31 / 140
魔物討伐隊 立入制限区域レベル6にて
同期だから 2
しおりを挟む
ノエルは言われた通りに扉を閉める。
エミンの様子から刺されたのはただの針ではなさそうだ。毒か、しびれ薬のようなものが塗られているのかもしれない。
ノエルが扉を閉めると、ドアはすぐにガチャリと自動で施錠される。
討伐部隊の収容庫や保管庫といった倉庫は全て自動でロックがかかる魔術が施されている。特殊な鍵じゃないと中からでも開けられない仕組みになっていた。
先輩治療士の尋常ではない姿と行動に、コニーは青ざめていた。
ノエルはごくりと生唾を飲み込む。できるだけ冷静に声を出す事に努め、先輩に話しかけた。
「何が望みですか?」
先輩治療士は、片手に火薬の瓶を持ち、もう片方の手に細い針を持っていた。
「望み…俺はお前や、他に優秀で恵まれた奴らが憎い…もう疲れたんだ…馬鹿にされるのも、報われない仕事をするのも…ここで、全て終わりにしたい」
そう言って、先輩治療士は宙を仰ぐ。視線が定まらない。まともな思考は持ち合わせていない以上、刺激するのは危険だった。
「おっ、終わりって…勝手にしてよね。僕たちを巻き込まないで!」
コニーが恐ろしさのあまり、声を上げた。
すると突然先輩治療士は、目を剥いた。瞳孔が開いている。発狂するように叫んで、細い針をコニー向かって投げる。
ノエルは咄嗟に腕を伸ばした。
「っ…」
ノエルの右腕に細い長い針が刺さる。
(中枢神経系を麻痺させる毒か…)
こんな状況でも、頭の一部分は冷静に針に仕込まれた毒の成分を分析する。どうやら痛みと共に身体の神経を麻痺させる毒ようだ。比較的穏やかに進むタイプの毒のようでそれだけは救いだった。
「リンデジャック…!!僕を庇って…」
コニーは自分の失言のせいで、ノエルが代わりに毒を受けたことにショックを受け口元を抑える。
するとその時だった。
一ゴーーーーン…!!!
大きな音が収容庫中に響き渡る。
バタっと先輩治療士がうつぶせに倒れた。ピクピクと身体を痙攣させ、失神している。その手からは、薬品の入った瓶がコロコロと転がり落ちた。
先輩が倒れた後ろ側に、左足をかばいながら、長い鉄製の銃を掲げ持ち、エミンが立っていた。
ハァハァと肩で息をしている。足も麻痺して動かせないはずで、銃も相当重いはずだった。
「ごめんっ…俺のせいなんだ…」
エミンの様子から刺されたのはただの針ではなさそうだ。毒か、しびれ薬のようなものが塗られているのかもしれない。
ノエルが扉を閉めると、ドアはすぐにガチャリと自動で施錠される。
討伐部隊の収容庫や保管庫といった倉庫は全て自動でロックがかかる魔術が施されている。特殊な鍵じゃないと中からでも開けられない仕組みになっていた。
先輩治療士の尋常ではない姿と行動に、コニーは青ざめていた。
ノエルはごくりと生唾を飲み込む。できるだけ冷静に声を出す事に努め、先輩に話しかけた。
「何が望みですか?」
先輩治療士は、片手に火薬の瓶を持ち、もう片方の手に細い針を持っていた。
「望み…俺はお前や、他に優秀で恵まれた奴らが憎い…もう疲れたんだ…馬鹿にされるのも、報われない仕事をするのも…ここで、全て終わりにしたい」
そう言って、先輩治療士は宙を仰ぐ。視線が定まらない。まともな思考は持ち合わせていない以上、刺激するのは危険だった。
「おっ、終わりって…勝手にしてよね。僕たちを巻き込まないで!」
コニーが恐ろしさのあまり、声を上げた。
すると突然先輩治療士は、目を剥いた。瞳孔が開いている。発狂するように叫んで、細い針をコニー向かって投げる。
ノエルは咄嗟に腕を伸ばした。
「っ…」
ノエルの右腕に細い長い針が刺さる。
(中枢神経系を麻痺させる毒か…)
こんな状況でも、頭の一部分は冷静に針に仕込まれた毒の成分を分析する。どうやら痛みと共に身体の神経を麻痺させる毒ようだ。比較的穏やかに進むタイプの毒のようでそれだけは救いだった。
「リンデジャック…!!僕を庇って…」
コニーは自分の失言のせいで、ノエルが代わりに毒を受けたことにショックを受け口元を抑える。
するとその時だった。
一ゴーーーーン…!!!
大きな音が収容庫中に響き渡る。
バタっと先輩治療士がうつぶせに倒れた。ピクピクと身体を痙攣させ、失神している。その手からは、薬品の入った瓶がコロコロと転がり落ちた。
先輩が倒れた後ろ側に、左足をかばいながら、長い鉄製の銃を掲げ持ち、エミンが立っていた。
ハァハァと肩で息をしている。足も麻痺して動かせないはずで、銃も相当重いはずだった。
「ごめんっ…俺のせいなんだ…」
115
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる