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強すぎる結果

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 ガラガラと、ガラガラと。

 下を見れば学校が崩れる音がする。

「ここはどこ!?」

 学校の敷地じゃない場所に転移させられて困惑する。

 そして目の前に視線を移すと、リクスウェルトンが半透明になって消えていく。

「思っていたよりもずっとずっと、強すぎる貴女を倒すのには時間が掛かりそうでした。だから貴女を結界の中から転移させて、貴女よりもずっとずっと、弱い元凶に力を集めてサクッと殺すことにします。そっちの方がよほど面白くなりそうですから」

 時間稼ぎをしていた事がこの怪人には分かったの? 勇くんじゃリクスウェルトンは倒せない。

 転移系の技は警戒していたはずなのに、自爆をトリガーに転移したの? そんなのは初見なら防ぎようがない。

「待って!」

 リクスウェルトンの身体を私の刀が通り過ぎると、リクスウェルトンは煙のように姿を消した。


 周りを見れば沢山の戦隊や沢山の魔法少女が結界に攻撃をしていた。

 結界はどれだけの時間、攻撃を受けているのか知らないが、黒い結界にはヒビすら入ってない。

「そんな……勇くん。早く勇くんを助けないと」

 私は、私の今できる全力の攻撃を結界に叩き込むことにした。


◇◇◇◇


 刀でリクスウェルトンを空中から地面に切り落とした。

 地面の割れる音を聞きながら、俺は切った反動で空中をクルンとバク宙をしてコンクリートの棒に着地した。

 そしてそのコンクリートの棒から違う棒にジャンプする。リクスウェルトンから離れるようにジャンプを繰り返す。

 ドゴンと、背後から爆発音が鳴り、コンクリートの棒にぶら下がってるネットが揺れる。

 ドゴン、ドゴンと、段々近くなる音に構わずにジャンプを繰り返して、体育館の屋根に飛び乗り、後ろを振り返る。

 すると黒い線を一直線に空に描いたような物が、俺の方に勢いよく降ってくる。

 その黒い線に刀を這わして、撫でるように横に逸らす。

 ドゴンと、黒い線が通った体育館は、真っ二つに割れた。

 状況を詳細を確認している暇はない。

「なんですかなんですか、なんですかなんですか! 私は何故、元凶から攻撃を食らった? ねぇねぇ、ねぇねぇ! 何故ですか!?」

 いつの間にか空中にいたリクスウェルトンが体育館の屋根に降りてきた。

 リクスウェルトンの様子があきらかにおかしい。

 口から黒い蒸気のような物を吐いて、目尻が吊り上がり、目の白色の部分が黒になっている。

 初対面の時の背筋をピンッと伸ばした姿勢からは考えられないほどに、獣のような前傾姿勢で、胸から腹にかけて斜めに服が裂けている。

 その裂けている服からは真っ赤な血が出ていた。相当に傷が深いのか、息をする度に大量の血が地面に落ちる。

 俺はトントンットンと、意識の境を縫って、リクスウェルとの距離を埋める。


「弱いと思って舐めてた奴から一撃を貰って、何故攻撃を貰ったのかも分からないから、その元凶に聞くと。

 まだ分からないのか?」


 俺はリクスウェルトンの胸に刀の剣先を突きつけながら、答え合わせをしてやる。

「お前が俺より弱いからだよ。……いや、俺が強すぎるからか?」

 刀はスルスル、ストンと、簡単に胸を貫いた。

 リクスウェルトンは俺を視認した時には、もう終わっていた。

「……ッ!」

 目を限界まで開いて、俺を見ていた。


 心臓が停止したのを確認して、リクスウェルトンから刀を抜き、四歩からまた一歩、距離を取り、次に備える。


 俺の刀の白い炎が加速度的に大きく燃え上がり、天まで昇らんとする。その白い炎を左手で抑えながら刀身を掴み、左手を腰の位置まで持ってきて、構える。

「元凶ォォオオオ!!! お前を殺してやる!!!!!」

 静止していたリクスウェルトンが涎を撒き散らしながら大声を出し、動き出した。

 そしてリクスウェルトンの身体からはボコボコと音が鳴り、どこに入っていたんだとツッコミを入れたくなるような巨大な羽根が背中から出てくると、殺意がこもった目で俺を睨んでくる。

「元凶。元キョォォォオオオオオオオオ!!!!!!!」
 
 怪人は巨大化する、それは常識で。でも俺は知っている巨大化の弱点を。

 ふぅ、と息を止める。そして時間も止まる。

 一瞬の静けさ。

 俺の刀が鞘もないのに、カチャリと噛み合わせの良い音を鳴らす。



 一瞬の静けさから、再び時間が動き出した。

 時が止まったかのような時間からリクスウェルトンは開放される。

「オオオ、オォ?」

 間抜けな声を上げたリクスウェルトンの頭が、グラッと落ちる。その後に学校を余裕で覆えるぐらいの手羽先が二本落ちた。



 呆気なく終了したボス戦。

 俺はリクスウェルトンの頭に近寄って、頭に向かって、上から喋る。

「俺が巨大化するまで待つと思うか?」

「許さない! 許さナイ、ユルサナイ、ユルサナイ」

 リクスウェルトンは俺を睨むことをやめずに、『許さない』と恨み言を繰り返す。

「ユルサナイ、ユルサナイ、ユルサ……」

「続きはあの世で言っててくれや」

 バンっと、リクスウェルトンの頭を踏みつけると、黒い土になった。



 幹部クラスと戦い勝って、何を思うかと考えてみれば。

「愛華に会いたいな」

 別れた彼女に会いたい。だった。


 空を見上げれば、黒い結界が真上から解けていく。

 倒したんだと安心したら急に全身が重くなる。

「怪人の俺がここに居たら戦隊と魔法少女に殺されるんだろうな」

 俺は刀を頭上に放りながら転移石で更衣室に飛んだ。

 左手に大きな悪の力を感じて、その悪の力を試験管に移す前に目の前が真っ暗になった。





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