少女は淑女で最強不死者

きーぱー

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地下遺跡編

63話 古代文献(フォト)

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 俺達は、ゼスの作ったシチューを食べ終わると後片付けをはじめる。
 テントの外で洗い物をする俺達。洗い物に水は必要だ。

 調査に入る前に、トーマスが用意しておいてくれた携帯用樽3本に水を入れて、ここまで背負ってきたのだ。1本の容量は15リットル、計45リットルの水を準備してきたのだ。

 溜まり水を、利用する事も考えたが未開拓の地で水質検査もしていない水の利用はリスクが大き過ぎる。万全を期するため大変だったが携帯用樽で、きちんとした水の確保をしたのだった。

 「かざねさん 少しやろう」
 「うむ トーマス 飲むぞ」
 「ああ ありがとう」

 後片付けが終わりテントに戻ると風音達が飲みはじめるところだった。

 「戻ったな お前達も飲め カーベルはこれ好きだろ? 」
 
 ゼスが、コロク村が原産の酒をバッグから取り出し瓶を渡した。風音達はメイドスの酒を飲んでいる。

 「おっ! 兄貴ありがとうッス! これイケるんだよ」
 
 「調査中は寝酒程度にな 体調が悪くなってはしょうがないからのう」

 風音が念の為飲み過ぎないように注意を促す。

 「「「「はい! 」」」」

 「ついでじゃ 班分けをしとくかのう」
 「ああ そうしよう」

 風音班 トーマス、カリナ、カーベル、アルマ
 ゼス班 託也、マリー、ダム、ヴェロニカ

 「どうじゃ? 感知は、わしとゼスが分かれる ランタンはヴェロニカとアルマに任せるように分けたが問題はあるかのう? 」
 「良いと思うよ 魔法陣とか出てきたとしても、兄貴とトーマスさんが分かれているし」
 「うむ 明日は、この班に分かれて調査するぞ」
 
 寝酒程度と忠告するも、一杯口にすれば何時もと変わらず…
 瓶が空になるまで飲んでいた。

 念のため、マリーがペロを召喚し来た道側の番をさせていた。階段上には、風音のクロを配置しておく。

 ―― 次の日

 「皆… 起きるぞ」

 寝起きの風音が、テントの中で声をかけた。トーマスとゼスが、風音の声に反応して起き上がり3人は、テントの外へ顔を洗いに行く。

 物音に気が付いた俺達も次々と起きだした。
 ゼスとカリナは、顔を洗うと火を起しはじめる。

 カリナは、お茶の用意をしてゼスは餅を焼きはじめた。
 餅は、この世界でも古くからあるとゼスは言っていた。冒険者達の間でも水が確保出来ない場合や、節約のために乾燥した餅を携帯して食事としているのだという。
 
 「テントはどうするの? 回収して持っていく? 」
 「そうじゃのう… それは、上の左右1ヵ所ずつの調査が終わってからじゃな それまで、最低限必要な物だけ持って上に向かうかのう」

 食事が終わった俺達は、最低限の荷物を持ち階段を昇って行く。

 階段の最上階を昇ると風音の依代クロが待機していた。
 昨夜は何事も無かった様子だ。

 「荷物は、ここに置いとけ ここが待ち合わせ場所じゃ」
 「「「了解」」」
 「わしの班は左の通路を探ってくる ゼスの班は右を頼むぞ」

 ここでヴェロニカが支援魔法をみんなに回す。

 「よし 行こうか」

 ゼスを先頭に、ヴェロニカが続く。俺達も離れる事なく後に付いて行った。

 通路は細く、大人2名が通れるくらいの幅だ。所々で、通路の片側が広くなり退避場所のようになっていた。
 ランタンを照らすと、通路の壁には同じ高さの擦り傷が付けられていたのが解った。両壁に同じ高さ… その答えはすぐに見つかった。

 一直線に続いていた細い通路。突き当たりを、右に曲がる通路が手前から確認できた。先頭を歩くゼスは右に向かうと立ち止まった。
 倍ほどの広さになった通路が現れた。通路の端には古くなった手押し車が置かれていたのだ。そして、通路の突き当たりにドアが1枚…

 手押し車の角は擦れて丸みを帯びていた。
 通路にあった擦れ傷の高さと一致していたのだ。

 「これが、通路の擦れ傷の正体か」
 「何かあったのか? たくや」
 「うん ここに来るまでの通路に同じ高さの傷が壁にあったから 何だろうなって思っていたんだよ ここに何かを運んだのかも」
 「なるほどな… これからは、何か気が付いたら教えてくれ みんなもな」
 「「「了解」」」

 ゼスは、そう言うと通路の突き当たりにあるドアに近づく。
 ドアには、ビッシリと魔法のような文字が刻まれている。
 ランタンを照らし調査するゼス。

 ゼスはバッグから解除魔法が施されているマジックアイテムの紙を数枚取り出した。

 「今から解除してみる 感知はされていないが念の為 戦闘準備をしてくれ」
 「「「了解!!」」」

 俺達は念の為、戦闘準備に入った。

 「いくぞ! 」

 ゼスは、ドアに刻まれている封印魔法と思われる場所に解除魔法の紙を貼り付ける。

 ボワッ

 マジックアイテムは焼けて消えてしまったのだ。

 「なっ!? なんでだ なんで失敗なんだ!? 」

 失敗した事に驚きと混乱を隠せないゼス。すぐに気を取り直してドアにランタンを近づけて再確認する。ここでヴェロニカがゼスに話しかける。

 「ゼス これは2ヶ所同時じゃない? この線を見て ここと… ここ 繋がっているわ 魔法式が複雑で解りづらくなっているけど」
 「なに!?… うん… ああ!? 繋がっている これは同時解除!? 」

 「ダム ランタンを頼む 手元を照らしてくれ」

 ゼスはダムに、ランタンを預け2枚の封印解除の紙を取り出した。

 「ヴェロニカ 下を頼む」
 「ええ いいわ! 」
 「同時にいくぞ ゼロで貼り付ける いいな? 」
 「何時でもいいわよ! 」

 ゼスが、カウントを始めた。

 「3 2 1 ゼロ!! 」

 「「ビタン」」

 同時に、解除魔法の紙がドアの2ヶ所に貼り付けられた。
 数秒後、解除魔法が施されるた紙から黄色い光を放ちはじめた。
 2つの封印魔法陣から、白い光が漏れ出しドアに書かれていた魔法式の線が交差した。すると、ドアから音がした。

 カチャ

 解錠の音だ。ゼスが取っ手を摘んでドアを引いた。
 厚みのある鉄製のドアが開く。

 ギギギィィ…

 どうやら、密閉空間。個室になっているようだ…
 暗闇の個室から、ランタンの明かりが照らされて埃が浮遊しているのが解る。
 
 ゼスはダムから、ランタンを預かり個室の中を照らした。

 「こ… これは!? 」

 個室の中には、壁際に本棚が設置されギッシリと挟みこまれた本の山。
 古い書物のようだ。
 

 ゼスは棚から本を取り出しパラパラとページを捲りだした。

 「古代文献… 全て古代文字だ!! 」
 「本当!? ゼス 大発見よ!! 」
 「兄貴 古代文字読めるの? 」

 ゼスは、遺跡調査で必要な古代文字を嗜み程度には覚えたのだという。
 ゼスとヴェロニカは、本棚から次々と本を取り出しページを捲っていった。
 
 俺には、古代文献の価値がどれほどの物なのか見当もつかなかった…
 ただの古い本。その程度の認識しか無いが読める人が読めば、有益な情報が手に入るのだろう。現在の、人々が知らない何かが記されていたりロマンと言えばロマンなのだろうが…
俺にとっては、宝物の方が解りやすく感じた。
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