騎士様は甘い物に目がない

ゆみ

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隣国のパイ

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「当たり障りのないケーキとサンドイッチとかでいいんじゃないですか?ほら、ジークも茶会の菓子なんて見向きもしないんだから。」
「まぁ、そうなんだけど…。でも私だって少しは楽しくお茶を飲みたいもの、そこはせめて美味しいお菓子が必要でしょう?」
「フェルナンド王太子の好みも分かりませんからね──。」
 間もなく西の隣国ステーリアの王太子がこの王宮を訪問する予定になっている。突然の訪問は表向きリーナ王女との顔合わせが目的という事になるだろう。だから少なくとも1回はリーナ王女とフェルナンド王太子の茶会が開かれる事になる。
 リーナ王女はその為の準備で忙しくしており、レジナルドに何か変わった菓子がないかと相談してきたのだ。
「…そういえば、リアがステーリアはパイが有名だと言っていたような…」
「パイ?あぁ、いいんじゃないですか?パイなら中身次第で色々楽しめるし。」
「そうねぇ──。カスタードとブルーベリーは必ず入れるように言っておくわ…。」
「あ、アップルパイもいいんじゃないですか?」
「レジー、林檎の旬は今じゃないわよ。」
「えー、なんかあるでしょ?瓶に入ったのが?」
 王宮の厨房ですよ?と力説するレジナルドの視線の片隅をセシリアが横切った。
「あ、セシリア嬢!丁度良かった──」
「リーナ様、レジナルド様も…」
 セシリアは何事かと驚いた様子で挨拶を返してくる。
「リア、今ステーリアのパイの話をしていたのよ、この間リアが教えてくれたでしょう?フェルナンド王太子が来られた時の茶会で出したらどうかと思って。」
「俺はアップルパイがいいと思うんですけど、リーナ様が林檎は旬じゃないとか言い始めて!」
「あら、それは当然でしょう?今はブルーベリーがいい時期だわ!」
「…あの」
 お菓子の話になると知らず熱くなる二人に弱冠気圧されながらセシリアが困った顔をした。
「セシリア嬢はどう思う?」
「もちろんブルーベリーよね?」
「…」
 セシリアは二人を交互に見ると、申し訳なさそうに衝撃の事実を告げた。
「…ステーリアで食べられるパイは食事なので甘くないのです。林檎やブルーベリーといったフルーツではなく…」
「「ではなく?」」
「…ウサギ…ですとか。」
「兎…」
「──そっちだったか。あれだ、あのスープに蓋してオーブンで焼きました的な?」
「はい…申し訳有りません…」
「何でリアが謝るのよ、貴方は何も悪くないじゃない…。」
 この後も甘党会議は混迷を極めた。
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