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初日
しおりを挟むとうとうラグナロク当日だ。
俺が知っているラグナロクの出場者はユウカ、ミミリア、リリアの三人だけだ。
「……推薦枠のユウカ様です。えー、これで出場者以上になります」
あっ! 聞いてなかった。
ラグナロク出場者の名前を言っていたらしい。
俺は今、学園の生徒が集まっている武道館にいる。
「続いてラグナロクのルールを説明したいと思います」
男の先生が説明を始める。
ラグナロクは個人でトーナメントを勝ち抜いて行くと思っていたが団体戦らしい。
ラグナロクに出る他の学園の生徒を全て倒せば優勝になる。
全ての学園が同時にバトルフィールドで戦うことになる。
バトルフィールドは魔法で作った時空間を使う。
海、山、平原、他にも色んな地形を再現できるらしいのだ。
三十分経過するごとに地形が代わりラグナロク出場者達を惑わせる。
観客席にはモニターが設置されて、そこから時空間の戦いを観戦できるようになっている。
「……それでは説明を終わります」
やっと終わったか。
「それでは今からテレポートで皆さんを会場まで運びます」
えっ! 今から行くのか!
男の先生の説明が終わると先生達が詠唱を始める。
すると天井に魔法陣があらかじめ描いてあったのか魔法陣が光り輝く。
そして一瞬の浮遊感と共に景色が変わる。
空は歪み、各学園ごとに分けられた観客席。
俺達はラグナロクの観客席にテレポートした。
ラグナロクはフィーリオン剣士学園のコロシアムの数倍ある。だが大きさが違うだけで殆ど同じ作りだ。
出場者は魔法で作り出した時空間にテレポートで向かうシステムらしい。
次元の狭間とかではなく魔法で作り出した空間だ。
バトルフィールドにはすでに出場者が集まっている。
『これよりラグナロクを開催いたします』
どこからか響く声により会場が盛り上がる。
バトルフィールドの空間が歪み、ラグナロク出場者達が飲み込まれる。
ユウカ、ミミリア、リリアがいるから負けることはないだろ。
俺はモニターを見ながら楽しむことにする。
不安要素は精霊神の力がどこまで引き出されているのかだが、それについてもユウカとリリアには対策を教えてある。
ここ数日で苦労したのはその対策だ。それを使えばラグナロク楽勝だろうな。
ユウカが怪しい集団から聞かされた予言も気になるが、女神の予言? 俺も勇者やってた時はめっちゃ予言されていたが全部外してたもんな女神。
あの時は使えない奴と思っていた、今もだが。
異世界言語の翻訳と理不尽を切り裂く剣の召喚のスキルをくれたのが女神らしいが、それについては感謝してる。
使えないスキルをくれてありがとう。
異世界言語の翻訳? 異世界に十年いればそんなのもう使わないしな。
俺はモニターを見ながら呟く。
『頑張れよ』
周りは木に囲まれてる森のステージに飛ばされたリリアとユウカとミミリアの三人。
「僕、応援された気がした!」
「私も~」
ユウカとリリアが二人ではしゃいでいる。
「誰からだ?」
ミミリアが声をかける。
「「勿論剣の勇者様からだよ!」」
二人の声が重なる。
ミミリアが胸を張ってリリアの前を歩く。
「大将はリリアだ、私が全力で守るからな!」
「お姉ちゃん私は大丈夫だよ~」
三人は楽しく喋っているが、今はそんな状況じゃない。
先生から戦術を聞かされていたリリア達はそれに従って動いている。
三人で敵に見つからないように動き、遭遇したら戦えばいいらしい。
他の八人は四人の二つのグループに別れて敵を減らすのが仕事だ。
「ユウカちゃんは何でダークネスって言われてたの?」
「僕はね~学園祭? 分かるかな? お祭りの時に呼び出されたんだよ、この世界に」
「学園祭か~お兄ちゃんが言ってたよ、学園で色んな事をやるんだよね!」
「そう、そこで僕は演劇をやってる最中で『我はダークネス!』って言った所で召喚させられてたんだよ。その時に仮面をして黒のフードで全身を隠しててね。勇者様とか周りに言われて今さら正体を明かすのが恥ずかしくてね」
「全属性の魔法が使えるのに闇の魔法を使うのは何で?」
「それは闇の魔法が相性悪くて使いこなそうと思っていたからだよ、僕の名前はダークネスだったしね」
「そうなんだ~」
ミミリアが会話に入る。
「おい気を抜くなよ! ここは化物みたいに強い奴がたくさんいるんだ」
「お姉ちゃんでも勝てないの?」
「いや私は前のラグナロクで何も出来ずに終わったからな」
「なにがあったの?」
「私にも分からないが、一人の精霊使いに全滅させられたんだ」
リリアの顔が少し暗くなる。
「リリアちゃん! 大丈夫だよ、精霊神達を助ける為にもクレス君から色々教えて貰ったじゃないか」
ユウカがリリアを励ます。
「うん、そうだね!」
「それにしても全然現れないね」
ユウカが呟く。
「ラグナロクでは最長一週間も続いた事があるらしい」
「ご飯はどうするんだい?」
ユウカが疑問を言う。
「それは『戦闘を中断してください』とアナウンスがあり、自分達の学園の生徒がご飯を持ってくるんだ。その時に暗黙の了解で戦闘は禁止で中断中はモニターにも映らない」
「暗黙の了解? なら戦闘してきた場合どうするの? なんで禁止にしないの?」
ユウカは当然の疑問を口にする。
「禁止にしないのは中断中でも気を抜くなみたいな感じだな。相手が戦闘してきたら勿論戦わないといけない」
「えー、休憩なら休憩したいよ~」
ユウカはうんざりした様子だ。
ユウカの顔が険しくなる。
「どうした?」
ミミリアが訪ねる。
「シッ! ちょっと隠れて!」
三人が木の影に隠れる。
すると男二人が歩いてこちらに向かってくる。
「いや~、やっぱりフィーリオンは雑魚いな!」
「あぁフィーリオンの生徒が四人いたが全然相手にならなかった」
「これなら……」
男達が去って行こうとした時にバトルフィールドが平原に変わる。
男達と目が合う。
『あっ!』
なんとも言えない空気が場を支配する。
「ふふふ、バレたらしょうがない!」
ユウカはノリノリで悪役みたいなセリフを言う。
「ここでお前達を消して口封じだ~!」
「お~!」
ユウカは楽しそうだ、それにリリアも乗っかる。
ミミリアは恥ずかしいのか二人と少し距離を置く。
「またフィーリオンか! 俺達は光の勇者を目指す学園! その名も……」
ユウカが小さく口ずさむ。
催眠初級魔法。
『眠れ』
男達がその場で倒れる。
「「スヤァ~」」
「抵抗なさすぎ~」
ユウカは眠って倒れている二人の男の頬をツンツンとつつく。
そして二人の男が光に包まれバトルフィールドの外に転移させられる。
「やっぱり闇の勇者ですね、魔法の発動を感じませんでした」
「僕なんかまだまだだよ。クレス君なら無防備で上級魔法とか当たってもピンピンしてそうだけどね」
「確かにな」
「えっ? お兄ちゃんなら私の神級が当たってもピンピンしてたよ?」
「「えっ!」」
ミミリアとユウカがリリアの神級魔法を生身で食らった時の事を考えると驚愕する。
『クシュッ!』
クレスは身震いする。
『風邪引いたかな~』
二人の中で、いや三人の中でクレスの化物度がはね上がるのだった。
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