少女は淑女で最強不死者

きーぱー

文字の大きさ
22 / 68
北ダンジョン編

22話 支部長ブライト

しおりを挟む
 メイドスに戻った俺達に加え、新たな仲間になったカリナの率いる黒ローブパーティーは、風音の鶴の一声によって冒険者登録を行っていた。
 カウンターに座った5人は登録証が来ると俺と風音が受けたギルド説明会がはじまる。5人は真剣に話を聞いていた。

 ▽▽▽

 ゼスと風音は、支部長より先に応接室のソファーに腰掛け来るのを待っていた。ゼスが持ち運んだ調査の戦利品と共に…
 
 支部長が、階段を駆け応接室のドアを開ける。

 丸い眼鏡をかけ、小太り気味だが感じの良い、黒髪短髪の50歳前後の男。メイドス・ギルド支部 支部長のブライト。

 「ゼス… やったのか!? 」

 ゼスは、テーブルの上に床に置いた土嚢袋を乗せて中身を広げた。

 「うおぉぉぉぉ! ゼス!! やったなゼス! やったぞぉぉぉ!! 」

 興奮する支部長。ゼスと風音は目を合わせ軽く笑みを見せる。

 ゼスは、8層からの道順を説明しながら、9層と石版の仕掛けや儀式に使われたとされる施設の発見と宝物庫について模写してきたマップを支部長に見せながら説明をする。支部長は、ゼスの報告を紙に綴ると一人のギルド職員を声を大にして呼ぶ。

 「エリック! エリックはいないか!? 」
 「今行きます 支部長」

 エリックと呼ばれる職員が1階のオフィスから駆け上がってきた。

 「どうしたんですか? 支部長 おおっ! なんですかこれは!? 古代通貨じゃないですか!? こんなに… 」
 「ゼスがやったんだよ! 北ダンジョンの攻略を!! 」

 エリックは、ゼスを見て挨拶をする。

 「ゼスさんおめでとうございます!! やりましたね! わたしはエリックと言います。事務処理専門で中々、挨拶が出来ませんでしたが今後もよろしくお願いします。」
 「ありがとう こちらこそよろしくお願いします」

 ゼスは、帽子を取り頭を下げる。すると、今度はミラが駆け上がってきた。

 「支部長! 大変です!! 北ダンジョンの8層魔獣のキングタイガーを倒してきた少年が… なんですそれは? 」
 「ああ ミラくん これは古代通貨だ ゼス達が北ダンジョンの攻略を成功させたんだ! これでメイドス・ギルド支部も盛り上がるぞ! 」

 「ぎゃああああ」

 バターン

 ミラは、その場で倒れてしまった。エリックが、慌てて起こすが起きないミラをみかねて支部長とエリックが隣の部屋にミラを運んで休ませた。

 「まったく… 今はそれどころじゃないのに エリック 大至急、ギルド本部に鳩を飛ばしてくれ! 早急の案件だ 頼む」
 「わかりました 支部長」

 ここでエリックが印を結び出した。

 「なんじゃ… 術者か」

 風音が言う。すると、支部長ブライトがゼスに訪ねる。

 「ゼス… この子は? あまり見かけたことないんだが… 」
 「一緒に同行したCランクの冒険者 かざねさんだ こう見えても16だからあまり子供扱いしないで欲しい なんせ、ビーノすら手も足も出ない実力者だから 下の冒険者達も見たはずだ」
 「この子が… 」
 
 支部長ブライトが息を飲む。

 「かざねさんがいなきゃ 今回の調査も成功しなかった 最大の功労者だよ」

 印を結んでいたエリックの横に隼が動物が現れた。隼はテーブルに留まり、支部長から預かった伝言メモをエリックが隼の足に結ぶ。すると今度は支部長がスキルで魔法を隼にかける。

 「何をしたんじゃ? 」
 
 風音は、ゼスに聞く。

 「支部長はビショップ アコライトの上位職業で 今、使った魔法は一度だけ攻撃を無効化出来る魔法をかけたんだ」
 「なるほどのう… 」

 エリックが隼に命令する。

 「ギルド本部だ 頼んだぞ! 」

 隼は、エリックの掛け声と共に応接室の窓から飛んでいった。エリックは隼が進む方向を確認すると仕事に戻る。支部長は風音達の迎いに座り。今後の予定を話し出した。

 「一応、国の研究機関から1名ギルド本部でダンジョン・遺跡部門から1名の計2名の学者が査定を行う事になる。プラス、国から雑兵が20名と荷馬車4台を率いて、メイドスに集合してから出発になるはずだ」
 「おいおい 支部長! 雑兵20名って… 宝を運ぶだけの人員かよ? 」
 「すまんな しかし、Sランク同等の実力者なんて軍に数名しかいないのは事実 誰が来た所で8層クリアーすらできないだろう」
 「確かにそうだが… 」
 「そこでだ! 今回の件とは別に、護衛依頼として受けてはくれないか? 」
 「報酬次第だろけど… いくら出るんだよ」
 「金貨300でどうだ? 」
 「500… 」
 「吹っかけてきたな… ゼス 350だ! 」
 「400… 400出せなきゃ置いていくぜ」
 「わかった! わかった金貨400で手を打とう… それなら査定から戻った時点で、うちから即支払う」
 「かざねさん 受けていいんだよな? 」
 「かまわん ゼスのやりたい様にやれ」
 「了解 ありがとう かざねさん それと支部長、戻った時の冒険者ランクについてだ」

 ゼスは冒険者ランクについて条件を提示する。

 「俺と彼女と、もう一人 託也をSSランクにしてもらう」
 「お前は分かるが… 彼女ともう一人? もSSランクか ちなみに今のランクはいくつなんだ? 」
 「二人ともCランクだ 冒険者になったのは2~3日前だな」
 「C… 2~3日前に冒険者登録!? 」
 「ゼス わしらはよい 問題があるならCのまんまでかまわんわ」

 支部長ブライトは驚きの連続だった。北ダンジョンの攻略成功に、こんな子供が関わっていたなんて…

 風音は、何時もの煙管を取り出し煙草を吸いはじめる。

 「支部長 灰皿はどこじゃ? 」

 ブライトは風音の態度に驚愕する。煙管を吹かし、話し方… 風音から滲み出るオーラは、とてもじゃないが16歳の女の子には到底見えなかった。ブライトは恐る恐る話しかけてみる。

 「かざねくんといったかな… 君は本当に16歳なのか? 」
 「そんなに わしが子供に見えるか? 」

 風音は、冷たい視線をブライトに送る。

 「よせ! 支部長 あまり歳の事を言うな… 」
 「嫌… 逆だよ 何十年も生きている… そんな気配を感じたんだ」
 「多少は判るやつがいたようじゃ こやつもはじめは肩を引くつかせて わしを笑っておったわ」
 「ちょ! かざねさん 謝っただろう 蒸し返さないでくれよ… 」
 「クックク ゼスよ わしは執念深いぞ そして支部長とやら お前の言った事は大きく外れてはおらね 灰皿はまだか? 」
 「あ… ああ」

 支部長は立ち上がり、隣の部屋から灰皿を取り風音の前に差し出した。

 「うむ… とりあえず、わしらは待機という事でいいんじゃな? 」
 「あ… ああ その通りだ 出来れば3日ほど街の中で待機してもらえるとありがたい」
 「どうする ゼス」
 「了解だ 1日ゆっくり休んで準備しよう」
 「うむ… 」
 「ゼス 朝と昼 そして夕方には顔を出してくれ」
 「了解 支部長頼んだぜ」
 「任せとけ! 」

 ▽▽▽

 風音とゼスは、応接室から出て1階に下りてきた。
 
 俺は、魔石交換の途中でいなくなったミラを暫く待っていたが、何時までも戻らない所に2階から降りてきた職員に交換の続きをしてもらった。
 そして、カリナ達は無事に冒険者登録を済ませた。

 俺達は、今後の予定を決めるために飯を食いながら会議をはじめる。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...