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第一話 恋敵は『俺』
3・推しっていうのはね!
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「っ? な、なにするのっ!」
突然のキスに驚きを隠せない。
一体どうしたんだ。
『キラーナイト』の映画でキスシーンでもあるのかな?
でも今から練習したって遅いだろうに。
休日朝のヒーロードラマにはキスシーンなんかないよねえ?
唇を離した後も忍野くんの顔は近い。
ああ、本当に顔だけはいい男だ。
いい加減わたしの両肩から手を離してほしい。
テーブルの上に体を乗り出してるのって、ちょっと辛いんだけどな。
彼は真剣な表情で言った。
「裏川、いや、沙英。好きだ、結婚してくれ」
「ヤダよ。冗談のつもりかもしれないけど、キスまでするなんて趣味が悪いよ?」
「冗談じゃねぇよ。ってか、お前も俺のこと好きなんだろ?」
「……は?」
思いがけない質問に、われながらマヌケな声が出た。
でも……うん。どうしたんだ、忍野くん。
卵、古くなってなかったよね?
車でマンションまで連れてきてくれる途中で近くの高級スーパーで買った卵だ。
そういえば、わたしのアパートの近くのスーパーも特売日で卵が安かったのよね。
この後帰ってからじゃスーパー閉まってるだろうな。
俳優忍野薫の連続ドラマ出演情報が聞けたから、来たことを後悔はしてないけど。
しかし、本当にどうしたんだ、忍野くん。
首を傾げると、彼は血相を変えてまくし立てた。
「おい! 高校時代からずっと俺の出演作チェックしてブログに感想上げて、舞台に出るときは初日から千秋楽まで通い詰めて、干されてた期間も差し入れくれて応援してくれたのに、好きじゃないとかありえないだろ!」
え? 今さらなに言ってるんだろ。
わたし、ずっと前から言ってたと思うんだけど。
上手く伝わってなかったんだろうか。
頭の中でわかってもらえそうな言葉を選んで口に出す。
「忍野くん……あのね、わたしは俳優忍野薫のファンなの」
「それって俺のことじゃんか」
「ちっがーうっ!」
反射的に叫んでしまった。
「へ?」
今度は忍野くんがマヌケな声を出す。
そしてわたしはまくし立てた。
言葉を選んでなんていられない。
燃え上がる気持ちを語ることしかできない。
「俳優忍野薫はわたしの推しっ! 世界! 運命! 幸せの化身っ! 俳優忍野薫の演技を見るために、わたしは生きてるの!」
わたしの両肩から手を離し、忍野くんは椅子に座り直した。
「う、うん。だから、それだけ俺が好きってことだろ?」
「違うって言ってるでしょうが! 俳優忍野薫と、高校の同級生の忍野くんは違うの! わたしはガチ恋勢じゃないし、俳優のプライベートには興味もないの! ただ忍野くんが死んじゃうと俳優忍野薫も死んじゃうから、差し入れしてただけなの!」
わたしの熱弁に、忍野くんは呆然とした表情を浮かべる。
「……ワケ、わかんねぇ」
だれかのファンじゃない人には、こういう心理は理解しにくいかもしれない。
わたしは、忍野くんを好きではない理由に話題をシフトさせた。
「そもそもねえ、高一の春に教室で女教師ふたりをキャットファイトさせるような人、好きにはなれません!」
「あー……あったな、んなこと。言っとくけど、あのふたりが勝手に熱くなってただけだぜ。それに沙英」
くすっと笑って、忍野くんは自分の前髪をかき上げた。
グラビアにでもありそうなポーズだ。
愁いを帯びた艶っぽさが、危険な雰囲気を漂わせる妖艶へと変わる。
わたしから見ればバカの極みな過去でも、彼には女性にモテた自慢の経歴らしい。
……そういうところがイヤなんだよ。
調子に乗って名前で呼ばれたので、わたしは彼を睨みつけた。
「名前で呼ぶな」
びくっと体を震わせて、忍野くんはわたしから視線を外した。
突然のキスに驚きを隠せない。
一体どうしたんだ。
『キラーナイト』の映画でキスシーンでもあるのかな?
でも今から練習したって遅いだろうに。
休日朝のヒーロードラマにはキスシーンなんかないよねえ?
唇を離した後も忍野くんの顔は近い。
ああ、本当に顔だけはいい男だ。
いい加減わたしの両肩から手を離してほしい。
テーブルの上に体を乗り出してるのって、ちょっと辛いんだけどな。
彼は真剣な表情で言った。
「裏川、いや、沙英。好きだ、結婚してくれ」
「ヤダよ。冗談のつもりかもしれないけど、キスまでするなんて趣味が悪いよ?」
「冗談じゃねぇよ。ってか、お前も俺のこと好きなんだろ?」
「……は?」
思いがけない質問に、われながらマヌケな声が出た。
でも……うん。どうしたんだ、忍野くん。
卵、古くなってなかったよね?
車でマンションまで連れてきてくれる途中で近くの高級スーパーで買った卵だ。
そういえば、わたしのアパートの近くのスーパーも特売日で卵が安かったのよね。
この後帰ってからじゃスーパー閉まってるだろうな。
俳優忍野薫の連続ドラマ出演情報が聞けたから、来たことを後悔はしてないけど。
しかし、本当にどうしたんだ、忍野くん。
首を傾げると、彼は血相を変えてまくし立てた。
「おい! 高校時代からずっと俺の出演作チェックしてブログに感想上げて、舞台に出るときは初日から千秋楽まで通い詰めて、干されてた期間も差し入れくれて応援してくれたのに、好きじゃないとかありえないだろ!」
え? 今さらなに言ってるんだろ。
わたし、ずっと前から言ってたと思うんだけど。
上手く伝わってなかったんだろうか。
頭の中でわかってもらえそうな言葉を選んで口に出す。
「忍野くん……あのね、わたしは俳優忍野薫のファンなの」
「それって俺のことじゃんか」
「ちっがーうっ!」
反射的に叫んでしまった。
「へ?」
今度は忍野くんがマヌケな声を出す。
そしてわたしはまくし立てた。
言葉を選んでなんていられない。
燃え上がる気持ちを語ることしかできない。
「俳優忍野薫はわたしの推しっ! 世界! 運命! 幸せの化身っ! 俳優忍野薫の演技を見るために、わたしは生きてるの!」
わたしの両肩から手を離し、忍野くんは椅子に座り直した。
「う、うん。だから、それだけ俺が好きってことだろ?」
「違うって言ってるでしょうが! 俳優忍野薫と、高校の同級生の忍野くんは違うの! わたしはガチ恋勢じゃないし、俳優のプライベートには興味もないの! ただ忍野くんが死んじゃうと俳優忍野薫も死んじゃうから、差し入れしてただけなの!」
わたしの熱弁に、忍野くんは呆然とした表情を浮かべる。
「……ワケ、わかんねぇ」
だれかのファンじゃない人には、こういう心理は理解しにくいかもしれない。
わたしは、忍野くんを好きではない理由に話題をシフトさせた。
「そもそもねえ、高一の春に教室で女教師ふたりをキャットファイトさせるような人、好きにはなれません!」
「あー……あったな、んなこと。言っとくけど、あのふたりが勝手に熱くなってただけだぜ。それに沙英」
くすっと笑って、忍野くんは自分の前髪をかき上げた。
グラビアにでもありそうなポーズだ。
愁いを帯びた艶っぽさが、危険な雰囲気を漂わせる妖艶へと変わる。
わたしから見ればバカの極みな過去でも、彼には女性にモテた自慢の経歴らしい。
……そういうところがイヤなんだよ。
調子に乗って名前で呼ばれたので、わたしは彼を睨みつけた。
「名前で呼ぶな」
びくっと体を震わせて、忍野くんはわたしから視線を外した。
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