どうぶつ村のエリカと妖艶なデーモン

1.不穏な星のプロローグ

3

全てが元に戻っていた。

破壊された床や壁、飛び散った血の跡まで、先程さきほどまで真っ赤に染まっていた凄惨せいさんな部屋の中は何事もなかったかのように元通りになっている。

彼女はというと、数刻すうこく前と同じ様にまた虚うつろな表情をして玉座に腰掛けていた。

潰された目、切断された腕や翼、細かな生傷でさえ、彼女の体には傷一つついていなかった。

戦闘が終わったと同時に、すっかりと治っていたのだ。

これが、彼女が日々繰り返している日常であった。

彼女が彼らについて知っていることは少ない。

彼らの総称が人間（プレイヤー）と呼ばれる存在であること。

彼らは日に日に強くなること。

彼らは何度殺しても、生き返ること。

そして、戦闘中にも関わらずくり広げられる彼らの他愛たあいもない会話から、彼女はこう推察すいさつしたのだ。

彼らにとってこれは、ただの遊びだということ──。

彼女は自身の死期が近いことを悟っていた。

それからというもの、彼女は数多あまたあるすべての疑問を投げ捨て、考えることをやめた。

そうしてまた、生気を失ったようにピクリとも動かぬ人形となっているのだ。