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5.ふれあい
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「天使? なによそれ」
思いがけない質問をするデーモンさんにエリカは首を傾げました。
ふたりは大広間の中心で手を取り合って踊っていました。
エリカ曰く、城では踊るものなのだとか。
大階段の脇に置かれた蓄音機からは軽快な音楽が流れています。もちろん、蓄音機はエリカがポシェットから出したものです。
「違うのか?」
「違うわよ、ほら」
エリカは一度握り合っていた手を離して、くるりと回って背中を見せました。
「羽だって生えてないじゃない」
「ふむ……」
そうして、再び手を取り合って踊りを再開するのです。
「あなたは生えてるようだけどね」
エリカは踊りながらデーモンさんの背中を覗き込みます。
「あなたって飛べたりするの?」
「ああ、飛べる」
そう答えたデーモンさんは、翼を一度羽ばたかせて宙に浮かび上がりました。
「わー! すごい!」
エリカは宙に浮かぶデーモンさんを見上げて、手を叩いて喜びます。
「私を抱っこして飛べる?」
エリカがそう言うと、デーモンさんは一度床に足を下ろし、エリカに近寄ってきました。そして、エリカの脇を抱えるようにして、再び宙に浮かび上がります。
「すごい! すごいわ!」
エリカはデーモンさんの首元にギュッとしがみつきました。
「あなたってすごいのね!」
そうして、デーモンさんの頭の横から賛美を送ります。
「そうだろうか……?」
デーモンさんは少し照れくさそうな表情を浮かべていました。
「このままシャンデリアにタッチよ!」
エリカは天井のシャンデリアを指さして言いました。
「わかった」
デーモンさんはエリカの言われるがままに翼を羽ばたかせて上昇します。
「ターッチ! 熱っ!」
エリカは勢いよくシャンデリアのランプにタッチしましたが、明かりの灯るランプは熱を帯びていました。
「大丈夫か?!」
デーモンさんは心配そうにエリカの顔を覗き込んでいます。
「えぇ、平気よ」
エリカは顔をあげてそう言うと、ニシシと笑いました。
「本当か?」
「ええ、火傷もしてないわ」
そう言ってエリカはランプに触った手をパーにして、デーモンさんに見せました。
「よかった……」
デーモンさんは心の底からホッとしたような表情を浮かべています。
「ねぇねぇ! このまま踊りましょう!」
エリカはデーモンさんに突飛な提案を持ちかけました。
「ああ、いいぞ」
デーモンさんは「仰せのままに」と言葉を続けて、ふたりはそのまま空中で踊り始めました。
「あはははは!」
エリカは楽しそうにはしゃぎます。
それは、さながら空中の舞踏会でした。
デーモンさんは時にエリカの手を離したり、エリカを回したりしましたが、エリカはまったく怖くはありませんでした。
ゲームだから、という気持ちももちろんありましたが、なにより、出会ったばかりのデーモンさんをとても信用していたのです。
それからふたりは、エリカが飽きるまで踊り続けました。
────
「わたし、空を飛んでみたいわ! 外に出ましょう!」
舞踏会を終えてふたりが床に足を下ろすと、エリカは突然そんな提案をします。
すると、デーモンさんは虚を突かれたような顔をしました。
「それはできない」
「どうして?」
「私はこの城を守り続けなければいけないんだ。城の外に出ることはできない」
デーモンさんはそう言いながら、自身の首に付けているチョーカーの、何やら鍵の形をした飾りを手でギュッと握りしめていました。
その表情はどこか悲しげで、そして真剣な表情でもありました。
「あらそう……それは、仕方ないわね」
エリカはその表情を見て、相手の気持ちを汲み取るように、同じような表情をして答えました。
思いがけない質問をするデーモンさんにエリカは首を傾げました。
ふたりは大広間の中心で手を取り合って踊っていました。
エリカ曰く、城では踊るものなのだとか。
大階段の脇に置かれた蓄音機からは軽快な音楽が流れています。もちろん、蓄音機はエリカがポシェットから出したものです。
「違うのか?」
「違うわよ、ほら」
エリカは一度握り合っていた手を離して、くるりと回って背中を見せました。
「羽だって生えてないじゃない」
「ふむ……」
そうして、再び手を取り合って踊りを再開するのです。
「あなたは生えてるようだけどね」
エリカは踊りながらデーモンさんの背中を覗き込みます。
「あなたって飛べたりするの?」
「ああ、飛べる」
そう答えたデーモンさんは、翼を一度羽ばたかせて宙に浮かび上がりました。
「わー! すごい!」
エリカは宙に浮かぶデーモンさんを見上げて、手を叩いて喜びます。
「私を抱っこして飛べる?」
エリカがそう言うと、デーモンさんは一度床に足を下ろし、エリカに近寄ってきました。そして、エリカの脇を抱えるようにして、再び宙に浮かび上がります。
「すごい! すごいわ!」
エリカはデーモンさんの首元にギュッとしがみつきました。
「あなたってすごいのね!」
そうして、デーモンさんの頭の横から賛美を送ります。
「そうだろうか……?」
デーモンさんは少し照れくさそうな表情を浮かべていました。
「このままシャンデリアにタッチよ!」
エリカは天井のシャンデリアを指さして言いました。
「わかった」
デーモンさんはエリカの言われるがままに翼を羽ばたかせて上昇します。
「ターッチ! 熱っ!」
エリカは勢いよくシャンデリアのランプにタッチしましたが、明かりの灯るランプは熱を帯びていました。
「大丈夫か?!」
デーモンさんは心配そうにエリカの顔を覗き込んでいます。
「えぇ、平気よ」
エリカは顔をあげてそう言うと、ニシシと笑いました。
「本当か?」
「ええ、火傷もしてないわ」
そう言ってエリカはランプに触った手をパーにして、デーモンさんに見せました。
「よかった……」
デーモンさんは心の底からホッとしたような表情を浮かべています。
「ねぇねぇ! このまま踊りましょう!」
エリカはデーモンさんに突飛な提案を持ちかけました。
「ああ、いいぞ」
デーモンさんは「仰せのままに」と言葉を続けて、ふたりはそのまま空中で踊り始めました。
「あはははは!」
エリカは楽しそうにはしゃぎます。
それは、さながら空中の舞踏会でした。
デーモンさんは時にエリカの手を離したり、エリカを回したりしましたが、エリカはまったく怖くはありませんでした。
ゲームだから、という気持ちももちろんありましたが、なにより、出会ったばかりのデーモンさんをとても信用していたのです。
それからふたりは、エリカが飽きるまで踊り続けました。
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「わたし、空を飛んでみたいわ! 外に出ましょう!」
舞踏会を終えてふたりが床に足を下ろすと、エリカは突然そんな提案をします。
すると、デーモンさんは虚を突かれたような顔をしました。
「それはできない」
「どうして?」
「私はこの城を守り続けなければいけないんだ。城の外に出ることはできない」
デーモンさんはそう言いながら、自身の首に付けているチョーカーの、何やら鍵の形をした飾りを手でギュッと握りしめていました。
その表情はどこか悲しげで、そして真剣な表情でもありました。
「あらそう……それは、仕方ないわね」
エリカはその表情を見て、相手の気持ちを汲み取るように、同じような表情をして答えました。
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