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補足編
終わりは良くなかったかもしれない!~結婚指輪の恐怖~
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神殿の祈りの場に入ると、わっと周囲から歓声が上がった。
急な予定だったにもかかわらず、リリアなど親しい友人はみな、式に参加してくれていた。
本来侯爵家が挙げる式なら、もっと大々的盛大なものにすべきなのだろうが、あまりに急な話だったことと、私の意向を汲んでもらったおかげで、ほとんど一般人と変わらぬ規模の式となった。ありがたい。
祈りの場の中央に敷かれた絨毯(花びらが撒かれていた……。神官長……)の上を進み、祭壇の前でお兄様と向かい合う。
段取り通り、誓いの言葉を述べた後、緊張した面持ちのミルが、指輪を納めた箱を開け、私達に差し出した。
……変わった材質の指輪だな、と最初に思った。
視界にキラキラと輝く指輪が入った瞬間から、イヤな予感はしていたのだが、でも、これは……。
指輪は、金属製ではなさそうだった。
透明で光の加減により虹色に光り輝き、まるでダイヤモンドのようだが、その表面が微妙に……うねっている……ように見えた。
キ、キモい……。
私は顔を引き攣らせ、お兄様を見上げた。
お兄様は、指輪よりも眩く輝くキラキラの笑顔で私を見つめている。
……拒否できない。
私は震える左手をお兄様に差し出した。
お兄様はそっと私の左手に手を添え、明らかにおかしい結婚指輪を私の薬指に嵌めた。
その瞬間、カッと左手が光り、私は思わず目を閉じた。
「……ひぃっ」
恐る恐る目を開けた私は、小さな悲鳴を上げた。
左手薬指に、まったく新しい指輪が嵌っていたからだ。
金色の婚約指輪でも、透明な結婚指輪でもない。
一見、白金製のように見えるその指輪の中央には、お兄様の瞳のように黒い石が埋めこまれていた。
……婚約指輪と結婚指輪が合体し、さらなる進化型へ変化を遂げたということだろうか。
もう何も考えたくない、と私は心を無にし、お兄様の左手薬指に指輪を嵌めた。
なんか、薬指に指輪を近づけたとたん、吸い込まれるように指輪自らお兄様の手に嵌ったような気がしたけど……、いや、私は何も見ていない。これはただの結婚指輪。
指輪は私の時と同じように閃光を放つと、またもや進化系キワモノ指輪へとトランスフォームを遂げた。
キモさと恐怖に震える私を、お兄様ががしっと力強く抱きしめる。
「マリア、愛している……」
「……わ、私もです、お兄様……」
泣きそうになりながら、私は言った。
ウソではない。
愛していなければ、こんなキモい指輪には耐えられない。
この指輪、最終的にどういう機能がついてるんですか?
それって、後追い自殺機能よりヒドいですか?
私のプライバシーはどの程度守られるんでしょうか?
恐怖と疑問はつきない。
が、それを問いただす機会はあるのか、あったところで口にする勇気を出せるのか……。
「おめでとう、マリア!」
「おめでとう!」
祝福の歓声の中、私は涙目でキモい結婚指輪を見つめたのだった。
急な予定だったにもかかわらず、リリアなど親しい友人はみな、式に参加してくれていた。
本来侯爵家が挙げる式なら、もっと大々的盛大なものにすべきなのだろうが、あまりに急な話だったことと、私の意向を汲んでもらったおかげで、ほとんど一般人と変わらぬ規模の式となった。ありがたい。
祈りの場の中央に敷かれた絨毯(花びらが撒かれていた……。神官長……)の上を進み、祭壇の前でお兄様と向かい合う。
段取り通り、誓いの言葉を述べた後、緊張した面持ちのミルが、指輪を納めた箱を開け、私達に差し出した。
……変わった材質の指輪だな、と最初に思った。
視界にキラキラと輝く指輪が入った瞬間から、イヤな予感はしていたのだが、でも、これは……。
指輪は、金属製ではなさそうだった。
透明で光の加減により虹色に光り輝き、まるでダイヤモンドのようだが、その表面が微妙に……うねっている……ように見えた。
キ、キモい……。
私は顔を引き攣らせ、お兄様を見上げた。
お兄様は、指輪よりも眩く輝くキラキラの笑顔で私を見つめている。
……拒否できない。
私は震える左手をお兄様に差し出した。
お兄様はそっと私の左手に手を添え、明らかにおかしい結婚指輪を私の薬指に嵌めた。
その瞬間、カッと左手が光り、私は思わず目を閉じた。
「……ひぃっ」
恐る恐る目を開けた私は、小さな悲鳴を上げた。
左手薬指に、まったく新しい指輪が嵌っていたからだ。
金色の婚約指輪でも、透明な結婚指輪でもない。
一見、白金製のように見えるその指輪の中央には、お兄様の瞳のように黒い石が埋めこまれていた。
……婚約指輪と結婚指輪が合体し、さらなる進化型へ変化を遂げたということだろうか。
もう何も考えたくない、と私は心を無にし、お兄様の左手薬指に指輪を嵌めた。
なんか、薬指に指輪を近づけたとたん、吸い込まれるように指輪自らお兄様の手に嵌ったような気がしたけど……、いや、私は何も見ていない。これはただの結婚指輪。
指輪は私の時と同じように閃光を放つと、またもや進化系キワモノ指輪へとトランスフォームを遂げた。
キモさと恐怖に震える私を、お兄様ががしっと力強く抱きしめる。
「マリア、愛している……」
「……わ、私もです、お兄様……」
泣きそうになりながら、私は言った。
ウソではない。
愛していなければ、こんなキモい指輪には耐えられない。
この指輪、最終的にどういう機能がついてるんですか?
それって、後追い自殺機能よりヒドいですか?
私のプライバシーはどの程度守られるんでしょうか?
恐怖と疑問はつきない。
が、それを問いただす機会はあるのか、あったところで口にする勇気を出せるのか……。
「おめでとう、マリア!」
「おめでとう!」
祝福の歓声の中、私は涙目でキモい結婚指輪を見つめたのだった。
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