魔女の店

汐桜

文字の大きさ
2 / 4
第一章 とある魔女

【二品目 魔女の薬】

しおりを挟む
【二品目  魔女の薬】

こんにちは。
私はシルフ、風の精霊よ。
今は訳あって第一等級魔女様のステラ様のお店でアルバイトなるものをしています。
このお店にお客様が来ることは滅多に無いのだけれどね。

こんにちは。
ウンディーネはウンディーネ、水の精霊だよ。
愛称でディーネと呼ばれるの。
シルフと一緒に魔女、ステラ様のお店でアルバイトなるものをしています。
このお店にお客様が来ることは滅多に無いのだけどね。

「…あの…こちらのお店に魔女様がいると…聞いたのですが…」

今日はお客様がくる稀な日のようです。
____
______
________
_______________

「…あの…こちらのお店に魔女様がいると…聞いたのですが…」

春の清々しい陽気に包まれたある日。
田舎村『ベリア』の近くにある森…の中にある魔女の店に一人の人間の客が来ていた。
容姿は見惚れる程眩しい橙色の髪を三つ編みにした歳若い女性である。

「「こんにちは、お客様。本日はどのようなご要件でしょう?」」

シルフとウンディーネが並んで挨拶をすると、女性は店の中を見渡した。

「ま、魔女様はお薬を作れると聞いて参りました!お会い出来ないでしょうか?」

決心を決め、不安そうな顔でそう言うと、勢いよくお辞儀した。

「あら、今日は良い天気ね。これはお客が来る訳だわ」

店の奥にある扉から大きな帽子を頭に乗せた、第一等級、星屑の魔女ステラが出てきた。
欠伸をし、どうやら気楽な様子である。

「おはようございますわ、魔女様。どうやらお薬をご希望のようですの」
「おはようございます、魔女様。事情を聞いて差し上げては如何でしょう?」

シルフとウンディーネが同時にステラの方を振り向く。

「ええ、勿論。応接室に案内して」

「「ただいま。此方です」」

店の右壁にあるreception roomと書かれた扉へ女性を案内し、本日の仕事が始まる。

「そうね、先ずは名前を聞きましょう」

机を挟み、向かい合った薄紫色のソファにて、ステラと女性が座っている。
シルフとウンディーネはどうやら紅茶を入れに行って居るらしい。

「私は…セレナと申します。ベリア村の農家の娘です」

ベリア村は大きく発展している訳では無いが、農業の盛んな村だ。
他にも酪農など、生産量はこの国でもトップクラスである。

「それで、薬を希望だったわね。私に…魔女に頼むって事は相当な重病かしら」

「はい。ユウナ…妹なのですが、どの薬を飲ませても熱が冷めず、咳が止まらないのです」

「…まぁ一度様子を見ないと分からないわね。一応聞くけれど、王都の医者には見せたの?言っちゃなんだけど、ベリアより良い医者
が居るでしょう。それに薬も」

「勿論、王都の医者はこの村の医者より優れています。その分、私達の様なそこらの平民には払えぬ診察料ですので…」

セレナと名乗った女性はスカートを握り締めて悔しそうな顔をした。
王都の優秀な医者となると診察料もそれなりで、平民にはとても払えない。
予想するに彼女は王都の医者に小馬鹿にされたのだろう。
王都の人間とは他者を蹴落とす傾向がある。
人間族は団結力は強いが、知能があり余っている為、そのような傾向になってしまったのだろう。
ステラがセレナの瞳を見つめ、何かを考えているとシルフとウンディーネが入ってきた。

「紅茶をお持ちしましたわ」
「ダージリンティーですよ」

「シルフ、ディーネありがとう」

手馴れた手付きで紅茶を淹れ、中間地に角砂糖入れを置くと、ステラのソファの後ろに立ち並ぶ。

「さて、と。取り敢えず症状を詳しく聞いて、薬を持って診察しましょう。と言っても私は魔女で医者ではない病に特別詳しい訳じゃないけれど」

「ですが魔女様はどの魔法族より優れた頭脳をお持ちですの」
「知識は豊富ですから、医者並みですよ」

「専売特許では無いわよ。魔女の作る薬は人間が作るよりも強力で細かい作用があるから、ちゃんと気をつけないとね」

紅茶をすすり、カップを置くとステラは口角を上げた。

「安心して。悪い事はしないもの」

アメジスト色の瞳には静かな怒りが感じられた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

繰り返しのその先は

みなせ
ファンタジー
婚約者がある女性をそばに置くようになってから、 私は悪女と呼ばれるようになった。 私が声を上げると、彼女は涙を流す。 そのたびに私の居場所はなくなっていく。 そして、とうとう命を落とした。 そう、死んでしまったはずだった。 なのに死んだと思ったのに、目を覚ます。 婚約が決まったあの日の朝に。

処理中です...