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第一章 とある魔女
【三品目 魔女の診察】
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【三品目 魔女の診察】
「ここが私の家です。今は妹しか居ませんのでご安心ください」
ベリア村のセレナの家に来るまで、多くの人に不審な目で見られた。
今回の訪問はステラ単身である。
「さて、早速見ましょうか」
本来人間は魔女を忌み嫌い、恐れているがセレナには大きな拒否反応は見られない。
そう、見えない様にしているのだ。
恐らく周りの人間にいざとなれば助けてくれと相談していたのだろう。
道のりでステラの感じた目線は恐怖、心配、怒り…様々な感情だった。
警戒されていることを分かってステラは働く訳だが、このことに関してアルバイトをしている精霊達は良く思っていないらしい。
そして診察が始まった訳だが、魔女の診察とは魔力を感知し調べる。
又は医者よりも優れている魔法を用いて身体の隅々まで調べる方法がある。
「…微かに魔力の反応があるわね」
そうステラが言うと、セレナの表情が険しくなる。
人間の中で魔力と言えば魔法族。
つまりは魔女であるステラが原因なのではと疑っているのだ。
「それってどういう事ですか…!」
セレナが勢いよく椅子から立ち上がる。
ステラはそれを横目で見ながら「まぁ最後まで聞きなさい」と言って妹のユウナの手を触る。
「妹さん、よく森に遊びに行っていたでしょう」
「えぇ…確か体調が悪くなった日も遊びに行っていたような」
ユウナの部屋には森にある木の実や草花が大量に飾られていた。
「魔法植物…即ち魔力を持つ植物に触ったのね。指先に微かに残っている」
「つまりユウナは魔法植物の毒でこうなってしまったと?」
「ま、そういう事ね。発熱と咳を引き起こす毒を持つのはラティフォリアだったかしらね~」
ステラは立ち上がり、花が飾られている棚の方へ近寄る。
そこには不自然に桃光りする花があった。
「この花に私が解毒魔法を掛ければ妹さんの症状も軽くなるはずよ。後は私が専用の薬を作るから、それで完治って所かしらね」
ステラが花に触れると花は更に輝きを増す。
《解毒魔法 二の句 デトックス》
花はステラの解毒魔法に掛けられ、光の粒となって消滅する。
先程まで息を荒くしながら辛そうにしていたユウナは体は火照って居るが、呼吸が落ち着き始めている。
初めて魔法を間近で見たセレナは目を丸くしていた。
警戒心を抱いていた瞳は和らぎ、安心からか潤んでいる。
「本当に…本当にありがとうございます、魔女様」
その様子を見てステラは薄く微笑む。
底知れぬ瞳の奥に優しさの念が込められていた。
____
______
________
_______________
「お帰りなさいませ、魔女様。無事解決されたようですわね」
「お帰りなさいませ、魔女様。全て事をなされたのですね」
ステラが店へ帰る頃、時計は十三時を指していた。
「ええ。まぁ、薬を作って暫くは様子見だけれどね」
「…魔女様はお優しい方ですわ」
「…村の者は恐れ知らずです」
シルフとウンディーネが悲しそうな顔をすると、ステラは微笑した。
「…都合のいい時ばかり頼って、って思ってるの?」
店にある古い籐椅子に腰掛けると窓の外を眺めながら言葉を続ける。
「人間って、そういうものでしょう。良く言えば大切な者の為に手段を選ばないなんて、素敵でしょう?」
シルフとウンディーネは二人で顔を見合わせて「魔女様がそういうのなら」と、微笑み合うのだった。
「ここが私の家です。今は妹しか居ませんのでご安心ください」
ベリア村のセレナの家に来るまで、多くの人に不審な目で見られた。
今回の訪問はステラ単身である。
「さて、早速見ましょうか」
本来人間は魔女を忌み嫌い、恐れているがセレナには大きな拒否反応は見られない。
そう、見えない様にしているのだ。
恐らく周りの人間にいざとなれば助けてくれと相談していたのだろう。
道のりでステラの感じた目線は恐怖、心配、怒り…様々な感情だった。
警戒されていることを分かってステラは働く訳だが、このことに関してアルバイトをしている精霊達は良く思っていないらしい。
そして診察が始まった訳だが、魔女の診察とは魔力を感知し調べる。
又は医者よりも優れている魔法を用いて身体の隅々まで調べる方法がある。
「…微かに魔力の反応があるわね」
そうステラが言うと、セレナの表情が険しくなる。
人間の中で魔力と言えば魔法族。
つまりは魔女であるステラが原因なのではと疑っているのだ。
「それってどういう事ですか…!」
セレナが勢いよく椅子から立ち上がる。
ステラはそれを横目で見ながら「まぁ最後まで聞きなさい」と言って妹のユウナの手を触る。
「妹さん、よく森に遊びに行っていたでしょう」
「えぇ…確か体調が悪くなった日も遊びに行っていたような」
ユウナの部屋には森にある木の実や草花が大量に飾られていた。
「魔法植物…即ち魔力を持つ植物に触ったのね。指先に微かに残っている」
「つまりユウナは魔法植物の毒でこうなってしまったと?」
「ま、そういう事ね。発熱と咳を引き起こす毒を持つのはラティフォリアだったかしらね~」
ステラは立ち上がり、花が飾られている棚の方へ近寄る。
そこには不自然に桃光りする花があった。
「この花に私が解毒魔法を掛ければ妹さんの症状も軽くなるはずよ。後は私が専用の薬を作るから、それで完治って所かしらね」
ステラが花に触れると花は更に輝きを増す。
《解毒魔法 二の句 デトックス》
花はステラの解毒魔法に掛けられ、光の粒となって消滅する。
先程まで息を荒くしながら辛そうにしていたユウナは体は火照って居るが、呼吸が落ち着き始めている。
初めて魔法を間近で見たセレナは目を丸くしていた。
警戒心を抱いていた瞳は和らぎ、安心からか潤んでいる。
「本当に…本当にありがとうございます、魔女様」
その様子を見てステラは薄く微笑む。
底知れぬ瞳の奥に優しさの念が込められていた。
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「お帰りなさいませ、魔女様。無事解決されたようですわね」
「お帰りなさいませ、魔女様。全て事をなされたのですね」
ステラが店へ帰る頃、時計は十三時を指していた。
「ええ。まぁ、薬を作って暫くは様子見だけれどね」
「…魔女様はお優しい方ですわ」
「…村の者は恐れ知らずです」
シルフとウンディーネが悲しそうな顔をすると、ステラは微笑した。
「…都合のいい時ばかり頼って、って思ってるの?」
店にある古い籐椅子に腰掛けると窓の外を眺めながら言葉を続ける。
「人間って、そういうものでしょう。良く言えば大切な者の為に手段を選ばないなんて、素敵でしょう?」
シルフとウンディーネは二人で顔を見合わせて「魔女様がそういうのなら」と、微笑み合うのだった。
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