炎奏するルールブレイカー〜追放されたからソロプレイで無双する〜

くらげさん

文字の大きさ
15 / 51

無理との対面

しおりを挟む






 部屋に入ると動物のぬいぐるみが適度に並んでいる。

 ミリアさんの言う通りだとするならこのぬいぐるみ達はアリサさんの趣味だろう。

 こんな可愛らしい部屋は普段客間じゃなくて休憩室に使うはずだ。

 予期せぬ来客にぬいぐるみ達も驚いている事だろう。

「座ってください」

 アリサさんの指示に従い俺はふかふかのソファーに座り込む。

「すいません。散らかってまして」

 本当に急に俺を呼んだんだな。

 お茶をテキパキと用意するとアリサさんもソファーに座った。

 早速俺は本題を切り出す。

 アリサさんからの頼みは出来る限り聞くが何故俺に?

「他国戦に『くうらん』として参加しろと言う事ですか?」

「はい。その認識で合っています」

「何故か聞いても?」

「これは話さないと納得して貰えないですよね」



 アリサさんは重苦しく会議で略奪戦が開かれている事を伝えてくる。

 それはミースティアでは情報の開示がなされていないことも。

 最上位クランのヒカリさんは自分の国のプレイヤーの負担になる事を嫌っている。だから開示がなされていないのか。

「最終的に決まるのは期間内でのトータルな勝ち星ですか?」

「はい。その通りです」

 期間内のトータルな勝ち星が多い国は略奪の権利を持つ。

 何かしらの思惑がある以上その権利を譲り合う事は不可能だろう。

「いや、それなら情報の開示をした方がいいんじゃないですか?」

「ヒカリさんの考えは正しいのです。もし今、他国戦を挑発するような事になれば黒星が何倍にも膨れ上がります」

 なるほど、この国は一番かそれなりに弱い国だと言うことだろう。

 ヒカリさんは国のプレイヤーの為に動いてるのだろうがその選択が今は良いように傾いている形なのか。

「最上位クランは総力を上げて他国戦に参加していますがどの国もそれは同じなのです。シンさん程の実力があれば」


『それは無理だ』


 アリサさんには悪いがそんなに持ち上げられる程の実力は俺にはない。確かにソロプレイヤーとして勝ち続けた実績があるのは分かるがそれは仮クランだったから初級クランと強くて中級クランまでを相手に戦っていたからだ。

 他国戦となればクランのランクが入り混じり、今までの様にはいかなくなる。

 狙いは分かる。ソロプレイヤーが他国戦で勝ち続ければ目を引いて他の国はそれなりの対処をしないといけなくなる。

 国同士の総力戦を切り捨てて強いプレイヤーだけの個人戦に絞るだろう。

 そうする事で最上位プレイヤーと上位プレイヤーの少ないこの国がやっと同じ土俵で戦える。

「俺はラクリガルドの精鋭には勝てないぞ」

 ハッとアリサさんは目を見開く。

 これは俺が負けることが無い前提で話は進んでいる。

 先程のアリサさんの話ではラクリガルドのマスターが略奪戦を口にしたらしい。一番発言力がある俺の前にいた国が一番強い国なのだろうと当たりは付く。

 チート装備の連中との一方的な戦いには嫌気がさす。

「これは国からの頼みでは無いと言いましたよね」

 俺が疑問だった所だ。何故運営クランのアリサさんが直に俺に頼むのか。

「私はこの国が好きです。この国の全プレイヤーは同じ仲間です。皆んなが笑いあって、時には苦難を乗り越えてと初心者に優しい風潮があるのも良い所ですね」

 全プレイヤーが仲間か……そんな風には考えた事は無かった。

 だが俺はこの国に来てその優しさに何度も触れている。

「だから私は一人のプレイヤーとしてヒカリさんを守りたいのです。この素敵な国を作り上げたヒカリさんを……どうかシンさん力を貸してください」

 バッと立ち上がったアリサさんは目を強く瞑ったまま俺に頭を下げる。

「ミースティアがもし負ければ何が取られるんですか?」

 シーンと静まり返る部屋。

 パタンとアリサさんはソファーに力無く座り込むと。

 目を潤ませながら俺を見る。


『ラクリガルドに負ければヒカリさんを取られます』


 だから仲間を守りたいか。

 略奪戦の内容は面白いイベントでアリサさんがそこまで必死になる理由が掴めなかった。

 ヒカリさんがラクリガルドに取られると言うのは本当は運営クランと最上位クランしか知りえない情報だったのかも知れない。

 それを吐き出させた俺も悪い奴だと思うが分かった。


「今ラクリガルドにどれだけ負けてるんだ?」

「優先的に最上位クランや上位クランが当たってますが制限はされてないので100は超えると思われます」

「期間は?」

「ゲーム内で1ヶ月ですが、もう1週間を過ぎました」

 はぁ、とため息が出てしまう。

「アリサさんではなく運営クランの人間として話をさせて貰っていいかな?」

「はい」

「投げ銭機能で得た金は全て国に寄付します。参加費は全て勝ちの報酬から引いてください」

「はい?」

 困惑するアリサさんに俺はなおも続ける。

「まだ足りませんか? これはラクリガルドとのクラン戦が組まれた時に他のクランに制限を付けて優先的に出してもらう条件ですが」

 俺にグイッと近づいてくるアリサさん。

 顔が近い。

「コチラから頼んでいるのにその条件は飲めません」

「これはアリサさんとではなく運営クランの人間としてなら飲みますよね」

「そう、ですね。でも」

 良いのか? と目で訴えかけてくるアリサさん。

「ラクリガルドに無謀にも挑んだソロプレイヤーのせいでヒカリさんが取られるんですからアリサさん個人にこんな話は出来ません」

「責任までもシンさんが背負う事は無いのです。その時は」

「その時は盛大にこの契約を俺がバラしますが運営クランの人間は絶対ダメですよ」

「ここまで運営クランの人間として枷をハメられたのは初めてです」

 この国の優しさを作ったのがヒカリさんだと言うアリサさん。

「シンさんが負ければ私は個人としてシンさんと同じ様に責任を取ります」

 間接的にだが俺はそれに恩を感じている。

「責任を意地でも取りたいアリサさんには悪いですが」

 なら答えは簡単じゃないか。


『俺が負ける事なんて無いですよ』


 大きな目をさらに開いたアリサさんを見ながら俺は自分が吐き出した無理を覆す。

 早速【くうらん】として優先的に他国戦の参加を決めた。





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

キメラスキルオンライン 【設定集】

百々 五十六
SF
キメラスキルオンラインの設定や、構想などを保存しておくための設定集。 設定を考えたなら、それを保存しておく必要がある。 ここはそういう場だ。

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

底辺動画主、配信を切り忘れてスライムを育成していたらバズった

椎名 富比路
ファンタジー
ダンジョンが世界じゅうに存在する世界。ダンジョン配信業が世間でさかんに行われている。 底辺冒険者であり配信者のツヨシは、あるとき弱っていたスライムを持ち帰る。 ワラビと名付けられたスライムは、元気に成長した。 だがツヨシは、うっかり配信を切り忘れて眠りについてしまう。 翌朝目覚めると、めっちゃバズっていた。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

処理中です...