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おまけ
初恋は実らない
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大いなるフォスのみそなわすフォーセラの(以下略)、シルヴァージュ王国では、先年、国王の代替わりが行われた。
先王はまだ十分に執務をとれる年齢ではあったが、早めに王座を譲り渡し次代に経験を積ませるというシルヴァージュの伝統だ。更には、万が一の事があった場合、再び政務を取り仕切る必要が出てくる可能性もあるので、代替わりは早い方がいいという一面もある。
「……一般庶民だった私に王妃なんて重責が務まるか心配だったけど、何とかなるものねぇ」
「王太子妃として十分やっていけていたリィだからな。俺は心配なぞしていなかったぞ」
クッションやカバーを新たに張り替えられた王座に座りつつ、そんな会話を交わすのは新国王とその妻である。
「生まれたときから王族のライはまだいいわよ。だけど、私は庶民生まれの上に、まだやっと三十後半になったところなのよ? お義父様に、そろそろ戴冠式の用意をするようにっていわれたときはどうしようかと思ったもの」
「跡取りが生まれたら代替わりするのがウチの習わしだ――というのは表向きで実のところ、さっさと面倒ごとは息子に押し付けて、自分は妻とノンビリいちゃつきたいってのが本音なんだろう」
「シルヴァージュの王様って、愛妻家が多いって聞いてはいたけど……」
一人や二人ならまだしも、それが『伝統』といわれるほどに続いていることに驚きを隠せないでいるのは、現在の国王の妻。つまりはこの国の王妃である。リィ・クアーノ・エ・ル・シルヴァージュという名だが、国民には『奇跡の乙女』改め『奇跡の王妃』として慕われている。
大層な二つ名を持つ彼女は、元はこの国――いや、この世界の人間ではない。本名を加賀野絵里といい、とある事情によりフォーセラとは異なる世界から呼ばれた存在だ。その折にトラブルに巻き込まれ死にかけていたところを、これまたとある事情により諸国を巡る旅をしていた当時の王太子――今の国王であり、彼女の夫であるライムート・エ・ラ・シルヴァージュに拾われ、紆余曲折を経て彼と結ばれたという数奇な運命をたどった存在だった。
「まぁ、それでも一応の基準みたいなものはあるんだ。次の次の世代――つまりは、王太子にきちんと跡取りができて、その子がある程度しっかり育ってからじゃないとダメなんだけどな」
「その辺、私たちはしっかりクリアーしちゃったものね」
結婚した翌々年に妊娠がわかり、次の年に長女が生まれた。その二年後には男女の双子。更に三年後にもう一人の男子が生まれ、一年置いて女児という今や五人の子持ちとなった二人である。
幸いなことに、子供たちはすべて健康に生まれ、大過なく育ってくれている。ただ、経験豊富な乳母たちもついてはいたが、王太子夫妻としての仕事をしつつの子育ては、なかなかに大変だった。無論、それを後悔したことは今も昔も、一度たりともないのだが。
絵里とライムートとの間に生まれた子は、上から順にアイナ(愛菜)、ウルリッヒ、カンナ(神菜)、クルゼイロ、サナ(咲菜)と名付けられていた。男児はシルヴァージュ王家の代々の名がつけられているが、女児の名に秘かに漢字が当てられているのは絵里のたっての願いである。
「まぁ、それはともかく――アイナの事なんだがな。どうだ、リィ? 誰か好いている相手はいそうか?」
長女のアイナは来年十二歳になり、そろそろ婚約者を決める必要があった。
絵里の元居た世界では小学校五、六年程度の年齢なので早いと思いそうになるが、ここは異世界。しかもアイナは王族だ。決して早すぎることはない――下手をすれば生まれた瞬間に結婚相手が決められてることさえあるのだ。
「そうね……私はそんな話は聞いたことがないのだけど、アイナが黙っているだけって可能性もあるし、本人に聞いてみるのが一番じゃない? 政治がらみで結婚させたい相手がいるわけでもないんでしょう?」
「ああ。幸いなことに、周辺国との関係は良好だ。無理に婚姻で縁をつなぐ必要はない。好いた相手がいるのなら、できればそいつと添わしてやりたいからな」
貴族、ましてや王族ともなれば、政略結婚は当たり前だ。しかしライムートと絵里は、珍しく恋愛結婚をしていた。自分たちが好きな相手と一緒になったのに、子供に愛のない(とは限らないが)政略での婚姻を強いるというのは忸怩たるものがある。無論、そんな甘い事を言っていられない場合もあるが、今のシルヴァージュはそういう状況にはおかれていない。
できれば本人の望む相手と結ばれてほしいと思うのは、当たり前の親心だった。
「とりあえず、アイナから話を聞くのが先ね」
内宮の一角にある長女の私室は、最近模様替えを行っていた。以前は可愛らしいピンクが主体の内装だったのが、今は彼女の好きな淡いグリーンに差し色のオレンジが混じり、春の草原を思い起こさせる。
「随分とお姉さんらしい感じのお部屋になったわね」
「だって、わたくし、もうすぐ十二ですもの。何時までも子供のままではいられませんわ」
珍しく両親揃っての私室への訪問に、アイラは戸惑いながらもうれしそうだ。
ライムートと絵里の間に生まれた子は、皆、両親の事が大好きだ。親子の絆が強いのはシルヴァージュ王家の伝統であるが、絵里の希望もあってできるだけ親子の時間をとれるようにしていた。国王という重責を担っているため、一般家庭に比べればその時間はどうしても短くなるが、その分濃密な愛情を注いでもらっていたと、子供たちも理解してくれている。
「受け答えも、すっかり淑女だな。嬉しいが、父親としてはちょっと寂しくもあるな」
アイナは絵里によく似ている。髪こそライムートと同じ金茶だが、瞳は温かなブラウン。肌の色も絵里に近い薄いクリーム色だ。顔立ち自体は次女のカンナの方が整っているが、長女らしくおっとりとした性格で、ライムートの美貌から鋭さを抜き、その代わりに絵里のふんわりとした柔らかさを加えた、といえばおおよその見当がつくだろう。
ただそこにいるだけで癒しを与えてくれるようで、お付きの侍女や女官、護衛の騎士たちからは、ひそかに『陽だまり姫』と呼ばれている。
「まぁ、お父様ったら」
そんなアイナだが、本人の言うように何時までも子供のままではいられない。いくらライムートが手元に置いておきたいと思っても、何時かは誰かに嫁がせねばならない。
そして、その為にここを訪れているのだ。
「ねぇ、アイナ。今日は、お父様とお母さまは、貴女に尋ねたいことがあってここに来たの」
改まった絵里の言葉に、アイナはかわいらしく小首をかしげる。
「わたくしに、ですか?」
「ええ。あのね、唐突な質問に思えるかもしれないのだけど――貴女、誰か好きな方はいる?」
こういう場合、父親はほとんど無力だ。頭では理解したつもりになっていても、愛娘がだれか他所の男に嫁ぐなど、出来れば考えたくない。そのため、当然ながら質問するのは絵里となる。だったら、別にここにいなくてもよさそうなものだが、一人別室で母娘の会話を想像しながら悶々と待つのも嫌だ、というなんとも複雑な父親としての心境の結果であった。
「わたしくしが好きな方、ですか?」
「そうよ。王女として、貴女もそろそろ結婚相手を考えないといけないお年頃になってきたわ。でも、私もお父様も貴女の気持ちを無視して、相手を決めるようなことはしたくないの。だから、そういう方が――いえ、別にいないのならそれはそれで構わないし、なんとなく気になる程度でもいいのだけど、気になる方がいるのなら教えてほしいの」
なるべく娘が答えやすい様に誘導すれば――果たして、その頬が桜色に染まる。
「いるのね?」
即座に絵里が食いつけば、頬の赤味が更に濃くなる。
「はい。でも、その……」
「言いにくい相手なの? もしかして、もう婚約している方がいるとか?」
アイナ自身はまだだが、彼女と交流のある貴族の子女の中にはすでに婚約が決まっている者もいる。そういった相手だと、話が難しくなる……等と先走った心配をするのだが、それは杞憂に終わった。
「いいえ、そういう方がいらっしゃると聞いたことがありません」
「そうなのね、よかった! それで、そのお相手って何方なのかしら? 私たちも知っている人よね?」
ぐいぐいと迫ってくる母親にアイナが若干引き気味になるが、そこはそれ絵里も言ったようにそういうお年ごろの娘である。好きな相手について、母親に相談できるのは魅力的だったようだ。
父親? 隅で置物になっている。
「ねぇ、アイナ。教えて?」
「はい。あの……わたくし、ジーク様を、その……お慕いしております」
そして、とうとう恥ずかし気なアイナの口から、その名がつげられた――のだが。
「ジーク? ……どこの御子息だったかしら?」
名前を聞いて、絵里は慌ただしく記憶を探る。アイナは王女であるのだから、その交友関係は慎重に吟味されている。同性は伯爵家以上、異性に関しては侯爵家以上の同年代が選ばれているし、当然、そのすべては両親へも知らされてる。なのに、思い当たる節がない。
「……ごめんなさい、ちょっとお母様は思い当たる方がいないの。愛称ではなく本名は何かしら?」
「ジーク様の? 嫌だわ、お母様。ジーク様って言ったらジークリンド様にきまってます」
「はぁっ!?」
その途端、隅に置かれていた置物がいきなり叫んだ。
「ア、アイナっ! もしかして、お前が言っているのはあのジークかっ?」
国王としての威厳も、父親としての貫禄もすべて放り投げて、ほとんど絶叫に近かったが、そこまでライムートが驚くの無理はない。娘と面識のある『ジークリンド』といえば、一人しかいない。
ジークリンド・フォウ・イエンシュ――ライムートの乳兄弟であり、今は国王の側近筆頭として彼の補佐をしている男性だ。シルヴァージュでも長い歴史を誇る伯爵家の出で、更に彼の母親はライムートの乳母を務めた上に、長く絵里の筆頭女官として仕えてくれていた。母親のほうは少し前に引退したものの、親子そろって国王夫妻の信頼も厚い人物である。
「……アイナ。貴女、ジークの事が好きだったの?」
そしてライムートと同じく、まさかその名がアイナの口から出てくるとは絵里も思わなかった。
「はい、お母様」
「……確かに、ジークは独身で婚約者もいないわね。それに、浮いた話もとんと聞かないし」
「ジーク様は誠実な方ですもの」
そして、先ほどアイナも言ったように、彼はいまだ独身だ。縁談は降るようにあったが、本人はライムートに仕えるえるのに忙しく、そのすべてを断ってしまっていた。かといって女遊びをすることもなく、徹頭徹尾、ストイックにライムートに忠誠を尽くしてくれている。
「ご実家はお兄様が次いでらっしゃるけど、由緒正しい伯爵家だし、身分的にも釣り合うといえば釣り合うわね」
「はい!」
一つ一つ、確かめるように絵里が口にする言葉に、アイナがうれし気に頷いているが、そこにライムートが決死の勢いで割って入った。
「いや、ちょっと待て。リィ、何を冷静に話しを進めているっ? そして、アイナっ! わかってるのか、あいつは俺と同い年だぞっ!?」
ライムートの乳兄弟であるのだから、それは当然のことだ。
「まぁ、お父様ったら。そんなことは当然存じ上げておりますわ」
「だったら、余計に何故だ!? 他にいくらでもよさげな相手はいるだろうっ? ほら、あの辺境伯のところの息子とか、侯爵家の長男とか……」
別に、ライムートはアイナが彼らと結婚してほしいと望んでいるわけではない――アイナがどうしてもと強く望めば別だが――が、少なくとも自分と同い年のおっさんよりはましだ。
しかし――
「皆、子供っぽいのですもの。それに比べて、ジーク様は落ち着いた大人でいらっしゃいます。いつも穏やかに微笑んでいらして、とても素敵だと思うのです」
アイナと同年代なのだから、子息らが子供っぽくて当然だし、ジークはライムートと同い年なのだから大人なのも当たり前だ。そして穏やかに微笑んでいるのは、それがアイナの前だからだ。
本来のジークリンドは、決して優しく穏やかなだけの男ではない。それは誰よりも付き合いの長いライムートが一番知っていた。
「騙されるなっ! あいつはお前が思っているような奴じゃないっ」
「まぁっ、お父様! ジーク様を悪く言うのはやめてくださいっ」
「……まぁまぁ、ライ。アイナも、ちょっと落ち着いて?」
期せずして親子喧嘩が始まりそうになったところで、絵里が仲裁に入る。
「アイナの気持ちはわかったわ。でも、ジークの方はどうなのかしらね?」
「そんなものは決まって――」
「ライはちょっと黙ってて」
叫びかけた言葉にかぶせるように、きっぱりと絵里が告げれば、ライムートは惚れた弱みで黙らざるを得ない。その間に、娘に向かいいい聞かせる。
「――ねぇ、アイナ? さっきも言ったけど、私たちはできるだけ貴方の希望に沿いたいと思っているわ。だけど、貴方がジークを好きでも、ジークもそうだとは限らないわ。それとも、お父様の権力をつかって、無理やり結婚したい?」
「そんなことはありません」
「そうよね? だったら、まずジークの気持ちを確かめる必要があるのではない?」
「ジーク様の気持ち……」
「アイナには、それを訊ねる勇気があるかしら? 気持ちを受け入れてくれるかもしれないけど、もしかしたら断られる可能性だってあるわよね」
まるでけしかけているかのような絵里の言葉に、ライムートがおろおろと事の成り行きを見守る前で、アイナの瞳に決意が宿る。
「お母様、私……」
そして、そこで絵里が最後の一押しをする。
「そういえば、今の時間なら、ジークはお父様の執務室にいるんじゃないかしら?」
「……お父様、お母様。私、少しお時間をいただきたいと思います」
「ええ、構わないわ。でも、行くのならちゃんと侍女を連れていきなさい」
「はい」
そして、慌ただしく部屋を後にする。その後姿が、扉の向こうに消えた途端、ライムートが血相を変えて叫ぶ――前に、絵里が苦笑しながら口を開いた。
「アイナには少しかわいそうだけど、まぁ、こういうのも経験よね」
「……リィ?」
「ライもちょっとは落ち着きなさいってば。いくら何でも、ジークがアイナの気持ちにこたえるわけがないじゃない。それこそ、生まれた時から知ってる子なのよ?」
さすがにおむつを替えてもらったことはないが、ジークに抱っこされたままで粗相をしたことがあったりする。その他にも、赤ん坊から幼児時代にアイナ自身は知らなくとも、積み上げた黒歴史はいくらでもあった。
そんな我が子のような娘をジークが恋愛対象とみることなど、絶対にない。
「それは、そうだが……」
「それにしても、まさかアイナも私と好みが一緒だとは思わなかったわ」
絵里の好みとは、つまりは『おじ専』ということだ。絵里のそれは早くになくした父への思慕(つまりはファザコン)が元になっており、アイナの場合は――おそらくだが、やはり父親が好きすぎて同年代の異性には興味が向かないのだろう。
とはいえ、二十歳を過ぎてもその方面に突っ走りまくっていた絵里とは異なり、アイナはまだ幼い。ジークリンドへの気持ちも、淡い憧れのようなもので、ここで一度、きっぱりと失恋を経験すれば、また違う相手に目を向けることもできるようになるに違いない。
絵里からそう説明され、ライムートはその洞察力に舌を巻く。
「リィは、良くそんなことがわかるな?」
「私は母親だもの、当たり前よ」
そして、それからしばらくして――案の定、目を真っ赤にしたアイナが部屋へと戻ってきた。
「お母様……わ、私、ジーク様に自分の気持ちをお話したの……でもっ」
「そう、残念だったわね……いいのよ、気が済むまでお泣きなさい」
「お母様――っ」
そして、ここでうっかり「よかった……いや、当たり前か。こんなこと、ジークが受けるはずがなかったんだから」等と呟いたのを娘に聞きとがめられたライムートが、「お父様なんか大っ嫌いっ!」との発言を愛娘から頂戴し、ズズンと落ち込む羽目になったのは余談である。
「世の中には『初恋は実らない』って言葉があるの――でも、今はつらくとも、その内、アイナにもきっとぴったりな相手が見つかるわ」
そんなライムートの様子を横目に、絵里が苦笑しながら告げれば、彼女の胸で泣きじゃくっていた娘は小さくうなづいたようだった。
そして、それからしばらくして。
ジークへの失恋で落ち込んでいたアイナを、やさしく慰めてくれた相手がいた。ライムートの秘書官の一人で、侯爵家の跡取りである。ちなみに、そこの夫人はジークの姉であったりする。
十歳ほど年上の彼は、ライムート達が選んだ候補には入っていなかったが、家柄人品共に悪くない。文官を選んだことでもわかる様に優しく穏やかで、且つ、大人(アイナからしてみればの話だが)の彼に、アイナがぞっこんになってしまった。
跡取り息子で二十歳を過ぎてはいるが『なすべき仕事をきちんと覚えるまでは家庭を持つ気はない』という理由で、いまだに婚約者さえいなかったのは幸いだった。
本人にも確認をとったが、驚きはしてもまんざらではない様子となれば、これはもう決まりだろう。
無論、彼としては妙な下心があったのではなく、皆に『陽だまり姫』と呼ばれて愛されている彼女が、ひどく落ち込んでいるのをかわいそうに思ったのもあるらしいが、それがまた高評価となり……自分の叔父の所為で、という責任感もあったのかもしれないが、それはともかく。
「……言っておくが、まだ婚約だけだからな。少なくとも十八になるまでは、絶対に嫁にはやらん」
娘が離れていく寂しさと、相応の相手(十歳差なら十分許容範囲だ)を選んでくれた安堵という、複雑な心境を吐露するライムートに、絵里が笑いながら言う。
「いまからそんなことで大丈夫? うちには、まだ下に二人も娘がいるのよ?」
「こんな思いを、後、二回もしなければならんのか……」
「それが親ってものでしょう? ああ、でも、うれしい話もあるのよ。アイナがね、こっそり私に教えてくれたの。『お父様とお母さまみたいな夫婦になりたい』って」
その言葉で、ライムートの沈んだ気持ちも少しば浮上したようだ。
「いつまでもそう思ってもらえるようしたいわね――ライ、愛してるわ」
「……ああ、そうだな。俺もリィを愛してるぞ」
初めて出会ってからもう十年以上経つが、いまだに熱烈な愛情で結ばれた国王夫婦は、そう言って笑い合う。
シルヴァージュ王国の未来は、きっとどこまでも明るいに違いなかった。
先王はまだ十分に執務をとれる年齢ではあったが、早めに王座を譲り渡し次代に経験を積ませるというシルヴァージュの伝統だ。更には、万が一の事があった場合、再び政務を取り仕切る必要が出てくる可能性もあるので、代替わりは早い方がいいという一面もある。
「……一般庶民だった私に王妃なんて重責が務まるか心配だったけど、何とかなるものねぇ」
「王太子妃として十分やっていけていたリィだからな。俺は心配なぞしていなかったぞ」
クッションやカバーを新たに張り替えられた王座に座りつつ、そんな会話を交わすのは新国王とその妻である。
「生まれたときから王族のライはまだいいわよ。だけど、私は庶民生まれの上に、まだやっと三十後半になったところなのよ? お義父様に、そろそろ戴冠式の用意をするようにっていわれたときはどうしようかと思ったもの」
「跡取りが生まれたら代替わりするのがウチの習わしだ――というのは表向きで実のところ、さっさと面倒ごとは息子に押し付けて、自分は妻とノンビリいちゃつきたいってのが本音なんだろう」
「シルヴァージュの王様って、愛妻家が多いって聞いてはいたけど……」
一人や二人ならまだしも、それが『伝統』といわれるほどに続いていることに驚きを隠せないでいるのは、現在の国王の妻。つまりはこの国の王妃である。リィ・クアーノ・エ・ル・シルヴァージュという名だが、国民には『奇跡の乙女』改め『奇跡の王妃』として慕われている。
大層な二つ名を持つ彼女は、元はこの国――いや、この世界の人間ではない。本名を加賀野絵里といい、とある事情によりフォーセラとは異なる世界から呼ばれた存在だ。その折にトラブルに巻き込まれ死にかけていたところを、これまたとある事情により諸国を巡る旅をしていた当時の王太子――今の国王であり、彼女の夫であるライムート・エ・ラ・シルヴァージュに拾われ、紆余曲折を経て彼と結ばれたという数奇な運命をたどった存在だった。
「まぁ、それでも一応の基準みたいなものはあるんだ。次の次の世代――つまりは、王太子にきちんと跡取りができて、その子がある程度しっかり育ってからじゃないとダメなんだけどな」
「その辺、私たちはしっかりクリアーしちゃったものね」
結婚した翌々年に妊娠がわかり、次の年に長女が生まれた。その二年後には男女の双子。更に三年後にもう一人の男子が生まれ、一年置いて女児という今や五人の子持ちとなった二人である。
幸いなことに、子供たちはすべて健康に生まれ、大過なく育ってくれている。ただ、経験豊富な乳母たちもついてはいたが、王太子夫妻としての仕事をしつつの子育ては、なかなかに大変だった。無論、それを後悔したことは今も昔も、一度たりともないのだが。
絵里とライムートとの間に生まれた子は、上から順にアイナ(愛菜)、ウルリッヒ、カンナ(神菜)、クルゼイロ、サナ(咲菜)と名付けられていた。男児はシルヴァージュ王家の代々の名がつけられているが、女児の名に秘かに漢字が当てられているのは絵里のたっての願いである。
「まぁ、それはともかく――アイナの事なんだがな。どうだ、リィ? 誰か好いている相手はいそうか?」
長女のアイナは来年十二歳になり、そろそろ婚約者を決める必要があった。
絵里の元居た世界では小学校五、六年程度の年齢なので早いと思いそうになるが、ここは異世界。しかもアイナは王族だ。決して早すぎることはない――下手をすれば生まれた瞬間に結婚相手が決められてることさえあるのだ。
「そうね……私はそんな話は聞いたことがないのだけど、アイナが黙っているだけって可能性もあるし、本人に聞いてみるのが一番じゃない? 政治がらみで結婚させたい相手がいるわけでもないんでしょう?」
「ああ。幸いなことに、周辺国との関係は良好だ。無理に婚姻で縁をつなぐ必要はない。好いた相手がいるのなら、できればそいつと添わしてやりたいからな」
貴族、ましてや王族ともなれば、政略結婚は当たり前だ。しかしライムートと絵里は、珍しく恋愛結婚をしていた。自分たちが好きな相手と一緒になったのに、子供に愛のない(とは限らないが)政略での婚姻を強いるというのは忸怩たるものがある。無論、そんな甘い事を言っていられない場合もあるが、今のシルヴァージュはそういう状況にはおかれていない。
できれば本人の望む相手と結ばれてほしいと思うのは、当たり前の親心だった。
「とりあえず、アイナから話を聞くのが先ね」
内宮の一角にある長女の私室は、最近模様替えを行っていた。以前は可愛らしいピンクが主体の内装だったのが、今は彼女の好きな淡いグリーンに差し色のオレンジが混じり、春の草原を思い起こさせる。
「随分とお姉さんらしい感じのお部屋になったわね」
「だって、わたくし、もうすぐ十二ですもの。何時までも子供のままではいられませんわ」
珍しく両親揃っての私室への訪問に、アイラは戸惑いながらもうれしそうだ。
ライムートと絵里の間に生まれた子は、皆、両親の事が大好きだ。親子の絆が強いのはシルヴァージュ王家の伝統であるが、絵里の希望もあってできるだけ親子の時間をとれるようにしていた。国王という重責を担っているため、一般家庭に比べればその時間はどうしても短くなるが、その分濃密な愛情を注いでもらっていたと、子供たちも理解してくれている。
「受け答えも、すっかり淑女だな。嬉しいが、父親としてはちょっと寂しくもあるな」
アイナは絵里によく似ている。髪こそライムートと同じ金茶だが、瞳は温かなブラウン。肌の色も絵里に近い薄いクリーム色だ。顔立ち自体は次女のカンナの方が整っているが、長女らしくおっとりとした性格で、ライムートの美貌から鋭さを抜き、その代わりに絵里のふんわりとした柔らかさを加えた、といえばおおよその見当がつくだろう。
ただそこにいるだけで癒しを与えてくれるようで、お付きの侍女や女官、護衛の騎士たちからは、ひそかに『陽だまり姫』と呼ばれている。
「まぁ、お父様ったら」
そんなアイナだが、本人の言うように何時までも子供のままではいられない。いくらライムートが手元に置いておきたいと思っても、何時かは誰かに嫁がせねばならない。
そして、その為にここを訪れているのだ。
「ねぇ、アイナ。今日は、お父様とお母さまは、貴女に尋ねたいことがあってここに来たの」
改まった絵里の言葉に、アイナはかわいらしく小首をかしげる。
「わたくしに、ですか?」
「ええ。あのね、唐突な質問に思えるかもしれないのだけど――貴女、誰か好きな方はいる?」
こういう場合、父親はほとんど無力だ。頭では理解したつもりになっていても、愛娘がだれか他所の男に嫁ぐなど、出来れば考えたくない。そのため、当然ながら質問するのは絵里となる。だったら、別にここにいなくてもよさそうなものだが、一人別室で母娘の会話を想像しながら悶々と待つのも嫌だ、というなんとも複雑な父親としての心境の結果であった。
「わたしくしが好きな方、ですか?」
「そうよ。王女として、貴女もそろそろ結婚相手を考えないといけないお年頃になってきたわ。でも、私もお父様も貴女の気持ちを無視して、相手を決めるようなことはしたくないの。だから、そういう方が――いえ、別にいないのならそれはそれで構わないし、なんとなく気になる程度でもいいのだけど、気になる方がいるのなら教えてほしいの」
なるべく娘が答えやすい様に誘導すれば――果たして、その頬が桜色に染まる。
「いるのね?」
即座に絵里が食いつけば、頬の赤味が更に濃くなる。
「はい。でも、その……」
「言いにくい相手なの? もしかして、もう婚約している方がいるとか?」
アイナ自身はまだだが、彼女と交流のある貴族の子女の中にはすでに婚約が決まっている者もいる。そういった相手だと、話が難しくなる……等と先走った心配をするのだが、それは杞憂に終わった。
「いいえ、そういう方がいらっしゃると聞いたことがありません」
「そうなのね、よかった! それで、そのお相手って何方なのかしら? 私たちも知っている人よね?」
ぐいぐいと迫ってくる母親にアイナが若干引き気味になるが、そこはそれ絵里も言ったようにそういうお年ごろの娘である。好きな相手について、母親に相談できるのは魅力的だったようだ。
父親? 隅で置物になっている。
「ねぇ、アイナ。教えて?」
「はい。あの……わたくし、ジーク様を、その……お慕いしております」
そして、とうとう恥ずかし気なアイナの口から、その名がつげられた――のだが。
「ジーク? ……どこの御子息だったかしら?」
名前を聞いて、絵里は慌ただしく記憶を探る。アイナは王女であるのだから、その交友関係は慎重に吟味されている。同性は伯爵家以上、異性に関しては侯爵家以上の同年代が選ばれているし、当然、そのすべては両親へも知らされてる。なのに、思い当たる節がない。
「……ごめんなさい、ちょっとお母様は思い当たる方がいないの。愛称ではなく本名は何かしら?」
「ジーク様の? 嫌だわ、お母様。ジーク様って言ったらジークリンド様にきまってます」
「はぁっ!?」
その途端、隅に置かれていた置物がいきなり叫んだ。
「ア、アイナっ! もしかして、お前が言っているのはあのジークかっ?」
国王としての威厳も、父親としての貫禄もすべて放り投げて、ほとんど絶叫に近かったが、そこまでライムートが驚くの無理はない。娘と面識のある『ジークリンド』といえば、一人しかいない。
ジークリンド・フォウ・イエンシュ――ライムートの乳兄弟であり、今は国王の側近筆頭として彼の補佐をしている男性だ。シルヴァージュでも長い歴史を誇る伯爵家の出で、更に彼の母親はライムートの乳母を務めた上に、長く絵里の筆頭女官として仕えてくれていた。母親のほうは少し前に引退したものの、親子そろって国王夫妻の信頼も厚い人物である。
「……アイナ。貴女、ジークの事が好きだったの?」
そしてライムートと同じく、まさかその名がアイナの口から出てくるとは絵里も思わなかった。
「はい、お母様」
「……確かに、ジークは独身で婚約者もいないわね。それに、浮いた話もとんと聞かないし」
「ジーク様は誠実な方ですもの」
そして、先ほどアイナも言ったように、彼はいまだ独身だ。縁談は降るようにあったが、本人はライムートに仕えるえるのに忙しく、そのすべてを断ってしまっていた。かといって女遊びをすることもなく、徹頭徹尾、ストイックにライムートに忠誠を尽くしてくれている。
「ご実家はお兄様が次いでらっしゃるけど、由緒正しい伯爵家だし、身分的にも釣り合うといえば釣り合うわね」
「はい!」
一つ一つ、確かめるように絵里が口にする言葉に、アイナがうれし気に頷いているが、そこにライムートが決死の勢いで割って入った。
「いや、ちょっと待て。リィ、何を冷静に話しを進めているっ? そして、アイナっ! わかってるのか、あいつは俺と同い年だぞっ!?」
ライムートの乳兄弟であるのだから、それは当然のことだ。
「まぁ、お父様ったら。そんなことは当然存じ上げておりますわ」
「だったら、余計に何故だ!? 他にいくらでもよさげな相手はいるだろうっ? ほら、あの辺境伯のところの息子とか、侯爵家の長男とか……」
別に、ライムートはアイナが彼らと結婚してほしいと望んでいるわけではない――アイナがどうしてもと強く望めば別だが――が、少なくとも自分と同い年のおっさんよりはましだ。
しかし――
「皆、子供っぽいのですもの。それに比べて、ジーク様は落ち着いた大人でいらっしゃいます。いつも穏やかに微笑んでいらして、とても素敵だと思うのです」
アイナと同年代なのだから、子息らが子供っぽくて当然だし、ジークはライムートと同い年なのだから大人なのも当たり前だ。そして穏やかに微笑んでいるのは、それがアイナの前だからだ。
本来のジークリンドは、決して優しく穏やかなだけの男ではない。それは誰よりも付き合いの長いライムートが一番知っていた。
「騙されるなっ! あいつはお前が思っているような奴じゃないっ」
「まぁっ、お父様! ジーク様を悪く言うのはやめてくださいっ」
「……まぁまぁ、ライ。アイナも、ちょっと落ち着いて?」
期せずして親子喧嘩が始まりそうになったところで、絵里が仲裁に入る。
「アイナの気持ちはわかったわ。でも、ジークの方はどうなのかしらね?」
「そんなものは決まって――」
「ライはちょっと黙ってて」
叫びかけた言葉にかぶせるように、きっぱりと絵里が告げれば、ライムートは惚れた弱みで黙らざるを得ない。その間に、娘に向かいいい聞かせる。
「――ねぇ、アイナ? さっきも言ったけど、私たちはできるだけ貴方の希望に沿いたいと思っているわ。だけど、貴方がジークを好きでも、ジークもそうだとは限らないわ。それとも、お父様の権力をつかって、無理やり結婚したい?」
「そんなことはありません」
「そうよね? だったら、まずジークの気持ちを確かめる必要があるのではない?」
「ジーク様の気持ち……」
「アイナには、それを訊ねる勇気があるかしら? 気持ちを受け入れてくれるかもしれないけど、もしかしたら断られる可能性だってあるわよね」
まるでけしかけているかのような絵里の言葉に、ライムートがおろおろと事の成り行きを見守る前で、アイナの瞳に決意が宿る。
「お母様、私……」
そして、そこで絵里が最後の一押しをする。
「そういえば、今の時間なら、ジークはお父様の執務室にいるんじゃないかしら?」
「……お父様、お母様。私、少しお時間をいただきたいと思います」
「ええ、構わないわ。でも、行くのならちゃんと侍女を連れていきなさい」
「はい」
そして、慌ただしく部屋を後にする。その後姿が、扉の向こうに消えた途端、ライムートが血相を変えて叫ぶ――前に、絵里が苦笑しながら口を開いた。
「アイナには少しかわいそうだけど、まぁ、こういうのも経験よね」
「……リィ?」
「ライもちょっとは落ち着きなさいってば。いくら何でも、ジークがアイナの気持ちにこたえるわけがないじゃない。それこそ、生まれた時から知ってる子なのよ?」
さすがにおむつを替えてもらったことはないが、ジークに抱っこされたままで粗相をしたことがあったりする。その他にも、赤ん坊から幼児時代にアイナ自身は知らなくとも、積み上げた黒歴史はいくらでもあった。
そんな我が子のような娘をジークが恋愛対象とみることなど、絶対にない。
「それは、そうだが……」
「それにしても、まさかアイナも私と好みが一緒だとは思わなかったわ」
絵里の好みとは、つまりは『おじ専』ということだ。絵里のそれは早くになくした父への思慕(つまりはファザコン)が元になっており、アイナの場合は――おそらくだが、やはり父親が好きすぎて同年代の異性には興味が向かないのだろう。
とはいえ、二十歳を過ぎてもその方面に突っ走りまくっていた絵里とは異なり、アイナはまだ幼い。ジークリンドへの気持ちも、淡い憧れのようなもので、ここで一度、きっぱりと失恋を経験すれば、また違う相手に目を向けることもできるようになるに違いない。
絵里からそう説明され、ライムートはその洞察力に舌を巻く。
「リィは、良くそんなことがわかるな?」
「私は母親だもの、当たり前よ」
そして、それからしばらくして――案の定、目を真っ赤にしたアイナが部屋へと戻ってきた。
「お母様……わ、私、ジーク様に自分の気持ちをお話したの……でもっ」
「そう、残念だったわね……いいのよ、気が済むまでお泣きなさい」
「お母様――っ」
そして、ここでうっかり「よかった……いや、当たり前か。こんなこと、ジークが受けるはずがなかったんだから」等と呟いたのを娘に聞きとがめられたライムートが、「お父様なんか大っ嫌いっ!」との発言を愛娘から頂戴し、ズズンと落ち込む羽目になったのは余談である。
「世の中には『初恋は実らない』って言葉があるの――でも、今はつらくとも、その内、アイナにもきっとぴったりな相手が見つかるわ」
そんなライムートの様子を横目に、絵里が苦笑しながら告げれば、彼女の胸で泣きじゃくっていた娘は小さくうなづいたようだった。
そして、それからしばらくして。
ジークへの失恋で落ち込んでいたアイナを、やさしく慰めてくれた相手がいた。ライムートの秘書官の一人で、侯爵家の跡取りである。ちなみに、そこの夫人はジークの姉であったりする。
十歳ほど年上の彼は、ライムート達が選んだ候補には入っていなかったが、家柄人品共に悪くない。文官を選んだことでもわかる様に優しく穏やかで、且つ、大人(アイナからしてみればの話だが)の彼に、アイナがぞっこんになってしまった。
跡取り息子で二十歳を過ぎてはいるが『なすべき仕事をきちんと覚えるまでは家庭を持つ気はない』という理由で、いまだに婚約者さえいなかったのは幸いだった。
本人にも確認をとったが、驚きはしてもまんざらではない様子となれば、これはもう決まりだろう。
無論、彼としては妙な下心があったのではなく、皆に『陽だまり姫』と呼ばれて愛されている彼女が、ひどく落ち込んでいるのをかわいそうに思ったのもあるらしいが、それがまた高評価となり……自分の叔父の所為で、という責任感もあったのかもしれないが、それはともかく。
「……言っておくが、まだ婚約だけだからな。少なくとも十八になるまでは、絶対に嫁にはやらん」
娘が離れていく寂しさと、相応の相手(十歳差なら十分許容範囲だ)を選んでくれた安堵という、複雑な心境を吐露するライムートに、絵里が笑いながら言う。
「いまからそんなことで大丈夫? うちには、まだ下に二人も娘がいるのよ?」
「こんな思いを、後、二回もしなければならんのか……」
「それが親ってものでしょう? ああ、でも、うれしい話もあるのよ。アイナがね、こっそり私に教えてくれたの。『お父様とお母さまみたいな夫婦になりたい』って」
その言葉で、ライムートの沈んだ気持ちも少しば浮上したようだ。
「いつまでもそう思ってもらえるようしたいわね――ライ、愛してるわ」
「……ああ、そうだな。俺もリィを愛してるぞ」
初めて出会ってからもう十年以上経つが、いまだに熱烈な愛情で結ばれた国王夫婦は、そう言って笑い合う。
シルヴァージュ王国の未来は、きっとどこまでも明るいに違いなかった。
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