38 / 43
【38】がっちんこ
しおりを挟む
メインブリッジの入り口付近。
安全な場所に離れ、ヒマリら3人はその二人の大男の対峙を見る。
ラガフェルドの剣を肩の上まで持ち上げ、ぶふう、と、シリアリス一人分ほどもの空気を肺に送り込む三代目の背中が、全てを捻り潰す筋肉が風船のように膨れ上がる。
エイリアン勇者ドライも、腰からずるり、と剣を引き抜いた。
禍々しいカーブを描くその大剣は、以前吸い損ねた三代目の血を求めてギラリと光る。
それを合図に二人の勇者がお互いに向けてずんずんと歩きはじめる。
一歩ずつ速度が上がる。
示し合わせたように二人は駆け足になる。
間にあるコンソールデスクをなぎ倒す。
弾き飛ばす。
二人は駆け出している。
三代目は走りながら、超合金の床を切り裂きつつ逆袈裟斬りを放つ。
ドライもまた、走りながら大きく振り下ろして迎え撃つ。
地球の全ての科学者が欲しがる最高のテクノロジーのつまったデスクを砕きながら、二つの大きな剣が、二人の中央でぶつかり合った。
その衝撃でだけでもまだ壊れていないコンソールのディスプレイにヒビが入る。
異世界の鬼が吠える。
宇宙の鬼も答えるように吠える。
三代目とエイリアン勇者との決着。
二人が戦ったあの日から、二人ともが邪魔の入らない一騎打ちを望んでいただろう事は、ヒマリにすら理解できた。
二匹の鬼は、心からうれしそうに笑っているようにも見えたからだ。
一合からやはり二人は同時に飛び下がり間合いを開ける。
開けながら左腕についた熱線銃を放つドライ。
その動きを見越していた三代目が鬼哮咆覇を放ち、打ち消した。
そこからはひたすらに二人は剣を切り結ぶ。
切り下ろし、突き、切り上げる。
その全てを両者ともが交わす。
当たっていないにも関わらず、その鋼の皮膚が裂けて血が噴き出すほどの剣速だった。
3メートルの鬼と2.5メートルの巨躯の宇宙人。
その両者ともが、それぞれの世界で身に付けた最高の剣技だった。
象ですら切り裂く豪剣が二人をかすめ続ける。
ただ一度の瞬きすらせずに、二人は剣技を尽くす。
彼らの攻撃がぶつかるごとに母船が揺れる。
衝撃が走る。
偶然か、必然か。
激戦だった。
ただの一撃でも当たるわけにいかない剣がお互いをかすめ続けている。
手が届きそうな距離での打ち合い、切りあい。
その距離でなければ、死間に立っていなければ目の前の鬼は倒せない。
絶対に当たらない。それほどの相手。
その死の間合いで紙一重でかわしあう二人。
万一にでも当たればそれで決着がつくほどの剛の剣。
それは、ほんの一分足らずの剣劇だった。
だが見ている三人は、完全に息を忘れて強く手を握りしめ、魅入っていた。
誰にも手出しはできるわけが無い。
楽しそうに戦う二人。
やはり、笑っていた。
本当に笑っていた。
お互いに、この瞬間のために何十年と修行し、何千人と戦い、その全てを倒してきたのだと気づいていたからだ。
宇宙で唯一のライバルを倒せる。
そんな最高に贅沢な時間を過ごしている事に二人は気づいていたからだ。
倒すべき魔王がいない世界の勇者は、今この相手にならどうなってもいいと心から思った。
お互いがお互いへの想いを籠めて剣を振りかざす。
オグルの全筋力を乗せた大上段からの振り下ろしを受ける宇宙人の勇者。
どすんと膝をつくドライ。
しかし地球にも異世界にも無い展延性を持った金属で作られた剣だからこそ、その豪剣を受けてなお折れる事はなかった。
膝をつくと同時に、隙を逃さず放たれた三代目の袈裟斬りだが、ドライもどれほどの修羅場をくぐり続けてきたのか。
その虎口にあってなお三代目の攻撃を見切り身をねじって躱しながら逆襲の剣を放つ。
クリスの悲鳴が上がった。
その剣を避けきれない三代目の太い指が3本、空中に飛び散る。
ついた膝のばねでドライが飛び下がり間合いを取り、三代目はそれを追うように前へと飛び出した―
その時。
母船が激しく揺れた。
ヒマリは戦う二人の後ろに浮かぶホログラムに目を奪われていた。
母船のすぐ横だろう場所に、光る巨大なサークルが―巨大な青い輪が出現したのだ。
同時に、地面が―いや、床がガクンと15度も傾く。
その一瞬の出来事に、バックステップをしていたドライが足を取られてかすかに体勢を崩した。
その隙とも呼べないわずかな隙を、オーガの剛腕で投げ放たれたラガフェルドの剣が回転しながら飛び、襲い掛かる。
―幾光年彼方からやってきた異星の強敵を襲い切り裂く。
限界まで肺の空気を使っていたドライは、声を出す事すらもなく胸元で両断されその上半身が後ろへと倒れ、落ちた。
ドライを切り裂いたラガフェルドの剣は減速する事なく、そのままメインコンソールに突き刺さる。
そして、ヒマリが目を奪われていたホログラムも消滅する。
安全な場所に離れ、ヒマリら3人はその二人の大男の対峙を見る。
ラガフェルドの剣を肩の上まで持ち上げ、ぶふう、と、シリアリス一人分ほどもの空気を肺に送り込む三代目の背中が、全てを捻り潰す筋肉が風船のように膨れ上がる。
エイリアン勇者ドライも、腰からずるり、と剣を引き抜いた。
禍々しいカーブを描くその大剣は、以前吸い損ねた三代目の血を求めてギラリと光る。
それを合図に二人の勇者がお互いに向けてずんずんと歩きはじめる。
一歩ずつ速度が上がる。
示し合わせたように二人は駆け足になる。
間にあるコンソールデスクをなぎ倒す。
弾き飛ばす。
二人は駆け出している。
三代目は走りながら、超合金の床を切り裂きつつ逆袈裟斬りを放つ。
ドライもまた、走りながら大きく振り下ろして迎え撃つ。
地球の全ての科学者が欲しがる最高のテクノロジーのつまったデスクを砕きながら、二つの大きな剣が、二人の中央でぶつかり合った。
その衝撃でだけでもまだ壊れていないコンソールのディスプレイにヒビが入る。
異世界の鬼が吠える。
宇宙の鬼も答えるように吠える。
三代目とエイリアン勇者との決着。
二人が戦ったあの日から、二人ともが邪魔の入らない一騎打ちを望んでいただろう事は、ヒマリにすら理解できた。
二匹の鬼は、心からうれしそうに笑っているようにも見えたからだ。
一合からやはり二人は同時に飛び下がり間合いを開ける。
開けながら左腕についた熱線銃を放つドライ。
その動きを見越していた三代目が鬼哮咆覇を放ち、打ち消した。
そこからはひたすらに二人は剣を切り結ぶ。
切り下ろし、突き、切り上げる。
その全てを両者ともが交わす。
当たっていないにも関わらず、その鋼の皮膚が裂けて血が噴き出すほどの剣速だった。
3メートルの鬼と2.5メートルの巨躯の宇宙人。
その両者ともが、それぞれの世界で身に付けた最高の剣技だった。
象ですら切り裂く豪剣が二人をかすめ続ける。
ただ一度の瞬きすらせずに、二人は剣技を尽くす。
彼らの攻撃がぶつかるごとに母船が揺れる。
衝撃が走る。
偶然か、必然か。
激戦だった。
ただの一撃でも当たるわけにいかない剣がお互いをかすめ続けている。
手が届きそうな距離での打ち合い、切りあい。
その距離でなければ、死間に立っていなければ目の前の鬼は倒せない。
絶対に当たらない。それほどの相手。
その死の間合いで紙一重でかわしあう二人。
万一にでも当たればそれで決着がつくほどの剛の剣。
それは、ほんの一分足らずの剣劇だった。
だが見ている三人は、完全に息を忘れて強く手を握りしめ、魅入っていた。
誰にも手出しはできるわけが無い。
楽しそうに戦う二人。
やはり、笑っていた。
本当に笑っていた。
お互いに、この瞬間のために何十年と修行し、何千人と戦い、その全てを倒してきたのだと気づいていたからだ。
宇宙で唯一のライバルを倒せる。
そんな最高に贅沢な時間を過ごしている事に二人は気づいていたからだ。
倒すべき魔王がいない世界の勇者は、今この相手にならどうなってもいいと心から思った。
お互いがお互いへの想いを籠めて剣を振りかざす。
オグルの全筋力を乗せた大上段からの振り下ろしを受ける宇宙人の勇者。
どすんと膝をつくドライ。
しかし地球にも異世界にも無い展延性を持った金属で作られた剣だからこそ、その豪剣を受けてなお折れる事はなかった。
膝をつくと同時に、隙を逃さず放たれた三代目の袈裟斬りだが、ドライもどれほどの修羅場をくぐり続けてきたのか。
その虎口にあってなお三代目の攻撃を見切り身をねじって躱しながら逆襲の剣を放つ。
クリスの悲鳴が上がった。
その剣を避けきれない三代目の太い指が3本、空中に飛び散る。
ついた膝のばねでドライが飛び下がり間合いを取り、三代目はそれを追うように前へと飛び出した―
その時。
母船が激しく揺れた。
ヒマリは戦う二人の後ろに浮かぶホログラムに目を奪われていた。
母船のすぐ横だろう場所に、光る巨大なサークルが―巨大な青い輪が出現したのだ。
同時に、地面が―いや、床がガクンと15度も傾く。
その一瞬の出来事に、バックステップをしていたドライが足を取られてかすかに体勢を崩した。
その隙とも呼べないわずかな隙を、オーガの剛腕で投げ放たれたラガフェルドの剣が回転しながら飛び、襲い掛かる。
―幾光年彼方からやってきた異星の強敵を襲い切り裂く。
限界まで肺の空気を使っていたドライは、声を出す事すらもなく胸元で両断されその上半身が後ろへと倒れ、落ちた。
ドライを切り裂いたラガフェルドの剣は減速する事なく、そのままメインコンソールに突き刺さる。
そして、ヒマリが目を奪われていたホログラムも消滅する。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
お気に入り・感想、宜しくお願いします。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる