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第一章 ハイディン編
真夏の夜の夢魔(3)
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「お待たせを致しました。申し訳ありません」
しばらくして、アレフ様が小部屋に戻って来た時には、手にはお盆みたいなものをもっていて、その上にいくつかの品物が置かれていた。
小さな硝子の瓶が二本と、丸い透明な球、御札が三枚、他にも用途のわからない品が三種類ほどある。
「アレフ様よ、そいつがさっき言ってた『準備』とやらか?」
「ええ、左様でございます」
ガルドさんの問いかけに答えながら、アレフ様はお盆をテーブルの上に置くと、まずは二本ある小瓶の片方を持ち上げた。片方には透明な液体が満たされてて、もう一方は空なんだけど、中身が入ってる方の瓶だ。
「さて、それでは……まずは、レイちゃん。貴方のお体に、妙なモノが浮かび上がっていると思われるのですが、それを見せていただくことは可能でございましょうか?」
アレフ様にそう言われて、ちょっと困る。『妙なモノ』が何を意味するのかはすぐ分かったのだけど、場所が場所――左胸の膨らみにべったりとついているんだよね。流石にそれを、お爺さんで神官様だとはいえ、先ほど会ったばかりの男性に見せるには抵抗がある。
「全部でなくともようございます。端っこが見えれば十分でございますよ」
「そうなんですか? それなら……」
全部見せるわけじゃないし、それに、相手がお医者さんと思えばいいんだ……そう考えて、上着のボタンをいくつか外す。普段は夏と言うこともあって、その下はブラジャーみたいな下着を付けているだけなんだけど、アレをむき出しにしているのも気味が悪かったので、今日は晒しでぐるぐるに巻いてきていた。それでも全部は覆いつくせなくて、白い布の端から真っ黒な手形の一部が見えている。それを目にした途端、アレフ様の目が鋭い光を放った。
「擦っても全然消えないんです。リフレッシュやヒールもかけたんですけど、それでも薄くなる様子も無くて……」
「左様でございましょうな――痛みはございませんので、しばしお動きになられませぬよう」
私の言葉に頷くと、小瓶の蓋を開け、逆さにして中に入っていた水のようなものを自分の手に振りかける。滴を垂らしたままのその手を、私の胸元へと伸ばし、その指先が黒い手形に触れた途端。
「うぉ!」
ガルドさんが驚きの声を上げたのも無理もない。それまで何をどうやっても消えなかった手形が、アレフ様の指が触れると同時に、色が褪せ、その輪郭も曖昧なものになり――あっという間に、昨夜見た『黒い霧』状のものになって、目の前に浮かんだのだ。
「さて、これを……」
そんなことを呟きながら、アレフ様が手を動かすと、こぶし大であった霧の塊が小さく凝縮し、先ほどの小瓶の中へと吸い込まれてしまう。
「一丁上がり、でございます」
元通りにキュッと蓋を閉めれば、元凶であったソレは、小瓶の中に封じ込められてしまっていた。
「――アレフ様ってエクソシストだったんですか?!」
目の前で繰り広げられた光景に、驚愕のあまりに硬直してしまっていたが、元の色を取り戻した自分の胸を見て思わず叫んでしまう。ロウとガルドさんも――ちゃっかりアレフ様も――私の胸元をのぞき込んで、今見た光景が目の錯覚ではなかったのを確認する。
「すげぇな、アレフ様」
「いえいえ、これはまだ準備段階でございますよ。ここからが本番でございます」
にっこり、というよりもニヤリに近い笑いは、ご高齢なのにも関わらず、まるでいたずら小僧みたいな印象だ。
「レイちゃんを悩ませ、怖がらせた相手でございますぞ。それ相応の事はお返しして差し上げねばなりますまい」
そう言って、更に取り出した品物の使い方を、ロウとガルドさんにみっちりと叩き込みはじめるんだけど、その様子も妙に楽しげで――お若いころはさぞや『やんちゃ』だったんだろうな、なんて想像が簡単にできてしまうアレフ様だった。
早朝から神殿を訪れた私達が、アレフ様との一連のやり取りとレクチャーを終え、そこを後にしたのは正午を過ぎた時間になっていた。
朝食もそこそこに宿を出たために男二人は腹ペコになっていたし、気味の悪い手形をとってもらい、『アレ』の撃退方法も分かったことで、私の食欲も復活している。とはいえ、良くも悪くも有名人となった私達だ。そこらの食堂に行けばまた煩わしい目に合わないとも限らない。精神的に余裕のある時ならいざ知らず、昨夜の騒ぎで貫徹明けのこの状態で阿呆に絡まれでもしたら……私は兎も角、男性二人がうっかり手加減を忘れてしまう危険性が大だ。
というわけで、昨日の依頼の報告も兼ねて、昼食をとるために私達が選んだのはギルドのカフェスペースだった。
「よう、『月姫』ご一行じゃねぇか。間一髪だったな」
「おじ様まで……普通にいつもみたいに呼んでくださいよ。それと、間一髪って、何のことですか?」
ギルドに来たついでに、依頼の報告もしておこうと、カウンターに座るアルおじ様のところへ行く。おじ様にまで『月姫』なんて呼ばれると照れ臭くてしょうがないから、普通に呼んでくれるように頼んだ後、気になった一言について尋ねてみる。ロウとガルドさんも同様らしく、私の両脇から顔を出してきた。
「何かあったのか?」
「ああ、ほれ、あの――こないだからの、妙な依頼を持ち込んできてるババァがまた来てたんだよ」
「……往生際が悪ぃな。まだあきらめてなかったのかよ」
今更であるが、ギルドには様々な依頼が寄せられる。
高ランク者用の魔獣討伐や盗賊退治、物資を運ぶ商人の護衛。中ランクにはどこそこの町まで手紙や物を届けてくれ、とか、手に入りにくい素材の調達等。駆け出しには比較的簡単な素材集めに、手の足りない商店の手伝いや迷子さがし、果ては街路の掃除まで。よく言えば何でも屋、悪く言えば雑用係扱いなのだが、これはギルドの元々の成り立ちから言って当然のことらしい。
で、そんな中には少々特殊な依頼もあって『個人指名』というのもこの中に入る。要するに、依頼を受けるのは誰でもいいわけではなく、この人物、あるいは戦団、と条件が付けられたものだ。これは名の売れた高ランクに多く、その分、報酬も大きい。
ところが、である。
まだランクDになったばかり――放浪者としてはやっと駆け出しを卒業した程度だ――である私に、この『個人指名の依頼』が舞い込んできたのだ。
あ、何時、EからDになったのかってことなんだけど、直接ではないが『新月市』を潰した功績と、その後のギルドからの要請で『月姫選び』に出て、見事に優勝を掻っ攫ってギルドに貢献したってことで、貢献ポイントにボーナスがついた。おかげで、晴れて先日、Dランクに昇格しておりました。
まぁ、そんな事情は今はさておき、アルおじ様は憤懣やるかたない思いの様子だ。
「何を血迷ってやがるんだか、ここは女衒の真似はしちゃいねぇ、って何回追い払ってもしつけぇんだ。しかも、その度に報酬を吊り上げてな。あのババァ、金額の問題じゃねぇ、ってことが理解できんらしい――大体、そんなもんで動くようなお前らじゃないだろう?」
「当たり前だ」
そのババァ――女性が言うには、彼女の息子さんが夏至祭で私を見初めたらしい。一目惚れだったというのだが、その息子というのが大層内気で、自分から動くような性格ではない。恋心は募るものの、私と言葉を交わすことはおろか、姿さえ見ることができず、悶々と日々を過ごすうちに、ついには寝込んでしまった、というのだ。
そして、そんな息子を心配して、母親である彼女がとった行動、というのが――。
「住み込みで息子の世話をしてほしけりゃ、侍女――いや、乳母でも雇いやがれ。飯も食わずにふさぎ込んでる? んなもん食いたくなるまでほっとけや。しかもその息子が五十過ぎだぁ? ふざけんな! どう考えても普通の『お世話』だけじゃ済まねぇだろうが。女が欲しいってんなら、娼館に行け。誰がお嬢ちゃんにそんな真似させるかよ」
その様子に、私の代わりに怒ってくれているのだと分かっていても、つい苦笑がもれてしまう。
『万、厄介事受け付けます』なギルドなのだから、基本的に依頼のえり好みはしない。が、それでも、明らかに犯罪にかかわるものはその場で断るし、他のギルドの方がふさわしいと思えばそちらを紹介する。今回のものに似た案件もあるにはあるのだが、それは一人暮らしのさびしい老人が話し相手を求めてとかであり、どう考えてもこれと一緒には出来ない。
「まぁ、また来ても追っ払うから心配はいらねぇが――お嬢ちゃん達とかち合うと、少々厄介かもしれんから、そこだけは気を付けるんだぞ」
「はい。ありがとうございます、アルおじさま」
厄介ごとはすでに抱え込んでいる。これ以上増えるのは確かに御免蒙りたい。アルおじ様の心遣いに感謝して、さっさと報告を済ませ報酬を受け取ると、外部の人目に付きにくい二階のカフェスペースへと避難した。
ギルドでちょっとした一幕はあったにしても、それ以後は何事もなく、私達はまだ午後も早い時間に宿へと戻ってきていた。
『本番』は、日が暮れて『相手』が眠ってからになるのだが、昨晩の睡眠不足を補うために、それまで仮眠をとろうという話になったのだ。
ハイディンの夏は湿度が少ないので、日中でも日陰にいればそれなりに過ごしやすい。宿は石造りなのもあって、外からの温度の影響を受けにくく、室内は外よりも格段に涼しいんだよね。
熱風が吹きこんでくるので窓も閉じてあるから、室内は薄暗く、昼寝にはもってこいだ。
「アレフ様からもらった聖水もあるしな。安心して寝ていいぜ」
「うん、ありがとう」
教えられたように、小瓶に入っていた水――アレフ様は、祈りを捧げて聖別した特別な物だっておっしゃってた――を自分たちの体に振りかけ、ドアと窓の前にも数滴おとしてから、三人そろってベッドに横になる。今回のことでは役に立たないかもしれないけど、結界もしっかり張り――睡眠不足に加え、精神的な疲労も大きかったなろうな。ロウとガルドさんに挟まれた格好で横になった途端、直ぐに睡魔が襲ってくる。ただ、それでも一抹の不安が残っていて、だからつい、こんなお願いをしてしまった。
「私が起きるまで、絶対、側にいてね? 知らないうちにどっかにいったりしないでね?」
そう言って、両方の手を各々につないでもらったんだけど……なんだか、二人共もの凄く葛藤してるような顔になったのは、なんでだったんだろうか?
次に目が覚めたのは、そろそろ日も暮れようかという時間だった。二人はそれよりも早くに目を覚ましていたのだが、私のお願いを守り、律義に添い寝を続けてくれていたようだ。
「夕飯を食ったら、もう一度、手順を確認するぞ」
ロウの指示により、階下の食堂で夕食を済ませると、さっさとまた部屋に戻る。
アレフ様から渡されていたのは、次のような品々だ。
・聖水が入った小瓶。
・『アレ』を封じ込めた小瓶。
・『神聖文字』とやらが書かれた札、三枚。
・手のひらよりやや大きいサイズの木偶(でく=木製の人型)。
・丸い輪に細い糸が網状に貼られたものに取っ手が付いた器具。
・拳ほどの水晶球。
それらを手に取り、アレフ様に教えていただいたことを思い出す。
『聖水は念のためでございます。あのようなモノが取り付きますと、そこに『道』ができることがございます。すると、その『道』をたどって、他のおかしなものが寄ってくる可能性がございますので、その予防でございますよ。お宿に戻られましたら、すぐさま使ってください。それから、夜になりましたら、まずはレイちゃんの髪を一筋、木偶に巻き付けてくださいませ。その後、この札を身に着けてから、小瓶の蓋をあけていただきます――くれぐれも、この順番は必ず守ってくださいませね』
聖水はちゃんとつかったから、次はお札の出番だな。
『この札は、アレから皆様の気配を隠すためのものでございます。なので、札を持つ前に小瓶を開けてしまいますと、中のモノがレイちゃんの気配に惹かれて、元に戻ってしまう可能性がございます。ですので、できれば蓋を開けるのもレイちゃん以外――ガルド殿かロウ殿がよろしいかと存じます。その後は、アレが気配をたどって、レイちゃんの髪を巻いた木偶に憑り付きまする。これで準備が終わりまして、後はその方が眠って『本体』がやってくればしめたもの。お渡しした輪は、神殿で育てましたストリングワームの糸を張ったものでして、これは邪なものを捕まえる働きがございます。己の手形を目印にやってきたところをこれでからめとり、水晶に触れさせれば捕獲完了でございます』
ストリングワームというのがどんなものかは知らないんだけど、渡された品物の一つは
アメリカのネイティブの人達が使う『ドリームキャッチャー』に似ていた。あれって確か、悪夢を捕まえて消しちゃうって感じのお守りだったと思うんだけど、偶然の一致なんだろうけど用途も似たようなもののようだ。
アレフ様の指示に従って、まずは三人共、御札を身に着ける。それから、私が自分の髪を数本抜いて、ロウに手渡した。それを大雑把だけど人の形に削られた木でできた人形に巻き付けてベッドの上に置いてから、ガルドさんがアレを封じ込めた瓶のふたを開ける。
すると、そこに封じられていた黒い霧が、瓶の口から少しずつ外に出てきた。
丸い球体になったソレは、しばらく所在無げに漂っていたのだけど、やがて目当てのものを見つけた様子で人形に近づくと、それに吸い込まれるようにして消えてしまう。
「うわ、きもちわる……」
「確かになぁ……こりゃ、俺らの手には余るぜ。アレフ様々だな」
「この手形を目印に、本体が来るんだったな」
霧が人形に吸い込まれた後、その左胸に私の体にあったものと同じ、ただしサイズはかなりミニチュアになった手形が浮かび上がった。
「うん、確か……ロウ達が見たのって、私をストーカーしてる人の『魂』だって話だったよね。で、肉体と魂は、本来切っても切り離せないものだから、それが肉体から離れる時は、本体と何らかの繋がりを持っているはず――細い糸みたいなのが伸びてるだろう、って……」
「ああ、それをこっちが逆にたどって行きゃ、大本の野郎のところに着けるって寸法だな」
「二度とこんなことをする気になれない様、きっちりと話を付けてやる――なにしろ、あの爺様から頼まれた分もあるんだからな」
「あー……」
そう言えば、最後の方でそんなことをおっしゃってたっけ。えっと、あれは確か……『お話し合いをなさるにしても、実際にご本人を前にした方が皆様もやり易かろうと存じます。真摯に『説得』なされば、その方も己のお心違いに気づかれて、レイちゃんへの執着も解けるかと存じます。その『説得』につきましては、出来ればわたくしも同席させていただきたいのですが、そうもいかぬ事情がございまして……ですので、何卒、わたくしの分まで頑張ってくださいませ』だっけ。
それを聞いた二人が、ものすごいいい笑顔で、請け負ってたっけな。
しかし、お札を身に着けている限り、普通に動いたり話をしても問題はない、とアレフ様からは言われてはいても、実際に目の前でこんなものを見せられると、中々普段通りにふるまうのって難しい。
自然と会話は小声になるし、現時点でできることは済ませてしまったから、後は出来るだけベッド(の上にある人形)から距離を取って――ただし、あまり離れすぎても咄嗟の反応ができないのでほどほどで――時間が経つのを待つしかない。
そうして、やがて月が中空に差し掛かる頃。
「――来たぞ」
ロウの声に、待ちくたびれて、ちょっとうとうとしかかっていた私もしゃっきりと目を覚ます。
時間的には、昨夜、二人が私に起きた異変を察知したのと同じくらいだと思われる。どうやら、本体はそれなりに規則正しい生活を送っているようだ。
三人そろって息をひそめ、目を凝らしていると、人形の上に薄い靄のようなものが現れた。最初は目を凝らさなければ見えないくらいの薄さだったんだけど、見ているうちに急速に濃さと大きさを増していく。
「昨日よりも、ちいっと早ぇか?」
「二度目で、相手も慣れてきた……ということか」
ロウとガルドさんが、小声でやり取りする間にも、どんどんとそだっていったソレは、やがて大雑把な人型をとり、腕を人形に向かって伸ばしていく。その先端が人形に触れるが、偽物であるとは気づかない様子だ。胸を揉むように、先端に現れた指の部分が動くのを見て、あれが昨夜は私の体だったんだと思うと、ぞっとしてしまう。
「そろそろ行くぜ」
二人の体を盾にするみたいにして、私はただ、その様子を見ているしかできなかったんだけど、男性陣は準備万端。特にガルドさんは、アレに一矢報いるのを待ち構えていたようだ。
一言そう告ると、まずは手にしたドリームキャッチャーもどきを、人型の頭部分に向かって薙ぐようにして振るう。と、その部分が消しゴムで消したみたいにごっそりと消えてなくなった。
「おお! こりゃ面白れぇ」
続いて手首を返して、胸の部分。更には腰にかけても。手のひらほど大きさの輪が通過するたびに、そこの部分の黒い霧が、切り取ったように消えていく。
アレフ様は大丈夫だと太鼓判を押してくれていたのだけど、それでも私達が危惧していたのは、こちらが攻撃を仕掛けた途端に、昨夜のように霧が一瞬で消えてしまう事だった。けど、ガルドさんの攻撃でひるんだように見えたソレなのだが、どうも人形に触れた『手』を離すことができないようだ。身をよじって輪っかを避けようとするそぶりは見せても、『手』が固定されているためか思うようにいかないらしい。
勿論、ガルドさんもとっくにそれに気が付いているようで、人形に触れている手は後回しにして、他の部分を片っ端から消していく。
程なく、最後に残った『右手』が消えると、人形にあった手形も一緒に消えたようだ。代わりに『輪』の中央には、小さくなった黒い霧がからめとられており、それに直接触れないよう注意しながら、ロウが差し出す水晶球にかざしてみる。すると、わずかに抵抗するように震えた後、網から水晶球の内部へと霧が吸い込まれ、その中央でわだかまった。
「これで終わり? ……もう、大丈夫?」
意外に呆気なかった気もするけど、これはアレフ様のご助力があっての事だ。
もし、ロウが神殿に行くのを思いついてくれなかったら、きっとまた昨夜みたいな目にあっていただろう……うう、想像するのも気持ちが悪い。
ロウは平気でアレを封じ込めた球を持っているけど、私は、絶対に触りたくない!
「さて、残るはコレの始末だが……」
「アレフ様の話だと、糸みてえなのが出てるって話だったが……こいつか?」
ガルドさんが指示したものは、私にも見えた。黒く、細くて頼りなげだが、確かに糸状のモノが、水晶球から窓の外へと続いている。
「こいつを辿って行きゃぁ、本体にお目にかかれるんだったな」
「そうと決まれば……行くぞ」
「おうよ」
もう真夜中ではあるが、いつ行くの? 今でしょ! ってことで、三人して宿の外へと出る。
……うん、ちょっとテンションがおかしいのは自覚してます。
私の事を心配した二人には、宿に残っていたほうが良いんじゃないか、とは言われたけど、一人で残されるなんてまっぴらごめんだ。
そもそも、被害者は私なんだから、『説得』にはぜひとも参加したい。
そう言い張ったおかげで、無事に一緒に連れて行ってもらえることになりました。
しばらくして、アレフ様が小部屋に戻って来た時には、手にはお盆みたいなものをもっていて、その上にいくつかの品物が置かれていた。
小さな硝子の瓶が二本と、丸い透明な球、御札が三枚、他にも用途のわからない品が三種類ほどある。
「アレフ様よ、そいつがさっき言ってた『準備』とやらか?」
「ええ、左様でございます」
ガルドさんの問いかけに答えながら、アレフ様はお盆をテーブルの上に置くと、まずは二本ある小瓶の片方を持ち上げた。片方には透明な液体が満たされてて、もう一方は空なんだけど、中身が入ってる方の瓶だ。
「さて、それでは……まずは、レイちゃん。貴方のお体に、妙なモノが浮かび上がっていると思われるのですが、それを見せていただくことは可能でございましょうか?」
アレフ様にそう言われて、ちょっと困る。『妙なモノ』が何を意味するのかはすぐ分かったのだけど、場所が場所――左胸の膨らみにべったりとついているんだよね。流石にそれを、お爺さんで神官様だとはいえ、先ほど会ったばかりの男性に見せるには抵抗がある。
「全部でなくともようございます。端っこが見えれば十分でございますよ」
「そうなんですか? それなら……」
全部見せるわけじゃないし、それに、相手がお医者さんと思えばいいんだ……そう考えて、上着のボタンをいくつか外す。普段は夏と言うこともあって、その下はブラジャーみたいな下着を付けているだけなんだけど、アレをむき出しにしているのも気味が悪かったので、今日は晒しでぐるぐるに巻いてきていた。それでも全部は覆いつくせなくて、白い布の端から真っ黒な手形の一部が見えている。それを目にした途端、アレフ様の目が鋭い光を放った。
「擦っても全然消えないんです。リフレッシュやヒールもかけたんですけど、それでも薄くなる様子も無くて……」
「左様でございましょうな――痛みはございませんので、しばしお動きになられませぬよう」
私の言葉に頷くと、小瓶の蓋を開け、逆さにして中に入っていた水のようなものを自分の手に振りかける。滴を垂らしたままのその手を、私の胸元へと伸ばし、その指先が黒い手形に触れた途端。
「うぉ!」
ガルドさんが驚きの声を上げたのも無理もない。それまで何をどうやっても消えなかった手形が、アレフ様の指が触れると同時に、色が褪せ、その輪郭も曖昧なものになり――あっという間に、昨夜見た『黒い霧』状のものになって、目の前に浮かんだのだ。
「さて、これを……」
そんなことを呟きながら、アレフ様が手を動かすと、こぶし大であった霧の塊が小さく凝縮し、先ほどの小瓶の中へと吸い込まれてしまう。
「一丁上がり、でございます」
元通りにキュッと蓋を閉めれば、元凶であったソレは、小瓶の中に封じ込められてしまっていた。
「――アレフ様ってエクソシストだったんですか?!」
目の前で繰り広げられた光景に、驚愕のあまりに硬直してしまっていたが、元の色を取り戻した自分の胸を見て思わず叫んでしまう。ロウとガルドさんも――ちゃっかりアレフ様も――私の胸元をのぞき込んで、今見た光景が目の錯覚ではなかったのを確認する。
「すげぇな、アレフ様」
「いえいえ、これはまだ準備段階でございますよ。ここからが本番でございます」
にっこり、というよりもニヤリに近い笑いは、ご高齢なのにも関わらず、まるでいたずら小僧みたいな印象だ。
「レイちゃんを悩ませ、怖がらせた相手でございますぞ。それ相応の事はお返しして差し上げねばなりますまい」
そう言って、更に取り出した品物の使い方を、ロウとガルドさんにみっちりと叩き込みはじめるんだけど、その様子も妙に楽しげで――お若いころはさぞや『やんちゃ』だったんだろうな、なんて想像が簡単にできてしまうアレフ様だった。
早朝から神殿を訪れた私達が、アレフ様との一連のやり取りとレクチャーを終え、そこを後にしたのは正午を過ぎた時間になっていた。
朝食もそこそこに宿を出たために男二人は腹ペコになっていたし、気味の悪い手形をとってもらい、『アレ』の撃退方法も分かったことで、私の食欲も復活している。とはいえ、良くも悪くも有名人となった私達だ。そこらの食堂に行けばまた煩わしい目に合わないとも限らない。精神的に余裕のある時ならいざ知らず、昨夜の騒ぎで貫徹明けのこの状態で阿呆に絡まれでもしたら……私は兎も角、男性二人がうっかり手加減を忘れてしまう危険性が大だ。
というわけで、昨日の依頼の報告も兼ねて、昼食をとるために私達が選んだのはギルドのカフェスペースだった。
「よう、『月姫』ご一行じゃねぇか。間一髪だったな」
「おじ様まで……普通にいつもみたいに呼んでくださいよ。それと、間一髪って、何のことですか?」
ギルドに来たついでに、依頼の報告もしておこうと、カウンターに座るアルおじ様のところへ行く。おじ様にまで『月姫』なんて呼ばれると照れ臭くてしょうがないから、普通に呼んでくれるように頼んだ後、気になった一言について尋ねてみる。ロウとガルドさんも同様らしく、私の両脇から顔を出してきた。
「何かあったのか?」
「ああ、ほれ、あの――こないだからの、妙な依頼を持ち込んできてるババァがまた来てたんだよ」
「……往生際が悪ぃな。まだあきらめてなかったのかよ」
今更であるが、ギルドには様々な依頼が寄せられる。
高ランク者用の魔獣討伐や盗賊退治、物資を運ぶ商人の護衛。中ランクにはどこそこの町まで手紙や物を届けてくれ、とか、手に入りにくい素材の調達等。駆け出しには比較的簡単な素材集めに、手の足りない商店の手伝いや迷子さがし、果ては街路の掃除まで。よく言えば何でも屋、悪く言えば雑用係扱いなのだが、これはギルドの元々の成り立ちから言って当然のことらしい。
で、そんな中には少々特殊な依頼もあって『個人指名』というのもこの中に入る。要するに、依頼を受けるのは誰でもいいわけではなく、この人物、あるいは戦団、と条件が付けられたものだ。これは名の売れた高ランクに多く、その分、報酬も大きい。
ところが、である。
まだランクDになったばかり――放浪者としてはやっと駆け出しを卒業した程度だ――である私に、この『個人指名の依頼』が舞い込んできたのだ。
あ、何時、EからDになったのかってことなんだけど、直接ではないが『新月市』を潰した功績と、その後のギルドからの要請で『月姫選び』に出て、見事に優勝を掻っ攫ってギルドに貢献したってことで、貢献ポイントにボーナスがついた。おかげで、晴れて先日、Dランクに昇格しておりました。
まぁ、そんな事情は今はさておき、アルおじ様は憤懣やるかたない思いの様子だ。
「何を血迷ってやがるんだか、ここは女衒の真似はしちゃいねぇ、って何回追い払ってもしつけぇんだ。しかも、その度に報酬を吊り上げてな。あのババァ、金額の問題じゃねぇ、ってことが理解できんらしい――大体、そんなもんで動くようなお前らじゃないだろう?」
「当たり前だ」
そのババァ――女性が言うには、彼女の息子さんが夏至祭で私を見初めたらしい。一目惚れだったというのだが、その息子というのが大層内気で、自分から動くような性格ではない。恋心は募るものの、私と言葉を交わすことはおろか、姿さえ見ることができず、悶々と日々を過ごすうちに、ついには寝込んでしまった、というのだ。
そして、そんな息子を心配して、母親である彼女がとった行動、というのが――。
「住み込みで息子の世話をしてほしけりゃ、侍女――いや、乳母でも雇いやがれ。飯も食わずにふさぎ込んでる? んなもん食いたくなるまでほっとけや。しかもその息子が五十過ぎだぁ? ふざけんな! どう考えても普通の『お世話』だけじゃ済まねぇだろうが。女が欲しいってんなら、娼館に行け。誰がお嬢ちゃんにそんな真似させるかよ」
その様子に、私の代わりに怒ってくれているのだと分かっていても、つい苦笑がもれてしまう。
『万、厄介事受け付けます』なギルドなのだから、基本的に依頼のえり好みはしない。が、それでも、明らかに犯罪にかかわるものはその場で断るし、他のギルドの方がふさわしいと思えばそちらを紹介する。今回のものに似た案件もあるにはあるのだが、それは一人暮らしのさびしい老人が話し相手を求めてとかであり、どう考えてもこれと一緒には出来ない。
「まぁ、また来ても追っ払うから心配はいらねぇが――お嬢ちゃん達とかち合うと、少々厄介かもしれんから、そこだけは気を付けるんだぞ」
「はい。ありがとうございます、アルおじさま」
厄介ごとはすでに抱え込んでいる。これ以上増えるのは確かに御免蒙りたい。アルおじ様の心遣いに感謝して、さっさと報告を済ませ報酬を受け取ると、外部の人目に付きにくい二階のカフェスペースへと避難した。
ギルドでちょっとした一幕はあったにしても、それ以後は何事もなく、私達はまだ午後も早い時間に宿へと戻ってきていた。
『本番』は、日が暮れて『相手』が眠ってからになるのだが、昨晩の睡眠不足を補うために、それまで仮眠をとろうという話になったのだ。
ハイディンの夏は湿度が少ないので、日中でも日陰にいればそれなりに過ごしやすい。宿は石造りなのもあって、外からの温度の影響を受けにくく、室内は外よりも格段に涼しいんだよね。
熱風が吹きこんでくるので窓も閉じてあるから、室内は薄暗く、昼寝にはもってこいだ。
「アレフ様からもらった聖水もあるしな。安心して寝ていいぜ」
「うん、ありがとう」
教えられたように、小瓶に入っていた水――アレフ様は、祈りを捧げて聖別した特別な物だっておっしゃってた――を自分たちの体に振りかけ、ドアと窓の前にも数滴おとしてから、三人そろってベッドに横になる。今回のことでは役に立たないかもしれないけど、結界もしっかり張り――睡眠不足に加え、精神的な疲労も大きかったなろうな。ロウとガルドさんに挟まれた格好で横になった途端、直ぐに睡魔が襲ってくる。ただ、それでも一抹の不安が残っていて、だからつい、こんなお願いをしてしまった。
「私が起きるまで、絶対、側にいてね? 知らないうちにどっかにいったりしないでね?」
そう言って、両方の手を各々につないでもらったんだけど……なんだか、二人共もの凄く葛藤してるような顔になったのは、なんでだったんだろうか?
次に目が覚めたのは、そろそろ日も暮れようかという時間だった。二人はそれよりも早くに目を覚ましていたのだが、私のお願いを守り、律義に添い寝を続けてくれていたようだ。
「夕飯を食ったら、もう一度、手順を確認するぞ」
ロウの指示により、階下の食堂で夕食を済ませると、さっさとまた部屋に戻る。
アレフ様から渡されていたのは、次のような品々だ。
・聖水が入った小瓶。
・『アレ』を封じ込めた小瓶。
・『神聖文字』とやらが書かれた札、三枚。
・手のひらよりやや大きいサイズの木偶(でく=木製の人型)。
・丸い輪に細い糸が網状に貼られたものに取っ手が付いた器具。
・拳ほどの水晶球。
それらを手に取り、アレフ様に教えていただいたことを思い出す。
『聖水は念のためでございます。あのようなモノが取り付きますと、そこに『道』ができることがございます。すると、その『道』をたどって、他のおかしなものが寄ってくる可能性がございますので、その予防でございますよ。お宿に戻られましたら、すぐさま使ってください。それから、夜になりましたら、まずはレイちゃんの髪を一筋、木偶に巻き付けてくださいませ。その後、この札を身に着けてから、小瓶の蓋をあけていただきます――くれぐれも、この順番は必ず守ってくださいませね』
聖水はちゃんとつかったから、次はお札の出番だな。
『この札は、アレから皆様の気配を隠すためのものでございます。なので、札を持つ前に小瓶を開けてしまいますと、中のモノがレイちゃんの気配に惹かれて、元に戻ってしまう可能性がございます。ですので、できれば蓋を開けるのもレイちゃん以外――ガルド殿かロウ殿がよろしいかと存じます。その後は、アレが気配をたどって、レイちゃんの髪を巻いた木偶に憑り付きまする。これで準備が終わりまして、後はその方が眠って『本体』がやってくればしめたもの。お渡しした輪は、神殿で育てましたストリングワームの糸を張ったものでして、これは邪なものを捕まえる働きがございます。己の手形を目印にやってきたところをこれでからめとり、水晶に触れさせれば捕獲完了でございます』
ストリングワームというのがどんなものかは知らないんだけど、渡された品物の一つは
アメリカのネイティブの人達が使う『ドリームキャッチャー』に似ていた。あれって確か、悪夢を捕まえて消しちゃうって感じのお守りだったと思うんだけど、偶然の一致なんだろうけど用途も似たようなもののようだ。
アレフ様の指示に従って、まずは三人共、御札を身に着ける。それから、私が自分の髪を数本抜いて、ロウに手渡した。それを大雑把だけど人の形に削られた木でできた人形に巻き付けてベッドの上に置いてから、ガルドさんがアレを封じ込めた瓶のふたを開ける。
すると、そこに封じられていた黒い霧が、瓶の口から少しずつ外に出てきた。
丸い球体になったソレは、しばらく所在無げに漂っていたのだけど、やがて目当てのものを見つけた様子で人形に近づくと、それに吸い込まれるようにして消えてしまう。
「うわ、きもちわる……」
「確かになぁ……こりゃ、俺らの手には余るぜ。アレフ様々だな」
「この手形を目印に、本体が来るんだったな」
霧が人形に吸い込まれた後、その左胸に私の体にあったものと同じ、ただしサイズはかなりミニチュアになった手形が浮かび上がった。
「うん、確か……ロウ達が見たのって、私をストーカーしてる人の『魂』だって話だったよね。で、肉体と魂は、本来切っても切り離せないものだから、それが肉体から離れる時は、本体と何らかの繋がりを持っているはず――細い糸みたいなのが伸びてるだろう、って……」
「ああ、それをこっちが逆にたどって行きゃ、大本の野郎のところに着けるって寸法だな」
「二度とこんなことをする気になれない様、きっちりと話を付けてやる――なにしろ、あの爺様から頼まれた分もあるんだからな」
「あー……」
そう言えば、最後の方でそんなことをおっしゃってたっけ。えっと、あれは確か……『お話し合いをなさるにしても、実際にご本人を前にした方が皆様もやり易かろうと存じます。真摯に『説得』なされば、その方も己のお心違いに気づかれて、レイちゃんへの執着も解けるかと存じます。その『説得』につきましては、出来ればわたくしも同席させていただきたいのですが、そうもいかぬ事情がございまして……ですので、何卒、わたくしの分まで頑張ってくださいませ』だっけ。
それを聞いた二人が、ものすごいいい笑顔で、請け負ってたっけな。
しかし、お札を身に着けている限り、普通に動いたり話をしても問題はない、とアレフ様からは言われてはいても、実際に目の前でこんなものを見せられると、中々普段通りにふるまうのって難しい。
自然と会話は小声になるし、現時点でできることは済ませてしまったから、後は出来るだけベッド(の上にある人形)から距離を取って――ただし、あまり離れすぎても咄嗟の反応ができないのでほどほどで――時間が経つのを待つしかない。
そうして、やがて月が中空に差し掛かる頃。
「――来たぞ」
ロウの声に、待ちくたびれて、ちょっとうとうとしかかっていた私もしゃっきりと目を覚ます。
時間的には、昨夜、二人が私に起きた異変を察知したのと同じくらいだと思われる。どうやら、本体はそれなりに規則正しい生活を送っているようだ。
三人そろって息をひそめ、目を凝らしていると、人形の上に薄い靄のようなものが現れた。最初は目を凝らさなければ見えないくらいの薄さだったんだけど、見ているうちに急速に濃さと大きさを増していく。
「昨日よりも、ちいっと早ぇか?」
「二度目で、相手も慣れてきた……ということか」
ロウとガルドさんが、小声でやり取りする間にも、どんどんとそだっていったソレは、やがて大雑把な人型をとり、腕を人形に向かって伸ばしていく。その先端が人形に触れるが、偽物であるとは気づかない様子だ。胸を揉むように、先端に現れた指の部分が動くのを見て、あれが昨夜は私の体だったんだと思うと、ぞっとしてしまう。
「そろそろ行くぜ」
二人の体を盾にするみたいにして、私はただ、その様子を見ているしかできなかったんだけど、男性陣は準備万端。特にガルドさんは、アレに一矢報いるのを待ち構えていたようだ。
一言そう告ると、まずは手にしたドリームキャッチャーもどきを、人型の頭部分に向かって薙ぐようにして振るう。と、その部分が消しゴムで消したみたいにごっそりと消えてなくなった。
「おお! こりゃ面白れぇ」
続いて手首を返して、胸の部分。更には腰にかけても。手のひらほど大きさの輪が通過するたびに、そこの部分の黒い霧が、切り取ったように消えていく。
アレフ様は大丈夫だと太鼓判を押してくれていたのだけど、それでも私達が危惧していたのは、こちらが攻撃を仕掛けた途端に、昨夜のように霧が一瞬で消えてしまう事だった。けど、ガルドさんの攻撃でひるんだように見えたソレなのだが、どうも人形に触れた『手』を離すことができないようだ。身をよじって輪っかを避けようとするそぶりは見せても、『手』が固定されているためか思うようにいかないらしい。
勿論、ガルドさんもとっくにそれに気が付いているようで、人形に触れている手は後回しにして、他の部分を片っ端から消していく。
程なく、最後に残った『右手』が消えると、人形にあった手形も一緒に消えたようだ。代わりに『輪』の中央には、小さくなった黒い霧がからめとられており、それに直接触れないよう注意しながら、ロウが差し出す水晶球にかざしてみる。すると、わずかに抵抗するように震えた後、網から水晶球の内部へと霧が吸い込まれ、その中央でわだかまった。
「これで終わり? ……もう、大丈夫?」
意外に呆気なかった気もするけど、これはアレフ様のご助力があっての事だ。
もし、ロウが神殿に行くのを思いついてくれなかったら、きっとまた昨夜みたいな目にあっていただろう……うう、想像するのも気持ちが悪い。
ロウは平気でアレを封じ込めた球を持っているけど、私は、絶対に触りたくない!
「さて、残るはコレの始末だが……」
「アレフ様の話だと、糸みてえなのが出てるって話だったが……こいつか?」
ガルドさんが指示したものは、私にも見えた。黒く、細くて頼りなげだが、確かに糸状のモノが、水晶球から窓の外へと続いている。
「こいつを辿って行きゃぁ、本体にお目にかかれるんだったな」
「そうと決まれば……行くぞ」
「おうよ」
もう真夜中ではあるが、いつ行くの? 今でしょ! ってことで、三人して宿の外へと出る。
……うん、ちょっとテンションがおかしいのは自覚してます。
私の事を心配した二人には、宿に残っていたほうが良いんじゃないか、とは言われたけど、一人で残されるなんてまっぴらごめんだ。
そもそも、被害者は私なんだから、『説得』にはぜひとも参加したい。
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