2 / 55
第2話 俺のお姫様
しおりを挟むのんびり暮らして行こうにも、金がないと始まらない。
この身体の持ち主は誰なんだと、ポケットをまさぐる。
ポケットがヌメヌメしてたが、カードが入っていた。それに記載していたのがツカサ・サトウ? 変な名前だ。
俺のカードは所持金か無限と設定してあるが、コイツの所持金はいくらぐらいあるんだ?
【10G】
少ない。これで良く俺の身体を乗っ取ろうと思ったな。
俺じゃなかったら、身体を取り返して八つ裂きにされても文句言えないぞ。
俺はそれでスティック状のお菓子を買った。
【2G】
金が無くなった住民カードを投げ捨て、俺はギルドへ向かった。
ギルドでは仕事の斡旋とギルドを住所登録して仮住民カードの発行ができる。第二の人生ということで名前の欄に【モブオ】と記載してもらった。
子供の時のアダ名はずっと覚えてる物だな。
1000年生きてて、第二の人生を嫌いだったアダ名にする奴はどれぐらい居るんだろうか? 戦ってばかりだったから、この名前で呼ばれてた時が平穏な日々だったと思い返して、この名前をつけた。
ギルドに来たのは住民カードを貰うのと、あともう一つ。勇者だった俺が依頼していた特別なクエストを今の俺がやるという狙いがあった。
住民カードは、身分証明、財布。
そしてクエストを受ける為の確認カードにもなる。
「あのすみません。モーブル・レディエント様からクエストを頼まれたのですが? ここであってますか?」
「え~と、貴方が?」
あのすみません。から受付のお姉さんに聞こえるように小声で言って、テーブルにカードを差し出した。
さっきまでカードを作っていた奴に勇者様がお前ごときに頼むかと、お姉さんが眉間に皺を寄せてジッと見てくる。俺もこの依頼は信頼できる奴にしか教えていない。
断じてこんな身分の低いよく分からん奴が受けていいクエストじゃない。
受付のテーブルにお菓子を一本置くと、お姉さんがサッとお菓子を取って、俺のカードにお姉さんのカードをかざす。
これでクエストが受理された。
大きな屋敷の扉を叩く。すると白銀の長い髪が美しく、綺麗な緑色の瞳を持つ美少女が扉から出てきた。勇者のクエストを受けたことを伝える。
「はい、クエストを受けてくれたと言うことは、お兄ちゃんの知り合いの方ですか?」
「ちょっとその辺は複雑なんだよ。とりあえずカードに触ってくれる」
汗のしたたるデブと笑顔がひきつった美少女、こんなシチュエーションをお日様の下でやれば、そく衛兵に逮捕される。
俺の迫力に負けてか、一歩一歩と後ろに退く美少女。ガチャりと扉が閉まったのと、美少女がカードに触れて承認をしたのが同時だった。
「きゃぁぁあああ!!!」
美少女が大声を出した。執事とか、メイドとかもいない。この屋敷には俺とノエルの二人だけだ。ただ結界が張ってあり、屋敷の住人が認めた者だけ入れる。
「ノエル、ノエル! 落ち着いて! 俺がお兄ちゃんだぞ」
「こんなに、ぽよぽよのお兄様はいませんよ!」
目に涙を浮かべて、そんな当たり前なことを言われた。
「まぁ、そうなんだが。一旦、身体を洗ってきていいか? この身体ところどころネチョネチョするんだ。ノエルに変な病気がうつる前に綺麗にする。俺の服は全部魔法服だから、サイズは服が勝手に合わせるだろうから持ってきてくれ」
「はい?」
服は焼却だな。
ゴシゴシと泡で身体を綺麗にする。お風呂に入って、またゴシゴシ洗う。「ここに置いてますよ」更衣室でノエルの声が聞こえ、いつもの日常だと思うが、俺の身体が違うだけで、ノエルの声も緊張気味だ。
風呂から上がり、綺麗になった俺は魔法服を着る。スムーズに着れたことに安心する。前の服は更衣室のカゴごと焼却炉に入れておいた。
「魔王を倒して国に帰ってきたら、この男と入れ替わったんだ」
ノエルにお茶を出して貰いながら話し、お菓子をつまんだ。
「いきなりお兄ちゃんだよ~、と言っても屋敷入れて貰えないと思ったから俺が出しているクエストの『ノエルの世話焼き』で屋敷に入ろうと思ったんだ。まぁ、この国にいるのもあと少しだからな」
「あと少し? どこかに行くんですか? 1000年も勇者としてやって来て……」
俺はノエルにカードを見せる。お兄ちゃんとわかったら、この意味がわかるだろう。ノエルのカードを見る視線が険しい物になる。
「モブオ、ですか」
「この国に、いや、この屋敷に1000年と閉じ込めた俺の不甲斐なさが変わることは無い。やっと勇者の鎖から開放されたんだ。一緒に俺とやり直さないか?」
「私は……私は屋敷に閉じ込められたなんて思ったことは無いですよ。お兄様が帰ってくる場所を守りたかった、それだけです。それにしてもお兄様はほんとうに、家事全般が出来ませんのに、私が行かないと言ったらどうするのですかね」
ノエルは胸を持ち上げて腕組みする。
「頼むよ、ノエル」
「しょ、しょうがないですね!」
ノエルは子供の時から頼み事に弱い。催促している感じはあるが、それも妹の可愛さだろうか。
一時間待ってください、と言われてノエルが魔法の鞄に必要な物を入れていく。俺が手伝うと手伝ったぶん遅れていくのは1000年の間でたくさん経験しているから、俺はお茶タイムを満喫していた。
0
あなたにおすすめの小説
ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中
あ、まん。
ファンタジー
仕事一筋40年。
結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。
定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。
だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。
唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。
化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。
彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。
現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。
これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた
歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。
剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。
それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。
そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー
「ご命令と解釈しました、シン様」
「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」
次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる