少女は淑女で最強不死者

きーぱー

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閑話

閑話② 風音の掛け軸(フォト)

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時間設定は、風音がブライトに頼んでおいた『屋敷』が出来た後です。
風音の寛ぎ空間『離れ』での話です。
風音は習字を書く事に、ご執心です。書いた習字を掛け軸にし落款まで押す
力の入れよう。ある日、パーティーメンバーそれぞれに四文字熟語で書いた
掛け軸を渡します。しかし、1つだけ四文字熟語の掛け軸じゃありませんでした…
==============================================
 
最近の風音は、習字に凝っていた。
 部屋には1枚の掛け軸が垂れ下がっている。落款まで押してある…


 『明鏡止水』 
 邪念ややましさがなく、落ち着き払っているという意味のこと。
 誰に対して書いたものなのか、こう有りたいと願望を書いたのかは本人しかわからないが良い四文字熟語だと思った。


 先日、酒の肴が部屋にないと駄々を捏ねる風音。出来た干物を、風音の寛ぎ空間『離れ』に、届けたときのことだった。
 テーブルに数本の掛け軸が置いてあった。

 自分の名前が書かれた、掛け軸を手に取ると小さなメモ書きに四文字熟語の意味も書いてある。1つ、四文字熟語じゃないのもあった気が…

 「ん? 託也 どうしたのじゃ? 」
 
 奥の部屋から出てきた風音。俺は、干物が出来たと風音に手渡す。

 「おおっ これは良い 美味そうじゃのう」

 今にも涎を垂らしそうな顔をしている。

 「ねえ これは何? 」
 「ああ 掛け軸か 皆に渡そうと思ってのう むこうに戻ったら、取りに来いと伝えてくれ」
 「風音が書いてくれたんだね ありがとう じゃあ戻るね」

 俺は『屋敷』に戻ると調理場で魚を漬け込んでいるゼスに話した。

 「かざねさんが?… 」
 「うん 渡したい物があるって」
 「何だろう… 」

 ゼスは、自前のエプロンを脱ぎ『離れ』に向かった。
 玄関を開けると、風音は酒を飲みながら干物を咥えていた。

 「おっ ゼス来たか 上がれ! 美味いぞ」

 ゼスは部屋の中を見渡した。『離れ』が出来てすぐの時に来た以来。物も増えて、この世界では知られていないインテリアが部屋を覆い尽くす。

 「なんじゃ? 飲め」
 「あ… ああ かざねさん これらは、かざねさんがいた世界の物なのか? 」
 「うむ まあ、職人に教えてこっちで作って貰った物じゃがな」
 「あれなんかいいなあ」
 
 ゼスは風音の後ろに飾ってある掛け軸を指差す。

 「クックク そうであろう そうであろう! そう思って ほれっ ゼスの掛け軸じゃ 持っていけ」
 「かざねさんが、書いてくれたのか? 」
 「うむ お前達一人一人にな お前の四文字熟語は『一念発起』じゃ」
 「いちねんほっき? 」
 「うむ 意味は、目標を成し遂げると強く決意すること。じゃ まさに、ゼスにピッタリの言葉だと思ってのう」
 「ああ! 気に入った ありがとう かざねさん! 」
 「うむ これでお前の旅は終わりではなかろう 他かが、ダンジョン1つ攻略しただけで満足なのか? その先があるのなら強く決意した日の事を思い出せ わしらと、お前が出合った日の事をな」
 「ああ… まだまだだ 俺の旅、俺達の旅はこれからだ! 」
 「うむ… あっちに戻ったら掛け軸を取り来いと伝えてくれ」
 「わかった じゃあ戻るよ」

 ゼスは『屋敷』に戻るとマリーが散歩から帰ってきた。

 「ただいまー あれ? ゼスさんどうしたんです」
 「おかえり かざねさんが呼んでたぞ みんなはどうした? 」
 「カリナとアルマは 今、戻ってきます カーベル達は何してるんだろ… わかんないです てへっ」
 「それじゃあ、3人で『離れ』に行くといい」
 「わかりました あっ ゼスさん洗濯物出しといて下さいね」
 「わかった」

 マリー達は3人揃って『離れ』に向かった。

 玄関に立つとカリナが声を上げた。

 「風音様 ご用があると聞いたのですが」
 「おお カリナか 上がれ」
 
 中から風音の声がした。
 玄関を開けると、風音は酒を飲みながら干物を咥えていた。

 「おっ来たか 上がれ そこに座れ」

 カリナ達は、『離れ』の中を見渡しながら風音の正面に座る。

 「風音様のいた世界の物ですか? 」
 「形は、そうじゃ こっちの職人に教えて作らせたんじゃがな アルマはこういうのに興味あるのか? 」
 「はい 凄く素敵だと思います」
 
 アルマが、素敵と言った物とは古箪笥(風)であった。多くの金具を使い、大小様々な引き出しが付いている。サイドボード、ローボード、階段箪笥といった和風アンティーク(風)な箪笥たちが所狭しと並んでいた。
 『離れ』の家具は全て、後から和風アンティーク(風)に変更されていた。

 「人によって好みは色々じゃからのう それより… これじゃ 掛け軸をお前達にやろうと思ってのう」
 「「「掛け軸ですか?」」」
 「うむ わしの後ろに掛けてあるじゃろう こういうのを一人一人に書いた わしがいた世界では四文字で色んな意味を伝える事が出来る まずは、マリーからじゃ 」
 「ありがとうございます! 」
 「うん マリーよ だいぶ挨拶も元気になったのう 良い事じゃ マリーに書いた四文字熟語は『純情可憐』 意味は、心が純粋で、意地らしく可愛らしいさま。じゃ まあ 見た目通りの言葉じゃが… わかっているなマリー 冒険者として生きていくのであれば、自分の身は自分で守れるようにならんとな 精進するんじゃぞ」
 
 「はい! 風音様」

 「よし、次は… アルマ! お前の四文字熟語は『容姿端麗』じゃ 意味は、顔や姿が整い、美しいさま。じゃ 顔もスタイルも良いお前じゃ 次は、更に心も美しくなれ お前ならもっと良い女になれる 絶対じゃ、わしが保証しよう そこさえクリアー出来れば もしかしたら、もしかするかも知れんぞ クックク」

 「はっ はい!! ありがとうございます 風音様! 」

 「最後はカリナじゃな お前は『才色兼備』 意味は、優れた才能と美しい容姿の両方を持っていること。じゃ お前は、可愛いし冒険者としての才能もある。ただ、お前は自分自身に自信を持てないところがあるのう 自分が持つ、スキルや職業にもっと自信を持て お前は1人ではない わしらが付いておる つまづいた時には遠慮せず相談しろ いいな? カリナ」

 「はい! ありがとうございました 風音様! 」

 こうして、女性陣に掛け軸が渡された。

 「ダムとカーベルはどうした? 」
 「何処かに遊びに行ってると思うんでけど… まだ、帰ってません」
 「そうか じゃあ渡しといてくれ 読めないメモは託也に読んでもらってくれ」
 「はい 預かって行きます では、失礼します」
 「うむ みんな頑張るのじゃぞ」
 「「「はい!」」」

 俺は部屋に戻り筋トレ中だった。
 鍛冶職人に頼み、ダンベルを作成して毎日トレーニングを行っている。

 コンコン

 部屋をノックする音がした。

 「開いてるよー」

 俺は、トレーニングを続けながら声をかけた。

 「ちょっといい? たくや」

 マリーがドアを開け話したいという。

 「うん いいよ 入ったら? 」
 「はーい お邪魔します みんな入ろう」

 カリナとアルマも一緒だった。

 「みんなどうしたの? 何かあった? 」

 話を聞くと、風音の所から掛け軸を貰って戻ってきたところだと言う。

 「ああ みんなも貰ったんだね 何て書いてあった? 」

 …

 「なるほど… 一人一人に、ピッタリの言葉だと思うよ」
 「それで、ダムとカーベルのを預かってきたんだけど 託也に読んでもらえって 風音様が」
 「ああ そっか 読めるの俺だけだもんね 誰か控え取ってくれる 俺が読むから書いておいて」

 アルマが紙とペンを取り出した。

 「それじゃ… ダムからいこうか ダムの掛け軸にかかれいる言葉は『不言実行』 意味は、文句や理屈を言わずに、信ずることやなすべきことを黙々と実行する。 うん! まさにダムって感じだ 釣りしに行くときみたいだ」

 「よし 次はカーベルね 掛け軸に書かれた言葉は『仏恥義理』 意味は… んー 意味は、色々とぶっちぎっていること。 うん ちょっと意味はわかんないけど 頑張れって事じゃないかな? 」

 アルマは、通訳を書き終えると俺に向かって言った。

 「たくや… わたしも頑張るから! 」
 「う… うん 頑張ろう」

 何の事だかサッパリわからなかった。

 ―― 数日後

 カーベルの部屋を横切った時だった。開けられた部屋のドアから覗くと壁に掛け軸が掛けられていた。
 カーベルは、腕を組み満足そうに掛け軸を眺めていた。

 その掛け軸は、逆さまに掛けられていた…

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