66 / 68
地下遺跡編
66話 至福のひととき
しおりを挟む第4の遺跡に侵入した俺達は、内部の石棺の中から宝物を発見。
トーマスの警護に付いた、カリナとアルマの帰還が未だだったために北ダンジョンでもやった"お約束″1人1品を行っていなかった。
北ダンジョンで宝物を見つけた時、俺は自分の手にしっくりきた十手に良く似た武器を選ぶ。ゼスは、高さ4~50cmの変な形をしたオブジェを選んだ。
風音は、数点の宝石やアクセサリーを袖口に放り込んでいたような…
今回も、カリナとアルマが戻り全員揃えば"お約束"をするのだという。
一晩明けて、朝食を済ませた俺達はもう1つの感知先に行くか話し合いとなる。
結論は、すぐに出た。
飲料水や食料の備蓄が、心許ないと理由から現状待機とし猶予は1日。
今日1日、カリナとアルマの帰りを待ち合流出来なければ明日の朝から連絡キャンプへと一時帰還する事になった。
―― 昼過ぎ
「やっぱ何人かで、テント張った辺りまで迎えに行かない? 」
「うむ… 置手紙をしてこればよかったのう わしとマリーで行くか」
風音とマリーの2人は、来た道を戻る。
第3遺跡の手前で、風音が複数名を感知した。
「風音様 カリナとアルマがこっちに向ってます! 」
マリーが大きな声を出し知らせる。古代指輪で確認したようだ。
第3遺跡のフロアーに足を踏み入れる風音とマリーに駆け寄ったカリナとアルマが合流した。
「「風音様! マリー! 」」
嬉しそうに声をかけてくるカリナ達。後を追うようにトーマスが合流。左の通路側には、トーマスが連れてきた冒険者達が手押し車で古代文献の運び出しを行っていた。
「かざねくん! 合流出来て良かった 他の皆は? 」
「皆無事じゃ カリナ、アルマ 警護ご苦労じゃった 一先ず説明じゃ」
……
「この先に、第4と第5の遺跡… 凄いじゃないか!? 」
「うむ 石畳の道を約30分歩くと崖に着く その下に遺跡が2つじゃ」
「遺跡の中は確認はしたのかね!? 」
「手前は進入して確認済みじゃ」
風音は、カリナ達を見てニヤリとすると話を続ける。
「出たぞ 財宝が! 」
「「「おおおぉぉ!! 」」」
「やったな! かざねくん」
「うむ それよりトーマス 水と食料は? 」
「もちろん持ってきた! ちょっと待ってくれ」
トーマスは、連れてきた冒険者達に指示を伝えて戻ってきた。
「とりあえず、古代文献は外に運び出して保管する かざね君達は第4遺跡で待って居てくれ 搬出が終わり次第合流する」
風音達は、トーマスを残し第4遺跡に戻る事にした。
―― 第4遺跡
「戻ったぞ」
「「「おかえりなさい! カリナ、アルマ おかえり! 」」」
俺達は合流したカリナとアルマを労う。
「カリナ アルマ お疲れ様」
「とりあえず中で休むといい」
ゼスが、カリナとアルマにお茶を入れる。
…
「さて、かざねさん そろそろ決めるかい? 」
ゼスが目を輝かせて言った。俺達の目も爛々としている。
「そうじゃのう… "お約束″の1人1品の時間じゃ!! 」
「「「よっしゃあー!! 」」」
カリナは、北ダンジョンで"お約束″の1人1品を知っていた為、皆と一緒に声を出して喜んでいたがアルマは何の事だか解らず、はしゃぐ皆をキョロキョロ見回していた。
「今回は、そうじゃのう… カリナ お前達が一番に選ぶといい」
「「「え!? いいんですか? 」」」
「良い良い わしらは後で良い お前達は色々頑張ってくれたからのう 北ダンジョンの護衛からここまで、よくやってくれた かまわんのう? ゼス」
「ああ! 俺達は最後でいい」
俺達は、フロアーの奥にあるステージの上に横たわっている石棺の中へ入る。
まさに、至福のひととき…
俺達は順に宝を手に取っていった。
「あまり目立つ物は止めておけ」
風音の一言で、今回の1人1品はアクセサリー系となった。どちらにしろ武具は少なく王都で新調したばかりの俺達は興味がなかった。
今回は、衣服の下に隠れる腕輪や首輪を選択。
俺も腕輪を選択してシャツの中に隠した。
ゼスと風音を見ると、ゼスがまた変なオブジェを手に取り風音に頼んでいる。
「頼むよ かざねさん 何時ものように袖口に」
「ふむ わしを荷物持ちにするとは えらくなったのう ゼス」
「勘弁してよ… かざねさん」
「まあ 良かろう 見つかったら元も子もないからのう よこせ」
風音は、ゼスが手渡した変なオブジェを袖口の中に入れる。
「みんな決まったら上がれ! 次ぎの遺跡に向う準備じゃ! 」
「「「おー!! 」」」
俺は見逃さなかった。
風音が涼しい顔をして2つ、3つ、と宝石を袖口に入れたのを…
俺の視線に気が付いた風音が、くるっと後ろを向いて石棺に手をかけて棺の外に出た。最後に残った俺は1枚の紙を見つける。
「何だろ みんな これ、何だと思う? 」
「「「どうした? なんだ? 」」」
何かを記した地図のようだった。
俺も棺から這い上がり風音に持っていてくれと頼んだ。
「何じゃろうな まあ良い 預かっておくか」
こうして、俺達の1人1品が終わった。
みんな、やりきった感で一杯だったと思う。このまま、帰宅しても良いくらいだった。寧ろ帰りたい、美味い物食いたい、風呂に入りたい、布団で寝たい…
30分ほど遅れて到着したトーマスは狂喜乱舞。石棺の中で宝石や硬貨を手に取り、鑑定レンズを胸から取り出し確認していた。
「トーマス わしらは後ろの遺跡に向かうからのう」
「かざねくん! ちょっと、待ってくれ わたしも同行するよ! 」
「まあ 後ろの建物だから すぐに合流は出来るからのう… 」
そう言って、俺達は遺跡を出て後ろの建物に回る。
トーマスは、手押し車を押して付いてきた冒険者達の1人に封印を施した1つの袋を渡した。中身は、石棺の中にあった古代通貨や宝石類が数点と1通の手紙であった。王都の学者、アレクシスを現地に呼ぶ内容を認めた。
「これをギルド本部長に 頼んだぞ! 」
冒険者は頷くと自身にバフをかけ、その場から走り去った。
▽▽▽
俺達は、後ろの遺跡に回り戦闘準備を始めていた。
「中に大きな反応が1つあるのう… 」
どうやら魔獣がいるようだ。
まあ、みんなと連携してサクッと終わらせるとしますか。
[[[ ちくしょう… こんなところに閉じ込めやがって… ]]]
えっ!? 禍々しい声が聞えてきた。
一体、誰の声なんだろう。
俺は、周りを見渡す。皆は戦闘準備中、風音やゼスも、さっきの声は聞こえていない様子だった。
[[[ 人間め… ここから出しやがれ!! ]]]
聞こえてきた、禍々しい声に反応したのは俺だけではなかった。
マリーが、目を瞑って下を向いた。
確認するためマリーに聞いた。
「マリー 聞こえたの? 」
「うん… たくやも? 」
「うん 何でだろ? 何か思い当る節はある? 」
俺達の様子に気付いて皆が集まる。
「わしには聞こえんかったが… 」
「俺にも聞こえなかったな」
風音とゼスが言う、続けてゼスが言った。
「もしかして、マリーがさっき身に付けたアクセサリーじゃないのか? 」
「腕輪? 」
マリーは袖を捲くり上げて腕輪を見せた。
マリーがしている腕輪は、俺がしている腕輪とそっくりだった。
「俺のと そっくりだよマリー」
「託也 ちょっと、わしに貸してみろ」
「マリー 俺にもちょっと貸してくれないか」
俺は風音に、マリーはゼスに腕輪を貸して様子を見ていた。
暫くするとゼスがビクッっとした。隣で風音が笑いだした。
「クックク 怒っているのう はっきりと聞こえたわ この腕輪、間違いない 中にいるヤツの会話を聞き取る事が出来るアイテムじゃ」
「ああ… かなり怒っているな ハッ… ハッハハ」
「上手くいけば戦闘はしないで済むかもしれん 託也、少しの間だけ貸しとけ」
貸すのは全然構わない。俺は風音に腕輪を預けた。
「どうじゃ マリー 中のヤツと契約してみんか? 途中まで話はしてやる どうする やってみるか? 」
「わ… わたしがですか!? …… 」
少し悩んでいたマリー 意を決したのか風音に向かい宣言する。
「風音様! やってみます 途中までお願いします! 」
「おおっ 良く言ったぞマリー 頑張るんじゃぞ」
「はい! 」
こうして、中にいる魔獣と戦闘する予定から風音の呼びかけ、マリーとの契約に変更となったがスムーズに事が運ぶかは… 風音の話次第かもしれない。
0
あなたにおすすめの小説
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる