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七月・八月:狂恋
彼女が私を【殺害】
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あら、殿下。
わざわざ私のお見舞いに来てくださったのですか?
ありがとうございます。
でも無理なさらなくても良かったのですよ?
……私達の婚約はもう解消されたのですから。
認めていない? あらあら、殿下の承認など必要ありませんのよ。
私達の婚約は王命だったのですもの。
なんの身分も財産も持たない愛妾がお気に入りの国王陛下が、その女性が産んだ殿下に後ろ盾を与えたくて私の父である公爵にゴリ押しした婚約ですわ。
ふふふ、陛下もようやくご自身のお尻に火がついていることにお気づきになったようですわね。
正妃様の身分と財産を後ろ盾にしなくては即位出来なかった立場だったことを思い出されたというべきかしら?
ところで彼女はどうなりましたの?
ほら、殿下のお気に入りの彼女ですわ。
殿下の母君と同じように、なんの身分も財産も持たない愛妾止まりが良いところの彼女ですわ。
親子というのは好みが似るものですのね。
それとも殿下は陛下と違って、すべてを捨てて彼女と結ばれるおつもりだったのでしょうか。
そうですわね、彼女は殿下の真実の愛のお相手と噂されていましたものね。
まあ、彼女は極刑に処されることが決まりましたの。
残念ですわね、殿下。
ですが仕方がないことですわ。
今は違うとはいえ、あのときの私は王太子殿下の婚約者でした。
その私を学園の階段から突き落として殺そうとしたのですものね。
学園で彼女とばかり過ごしていて、私を殺せば妃になれると期待させてしまった殿下は廃太子とされただけでようございましたね。ああ、そうは言っても真実の愛のお相手が処刑されるのですからお気の毒ですわ。
違う? 最初から演技だった?
婚約者である私が学園で反感を買わないように、彼女と親しい振りをしていた?
彼女が勝手に勘違いして思い上がっただけ?
あらまあ、殿下は本当にお莫迦さんですこと。
婚約者の王太子殿下に相手にされていない公爵令嬢が、周囲に見下されないとでもお思いでしたの?
私が学園で、彼女のお仲間の下位貴族のご令嬢やご子息方に罵られたり笑われたりしている姿を一度もご覧になっていないのだとしたら、殿下の目は節穴と言わざるを得ませんわ。
反感を買っていたのなら戦うすべもありました。
けれど婚約者の殿下ご自身に侮られている人間がなにを言っても聞いてもらえるはずがないではありませんの。
かつての私が殿下をお慕いしていたのを良いことに、婚約者のための予算を彼女に流用し、公式の夜会やお茶会でも着飾らせた彼女を連れ歩いていたのが私のためだと?
……私が父や兄に懇願していなければ、殿下は公爵家の手のものや派閥の人間によって百回以上殺されていましてよ?
これから、この王国の貴族子女が通う学園の生徒は三分の一ほどがいなくなるのではないかしら。
公爵家としては、自家の娘に無礼を働いた他派閥のご令嬢やご子息方にまで慈悲を与える必要はございませんもの。
未来の国母の実家ならば、愛すべき国民のひとりとして見逃すこともありましたが。
ねえ殿下、実は私、彼女に感謝していますの。
もちろん階段から突き落とされたのは怖かったですし、あのときのことを思い出すと心臓が握り潰されるような気持ちになりますわ。
だけど、あの事件が殺してくださいましたの。
なにをだと思います?
殺されて、こんなに幸せな気持ちになるとは思ってもみませんでしたわ。
それを失ったら人生が終わるなんて考えていたのが嘘のよう!
彼女に殺されても人生は輝いていましたわ。
殿下の婚約者だったころよりも、ずっとずっと眩しく!
父の机の上に積まれている私への婚約申込書の山をお見せしたいですわ。これまで私が気づいていなかっただけで、私を認めてくださってる方はいたんですのよ。
ちゃんと私を愛して大切にしてくださる方と新しいそれを育む日が、今から楽しみでなりませんの。
では、そろそろお帰りくださいな、殿下。
私は数日前に階段から突き落とされて背中を打ち、しばらく意識不明だった人間ですのよ?
愛している? 本当は愛していた? 政略的な婚約に反発していただけ?
……ねえ、殿下。
本当に私を愛してくださっていたのなら、婚約が解消されてご自身が廃太子となる前にお見舞いに来てくださったと思いますの。違いますかしら?
あらあら、まあまあ、廃太子になったとはいえ王子殿下が人前でお泣きになってはいけませんわ。
これからは私の代わりに、彼女が殿下を慰めてくださいますわよ。
処刑されても殿下の心の中で、ずっと。
だって殿下を愛する私の恋心を殺したのは彼女なのですもの。
責任を取っていただきなさいな。
<終>
わざわざ私のお見舞いに来てくださったのですか?
ありがとうございます。
でも無理なさらなくても良かったのですよ?
……私達の婚約はもう解消されたのですから。
認めていない? あらあら、殿下の承認など必要ありませんのよ。
私達の婚約は王命だったのですもの。
なんの身分も財産も持たない愛妾がお気に入りの国王陛下が、その女性が産んだ殿下に後ろ盾を与えたくて私の父である公爵にゴリ押しした婚約ですわ。
ふふふ、陛下もようやくご自身のお尻に火がついていることにお気づきになったようですわね。
正妃様の身分と財産を後ろ盾にしなくては即位出来なかった立場だったことを思い出されたというべきかしら?
ところで彼女はどうなりましたの?
ほら、殿下のお気に入りの彼女ですわ。
殿下の母君と同じように、なんの身分も財産も持たない愛妾止まりが良いところの彼女ですわ。
親子というのは好みが似るものですのね。
それとも殿下は陛下と違って、すべてを捨てて彼女と結ばれるおつもりだったのでしょうか。
そうですわね、彼女は殿下の真実の愛のお相手と噂されていましたものね。
まあ、彼女は極刑に処されることが決まりましたの。
残念ですわね、殿下。
ですが仕方がないことですわ。
今は違うとはいえ、あのときの私は王太子殿下の婚約者でした。
その私を学園の階段から突き落として殺そうとしたのですものね。
学園で彼女とばかり過ごしていて、私を殺せば妃になれると期待させてしまった殿下は廃太子とされただけでようございましたね。ああ、そうは言っても真実の愛のお相手が処刑されるのですからお気の毒ですわ。
違う? 最初から演技だった?
婚約者である私が学園で反感を買わないように、彼女と親しい振りをしていた?
彼女が勝手に勘違いして思い上がっただけ?
あらまあ、殿下は本当にお莫迦さんですこと。
婚約者の王太子殿下に相手にされていない公爵令嬢が、周囲に見下されないとでもお思いでしたの?
私が学園で、彼女のお仲間の下位貴族のご令嬢やご子息方に罵られたり笑われたりしている姿を一度もご覧になっていないのだとしたら、殿下の目は節穴と言わざるを得ませんわ。
反感を買っていたのなら戦うすべもありました。
けれど婚約者の殿下ご自身に侮られている人間がなにを言っても聞いてもらえるはずがないではありませんの。
かつての私が殿下をお慕いしていたのを良いことに、婚約者のための予算を彼女に流用し、公式の夜会やお茶会でも着飾らせた彼女を連れ歩いていたのが私のためだと?
……私が父や兄に懇願していなければ、殿下は公爵家の手のものや派閥の人間によって百回以上殺されていましてよ?
これから、この王国の貴族子女が通う学園の生徒は三分の一ほどがいなくなるのではないかしら。
公爵家としては、自家の娘に無礼を働いた他派閥のご令嬢やご子息方にまで慈悲を与える必要はございませんもの。
未来の国母の実家ならば、愛すべき国民のひとりとして見逃すこともありましたが。
ねえ殿下、実は私、彼女に感謝していますの。
もちろん階段から突き落とされたのは怖かったですし、あのときのことを思い出すと心臓が握り潰されるような気持ちになりますわ。
だけど、あの事件が殺してくださいましたの。
なにをだと思います?
殺されて、こんなに幸せな気持ちになるとは思ってもみませんでしたわ。
それを失ったら人生が終わるなんて考えていたのが嘘のよう!
彼女に殺されても人生は輝いていましたわ。
殿下の婚約者だったころよりも、ずっとずっと眩しく!
父の机の上に積まれている私への婚約申込書の山をお見せしたいですわ。これまで私が気づいていなかっただけで、私を認めてくださってる方はいたんですのよ。
ちゃんと私を愛して大切にしてくださる方と新しいそれを育む日が、今から楽しみでなりませんの。
では、そろそろお帰りくださいな、殿下。
私は数日前に階段から突き落とされて背中を打ち、しばらく意識不明だった人間ですのよ?
愛している? 本当は愛していた? 政略的な婚約に反発していただけ?
……ねえ、殿下。
本当に私を愛してくださっていたのなら、婚約が解消されてご自身が廃太子となる前にお見舞いに来てくださったと思いますの。違いますかしら?
あらあら、まあまあ、廃太子になったとはいえ王子殿下が人前でお泣きになってはいけませんわ。
これからは私の代わりに、彼女が殿下を慰めてくださいますわよ。
処刑されても殿下の心の中で、ずっと。
だって殿下を愛する私の恋心を殺したのは彼女なのですもの。
責任を取っていただきなさいな。
<終>
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