少女は淑女で最強不死者

きーぱー

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北ダンジョン編

28話 北ダンジョン再び(フォト)

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 俺達は、王都からの学者1名とカテリーナ、雑兵6名と早朝のメイドス・ギルド支部の前で合流していた。昨夜の件をブライトから聞いたのかカテリーナは風音を餓鬼呼ばわりをした謝罪をする。風音は気にしてないので仕事に集中してくれと発破をかけた。

 「さて、そろそろ行くかのう ゼス 皆に号令じゃ」
 「おう! みんなー 目的地に向かうぞ! 出発だ! 」
 「おー! 」

 俺達は、北ダンジョンに向けメイドスを出発した。

 当初の予定では、黒蓮を単騎で風音が使い俺とゼスはカリナ達の馬車に相乗りの予定だった。しかし、ゲイルとフランが特務機関に連行され広場に残された馬2頭を利用しない手はない。ゼスとカーベルが2頭の馬を利用した。
 俺は、馬に乗った事がなかったので遠慮させてもらった。小学一年生の時に、近所の遊戯施設で飼われていたポニーに跨ったのを"馬に乗った"とは言わないだろう… 
 俺は、ダムが手綱を握る馬車の荷台に乗り込んでいた。荷台には数本の釣竿と魚篭がぶら下がっている。横に座るアルマに釣りをするのか尋ねるとダムが釣り好きらしい。アルマは、調理された魚を食べるは好きだけど触るのは臭くなるので嫌だと言った。まるで、どこかの女子○生のようだ…

 …… …

 ゼスは、手綱を握る馬を風音に寄せて休憩を提案する。近くに川が流れる場所があるので食事と馬達に餌をやることにした。
 一行は、川辺で停車し馬に餌を与える。ゼスとカリナは食事の用意、王都からの雑兵達も食事の準備をはじめていた。手の空いた者は、薪を集めてゼス達の釜の脇に置いていく。皆が、忙しくしている最中に風音は川に入り石を退かして虫を取っている。小さな容器に虫を集めると、ダムの所に行き釣竿を荷台から降ろし餌をつけ川に投げ込む。風音は釣りをはじめた… 


 「釣れるの? 」

 俺は、風音の横に行き聞いて見ると

 「いいんじゃ… こうしてる時間がいいんじゃ 釣りというのは」
 「そんなもんなのか… 投網でもしたら たくさん獲れそうだけど」
 「そんなの釣りじゃない! 」

 そこには、腰に魚篭をぶら下げ釣竿を握るダムの姿があった。

 「え…!? 」
 「一本の糸を垂らし、魚との勝負を真剣に楽しむ! それこそが、釣りの醍醐味というもの」
 「へ… へぇ… そういうものなんだ? 」
 「クックク ダムは釣り好きじゃのう ダムよ 今度、わしに竿をこさえてくれぬか? 」
 「はい! 作らせてもらいます 風音様! 」

 ダムの、円らな瞳がキラキラ光っている様に見えた。

 「海に行きたいのう… 海は、暫く見てないからのう」
 「海? 海いいよね この件が終わったら行ってみない? 」
 「そうじゃのう 地図で見たが位置的に遠くもないからのう 行くか! 」
 「いいですね! 海釣りも楽しいです! 」

 海か… こっちの世界ではどんな魚が釣れるんだろうか、釣った魚を酢飯にに乗せて寿司なんかも食べてみたいな… そんな事を考えているとゼスが、飯が出来たと伝えにきた。
 俺達は、少し遅い朝食をすると風音がゼスに海の話をし出した。

 「のう ゼス 王都で依頼料を貰ったら海にいかぬか? 」
 「え? 海に… どうして?」

 ゼスは飯を食いながら問い掛ける。

 「わしは 暫く、海を見ておらん 久しぶりに見てみたいと思ってのう」
 「そういう事か いいさ そのまま海に行こう」
 「やった! 」

 俺とダムは大喜びをする。もちろん、他のメンバーも喜んでいた。

 「ゼスさん 酢はあるの?」

 俺は、さっき妄想した寿司が浮かんで聞いてみた。

 「す? すっ、て米酢のことか? 」
 「そうそう! 」
 「いくらでもあるぞ」
 「それなら寿司が食べられるよ! 」

 それを聞いた風音が食いついた。

 「寿司ー! 託也 寿司か!? うむ 海の魚を釣って酢飯を握り… もう、今から海に行かないか? 」
 「ちょ… 駄目だ かざねさん! 何言ってるんだよ… 」
 「やはり駄目か… 寿司食べたいのう」
 「頼むから託也も余計なこと言わないでくれ… 途中で海に行くとか言われたら… 」
 
 ゼスは、本気で心配している様子だ。
 俺達は、食事を済ませると再び北ダンジョンへと向かい出発した。

 ―― 数時間後

 途中、1回休憩を挟んで北ダンジョンに到着した俺達。入り口は直接来ていた雑兵によって封鎖されている。すでに、中にいた冒険者も帰還させたのだという。各自が準備し馬車を降りて大雑把な説明をゼスがする。
 説明といっても、雑兵の手押し車の連中は護衛の指示に従って速やかに移動をすること以外に説明もない。後は場面に応じた対応を取るだけだった。
 約20名の雑兵による手押し車と共に俺達、護衛部隊が一列に連なって移動を開始する。

 …… …

 8階層手前に到着。
 明らかに雑兵と学者… カテリーナに緊張が走る。すると、事前の段取り通りに風音が依代のクロを出す。クロは風音と同じくらいに大きくなるとチョロチョロと舌を出して風音を舐める。

 「クックク クロ あそこにいる魔獣を食って良いぞ 不味かったら吐き出して良いからのう では 行こうか」

 クロは、巨大化してキングタイガーの群れに突っ込むと2匹を纏めて飲み込んだ。残りの3匹がこちらに向かって飛び掛かる。
 クロは、尾を1匹に叩きつけ潰した。残りの2匹は風音が風穴でキングタイガーの頭を破裂させる。一瞬の出来事に、俺と風音とゼス、初回に透明化して俺達をつけていたカリナ以外は青褪めている。雑兵の中には悲鳴にも似た声を上げる者までいた。

 「そんな… こんな… いともたやすくキングタイガーを処理するなんて… 次元が違い過ぎる」

 カテリーナは、呟く。

 「託也 後は頼んだぞ クロは置いていくからのう」
 「うん わかった」

 8階層に残るのは、俺とアルマの2人、8階層から荷馬車までがカリナとカーベル、荷馬車が襲われないようにダムとマリーの契約動物ペルが見張る。

 「ね… ねえ たくや 冒険者ってこんなに怖い目にあうものなの? 」
 「えっ!? 」

 アルマが俺の横に来て、そんな事を言い出した。嘆きたくなる気持ちは痛いほど判かる… 

 「ま… まあ こんな事は滅多にないと思うよ ほら、ギルド説明の時色々聞いたでしょ? 薬草採集とかもあるし普段は魔物討伐して魔石の交換だけでも食べていけるんだし ね」
 「そうだけど… ここだけの話、蛇とか苦手なのよ… それにキングタイガーの討伐は、あたし達2人だけで本当に大丈夫なの? 」
 「ああ 大丈夫 アルマは放電系魔法使えるんだよね? それで1匹だけでいいから動きを鈍らせてよ」
 「うん わかった… 」
 「あっ… 沸いたね」

 アルマと話していると次の魔獣が沸き出した。クロは、気が付くと群れに向かって口を開け、そのまま3匹を飲み込む。口から漏れた1匹目がけてアルマが放電系魔法で動きを鈍らせたところに2本風穴で視界を奪う。もう1匹にも風穴を撃ち、視界を奪ったところで今回は腕風穴をキングタイガーの首に撃ち込む。
 首を無くしたキングタイガーは、その場で倒れる。残りも同様に腕風穴を首撃ち込んだ。うーん… こっちの方が楽だった、下に潜りこんでの腕風穴より確実に処理できる。

 「ちょっと… 凄いのね 託也 びっくりしちゃったわ… 」

 アルマは、目を丸くさせて俺を見つめてる。

 「風音に比べたら、こんなの全然たいしたことないよ それより、もったいないから魔石取っておこうか」

 俺は、十手を握りキングタイガーの魔石を取り出す。作業をみていたクロが取り出した魔石の上に大きな口を開けて何かを吐き出した。

 ゴロゴロゴロ…

 飲み込んだキングタイガーの体内に残っていた魔石を吐き出したのだ。

 「身体だけは溶けたけど魔石は溶けなかったのかな… でも凄いや クロ ありがとう」

 俺は、クロに礼を言うとチョロチョロと俺の顔を舐め出した… 
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