった。ありがとう、シリルラ」

 少し弱々しい声で言うシリルラにそう返すと、彼女は俺の髪を撫でた後解放した。姿勢を戻し、頭を撫でる。

『さあさあ、長らくお待たせいたしました!いよいよ開始です!』
「…タイミングいいな。それじゃあ、いって来る」

 セレアさんの声に、俺は踵を返して開いたステージの入口へと足を踏み出した。

「センパイ」
「なんだ、まだ何かーーッ?」

 振り返った瞬間、襟を掴まれて引き寄せられ、彼女は俺の唇に自分の唇を重ねてきた。いきなりのことに、思考が停止する。

「ん……お守りです。それじゃあ、これで」

 俺あ何か言う前に、唇を離した彼女は、どこかへと転移していった。残された俺は、呆然と唇を触る。

 けど、一瞬後には笑みを浮かべて、今度こそ戦場へと足を踏み出した。胸の中に、一人の少女がくれた勇気を携えて。

『本線を勝ち残った、五人の勇者たちの愛智をするのは、この10年間一部以外はその存在を秘匿されていた男!その神秘のヴェールが今宵、今ここで暴かれます!』

   セレアさんの声に合わせて、俺は登場の準備をする。背中から二枚一対の理由の翼を広げ、そして……





『それではご紹介しましょう……異世界より舞い降りた龍神、皇龍人すめらぎりゅうとォォォオオオオ!』





   その言葉とともに、俺は強く翼をはためかせて、壁の中から勢いよく飛び出した。そして一直線に、ステージの上へと向かう。

   ぐんぐん飛んでいき、ステージ中心の真上で制止した。そしてまるで、自分を誇示するように大きく翼を広げる。

 

ワアァアアアァァァアアァアアァアア!



   すると、観客たちは大きな歓声を上げてくれた。よしよし、つかみはいい感じだな。このまま降りよう。

   上空から降下していき、一周観客席の周りを飛ぶと、ステージへと降り立った。そして翼を収納する。

   ちなみにこの翼、物体をすり抜ける性質を持つようで、服を着たままでも広げられる。なんとも親切な仕様である。

「……来たね」

   黙して立っていたリージアさんが、目を開いて俺を射抜くような視線で見る。立ち上がった俺は、それを真正面から受け止めた。

「それじゃあ、さっそく……」
「待ってください。少しだけ、聞きたいことがあるんです」
「聞きたいこと?」

   訝しげな顔をするリージアさん。そう、俺は最後の五人になった人に、聞きたいことがあった。あ、ちなみにシドはスルーの方向で。

「なんで、この大会に参加したんですか?」
「……なんだ、そんなことかい。単純だよ、私とこの子の力が、どこまで通用するか知りたかった。それだけさ」

   ホルスターに挿していた銃を引き抜き、少しうっとりとしたような表情でいうリージアさん。

   そこからは、自分の愛銃に対しての愛情が感じられる。しかしすぐに表情を元に戻すと、ホルスターに戻してこちらを見た。

「さあ、話は終わりだ。戦う準備をしな」
「…ああ、感謝する」

 聞きたいことは聞けたので、言われた通り戦う準備を始める。といっても、最初はどれだけ力を【解放】していいのか確かめなくてはいけない。

 なので、とりあえず3%だけステータスを解放し、両腕に【神樹の子セフィラ】の枝を刀状に展開する。

 それを見て少し驚いたような顔をした後、リージアさんは両手を銃のグリップに触れさせる。まるで早打ちをするガンマンのようだ。



『それでは……始めっ!』



 観客が見守るなか、セレアさんの言葉とともに大きく銅鑼が鳴らされる。その瞬間、リージアさんは銃を引き抜いて引き金を引いた。 


ドンッ! ドンッ! ドンッ!


 大きな音ともに、銃口から弾丸が飛び出す。力を解放した影響で、それはひどくスローモーションに見えた。

 どうやら最初から本気のようで、術式の刻まれた弾丸が、あのイカのような魔獣にゆっくりと変化していく。

 それに向かって、俺は一歩右足を踏み出した。そして右腕を平手にし、思い切り突き出す。

「はっ!」

 短く息を吐き出すとともに、刀を伸長。一番最初に飛び出した魔獣を刺突で真っ二つにし、そのまま左右に振るって残りの二匹も両断した。

 破壊された魔獣は弾丸にもどり、地面に落ちる。リージアさんは驚愕に目を見開いた。同時に、観客が歓喜の声をあげる。

『龍人選手、目にも留まらぬスピードでリージア選手の弾丸を両断!まさかの早業に会場も沸き立っています!』

「チッ、まさか見えないほどに早いなんてね」
「これでも鍛えてますので」
「へえ、女みたいな顔してんのに」
「それは言わないでください」

 やっぱり誰から見ても、俺の顔は女らしい。なんだか悲しくなってきた。

「まあ、それはともかく……この程度で終わりと思わないで」

 フッと笑ったリージアさんは、銃の片方の弾を入れ替える。そしてなんと、自分のこめかみに向けて引き金を引いた。

 さすがに驚いて動きを止めると、彼女の体が緑色のオーラで覆われ、両目が同様に緑色に光る。一体なんの効果なんだ?

 そう思った次の瞬間、彼女の姿が搔き消える。同時に背後から気配を感じ、とっさに頭をひねった。


ドンッ!


 すると、頬をかすめて弾丸が飛んでいく。振り向きざまに刀を振り抜くと、火花が散って何かに防がれる。

 返す刀でもう一閃するも、当たった感触はしない。諦めて体の向きを変えて後ろを向くと、リージアさんが着地するところだった。

『なな、なんと!リージア選手、急激にスピードを増した!先ほど自分に撃ち込んだ弾丸が関係あるのでしょうか?』

「……危なかったな」

 察するに、さっきの自分に撃った銃弾は、肉体能力の強化を施す効果があったんだろう。

   まさか、3%とはいえ見失うとは。もう少し、ギアを上げる必要があるかもしれない。

「まだまだいくよ!」
「……!」

 再び消えるリージアさん。一応4%までギアを上げ、刀を構えて次の攻撃に備える。すると、発砲音を捉えた。

 その方向にあらかじめ右の刀を置いておき、空気の振動からリージアさんの位置を割り出して左の刀を一閃。

 何かを切り裂いたような感触を捉えるが、しかし浅いものだった。せめて逃すまいと、刀の先端を変形させ、リージアさんを捕まえる。

「しまっ!」
「ふっ!」
「かはっ!?」

『龍人選手がリージア選手を捉え、叩きつけた!これは痛いダメージだ!』

 投げ飛ばしたリージアさんを地面に叩きつけ、弾丸を切り裂いた右の刀を鞭にして、追撃をかけようとする。

 だが、その前にリージアさんが見当違いの方向に銃を撃った。かと思えば、忽然と消え失せる。転移弾か!

 両腕を引き戻して刀を変形、シェルターにして弾丸を防いだ。更に、追い討ちに備えて、全方位に霊力を放出する!

   霊力は物理的な力を伴う衝撃波に姿を変えて、ステージ中に広がった。そして彼女を捉える。

「くぅっ!?」
「そこか!」

   シェルターをそのまま射出し、リージアさんにぶつける。今度は確かに捉え、彼女は吹き飛んだ。

  
ドンッ!


   だが、発砲音とともにまた姿が消え、今度は懐に現れる。そして腹に銃口を押し当て、ゼロ距離で引き金を引こうとしていた。


ドゴッ!


「なっ……」

   俺が何かをする前に、体が自動的に反応して枝の塊が銃身を殴り、銃口の向きをそらす。脇腹の隣を弾が通過した。

   体制が崩れた隙に、腹にキックを入れる。リージアさんはそれをもろに受け、地面を転がっていった。

   それでも途中で無理やりブレーキをかけ、膝たちの状態で制止する。荒い息を吐き、こちらをギロリと睨んできた。

「はぁ、はぁ……中々やるね」
「まだまだいけますよ」
「まったく……さすがは神と自称するだけあるよっ!」

   言うのと同時に、正面から突っ込んでくる。かに思えたが、銃口を俺とはまったく別の方向に向けて発砲した。

   そしてまた、姿が消える。どうやら、転移を使った、トリッキーな戦法がお得意のようだ。


ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!


   立て続けに幾度も発砲する音が響き、弾の飛んでいった方向に顔を向けた瞬間に、また別の場所へと転移する。

   転移しながらリロードをしているのか、移動が途切れる様子はなく、ただ発砲する音だけが響いた。まさに初見殺しだな。

   さて、どこから来るかと警戒していると……なんと、俺の真正面に弾が打ち込まれ、リージアさんが姿をあらわした。

「……わざわざ移動していたのに、一体どういうつもりですか?」
「ふふ、すぐにわかるさ」

   不敵な笑みを浮かべた彼女に、俺はハッとする。そしてようやく、彼女の目的が奇襲ではないことに気づいた。

「チェックメイト」

   パチン、と指を弾く音ともに、それまでリージアさんが転移した場所全てにあの魔獣が現れた。その数、およそ五十以上!

   なんらかの手段で姿を隠していた魔獣が、一斉に俺に向かって飛んでくる。物量で一気に押しつぶすつもりか!

『リージア選手、転移しながらばらまいた魔獣弾を使って総攻撃を仕掛けたー!龍人選手、これはどう乗り切るのでしょうか!』

   シェルターを展開しては間に合わない、ならばと翼を広げ、空へと飛ぶ。魔獣の隙間をすり抜け、なんとか包囲網から逃れた。

「さすがにこれじゃあやられてくれないが……だが、こいつらが追尾性なのを忘れたかい!」
「チッ!」

   一斉に上を向いて突撃してくる魔獣に、再び両手の枝を変形。あらかじめ術式を内側に枝で再現した大砲に変え、霊力をエネルギーにして発射する。いわゆるビーム砲だ。



ゴォオオオオオオオオッ!!



   灰色のエネルギーが、魔獣たちを飲み込んでいく。ひとまず攻撃をしのいだか、そう思った瞬間銃を構えたリージアさんが隣に現れる。

   そのまま発砲、上半身をのけぞらせてかわした。だが、その代わりにビームがずれ、中から下の方にいて無事だった魔獣が飛んでくる。

   頭の刃で貫かんと迫ってきた魔獣を尻尾を生やして叩き殺し、その場で一回転して回し蹴りをリージアさんにお見舞いする。

   当然のように、彼女は地面に向けて発砲して転移することで回避。しかも、こちらにも弾丸のおみやげ付きだ。

   仕方がないと、俺も【転移】スキルで離脱。直進した弾丸は結界に当たって跳ね返り、明後日の方向へと飛んでいった。

   ステージの上に戻った俺は一息付き、一足先に戻っていたリージアさんの方を見る。

「まったく、自信なくすね。あれだけの連続攻撃を、全部いなされるなんて」
「いえ、結構ギリギリでした」
「どこがだい、まったく……」

   すると彼女は、やれやれとあきれた様子で肩をすくめた。どうやらお気に召した答えではなかったようだ。

   それはともかく……やはり、かなりの実力者だ。本戦では本気の十分の一も出してなかったのではないだろうか。

まあ、なんにせよ……

「これで、だいたい加減がわかった」
「……なんだって?」

   俺の言葉に、ピクリと反応するリージアさん。それに不敵な笑みを浮かべ、俺は両手にまとっていた【神樹の子セフィラ】を解除する。

   代わりに、後ろ腰のホルスターに収めていた武器を引き抜いた。

『龍人選手、新しく武器を取り出した!それは……銃!?』

   そう。俺が取り出したもの、それは……〝オールスMr.I〟によく似た青色の大型拳銃だ。所々に銀色の装飾が入っている。

「それは……?」
「さあ〝ネオ・オールス〟、目を覚ませ。狩りの時間だ」


ヴン!


   ネオ・オールスに呼びかけると、それに答えるように銃身のラインに光が灯る。そして低い駆動音を響かせた。

   まだ誰にも、屋敷の皆にも見せていなかった新兵器に、ざわざわと会場が揺れる。しかしその中で、リージアさんは動揺していなかった。

「……へえ。それがオールス。粉々になったって聞いたけど、まさか残ってるとはね」
「オールスのことを知ってるのか?」
「まあね。私は銃使いと同時に、ちょっとしたマニアでね」

   無表情から一転、まるで少女のように目をキラキラとさせながら言うリージアさん。いわゆる、銃オタというやつだろうか。

「ふふ、血が違ってきた……!私が勝ったら、それを譲ってもらおうか!」


ドンッ!ドンッ!ドンッ!


   それどころか、かなり楽しげな顔で発砲してきた。俺は冷静にネオ・オールスを構え、引き金を引く。


パンッ。


   すると、リージアさんの放った銃弾が消えた・・・。文字通り、跡形も残さず消滅したのだ。

   リージアさんは不思議そうに首を傾げたものの、最初のように視認不可能な速度で防がれたのだろうと、続けて撃ってくる。

   今度は魔獣弾の嵐だ。目視できるだけでも三十以上の魔獣が迫ってくる。それに俺は変わらず、オールスの引き金を引く。

   
パンッ。


   すると、また消えた。三十以上はいた魔物が、全て一瞬でだ。流石におかしいと思ったのか、リージアさんは眉をしかめる。

   一旦銃を下ろして弾倉を他のものに交換し、また撃ってくる。今度は燃え盛るマグマのような赤熱した弾だ。


パンッ。


   しかし、それもネオ・オールスの引き金を引くだけで消滅する。ここにきて初めて、リージアさんは激しく困惑した様子を見せた。

   それでも攻撃手段が銃撃しかない以上、どんどん撃ってくる。属性魔法のかかった弾、別種の魔獣弾など、色々なものを。



それからは、同じことの繰り返しだった。



   リージアさんが引き金を引けば、俺も引き金を引く。すると、彼女の撃った弾はどんなものでも一瞬で消える。

   ただひたすらに、撃たれて、撃って消す。それだけを繰り返す。やがて、リージアさんの顔が恐怖に歪んでいった。

『こ、これはどういうことでしょうか!?リージア選手の放った弾丸が、ことごとく消えていきます!龍人選手のネオ・オールスとやらの力なのでしょうか!?』

「な、なんで弾が……くっ、こうなったら!」

   銃撃ではらちがあかないと思ったのか、本戦の時のように、剣状の魔獣を両腕に装着して接近してくる。

   ふむ、近接戦闘か。なら俺も、得意な分野でいかせてもらおう。

「ネオ・オールス、殲滅形態アタックモード


ピピピピ……


   命令を受信したオールスの銃身が、カチリと音を立てる。そしてグリップに対して真っ直ぐに変形した。
   
   変形したオールスを横に振ると、今度は銃身が二つに割れ、その間から両刃のエネルギー刃が現れる。

「シッ!」


ガキンッ!


   アタックモードになったネオ・オールスで、リージアさんの攻撃を受け止める。ビーム刃と魔獣が火花を散らした。

   しかし、それも一瞬のこと。次の瞬間には接触面から融解していき、魔獣はドロドロに溶けてしまった。

「そんな!?」
「ハッ!」

   驚くリージアさんに、ネオ・オールスを一閃。魔獣の中に隠れていた、二丁の銃のバレルを切り裂く。

   彼女自身は当たる寸前のところで避け、バックステップで距離を取る。そしてホルスターの中から、何かを取り出そうとした。


ビュゴッ!


   その前に、俺は肉薄する。その時、ステージが踏み込みと同時に巻き起こった風で、土煙で覆われた。

『つ、土煙でステージが見えません!一体どうなったのでしょうか!?』

   セレアさんの焦ったような声が聞こえる。そんな中、俺たちを覆い隠していた土煙が、少しずつ薄れていった。



   やがて、煙が晴れた時……ステージでは、ネオ・オールスの切っ先を喉に突きつけている俺と、へたりこんでいるリージアさんという構図ができあがっていた。



「……勝負ありです」
「…私の完敗だね」

   やれやれ、といった顔のリージアさんが、負けを認める。それを確認したのか、大きな銅鑼の音が響いた。

   本線と同じく、結界が発動して開始前の状態に戻る。といっても強制的な巻き戻しではなく、俺たち自身の状態が戻った。

   ネオ・オールスを銃形態に戻して、ホルスターにしまう。これが初陣だったが、予想以上の力だったな。

   リージアさんも復元した銃をくるくると回しながら、腰に手を当ててため息をついていた。

「まったく、とんでもない銃だよ。あれ、一体何だったんだい?」
「あれっていうと、〝滅無〟のことですか?」
「変な名前だね……まあ、多分それのことだよ」
「あー……あんまり周知されるとまずいんで、少し耳を貸してください」

   はいはい、と耳を寄せてくるリージアさんに、手で口元を隠しながらコソコソと喋る。ふんふんと頷いた後、彼女は驚いたような顔をした。

「それは本当?」
「はい」
「あははっ、それじゃあ効かないわけだ。ま、いいことを聞かせてもらったよ。それじゃあ、この後も頑張りな。王様・・
「えっ?」

   俺が間抜けな声を上げている間に、彼女はそれじゃ、と手を振りながら、出口の壁の方へと歩いていった。

   ……今、聞き間違えでなければ。リージアさんは俺を、王と呼んでくれたのか?つまり、認められた?

   いや、ぬか喜びするんじゃない。ただの冗談だって可能性の方が高い。でも、何となく嬉しかった。

『ラストファイブvs龍神第1戦は、皇龍人選手の勝利です!皆さん、盛大な拍手を!』

   観客席から、万雷の拍手が鳴り響く。中には「いいぞー!」「強いな!」といった声も聞こえた。

   それに少しにやけそうになりながら、俺は深くお辞儀をするのだった。


ーーー
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