少女は淑女で最強不死者

きーぱー

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王都編

38話 海旅行 その1(フォト)

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 耳を澄ますと、波音と海鳥が鳴く声が聞こえてくる。布団の中で静かに聞いていると近くでカチンと音がする。その音は、ゼスが使っているライターの音だった。ゆっくりと、目を開けていくと辺りは薄白く、まだ日の出前の朝だった。俺は、布団から起き上がると音がしたバルコニーへ向かう。

 そこには、備え付けてある椅子に座り煙草を吸うゼスの姿があった。俺に気付いたゼスが隣に座れと言う。

 「ゼスさん おはよ… 」

 寝起きの俺は、呆けた挨拶をする。

 「早いな おはよう」
 「何してるの? ゼスさん」
 「ああ これから日が昇る 綺麗だから見るといい 結構、感激するぞ」
 
 ゼスは、そう言いながら煙草を咥え浜辺を指差した。

 「ん!? あ… ダム もう釣りしてたのか 早っ… 」
 「ダムは釣り好きなんだな ハハ 」
 「ふむ… 釣れているのかのう」
 「風音… 」
 「かざねさん 起きたのか おはよう」
 「おはよう 風音」
 「うむ おはよう しかし、気持ち良いのう ここは」

 俺とゼスの話し声で起こしてしまったのか、風音が起きてバルコニーの椅子に腰掛ける。時折、吹く潮風を目を閉じて受ける風音は鼻から海の香りを楽しんでいるように見えた。

 「風… 風音様 おはようございます」
 「お… おはようっス」

 カリナ達が起きてきた。寝癖をつけ酷い有様だ。

 「どうしたんですか? こんな早くに ダム… 何をしてるんだ!? 」

 カリナがダムに気が付いた。

 「ダムは釣りじゃ あの辺だとカレイが釣れるかもしれんのう」
 「カレイ?… 」

 ダムは、砂地に向かって仕掛けを投げ込み釣りをしていた。

 「ダムのいる先は岩場になっていて 素潜りして銛で魚を獲れるぞ」

 ゼスが、その方角を指差し立ち上がる。

 「朝は、飯が出るから時間になったらこの部屋に戻ってきてくれ」
 「ゼスさんは何処にいくの? 」
 「ああ 表で魚や料理の用意をしておくよ 見ろ 日が昇るぞ」

 東の水平線が、段々と明るさを増し辺りを日の光が照らしていく。海は太陽を反射しギラギラとしだし、気温も同時に上がっていくのが解った。俺達は暫く、その光景を楽しんでいた。


 俺は、ゼスについて手伝いをはじめた。まず、向かったのが宿屋の主人の所だった。ゼスは、大き目の箱を借り主人の後に続く。主人の案内でついて来た場所は大きな倉庫であった。そこには、入り口以外の部分が氷漬けになっていたのだ。ゼスの説明では、漁村に住む何人かの魔法スキル持ちが氷結系の魔法で凍らしていくというのだ。これを砕いて魚の鮮度を保つのだという。

 「じゃあ 少し貰っていくよ」
 「あいよ 少ししたら飯を運ぶから待っててくれ」
 「ああ 了解」

 俺は、箱に砕いた氷を詰めて浜へ運ぶ。

 「ダム おはよう 釣れてる? 」

 俺は釣りをしていたダムに声を掛けた。

 「おはよう たくや 釣れたよ! 結構、良い型だよ それ氷? 」
 「ああ 魚篭から移そうか? 」
 「うん 頼むよ」

 俺は、ダムの釣った魚を魚篭から箱に移し換えゼスの元に持っていく。ゼスは数本の細長い杭を差し上の部分に大きな布を被せた。即席の、日除けテントを作ったのだ。

 「託也 氷を長持ちさせる為に、影になっているところに箱を置いてくれ」
 「了解」

 俺は、ゼスの指示に従って影が出来た場所に氷が詰まった箱を置く。

 「あとは… そこでいいか 岩場の上に、まな板を用意して捌いていくか」
 
 ゼスと俺は、一旦馬車に戻り調味料や器具を運び出す。俺は、王都で買った寿司桶に代用できる器も持っていく事にした。
 箱を置いた場所に戻ると、宿屋の主人が朝飯が出来たとダムに伝えて戻ったという。俺達は、飯を食べに部屋に向かう。

 …

 俺は、飯を食いながら風音に氷の話した。

 「倉庫全体が氷漬けになっていて凄かったんだよ」
 「ほほう 冷凍庫か… アルマ その氷結魔法は使えるのか? 」
 「はい 使えます」
 「メイドスの皆もそうしてるはずだ 住民が暮す辺りに倉庫を借りて氷漬けにしている 住民達は必要な分を砕いて各家庭に持ち帰っているよ」
 「なるほどのう… 」
 「村では、人口も少ないし氷結させる者が小数の場合は手当てを出している村もある メイドスや各都市だと氷結系の魔法を使える者は多いから氷代なんて取る者はいないよ」
 「持ちつ持たれつじゃな」
 「そういう事だ どれ 託也行くか」
 「うん 風音達は海こないの」
 「すぐ行く 先に行っておれ」
 「了解 ダムが釣った魚もあるし 昼は寿司が食えるよ! 」
 「楽しみじゃのう! 」

 食事が終わると、ダムはスタスタと宿を出て釣りを再開する。
 俺はゼスに頼んで銛の手配をしてもらった。銛を使うのは初めてだったが、伸縮する太いゴムのような物を手に巻き付けて銛全体を自分の身体の方に引き寄せて握っておく。手を離せば、銛が前進して獲物を突き刺す仕組みだ。
 いかにも、『漁』をしている雰囲気になれる。俺は岩場の影で、王都で買っておいた海水パンツに履き替えて、そのまま岩場を伝って海に潜る。
 
 海水は、青く透き通り太陽が差す光が海中の様子を鮮明に写しだす。俺は、小さな魚には目もくれず刺身に出来そうな大きさの魚だけを狙って銛で突いていく。
 ゼスは、俺が獲ってきた魚を3枚に下ろして一口大に捌いていく。

 「おいおい 託也 あんまり今から獲ってくるな 昼まで、まだまだ時間があるんだぞ」
 「うん 一度上がるよ」

 俺は、平べったい皿に氷を細かく砕いた上に乗っている刺身を摘み醤油が入った小皿につけてペロリと食べた。
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