異世界VS宇宙人~召喚オタJK、チート無しスキル無しスマホ有りでUFOと戦うハメに~

寛村シイ夫

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【38】がっちんこ

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メインブリッジの入り口付近。
安全な場所に離れ、ヒマリら3人はその二人の大男の対峙を見る。

ラガフェルドの剣を肩の上まで持ち上げ、ぶふう、と、シリアリス一人分ほどもの空気を肺に送り込む三代目の背中が、全てを捻り潰す筋肉が風船のように膨れ上がる。
エイリアン勇者ドライも、腰からずるり、と剣を引き抜いた。
禍々しいカーブを描くその大剣は、以前吸い損ねた三代目の血を求めてギラリと光る。

それを合図に二人の勇者がお互いに向けてずんずんと歩きはじめる。
一歩ずつ速度が上がる。
示し合わせたように二人は駆け足になる。
間にあるコンソールデスクをなぎ倒す。
弾き飛ばす。
二人は駆け出している。
三代目は走りながら、超合金の床を切り裂きつつ逆袈裟斬りを放つ。
ドライもまた、走りながら大きく振り下ろして迎え撃つ。
地球の全ての科学者が欲しがる最高のテクノロジーのつまったデスクを砕きながら、二つの大きな剣が、二人の中央でぶつかり合った。
その衝撃でだけでもまだ壊れていないコンソールのディスプレイにヒビが入る。
異世界の鬼が吠える。
宇宙の鬼も答えるように吠える。

三代目とエイリアン勇者との決着。
二人が戦ったあの日から、二人ともが邪魔の入らない一騎打ちを望んでいただろう事は、ヒマリにすら理解できた。
二匹の鬼は、心からうれしそうに笑っているようにも見えたからだ。

一合からやはり二人は同時に飛び下がり間合いを開ける。
開けながら左腕についた熱線銃を放つドライ。
その動きを見越していた三代目が鬼哮咆覇きこうほうはを放ち、打ち消した。
そこからはひたすらに二人は剣を切り結ぶ。
切り下ろし、突き、切り上げる。
その全てを両者ともが交わす。
当たっていないにも関わらず、その鋼の皮膚が裂けて血が噴き出すほどの剣速だった。
3メートルの鬼と2.5メートルの巨躯の宇宙人。
その両者ともが、それぞれの世界で身に付けた最高の剣技だった。
象ですら切り裂く豪剣が二人をかすめ続ける。
ただ一度の瞬きすらせずに、二人は剣技を尽くす。
彼らの攻撃がぶつかるごとに母船が揺れる。
衝撃が走る。

偶然か、必然か。
激戦だった。
ただの一撃でも当たるわけにいかない剣がお互いをかすめ続けている。
手が届きそうな距離での打ち合い、切りあい。
その距離でなければ、死間に立っていなければ目の前の鬼は倒せない。
絶対に当たらない。それほどの相手。
その死の間合いで紙一重でかわしあう二人。
万一にでも当たればそれで決着がつくほどの剛の剣。

それは、ほんの一分足らずの剣劇だった。
だが見ている三人は、完全に息を忘れて強く手を握りしめ、魅入っていた。
誰にも手出しはできるわけが無い。
楽しそうに戦う二人。
やはり、笑っていた。
本当に笑っていた。
お互いに、この瞬間のために何十年と修行し、何千人と戦い、その全てを倒してきたのだと気づいていたからだ。
宇宙で唯一のライバルを倒せる。
そんな最高に贅沢な時間を過ごしている事に二人は気づいていたからだ。
倒すべき魔王がいない世界の勇者は、今この相手にならどうなってもいいと心から思った。
お互いがお互いへの想いを籠めて剣を振りかざす。
オグルの全筋力を乗せた大上段からの振り下ろしを受ける宇宙人の勇者。
どすんと膝をつくドライ。
しかし地球にも異世界にも無い展延性を持った金属で作られた剣だからこそ、その豪剣を受けてなお折れる事はなかった。
膝をつくと同時に、隙を逃さず放たれた三代目の袈裟斬りだが、ドライもどれほどの修羅場をくぐり続けてきたのか。
その虎口にあってなお三代目の攻撃を見切り身をねじって躱しながら逆襲の剣を放つ。
クリスの悲鳴が上がった。
その剣を避けきれない三代目の太い指が3本、空中に飛び散る。
ついた膝のばねでドライが飛び下がり間合いを取り、三代目はそれを追うように前へと飛び出した―
その時。
母船が激しく揺れた。
ヒマリは戦う二人の後ろに浮かぶホログラムに目を奪われていた。
母船のすぐ横だろう場所に、光る巨大なサークルが―巨大な青い輪が出現したのだ。
同時に、地面が―いや、床がガクンと15度も傾く。
その一瞬の出来事に、バックステップをしていたドライが足を取られてかすかに体勢を崩した。
その隙とも呼べないわずかな隙を、オーガの剛腕で投げ放たれたラガフェルドの剣が回転しながら飛び、襲い掛かる。
―幾光年彼方からやってきた異星の強敵を襲い切り裂く。
限界まで肺の空気を使っていたドライは、声を出す事すらもなく胸元で両断されその上半身が後ろへと倒れ、落ちた。
ドライを切り裂いたラガフェルドの剣は減速する事なく、そのままメインコンソールに突き刺さる。

そして、ヒマリが目を奪われていたホログラムも消滅する。
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