深窓の異世界転移者2世(聖女の息子)は未だ愛を知らない

仮名山ミムミム

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魔物討伐隊 立入制限区域レベル6にて

キスしてみろ 2

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「は…!?」


「何言ってんだ!?」



メイが投下した発言に、ノエルとランドルフは同時に驚きの声を出す。イスタも「えっ!?」とびっくりして声を漏らす。



「お前らの魔力の交換が上手くいくとわかれば、治癒魔術だけじゃなく、毒やウィルスのきかない免疫を作ることもできるし、聖剣を扱うための能力も向上する可能性もある。今回の機動部隊では、有事に対する備えを万全にしておきたい」



メイの言っていることは、魔物討伐部隊の隊長の考えとして至極全うだった。



でも、こんな状況で「はい、わかりました」とランドルフとキスをするのは、この間がファーストキスであったノエルにとって、大分ハードルが高い。



「何もここで、最後までヤれって言ってるわけじゃねーだろ。できねぇなら、それまでだ。別の方法を考える」



メイは、呆れたように言い放つ。魔力の交換が魔物討伐現場で行われるのは別に珍しいことではない。一瞬でも気を抜けば、命が奪われる。そんな現場だ。


ノエルは、魔物討伐現場に派遣される治療士として、そんなこともできないのかと言われた気がした。



「メイ、ノエルは深窓の…しかもまだ配属されたばかりの新人だ。その…この間のがどうやら初めてのキスだったみたいだし、もう少し配慮を…」



ランドルフがノエルをフォローをしていると、ノエルは声をあげた。



「できます!もし、今回の特別機動部隊の戦略に役に立つことがわかれば、一緒に連れてってください」



ノエルの薄茶色に緑が差し込んだヘーゼルナッツの瞳が、メイのルビー色の目をとらえた。メイは、一瞬考えるように前髪を搔き上げる。



「…やってみろ。まずはそれからだ」




「わかりました。…ランドルフ隊長!」



ノエルに突然名前をよばれたランドルフは目を剥いた。



「ノエル、本気か…!?何もこんなところじゃなくたって、あとで2人きりの時でも…」



「いえ、できます。仕事ですから。」



ノエルはそう言いながらランドルフに近づく。



ランドルフだけじゃなく、なぜか側に立つイスタまで「ちょっと…ノエル・リンデジャックさんっ…」とあわてる。メイだけが、この状況を静観していた。



「…ランドルフ隊長、少し屈んで頂けますか?」



ノエルは、ランドルフの深紅のマントを両手で掴む。大分身長差があるので、上目遣いでランドルフを下から見上げる。



「うっ…ノエル…無理するなって…」



「いえ、無理してないです。ランドルフ隊長、早く屈んでください。届かないです」



早くっとせがむノエルにランドルフはたまらないっといったように観念すると、ノエルを持ち上げ、お尻の下の部分を支えるように抱える。



ランドルフがノエルを抱っこすることで、ノエルの頭が1つ分ランドルフより高くなった。



「わっ…」



突然抱えられて、目線が高くなったノエルは驚いて、ランドルフの肩にしがみつく。




「ノエルは…結構頑固だなぁ。これで屈まなくてもキスできる」




しょうがない奴と、ランドルフはエメラルド色の目を細めてノエルに微笑む。




「…いきますよ?」




ノエルは目を閉じて、自身の唇をランドルフの唇に重ねた。

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