婚約破棄されても賞金稼ぎなので大丈夫ですわ!

豆狸

文字の大きさ
6 / 7

第六話 連行ですわ!

しおりを挟む
 そこまで語ると、賞金首の男は長い溜息をつきました。
 瞳いっぱいに涙を浮かべ、彼は私に謝ります。

「ごめんなさい、お嬢様、ごめんなさい。奥方様は最後までお嬢様のことを心配していました。俺にも……俺にも娘がいるのに、なんてことを、俺はなんてことを……」

 彼は青百足会一番の過激派だった補佐が犯罪組織を追い出されて裏の賞金首にされていることを知り、青百足会の傾向が変わったのなら、真実を明かす前に始末されずに済むかもしれないと思って王国騎士団の詰所へ出頭してきたのでした。罪を抱えて生きていくことに疲れ切っていたのでしょう。
 その詰所の所長トゥリホマス様が口を開きます。

「青百足会の補佐がおさに野望を見抜かれたのは、が賞金首を通報しまくったからでしょうね。木を隠すには森の中、悪事を隠すには悪党の中。属していない悪党にかき回されて全貌が見えていなかった犯罪組織の縄張りが急に見通しが良くなって部下の妙な行動が目についた、そういうことだったのでしょう」

 私の賞金稼ぎ活動がお母様の事件の解決につながったのなら嬉しいことですね。

「クソがっ!」

 いきなり叫んだのはアポティヒアでした。
 彼女は実父を睨みつけます。

「父親だったら娘の幸せを考えて自殺でもしてろよっ! アンタがしゃしゃり出てきたせいでアタシと母さんの計画は台無しだよっ! 死ね死ね死ねっ!」
「他人から奪っても! 他人の命を奪っても幸せにはなれないんだよ、アポティヒア!」
「知るもんか! 奪い取ったらアタシのもんなんだよ! イリスィオも伯爵家も、全部アタシのものになるはずだったのにっ!」

 彼女の耳に父親の声は響かないようです。

 三年前、私とアポティヒアが十五歳のときに乗っ取り計画が本格的に始動したのは、この国の貴族子女が通う学園に入学するのが十五歳だからでしょう。貴族社会では仮成人という扱いを受けるようになります。
 乗っ取るためにも貴族常識を学ぶ必要があると思ったのに違いありません。
 それに十五歳で正式な跡取りとして認められることも多いですしね。

 まあ愛人親娘はあんまり貴族常識を学んでいませんでしたが。
 私さえ追い出せば父とイリスィオ様が伯爵家の実権を握れると思っていたくらいですので。
 賞金首の男の告白が終わり、愛人親娘とメイド長が騎士様達に連行されていきます。

「なっ! なぜ私も連行されるんだ? 私はその女に騙された被害者だぞ?」
「お、俺もだ! 俺もアポティヒアに騙されただけなんだ!」

 父とイリスィオ様もです。

「本当に奥方の殺害計画を知らなかったのかどうかは私どもにはわかりませんからね。メイド長が横領していたことを知りながら、愛人に言われたからといって雇い続けていたのが怪し過ぎます。……詰所でゆっくりお話を聞かせてください。詰所の地下で牢屋暮らしというのもなかなか乙なものですよ?」

 トゥリホマス様の真面目な姿を長時間見ているのは不思議な感じですね。
 メイド長が横領していたことから考えると、彼の指摘はもっともです。
 お母様がお元気だったころのメイド長の態度から考えると、お父様は彼女にも手を出していたのではないかしら。下半身の緩い父親がいると最悪ですわ。

「だ、だったら俺は関係ないな。離せ!」

 イリスィオ様が叫んで、トゥリホマス様が私を見ました。

「イリスィオ様はアポティヒアがウリャフト伯爵家の血筋でないと知りながら不貞関係を続け、伯爵家を乗っ取ろうとしていたのではありませんの?」
「ち、違う! 知らなかった。俺は知らなかったんだ!」
「彼女が私の母の産んだ子どもではないこと、この家の正当な跡取りは私であることくらいはご存じのはずですが?」
「す、すまない。忘れていたんだ。助けてくれ、見逃してくれ。学園の卒業まで後一ヶ月というところで王国騎士団に連行されたなんてことになったら、家族に絶縁されてしまう!」
「でしょうねえ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので、その場から逃げたら時間が巻き戻ったので聖女はもう間違えない

aihara
恋愛
私は聖女だった…聖女だったはずだった。   「偽聖女マリア!  貴様との婚約を破棄する!!」  目の前の婚約者である第二王子からそう宣言される  あまりの急な出来事にその場から逃げた私、マリア・フリージアだったが…  なぜかいつの間にか懐かしい実家の子爵家にいた…。    婚約破棄された、聖女の力を持つ子爵令嬢はもう間違えない…

残念なことに我が家の女性陣は、男の趣味が大層悪いようなのです

石河 翠
恋愛
男の趣味が悪いことで有名な家に生まれたアデル。祖母も母も例に漏れず、一般的に屑と呼ばれる男性と結婚している。お陰でアデルは、自分も同じように屑と結婚してしまうのではないかと心配していた。 アデルの婚約者は、第三王子のトーマス。少し頼りないところはあるものの、優しくて可愛らしい婚約者にアデルはいつも癒やされている。だが、年回りの近い隣国の王女が近くにいることで、婚約を解消すべきなのではないかと考え始め……。 ヒーローのことが可愛くて仕方がないヒロインと、ヒロインのことが大好きな重すぎる年下ヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:266115)をお借りしております。

婚約者を取り替えて欲しいと妹に言われました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ポーレット伯爵家の一人娘レティシア。レティシアの母が亡くなってすぐに父は後妻と娘ヘザーを屋敷に迎え入れた。 将来伯爵家を継ぐことになっているレティシアに、縁談が持ち上がる。相手は伯爵家の次男ジョナス。美しい青年ジョナスは顔合わせの日にヘザーを見て顔を赤くする。 レティシアとジョナスの縁談は一旦まとまったが、男爵との縁談を嫌がったヘザーのため義母が婚約者の交換を提案する……。

お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!

奏音 美都
恋愛
 まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。 「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」  国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?  国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。 「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」  え……私、貴方の妹になるんですけど?  どこから突っ込んでいいのか分かんない。

【完結】従姉妹と婚約者と叔父さんがグルになり私を当主の座から追放し婚約破棄されましたが密かに嬉しいのは内緒です!

ジャン・幸田
恋愛
 私マリーは伯爵当主の臨時代理をしていたけど、欲に駆られた叔父さんが、娘を使い婚約者を奪い婚約破棄と伯爵家からの追放を決行した!     でも私はそれでよかったのよ! なぜなら・・・家を守るよりも彼との愛を選んだから。

妹に婚約者を奪われたので、田舎暮らしを始めます

tartan321
恋愛
最後の結末は?????? 本編は完結いたしました。お読み頂きましてありがとうございます。一度完結といたします。これからは、後日談を書いていきます。

婚約破棄されたのでグルメ旅に出ます。後悔したって知りませんと言いましたよ、王子様。

みらいつりびと
恋愛
「汚らわしい魔女め! 即刻王宮から出て行け! おまえとの婚約は破棄する!」  月光と魔族の返り血を浴びているわたしに、ルカ王子が罵声を浴びせかけます。  王国の第二王子から婚約を破棄された伯爵令嬢の復讐の物語。

勝手にしろと言ったのに、流刑地で愛人と子供たちと幸せスローライフを送ることに、なにか問題が?

赤羽夕夜
恋愛
アエノール・リンダークネッシュは新婚一日目にして、夫のエリオット・リンダークネッシュにより、リンダークネッシュ家の領地であり、滞在人の流刑地である孤島に送られることになる。 その理由が、平民の愛人であるエディットと真実の愛に満ちた生活を送る為。アエノールは二人の体裁を守る為に嫁に迎えられた駒に過ぎなかった。 ――それから10年後。アエノールのことも忘れ、愛人との幸せな日々を過ごしていたエリオットの元に、アエノールによる離婚状と慰謝料の請求の紙が送られてくる。 王室と裁判所が正式に受理したことを示す紋章。事態を把握するために、アエノールが暮らしている流刑地に向かうと。 絶海孤島だった流刑地は、ひとつの島として栄えていた。10年以上前は、たしかになにもない島だったはずなのに、いつの間にか一つの町を形成していて領主屋敷と呼ばれる建物も建てられていた。 エリオットが尋ねると、その庭園部分では、十年前、追い出したはずのアエノールと、愛する人と一緒になる為に婚約者を晒し者にして国王の怒りを買って流刑地に送られた悪役王子――エドが幼い子を抱いて幸せに笑い合う姿が――。 ※気が向いたら物語の補填となるような短めなお話を追加していこうかなと思うので、気長にお待ちいただければ幸いです。

処理中です...