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レアスキル
しおりを挟む俺は日課の魔物狩りに勤しんでいる。
略奪戦から逃げてると言われたらそれまでだ。
国から離れ魔物を斬るほどに負けた罪悪感が薄れていくこの時間は救いだろうか。
前の国に居た時はたまにだがサクヤと魔物狩りに出かけていた。
この国に来て今まで一人で魔物狩りをやっていたからか隣にサクヤが居るという状況では懐かしさとやりにくさが共存している。
いつもの狩場とは違い最奥ではなく国からまだ近い方だが呑気に魔物狩りを楽しみたいなら丁度いい位置だ。
サクヤとデート! と魔物狩りで舞い上がっていた昔の俺もこのぐらいの位置でサクヤと魔物を狩っていた。
特に話す事はなく歩きながら魔物を見つけた瞬間に走り出し狩って行くのを繰り返す。
飽きたとか言う訳じゃなくサクヤは昔と同じ様に微笑みながら俺の後に着いてくる。
サクヤが何も言わないので情けないがその優しさに漬け込んで甘えている。
独り善がりな感じだがこの時間が好きだったなと思い出した。
ルンルン気分な俺はスっと左手を水平に上げて歩みを止める。
何か聞こえた様な気がした。
少し待ってみると段々と音は大きくなる。
サクヤと木の影に隠れ様子を見ると大勢のプレイヤーが目の前を横切って行く。
クランが十ぐらいか? 合同で編成されていると思われる。
ザッと見た感じは百人ぐらいは居るんじゃないだろうか?
プレイヤー全員が黒のフードを深く被り顔が見えないのも印象的だった。
樹海の奥へ奥へと行進していくその姿を目で追いながら大きかった足音が消えていく。
「どこに行くんでしょうね?」
サクヤが口を開く。
なんか面白そうだな。
「分からないけど着いて行ってみる?」
サクヤは少し考え込む素振りを見せるとコクンと首を縦に振る。
一応聞いたが。着いて行きたい! と顔に出ていたのだろうか?
気を遣わせてしまったな。
だけどしょうがない! 大人数で何をやるんだ? と興味を唆られてしまった。
早速合同クランを追っていく。
そこまで距離が離れていなく直ぐに追いついたが立ち止まり木の影から様子を見る。
少し開けた樹海の真ん中でその集団は輪を作り始めた。
輪を作るとピキンとクールタイムが発生し一つの乱れもなく全員が一斉に硬直する。
合同詠唱なんて初めて見た。
そんな魔法は知らないが全員が詠唱を開始し聞き覚えのない呪文を呟いている。
レアスキルだ。
前の国でも図書館に毎日通い千日の皆勤賞で倉庫に入る許可を貰える。そこでしか覚えられない最上位魔法なんかがあったが俺が知らないだけでこのゲームにはレアスキルが数多く存在している。
入手方法を開示するのも珍しいのだがレアスキルを手に入れて舞い上がった初心者プレイヤーが大抵ばらす。
それを知った所で意味は無い。
レアスキルは一人が覚えれば入手方法はその時点で消滅する。
俺はレアスキルを一つも所持してないが個人的には羨ましいと感じる程の物ではある。
レアスキルはどれも強力なスキルで入手するだけで一生金には困らないと言われている。
それなのに目の前の光景は目を疑う。
全員が同じレアスキルを扱っているのだから。
『『『ジョーカー』』』
呪文の詠唱を終えたのかスキル名を唱え全員がその場でバタバタと倒れていく。
そして円の真ん中にサラサラと魔法の輝きが集まり黒い小さな点の様な物が出来上がった。
黒い点は重力に従い地面に落ちて行き、地面と衝突するとポチャンと音を立て地面が硬さを失ったように小さく波打つ。
それを見届けるとプレイヤー達はフラフラになりながら立ち上がり輪を解くとまた同じ道を行進して帰って行った。
クソみたいなレアスキルを見てしまった。
誰も居なくなった開けた樹海の真ん中に行ってみる。
黒い点が吸い込まれた所を足で踏んでみるが「地面だ」と当たり前の感想しか出て来なかった。
「なんの魔法なんでしょうね」
「魔物の名前だから魔物を呼び出すんじゃない? なんかの儀式みたいだったし」
「へっ?」
サクヤがなんでお前が知ってるんだと思うかもしれないが。
『だってジョーカーって未開の地で俺が初めて殺された魔物の名前だしね』
懐かしい人型の魔物。
「シン君がやられたのですか?」
サクヤが大きな目をさらに見開く。
「ここでもしそんな魔物が出たら強制的にスタンピードが発生するだろうね」
「スタンピードとはなんですか?」
サクヤは知らないのか。
少しの解説を挟み負ければ国の全プレイヤーの所持金が半分になると伝える。
「じゃあシン君が勝てない相手がスタンピードを起こせばもう半分になるの確定じゃないですか!」
強力な魔物でスタンピードを起こし国の所持金を半分にしたら誰が得をするのか? 国の所持金で発言力が増す国同士の会議でミースティアと競っている国が怪しいが。
決めつけるのは良くない。
後訂正を加えとかないと。
『ジョーカーぐらいなら余裕だけどね』
「あっ、余裕なんですね」
ジョーカーは未開の地に入って序盤の敵という事には変わりない。
油断したら負ける相手だが油断しなければ勝てる魔物だ。
「良いもの見れたし帰ろうか」
「は、はい」
俺はサクヤの動揺を他所に複数人で発動するレアスキルを見てルンルン気分で国に帰った。
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