少女は淑女で最強不死者

きーぱー

文字の大きさ
31 / 68
北ダンジョン編

31話 王都(フォト)

しおりを挟む
 俺達は、ゼスの家に着くと帰り際に露店で買った串肉や魚を食べ、各自部屋で眠りについた。

 ―― 夜中

 がっつり、睡眠を取った俺達はギルド裏の広場入り口に馬車を止めてギルド1階の長椅子に座り待機する。俺は、様子を見に応接室に行ってみた。
 
 「お邪魔します… 」
 「お 託也 来たか」
 
 ゼスが、ソファーの端に座り声をかけてきた。その横には風音が横になり寝ていた。

 「ゼスさん ちゃんと寝たの? 」
 「ああ さっき起きたばかりだ」
 「風呂でも入ってきたら? まだ時間あるし」
 「そうだな… 温泉に浸かってくるかな」
 「わしも行く… 」
 「風音 起きてたの? 」
 「いや… 寝ていたが お前達が建物に入った足音で起きた」
 「あ… ごめん」
 「よい ゼス みんな起こして温泉に行くとしよう」
 「おっけー 託也達はうちの風呂入ったんだよな? 」
 「うん みんな入ったよ 俺達が見張るから行ってきてよ」

 ゼスは、迎いのソファーで横になるトーマスと隣の部屋で寝ていたアレクシスとカテリーナを起こして温泉に向かった。支部長は心配だからとギルドで待っているという。俺達は交代で広場の見張りをする事にした。大人数で集まっていても逆に目立つので約1時間の3人交代。まずは、俺とアルマとマリーで見張りについた。広場の中には、クロもいるので馬車に座って様子を見てる事にした。何事も無く時間が過ぎていく…
 
 ▽▽▽

 露天風呂では、風音とカテリーナが湯に浸かったところだった。
 前回の露天風呂で、見たら殺すと言われ後ろを向いたまま振り向けないルールは同じであったが、風音は温泉に浸かりながらゼスの前に移動する。

 「な… なんで来るんだ!? かざねさん! 見えちゃうから駄目でしょ! 」

 すると、風音がくりると背中を向けて

 「肩が凝ってしまってのう… 辛いんじゃ ゼス 肩を揉んでくれ」
 「えぇっ!? 駄目だ! 」

 ゼスは、顔を真っ赤にして全力で拒否する。すると、風音はゼスの手を握り自分の肩に置く。

 「ほれ 揉んでくれ」
 「… 」

 諦めたゼスは真っ赤になりながら風音の肩を揉み解す…

 「うむ… 気持ちいいのう わしの専属肩揉みにしてやろう ゼス」
 「ほんと… 勘弁してよ かざねさん…」
 「クックク」

 その様子を、遠目で眺めるカテリーナ… 父ブライトが、言っていた言葉が脳裏に浮かんだ。『ただの餓鬼に見えるのか? よく見てみろ… 』確かに…
見た目は幼くても、別物。圧倒的な力だけでなく、人心の掌握、先見の明、経験値、全てが桁違いに思えた。

 「そうじゃゼス カリナ達に金貨100渡してやれ わしらは100づつ 残りはそうじゃな… 武具やマジックアイテムに使うのはどうじゃ? 」
 「やっぱりそうか 同じ事考えていたよ かざねさん」
 「うむ わしと託也に関しては武具など必要ないが カリナ達の底上げに使っておきたいのう… 」

 ―― 数時間後

 風音達は露天風呂から戻って応接室で寛いでいたが、出発するため動き出した。空は、まだ暗いが1時間も経てば明るくなってくるだろう。
 俺達は、メイドスから西へ向かいマリル付近で南下するコースを使う。特に問題無く進む一行、単騎の馬が荷馬車を挟み護衛していく。

 …… …

 ゼスが、馬を寄せて風音に近づく。

 「かざねさん 見えてきたぞ あそこが王都だ! 」

 風音は、ゼスの視線の先を見ると高い塀に囲まれた巨大な都市、王都が姿を現した。その広さは、メイドスの5倍はくだらないだろう。
 
 その時、正面から3頭の馬が一行に近づいてくる。口元に布を巻き付けた特務機関の連中だった。3人は、一行の手前で逆方向に向き直して先頭付近にいた、ギルド本部副本部長カテリーナに話しかけていた。話を聞き終えたのかカテリーナがゼスの元まで下がってきた。馬に乗りながら特務機関の伝言を伝える。

 「ゼス! ここから特務も護衛に参加するらしい 王都付近の策敵は済んでいるらしいから3人の後に続いて欲しいとの事だ」
 「わかった」

 一行が、王都に近づくと特務の人間が脇道から合流してくる。合流した特務員は、荷馬車の横に付き護衛していく。

 王都の、南門が目視出来る距離まで来ると減速の指示が出た。このまま、王城まで進むようだ。南門の検問は特務機関とギルド本部で事前の打ち合わせが出来ていたのであろう、素通りであった。検問中の強奪を回避する策なのだろう。

 真っ直ぐ南下した王都中央には、一際目立つ城が聳え立つ。周囲の建物とは違い、水が流れる堀と高い壁に囲まれた金殿玉楼。王家の旗なのか国旗なのか、判らないが市中の道路に旗がはためいている。

 一行は、市中を抜けて王城前の跳ね橋で停止命令を受ける。そこには4名の門番が待機していた。特務機関の人間が説明すると、荷馬車と王都の学者アレクシスが入城を許される。特務機関の1人がカテリーナに今後の指示をする。


 「お疲れ様でした! 今後の指示はギルド本部長に直接致します。関係者は連絡が付くようにしといて下さい。」
 「わかりました ご苦労様でした。」

 そう言って、特務機関員と財宝を載せた荷馬車が次々に王城へ入っていった。王都学者のアレクシスも後に続く。

 「聞いての通りだ ゼス 一度、ギルド本部に行こう」
 「わかった カテリーナ」

 こうして、俺達は王都に財宝を運び査定を待つだけとなった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...